令和2年2月20日 令和2年2月県議会での知事提案説明

公開日 2020年05月26日

令和2年2月20日 令和2年2月県議会での知事提案説明

第1 令和2年度の県政運営

 1 県政運営の基本的な考え方

 2 令和2年度当初予算及び令和元年度2月補正予算

第2 5つの基本政策と3つの横断的な政策に基づく県づくり

 1 経済の活性化

 (1)第4期産業振興計画の策定
 (2)各分野における地産外商の強化
  ア 農業分野
  イ 林業分野
  ウ 水産業分野
  エ 食品分野
  オ 商工業分野
  カ 観光分野
 (3)県経済の成長を支える取り組みの強化
  ア 移住促進策の強化
  イ 新規大卒者の就職支援等

 2 日本一の健康長寿県づくり

 (1)第4期日本一の健康長寿県構想の策定
 (2)健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進
 (3)地域で支え合う医療・介護・福祉サービス提供体制の確立とネットワークの強化
  (高知版地域包括ケアシステムの構築等)
  (ひきこもりの方々への支援)
 (4)子どもたちを守り育てる環境づくり
 (5)新型コロナウイルス感染症対策

 3 教育の充実

 (1)チーム学校の推進
 (2)学力向上対策の強化
 (3)不登校など厳しい環境にある子どもへの支援や子どもの多様性に応じた教育の充実
 (4)デジタル社会に向けた教育の推進
 (5)学校における働き方改革の推進

 4 南海トラフ地震対策の抜本強化・加速化

 (1)津波避難対策
 (2)要配慮者支援対策
 (3)受援態勢の強化

 5 インフラの充実と有効活用

 6 中山間対策の充実・強化

 7 少子化対策の充実・強化と女性の活躍の場の拡大

 8 文化芸術とスポーツの振興

 9 第2期高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略の策定

第3 その他

 1 犯罪被害者等支援条例の制定

 2 高知龍馬空港新ターミナルビルの整備

 3 新たな管理型産業廃棄物最終処分場の整備

 4 県政運営指針の改定

第4 議案

 


 

 本日、議員の皆さまのご出席をいただき、令和2年2月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。

 ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆さま並びに県民の皆さまのご理解とご協力をお願いしたいと考えております。

第1 令和2年度の県政運営

1 県政運営の基本的な考え方

 昨年の知事選挙におきまして県民の皆さまのご支持をいただき、知事に就任して2カ月半が経過いたしました。この間、県政が抱えている様々な課題について理解を深めるにつれ、自らが果たすべき責任の大きさを再認識し、身が引き締まる思いをいたしております。
 改めて、本県が目指す3つの姿、すなわち、第一に産業振興によって新たな雇用を創出する「いきいきと仕事ができる高知」、第二に教育の充実や子育て支援、日本一の健康長寿県づくりの取り組みなどを通じた「いきいきと生活ができる高知」、第三に南海トラフ地震対策や豪雨災害対策、インフラ整備の推進による「安全、安心な高知」。これら3つの姿の実現に向けて、高知を活力のある県にしようという思いを同じくする県民の皆さまのお力添えを賜りながら、力を尽くしてまいりたい。その決意をより一層強くしております。
 令和2年度は、私にとりまして県政運営にあたる実質的な初年度であります。できるだけ多くの県民の皆さまとの対話を行えるよう、4月から県民座談会「濵田が参りました」を開催し、1年間で全ての市町村を訪問させていただきたいと考えております。
「共感と前進」を県政運営の基本姿勢として、官民協働、市町村政との連携協調の下、5つの基本政策と3つの横断的な政策に沿った各種の施策をさらに発展させ、高知県政を一段と高いステージへ引き上げるべく、前へ前へと全力で取り組んでまいります。

