公開日 2020年05月26日
令和元年12月12日 令和元年12月県議会での知事提案説明
2 基本政策の取り組み方針について
(経済の活性化)
(日本一の健康長寿県づくり)
(教育の充実と子育て支援)
(南海トラフ地震対策の抜本強化・加速化)
(インフラの充実と有効活用)
(中山間対策の充実・強化)
(少子化対策の充実・強化と女性の活躍の場の拡大)
(文化芸術とスポーツの振興)
3 議案
(12月補正予算案)
(条例その他議案等)
本日、議員の皆さまのご出席をいただき、令和元年12月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、今後の県政運営に臨みます私の基本的な考えを申し上げ、議員の皆さま並びに県民の皆さまのご理解とご協力をお願いしたいと考えております。
1 県政運営の基本姿勢について
私は、知事を目指すことを決意してから、ここ数ヶ月間、県内各地を回る中で、県民の皆さまから様々な声をお聞かせいただき、地域における厳しい現状に接してまいりました。そのたびに、大切な故郷をもっと元気にしたい、多くの若い人が戻って来ることができるような、さらには都会に出て行かなくても誇りを持って定住できるような魅力あふれる県にしたい、そのために私のこれまでの行政経験を生かして高知に恩返しがしたい、との思いをより強く抱くようになりました。
現在、高知県は、経済の活性化や日本一の健康長寿県づくり、教育の充実をはじめとする様々な政策によって、間違いなく良い方向に向かっております。例えば、一人当たり県民所得は近年、全国の倍の伸びを見せており、長年にわたり生産年齢人口の減少と連動する形で減少傾向にあった県内総生産や各産業分野の産出額も上昇傾向に転じております。また、地域福祉の拠点であります「あったかふれあいセンター」が県内各地に広がってきており、教育の面では小中学生の学力が着実に向上してまいりました。
一方、現在の高知県の人口構成を見ますと、今後も人口減少が続くこと自体は避けられず、人口減少に伴う県経済の縮みや中山間地域の衰退といった困難な課題に対するこれまでの施策を一層強化していく必要があると考えます。さらには、近い将来起こりうる南海トラフ地震への備えも引き続き着実に進めなければなりません。
このため、私はこれまでの県政をしっかりと継承し、3つの目指すべき姿、すなわち、第一に産業振興によって新たな雇用を創出する「いきいきと仕事ができる高知」、第二に教育の充実や子育て支援、日本一の健康長寿県づくりの取り組みなどを通じた「いきいきと生活ができる高知」、第三に南海トラフ地震対策や豪雨災害対策、インフラ整備の推進による「安全、安心な高知」。これら3つの姿の実現に向けまして、様々な施策をさらに発展させ、高知県政を一段と高いステージへ引き上げてまいります。
私は、これからの県政の運営にあたり、「共感と前進」を基本姿勢としたいと訴えてまいりました。
本県の直面する困難な課題に県民の皆さまと共に立ち向かっていくためには、県民の皆さまとの対話を通じて、県政に対する「共感」を得ていくことが重要であると考えます。
ここ高知には、豊かな自然をはじめ、脈々と受け継がれてきた歴史や文化などの素晴らしい資源があり、そして何より高知を愛し、地域を支えていこうとして挑戦を重ねている皆さまがおられます。そうした皆さまの英知を結集し、心を一つにして、高知の「強み」を最大限に生かしながら、さらなる県勢浮揚に向けて全力で取り組みます。
その過程では、県民の皆さま、議員の皆さまはもとより、民間事業者の方々、市町村の皆さま、さらには県庁職員ともしっかりと対話を重ね、コンセンサスを得ながら、施策を練り上げてまいりたいと考えております。
そして、施策の実行を通じて、課題の解決に向けて一歩でも二歩でも確実に「前進」していくよう、成果志向の県政運営を目指します。このため、施策の目標を明らかにし、成果について科学的知見なども踏まえながら一つ一つ丁寧に検証した上で、いわゆるPDCAサイクルを一層徹底してまいります。
また、本県の直面する課題の解決に向けては、本県単独の施策のみでは限りがありますので、国などに対して時機を捉えた積極的な政策提言を行い、国の制度や施策をしっかりと活用してまいります。
この高知を活力ある県にしようという思いを同じくする県民の皆さまと共に、国内外の方々のお力添えを賜りながら、官民協働、市町村政との連携協調の下、高知の未来を切り開いていく県政が実現するよう、前へ前へと進んでまいる所存であります。
2 基本政策の取り組み方針について
続いて、基本政策の取り組み方針について、ご説明申し上げます。
(経済の活性化)