2 令和2年度当初予算及び令和元年度2月補正予算

 次に、令和2年度当初予算案及び令和元年度2月補正予算案についてご説明申し上げます。
 今回の予算編成にあたっては、県勢浮揚の実現に向けて、これまで進めてきた政策をしっかりと継承するとともに、施策の実効性を高めることに意を用いてまいりました。特に、防災、減災に資するインフラ整備については、国の「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」の財源などを最大限に活用し、引き続き積極的に推し進めることといたしました。
 この結果、来年度の一般会計当初予算案は総額4,632億円余り、対前年度比で0.5パーセント、約25億円の増となりました。中でも投資的経費は約1,036億円となり、災害復旧事業などの減を除くと前年度を上回る規模となっております。
 このように県勢浮揚に必要な施策を着実に実行する一方、今後の財政運営の持続可能性を確保するため、歳入歳出両面での工夫にも努めました。
 具体的には、歳入面においては、地方消費税の増や新たな地方法人課税の偏在是正措置に伴う地方交付税の増などにより、前年度を約86億円上回る一般財源総額を確保できました。加えて、河川の浚渫などを推進するために創設された地方交付税措置率の高い地方債をはじめ、有利な財源を最大限に活用することにより、一般財源の負担を軽減するとともに、必要な事業の早期の効果発現と将来の財政負担の軽減も図ることができたものと考えます。
 また、歳出面においては、国の経済対策や3カ年緊急対策への対応により事業量が大幅に増加していることから、その他の公共事業などについて、前年度に引き続き、緊急性の高い事業や効果の早期発現が見込まれる事業に重点化し、事業量の平準化に努めました。さらに、財政の健全性を維持しつつ、限られたマンパワーを最大限に活用するため、事業のスクラップアンドビルドに取り組み、前年度を上回る224件の見直しを行いました。
 こうした一連の取り組みにより、来年度の財源不足額は、平成23年度以来9年ぶりに100億円を下回る、91億円に圧縮することができました。その結果、退職手当債の発行をすることなく、財政調整的基金の取り崩しも前年度より25億円少ない61億円に抑制することができております。
 これにより、財政調整的基金の来年度末の残高見込みは135億円となり、昨年9月時点の推計を18億円上回る見通しであります。また、臨時財政対策債を除く県債残高については、来年度末の見込みが5,382億円となりますが、必要な投資事業を実施しても安定的に推移する見通しを立てることができております。
 このように、今回の予算編成においては、「県勢浮揚と県財政の持続可能性の両立」を図ることができたものと考えます。
 しかしながら、多額の財源不足が生じる厳しい状況がなお続いていることから、今後も国に対し、地方交付税をはじめとする一般財源の確保について政策提言を行い、安定的な財政運営に努めてまいります。

第2 5つの基本政策と3つの横断的な政策に基づく県づくり

 次に、5つの基本政策と3つの横断的な政策に係る令和2年度の取り組みに関し、まず、経済の活性化についてご説明申し上げます。

1 経済の活性化

(1)第4期産業振興計画の策定
 これまでの産業振興計画の取り組みを通じて、各産業分野の地産外商は飛躍的に拡大し、本県経済は今や人口減少下においても拡大する経済へと構造を転じつつあります。今後も人口減少が続くことが見込まれる中、県勢浮揚の歩みをより確かなものとするためには、これまでの土台の上に立ち、各種施策をさらに強化し、発展させ、着実に推進していくことが必要です。
 このため、来年度からの4年間を計画期間とする第4期の産業振興計画を策定し、さらなる挑戦を続けてまいります。具体的には、次の5つのポイントにより、多面的かつ重層的に施策を強化し、付加価値や労働生産性の高い産業を育成してまいります。
 まず、一つ目のポイントは、デジタル技術と地場産業の融合であります。最先端のデジタル技術などを生かした新たな製品やサービスの開発を促進することにより、地場産業の高度化とSociety5.0関連の産業群の創出を図ってまいります。
 特に、来年度は、複数の企業や大学などが有する技術やアイデアなどを組み合わせて新たな製品やサービスの開発につなげる「オープンイノベーションプラットフォーム」の構築を進めます。この取り組みを通じて、第一次産業をはじめとする様々な分野でデジタル技術を活用したイノベーションの創出や課題解決を促進してまいりたいと考えております。あわせて、県内企業におけるデジタル技術の導入をさらに促進するとともに、県としても行政サービスのデジタル化に積極的に取り組みます。
 二つ目のポイントは、県外、海外とのネットワークのさらなる強化であります。特に国内では、大阪・関西万博などの大規模プロジェクトが予定され経済活力に満ちている関西圏との連携を強化することによりまして、本県経済のさらなる活性化を図ってまいりたいと考えております。このため、来年度は、関西圏の行政関係者や本県とご縁のある経済界の方々などからなるアドバイザー会議を立ち上げ、ご意見をいただきながら、関西圏との経済連携に向けた戦略の策定に取り組みます。
 また、本年は東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催され、国際的に日本が注目を集める年であります。この機を捉え、輸出や外国人観光客誘致のさらなる拡大に取り組みます。
 三つ目のポイントは、担い手確保策と移住促進策の連携であります。全国的な人手不足の中、都会の高い雇用吸収力に対抗できるよう、関連施策の強化や連携を図り、人手不足の解消や後継者の確保に努めます。
 四つ目のポイントは、SDGsを意識した取り組みの促進であります。今後、SDGsを意識して事業活動を行うことにより、事業者にとって大きなビジネスチャンスが生じる可能性があります。このため、SDGsに関する講座の開催や、SDGsを意識した製品開発の促進などに取り組みます。
 五つ目のポイントは、産業振興計画関連の様々な施策について、中山間地域での展開を特に意識していくことであります。産業振興計画の取り組みを通じて魅力ある仕事を数多く創り出し、若者が希望と誇りを持って中山間地域に住み続けることができるようにしてまいりたいと考えております。

(2)各分野における地産外商の強化
 続いて、各産業分野における強化の内容についてご説明申し上げます。

ア 農業分野
 農業分野では、「地域で暮らし稼げる農業」の実現を目指した取り組みを進めてきた結果、平成30年の農業産出額等は、産業振興計画がスタートする前の平成20年と比べ、14.7パーセント増の1,177億円にまで増加してまいりました。第4期計画においては、令和5年に農業産出額等を1,221億円とすることを目標に掲げ、産地の強化と国内外への外商拡大によって農家の所得向上を図り、さらに生産を支える担い手の確保や育成につなげるという好循環の構築に向けて、一連の施策を力強く展開してまいります。
 具体的には、まず、産地の強化に向けて、環境制御技術の普及拡大を図るとともに、AIやIoTなどのデジタル技術を融合させた「Next次世代型こうち新施設園芸システム」の開発をさらに促進します。あわせて、集落営農組織や中山間農業複合経営拠点の組織間の連携を図るなど、中山間地域の農業を支える仕組みづくりも強化してまいります。
 加えて、こうした一連の取り組みを支える担い手の確保や規模拡大に向けたほ場整備を一層推進します。
 さらに、「外商」の拡大に向けて、市場流通や直接取引などにおける本県農畜産物の販売拡大を図るとともに、シンガポールやオランダなどへの輸出拡大にも積極的に取り組みます。

イ 林業分野
 林業分野では、市町村や事業者の方々と連携し、「山で若者が働く、全国有数の国産材産地」の形成に向けた取り組みを進めてきた結果、平成30年の原木生産量は、10年前より54.5パーセント増の64万6千立方メートルにまで増加しております。第4期計画においては、原木生産量を令和5年に79万立方メートルとすることを目指して、川上から川中、川下までの施策をさらに強化し、総合的に展開してまいります。
 まず、川上では、原木生産のさらなる拡大に向けて、路網の整備や高性能林業機械の導入を進めるとともに、林業事業体の事業戦略の策定と実行を支援するなど、林業における労働生産性の向上に取り組みます。
 また、川中では、全国レベルの木造建築の専門家と連携して、内装材など付加価値の高い製品開発に取り組むとともに、ICTなどのデジタル技術も活用しながら、サプライチェーンマネジメントの構築に取り組み、木材需要に応じた生産と流通の効率化を進めます。
 さらに、川下では、TOSAZAIセンターなどによる販路拡大に努めるとともに、全国的な木材需要の拡大に向けて、経済同友会などと連携し、CLTなどを活用した非住宅建築物の木造化、木質化を推進します。
 あわせて、林業大学校において、木造建築に精通した建築士や林業の即戦力となる人材の育成を強化します。