まず、経済の活性化についてであります。
先ほども申し上げましたように、これまでの産業振興計画の取り組みを通じて、各産業分野の地産外商は飛躍的に拡大し、本県経済は、人口減少に伴って縮む経済から、人口減少下にあってもむしろ拡大する経済へと構造を転じつつあるものと受け止めております。
しかしながら、各種の経済指標は依然として全国の絶対水準を下回っており、また、人手不足や後継者不足は年々深刻化しております。加えて、まち・ひと・しごと創生総合戦略などの目標に掲げる人口の社会増減の均衡に向けても、まだ道半ばの状況であります。
県経済をさらに活気あるものとし、より多くの若者が高知に帰ってくることができるようにするため、あるいは若者が県外へ出ず、高知に定住する希望をかなえるようにするためにも、本県に付加価値の高い産業を生み出し、新たな雇用を一層創出していくことが重要であると考えております。このため、産業振興計画における各種施策をさらに強化し、発展させ、着実に推進してまいる所存であります。
具体的には、まず、本県の強みである農林水産業に関して、先端技術の活用を通じてさらなる生産拡大を図るとともに、加工体制の強化や輸出も視野に入れた外商の拡大に取り組んでまいります。
また、デジタル技術と地場産業の融合をさらに進めることにより、新たな製品やサービスの開発を促進し、Society5.0関連の産業群の創出を目指します。
加えて、県外や海外との様々なネットワークを強化し、外部の知見や人材を積極的に活用してまいりたいと考えております。特に、大阪をはじめとする関西圏は、令和7年に開催される大阪・関西万博を控え、非常に経済活力に満ちております。こうした経済活力を高知に誘引するため、外国人観光客の誘致や地産外商のさらなる拡大など、関西圏での新たな経済活動の展開を検討し、その実現を図ってまいります。
さらに、各産業分野の担い手確保策と移住促進策を連携させ、担い手不足の解消に向けて、積極的に施策を展開してまいります。
あわせて、本県の発展に向けては中山間地域の振興が不可欠であるとの認識の下、こうした取り組みの成果を確実に中山間地域の活性化にもつなげるよう意を用いてまいります。
(日本一の健康長寿県づくり)
次に、日本一の健康長寿県づくりの取り組みについてご説明申し上げます。
これまでの日本一の健康長寿県構想による取り組みを通じて、「あったかふれあいセンター」がサテライトを含め県内に約290カ所設置されたことをはじめ、各地域に医療、介護、福祉のサービス提供体制が一定整ってまいりました。また、がん検診や特定健診の受診率が向上するなど、県民の皆さまの健康意識も着実に高まってきているものと感じております。
引き続き、「県民の皆さまが住み慣れた地域で健康で安心して暮らし続けられる高知県」を目指して、日本一の健康長寿県構想のさらなるバージョンアップを図りながら、県民の皆さまの健康寿命の延伸などに全力で取り組んでまいる所存であります。
具体的には、医師の確保や地域の実情に応じた医療提供体制の整備を図るとともに、県内各地域の医療、介護、福祉のサービス資源をネットワークとしてつなぎ、日常生活から入退院、在宅までを切れ目なく支援する高知版地域包括ケアシステムの構築を着実に進めてまいります。この中でも特に、地域における総合的な支え合いの拠点である「あったかふれあいセンター」の取り組みを強化し、訪問看護や訪問介護サービスの拡充なども図ってまいります。
あわせて、医療や福祉の関係機関と連携し、在宅での療養環境を充実させる取り組みや糖尿病の重症化予防対策などを着実に推進することにより、県民の皆さま一人ひとりの生活の質、いわゆるQOLの向上を図り、持続可能な社会保障モデルとして全国へ発信してまいりたいと考えております。
また、妊娠期から子育て期まで切れ目なく総合的に支援する高知版ネウボラの取り組みなどを通じて、発達障害のある子どもたちが早期に適切な支援を受けられる態勢づくりを進めるとともに、児童虐待防止の取り組みを一層強化してまいります。
このほか、ひきこもりの方々の社会参加や自立に向けた支援策などの抜本強化を図ってまいります。
(教育の充実と子育て支援)
次に、教育の充実と子育て支援の取り組みについてご説明申し上げます。
本県においては、平成20年にスタートした教育改革や平成28年に策定した「教育等の振興に関する施策の大綱」に基づく知、徳、体の分野ごとに目標を掲げた取り組みにより、小中学生の学力や体力、運動能力の状況は確実に改善が進み、成果も表れてきております。一方、小中学校における不登校の出現率は、全国と比べ依然として高い状況にあります。
この高知の未来を担う子どもたちが自らの夢や志を実現できるよう、県民の皆さまのお知恵やお力を賜りながら、子どもたちの知、徳、体それぞれの調和がとれた「生きる力」を育んでいくことが私の使命であると考えております。
このため、学校が組織として諸課題に対応し、自律的に教育の質を高めていくことができるよう、「チーム学校」の取り組みを一層推進してまいります。
また、貧困や不登校、学力の未定着など、様々な困難を抱え厳しい環境にある子どもたちをしっかりと支えるために、就学前から高等学校までの各段階における切れ目のない支援を充実してまいります。特に、増加傾向にある不登校の児童生徒への支援に関しては、未然防止の取り組みと迅速な初期対応に加えて、学校と教育支援センター、心の教育センターが連携した重層的な支援体制の構築を進めてまいります。
さらに、中山間地域の高等学校への遠隔教育システムを活用した授業の配信をはじめとして、学習指導におけるデジタル技術の活用を積極的に推進するとともに、子どもたちがデジタル社会に対応できる力を育むための教育の充実にも取り組んでまいります。
あわせて、こうした取り組みを確実に進めるためにも、教員が子どもたちと向き合う時間を確保できるよう、教職員の働き方改革を推進してまいります。
(南海トラフ地震対策の抜本強化・加速化)
次に、南海トラフ地震対策の抜本強化、加速化についてご説明申し上げます。
南海トラフ地震対策に関しましては、南海トラフ地震対策行動計画に基づき、住宅の耐震化や津波避難空間の整備をはじめとして、様々な対策が着実に進展してまいりました。その結果、最大クラスの地震と津波が発生した場合の想定死者数は、平成25年5月時点の約4万2千人から、本年3月時点では約1万1千人と約74パーセント減少しております。引き続き、南海トラフ地震対策を着実に推進し、想定死者数を限りなくゼロに近づけていくことが重要であります。
このため、本年4月からの第4期行動計画に基づき、国の「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」も活用し、海岸堤防の整備や住宅の耐震化などのハード対策を加速してまいります。あわせて、要配慮者の迅速な避難に向けた個別計画の策定や、南海トラフ地震臨時情報への対応を進めるとともに、県を挙げての災害対応力を向上させるため、これまで以上に実動訓練や図上訓練を実践的かつ効果的に実施するなど、ソフト面の対策もさらに充実させてまいります。
私は東日本大震災の際、消防庁において、全国の消防機関の救急部隊を被災地へ応援派遣する任に就いた経験があり、南海トラフ地震対策を進めるにあたっては、こうした経験も存分に生かしてまいります。
(インフラの充実と有効活用)
次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。
本県のインフラに関しては、災害から県民の皆さまの生命や財産を守るとともに、地域の生活や産業振興を支える基盤として、積極的に整備の促進が図られてきたところです。引き続き、県民の皆さまの安全、安心を確保するとともに、地域の活力増進を図っていくため、他県と比べて立ち遅れている本県のインフラ整備にスピード感を持って取り組んでいく必要があります。
このため、全国知事会や他県ともしっかりと連携し、国などに対してインフラ整備の必要性を訴えていくとともに、国の施策を最大限活用しながら、四国8の字ネットワークや浦戸湾の三重防護などのインフラ整備を着実に推進してまいります。
また、度重なる台風災害や豪雨災害などに備えるため、豪雨災害対策推進本部を通じてハード・ソフト両面での対策を推進し、中小河川の河川改修をはじめとする治水対策や土砂災害対策などにも取り組んでまいります。
(中山間対策の充実・強化)
次に、中山間対策の充実、強化についてご説明申し上げます。
県土の約93パーセントを占める中山間地域は、農業や林業といった第一次産業が盛んであり、また、豊かな自然や食、文化といった本県ならではの資源を有する、本県の中長期的な発展の源となる地域であります。このため、私は、若者が住み続けられる中山間地域の実現なくして高知県の発展はないという強い思いを持っております。
中山間対策につきましては、これまで、「産業をつくる」取り組みと「生活を守る」取り組みを柱として、県政の各分野において施策の展開が図られてまいりました。その結果、例えば、中山間対策の核となる「集落活動センター」については、これまでに31市町村58カ所で立ち上がるなど、県内各地で着実に広がってきております。あわせて、移動手段の確保対策など、中山間地域の皆さまの暮らしを守る取り組みも進んできているところです。