ウ 水産業分野
 水産業分野では、「若者が住んで稼げる元気な漁村」の実現を目指して取り組みを進めてきた結果、宝石サンゴを除く漁業生産額は、漁業就業者が減少する中においても、第3期計画で目標としていた460億円前後で推移しております。第4期計画においては、この額を令和5年に500億円にまで伸ばすことを目標に掲げ、生産性の向上や付加価値の創出を図ることで漁業生産額をしっかりと確保し、漁業者の所得向上につなげることによって担い手を安定的に確保するという好循環の構築を目指してまいります。
 具体的には、水産物の生産、流通、販売において、デジタル技術を活用する「高知マリンイノベーション」の取り組みを加速し、効率的な漁業生産体制への転換を図るとともに、定置網漁業などへの企業参入や新たな漁法の導入を促進します。
 特に、「高知マリンイノベーション」については、大学や国の研究機関などで構成する協議会を立ち上げ、AIなどのデジタル技術を活用して漁場の予測を行うシステムを開発するなど、新たなプロジェクトに取り組みます。
 あわせて、産地加工体制の整備をさらに進めるとともに、国内外における販路拡大に努めるほか、漁業就業者の確保に向けて、漁業就業支援センターによる総合的かつ、きめ細かな担い手確保策に取り組みます。

エ 食品分野
 食品分野では、官民協働で地産外商の取り組みを進めてきた結果、本県の食料品製造業出荷額等は、平成20年の909億円から、平成29年は19.8パーセント増の1,089億円と大きく伸びてきております。第4期計画においては、令和5年の食料品製造業出荷額等を1,200億円以上とすることを目指して、「地産」と「外商」の取り組みをさらに強化してまいります。
 まず、「地産」の強化に向けては、新たな付加価値の創出を目指して、食に関わる産学官の関係者が集う「食のプラットホーム」を中心に、海外を含めた市場のニーズに対応した商品づくりや生産管理の高度化、事業戦略の策定などを支援します。
 また、「外商」の拡大に向けては、地産外商公社による外商活動の全国展開をさらに推進し、特に経済活力が高まっている関西圏において大手卸売業者との関係強化を図るなど、積極的に取り組みます。あわせて、県内の地域商社による外商活動を一段と後押しし、官民協働で「外商」の拡大を図ります。
 輸出に関しては、昨年12月に県庁内に事務所を移転した日本貿易振興機構高知貿易情報センターとの連携を密にするとともに、事業者の海外展開を支援する食品海外ビジネスサポーターの体制を強化して、ヨーロッパやアメリカ、中国といった大規模市場へのさらなる輸出拡大を図るなど、輸出に取り組む事業者への支援を一段と強化します。

オ 商工業分野
 商工業分野に関しては、大企業の電子部品生産拠点の再編などの影響もあり、製造品出荷額等が一時期4,681億円にまで落ち込んだものの、「拡大再生産による雇用拡大と、地域の賑わいによる活気ある商工業」の実現を目指して取り組んできた結果、平成29年には5,810億円にまで回復しております。
 第4期計画においては、この製造品出荷額等を令和5年に6,500億円とすることを目指して、付加価値の高い製品開発や設備投資による生産性向上への支援など「地産」の強化に取り組み、「外商」の強化も図るほか、これらの土台となる事業戦略の策定と実行への支援や、工業団地の整備などを推進してまいります。あわせて、地域の商工業の振興を図るため、商工会や商工会議所などと連携して、商店街の活性化や事業者の経営計画の策定及び実行支援にも取り組みます。
 特に、「外商」の強化に向けては、ものづくり地産地消・外商センターを中心に、企業の販路拡大を一層支援するとともに、日本貿易振興機構や国際協力機構などと連携しながら、海外での営業やアフターフォロー体制の構築などに取り組みます。
 さらに、高知版Society5.0の実現に向けたIT・コンテンツ関連産業の集積を目指して、IT・コンテンツアカデミーの講座の充実強化を図り、人材の育成や確保をさらに進めるとともに、オープンイノベーションプラットフォームの取り組みなども通じて、関連企業の誘致を積極的に推進します。

カ 観光分野
 観光分野では、様々な博覧会やキャンペーンを通じて観光資源を磨き上げ、観光商品づくりとセールスに官民協働で取り組んでまいりました結果、長らく300万人台で推移してきた本県の県外観光客入込数は、平成25年以降、7年連続で400万人を超え、昨年は推計で438万人を記録いたしました。ここ3年、連続して435万人を超えており、第3期計画の目標である「435万人観光の定常化」を実現できつつあるものと捉えております。
 第4期計画においては、この県外観光客入込数を令和5年に460万人とすることを目標に掲げ、「リョーマの休日~自然&体験キャンペーン~」セカンドシーズンの取り組みなどを通じて、数多くの観光商品を「つくる」、その観光商品を県外に向けて「売る」、本県を訪れる観光客の皆さまに満足いただけるよう「もてなす」といった施策群を力強く展開してまいります。
 具体的には、まず、「つくる」取り組みにおいては、「外貨」を稼ぐための観光拠点の整備をさらに進めるとともに、本県の強みである歴史、食、自然などの観光資源を生かして、広域単位で滞在型観光クラスターの形成を推進します。
 次に、「売る」取り組みにおいては、セカンドシーズンのコンセプト「あなたの、新休日。」に沿ったプロモーションを展開し、県内の体験プログラムなどの情報を一元的に集約した特設WebサイトやSNSなどを活用して、効果的な情報発信を行います。あわせて、旅行会社へのセールス活動なども切れ目なく積極的に展開します。
 さらに、「もてなす」取り組みにおいては、バリアフリー観光に関する専門の相談窓口を新たに設置するとともに、県内各地での滞在や周遊を促進するため、観光案内所のコンシェルジュ機能などを強化します。
 また、国際観光に関しては、外国人の延べ宿泊者数を、平成30年の約7万9千人泊から、令和5年には30万人泊にまで大幅に伸ばすことを目指して、外国人観光客のさらなる誘致を図ります。具体的には、台湾や香港をはじめとする重点市場を中心に、訪日旅行に関心のある方々に向けて、動画の配信やWeb広告などを活用したプロモーションを積極的に展開するとともに、関西国際空港を経由した旅行商品づくりなどにも取り組みます。
 あわせて、東京オリンピック・パラリンピックを機に、国内外のよさこいチームが集結する「プレミアムよさこいin東京2020」を開催するとともに、高知のよさこい祭りに海外のチームが集って演舞する機会を設け、これらを海外メディアやSNSを通じて世界へ発信するなど、よさこい発祥の地としての本県の認知度向上を図り、今後の誘客につなげてまいります。

(3)県経済の成長を支える取り組みの強化

 次に、県経済の成長を支える取り組みの強化についてご説明申し上げます。
 各産業分野において地産外商をさらに拡大していくためには、深刻化している人手不足や後継者不足といった課題の克服とともに、経済発展の礎となる人材育成にも取り組む必要があります。このため、第4期計画においては、移住促進や新規大卒者の就職支援をはじめとする人材確保策、起業や新事業展開などに向けた人材育成、事業者の働き方改革や円滑な事業承継などの取り組みを一段と強化します。