引き続き、こうした取り組みのさらなる拡充を図るとともに、中山間地域の子どもたちが地元を離れることなく中心部の大規模校と同様に学ぶことのできる環境を整備するため、中山間地域の高等学校へのデジタル技術を活用した授業の配信を推進するなど、県政の各政策において中山間振興を念頭に置いた取り組みを進めてまいります。
(少子化対策の充実・強化と女性の活躍の場の拡大)
次に、少子化対策の充実、強化と女性の活躍の場の拡大についてご説明申し上げます。
まず、少子化対策については、高知県少子化対策推進県民会議を立ち上げ、官民協働で出会い・結婚、妊娠・出産、子育てといったライフステージの各段階に応じた総合的な対策が進められてきました。その結果、本県の合計特殊出生率は、平成21年の1.29を底に回復基調にあり、平成30年までの伸び率は全国を大幅に上回っているところです。
また、女性の活躍の場の拡大に向けては、女性が希望に応じて働き続けられるよう、ファミリー・サポート・センターや高知家の女性しごと応援室をはじめとして、社会全体で子育てや就労を支援する仕組みが整いつつあると感じています。
引き続き、少子化の要因分析と施策の検証などを不断に行いながら、官民協働で県民の皆さまの出会い・結婚、妊娠・出産、子育ての希望をかなえることができるよう努めますとともに、女性の活躍の場を拡大してまいります。
(文化芸術とスポーツの振興)
次に、文化芸術とスポーツの振興についてご説明申し上げます。
文化芸術の振興については、文化芸術振興ビジョンに基づき、県民の皆さまが文化や芸術に親しむ機会の創出を図りますほか、県史の編さんなどを通じて高知の歴史や文化の研究と活用を進めてまいります。
また、スポーツの振興に関しては、第2期スポーツ推進計画に基づき、産学官民連携の下、様々な取り組みが進められており、一定の成果も出てまいりました。引き続き、競技力の向上対策を強化するとともに、地域でスポーツを気軽に楽しめる環境を整備するなど、県民の皆さまが「スポーツを通じて健やかで心豊かに、支え合いながら生き生きと暮らすことのできる社会」の実現に向けた取り組みを進めてまいります。
3 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
(12月補正予算案)
まず予算案は、令和元年度高知県一般会計補正予算などの6件です。
このうち一般会計補正予算は、台風被害への迅速な対応や経済の活性化などの経費として、総額27億5千万円余りの歳入歳出予算の補正並びに総額40億3千万円余りの債務負担行為の追加及び補正を計上しております。
具体的には、「台風第19号等による被害への迅速な対応」として、高波により破損した防波堤の復旧や航路に堆積した障害物の除去に取り組むとともに、海浜に漂着した流木の処分を行うなど、漁港施設や海岸施設などにおける被害の迅速な復旧を図ってまいります。
また、「経済の活性化」に関しては、オリンピック・パラリンピック東京大会が開催されます来年、全国のよさこいが集結する「プレミアムよさこいin東京2020」を開催することとしております。この取り組みを通じて、海外におけるよさこいや、その発祥の地である本県の認知度の向上を図るとともに、よさこいの普及を推進し、外国人観光客のさらなる誘致拡大につなげてまいります。
さらに、今月20日から高知龍馬空港と神戸空港間において新たな路線が開設されますことから、本県の航空ネットワークの拡充を県民の皆さまの利便性向上と本県経済への波及効果の発現にしっかりとつなげることができますよう、航空会社による路線のPR事業に対する支援などを行ってまいります。
あわせて、新たな管理型産業廃棄物最終処分場の整備に関し、現在実施している現地測量や基本設計などに加えまして、施設整備に伴う生活環境への影響のほか、動植物や景観への影響、工事中の騒音や振動による周辺環境への影響などを調査、予測し、評価する環境アセスメントを実施してまいりたいと考えております。今後、専門家や地域住民の皆さまからもご意見を伺い、影響評価などを行う項目を決定した上で、調査を実施してまいります。
このほか、地域医療介護情報ネットワークの普及促進や、地域の教育力向上及び活性化に向けた施設整備への支援などに要する経費を計上しております。
(条例その他議案等)
条例議案は、高知県流域下水道事業の設置等に関する条例議案など5件です。
その他の議案は、令和2年度当せん金付証票の発売総額に関する議案など16件です。
報告議案は、令和元年度高知県病院事業会計補正予算の専決処分報告など3件であります。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。