ア 移住促進策の強化
 このうち、移住促進に関しては、これまで移住促進・人材確保センターを中心に、市町村や関係団体と連携して取り組みを進めてきた結果、昨年4月から先月末までの移住者数は、前年同期より約1割増の793組と、第3期計画の目標である年間移住者1,000組の達成が視野に入ってまいりました。
 しかしながら、本県人口の社会増減の均衡に向けては、移住者のさらなる増加が必要と考えております。このため、第4期計画においては、令和5年度に年間移住者1,300組を達成するとの目標を掲げ、市町村や関係団体との連携の下、移住促進策をもう一段強化してまいります。
 具体的には、まず、高知家プロモーションも活用し、本県出身者や本県とゆかりがある方、高知ファンの方々へのアプローチと情報発信などを強化することにより、本県への移住を検討される方々の裾野を広げます。
 また、移住促進・人材確保センターによる市町村への支援を拡充するとともに、相談者の状況に応じた段階的かつ戦略的なアプローチとフォローを展開するなど、相談から移住へとつなげるための取り組みを強化します。
 さらに、移住者を受け入れる態勢や環境を整備するため、各地域において、移住を希望される方のニーズに合った仕事と住まいを掘り起こし、より積極的に情報発信を行います。

イ 新規大卒者の就職支援等
 大学生などの県内就職の拡大に向けては、高知で働くことの魅力や県内企業についての理解を一層深めていただくため、学生やその保護者に対する情報発信を強化するとともに、インターンシップを実施する企業と学生のマッチングの場を新たに設けるなど、学生の就職につながりやすいとされるインターンシップの充実に取り組みます。
 また、就職氷河期世代への支援に向けては、来年度、高知労働局と県、業界団体、支援団体などで構成するプラットフォームが立ち上がる予定となっております。このプラットフォームを通じて、関係団体などと連携し、支援を必要とされる方々がそれぞれ将来に希望を持って働き続けられ、また、社会参加できるよう、しっかりと取り組みます。
 あわせて、来年度の県職員採用試験においても、新たに就職氷河期世代の方々を対象とした募集を行いたいと考えております。

2 日本一の健康長寿県づくり

 次に、日本一の健康長寿県づくりの取り組みについてご説明申し上げます。

(1)第4期日本一の健康長寿県構想の策定
 これまで、保健、医療、福祉の各分野において、本県が抱える様々な課題の解決に向けた対策を講じてきた結果、がん検診の受診率が向上するとともに、あったかふれあいセンターを中心とした地域の支え合いの仕組みづくりが進むなど、一定の成果が現れてきております。
 しかしながら、県民の皆さまの生活の質、いわゆるQOLをさらに高めていく上では、壮年期男性の死亡率が全国より高いことなど、依然として多くの課題があります。
 このため、これまでの取り組みを一層深化させ、さらに発展させることを基本としながら、数値目標をより明確化することに意を用いて、第4期日本一の健康長寿県構想を策定することといたしました。
 より骨太に、かつ挑戦的に対策を講じていくため、第4期構想では大きく3つの柱に再編し、「県民の誰もが住み慣れた地域で、健やかで心豊かに安心して暮らし続けることのできる高知県」の実現を目指してまいります。

(2)健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進
 まず、一つ目の柱は、「健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進」であります。県民の皆さまの健康寿命を全国平均以上にまで延伸することを目標に掲げ、男性の健康寿命を平成28年の71.37年から令和5年には73.02年以上に、また、女性は75.17年から76.05年以上にすることを目指してまいります。
 その実現に向けて、県民全体の健康増進を図るためのポピュレーションアプローチと、疾病のリスク要因を持つ層に対するハイリスクアプローチをそれぞれ強化します。
 このうち、ポピュレーションアプローチとしましては、生活習慣病の発症リスクを軽減するため、塩分の過剰摂取の抑制や運動不足の解消など、日常生活に少しの健康行動を取り込む「5つのプラス運動」の普及啓発活動を新たに展開します。さらに、加齢に伴い高齢者の方の心身が弱ってきている状態、いわゆる「フレイル」の予防に向けて、先進的な取り組みを県内全域に広げてまいります。
 また、ハイリスクアプローチとしましては、特に、糖尿病性腎症患者の重症化予防対策を強化します。具体的には、糖尿病性腎症を原因とする新規透析患者数を直近3年間の平均である122人から1割以上減らし、令和5年には108人以下にすることを目標に掲げ、患者の人工透析の導入を可能な限り遅らせる取り組みなどにも新たに挑戦したいと考えております。
 こうした生活習慣病対策や糖尿病重症化予防対策について、県内外の有識者にご参加いただく会議を新たに設置し、事業の成果を検証するなど、PDCAサイクルをしっかりと回しながら取り組みます。

(3)地域で支え合う医療・介護・福祉サービス提供体制の確立とネットワークの強化
 二つ目の柱は、「地域で支え合う医療・介護・福祉サービス提供体制の確立とネットワークの強化」であります。
 今後、人口減少や高齢化のさらなる進展に伴い、介護を必要とされる方が一層増加していくことが見込まれます。こうした中、在宅での療養を希望される方が、重度の要介護状態になったとしても、できる限り入院治療や施設での入所サービスに依存することなく、住み慣れた地域で在宅サービスを受けながら暮らし続けられる環境を整えることが重要であると考えます。
 このため、地域における医療、介護、福祉のインフラの確保や高知版地域包括ケアシステムの構築などの取り組みを重点的に進めるとともに、障害のある方への支援も充実を図ります。こうした取り組みが各地域に広がった結果として、在宅サービス利用者の平均要介護度が令和元年度の2.09から令和5年度に2.2となることを目指してまいります。
 あわせて、来年度は県内外の有識者からなる会議体を立ち上げ、在宅での看取りも含めた在宅療養に関する既存の施策について評価、検証を行い、さらなる改善につなげるとともに、在宅療養の後押しに向けた新たな施策についても提言をいただき、検討を進めたいと考えております。

(高知版地域包括ケアシステムの構築等)
 高知版地域包括ケアシステムの構築に向けては、これまで県の福祉保健所管内のブロックごとに地域の医療、介護、福祉の関係者からなる協議体の設置を進め、地域における課題の抽出や対応策の検討などを行ってまいりました。こうした取り組みを通じて、関係者間の連携が強化されるとともに、住民主体のフレイル予防や生活支援が進むなど、他の地域のモデルとなるような事例も出てまいりました。
 引き続き、医療、介護、福祉のサービスが切れ目のないネットワークでつながり、システムとしてしっかりと機能するよう、高知版地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みを進めます。中でも、在宅療養体制の充実に向けては、中山間地域を中心に訪問看護や訪問介護サービスの充実を図ることと併せて、医療と介護が連携し、入院から退院、在宅療養へスムーズに移行するための入退院支援体制の構築などを引き続き推進します。
 さらに、医療、介護、福祉のインフラを確保するため、各地域の実情に応じた効率的かつ質の高い医療提供体制の構築を目指す地域医療構想を推進するとともに、へき地医療や介護サービスの提供に対する支援を行います。

(ひきこもりの方々への支援)
 ひきこもりの方々への支援については、現在、保健や医療などの関係者や家族会の方々にご協力をいただきながら、総合的な支援策の検討を進めており、本年秋を目途に取りまとめを行いたいと考えております。
 また、これを待つことなく、対応が急がれるひきこもりの方々の実態把握や相談支援体制の整備を進めるとともに、社会参加を促進するための居場所づくりや就労支援の充実などにも速やかに取り組みます。

(4)子どもたちを守り育てる環境づくり
 三つ目の柱は、「子どもたちを守り育てる環境づくり」であります。妊娠期から子育て期まで切れ目なく、総合的な支援を行う高知版ネウボラの取り組みをさらに推進します。これにより、県民意識調査において「高知県が安心して結婚、妊娠・出産、子育てできるような社会になっている」と感じる割合を、令和元年度の28.1パーセントから令和5年度には45パーセントにまで高めることを目指してまいります。
 具体的には、県内各市町村の子育て世代包括支援センターにおける妊娠早期からの支援の拡充、地域子育て支援センターの機能強化、民生委員・児童委員やボランティアなど地域の方々との連携による子育て支援体制の構築、病児・病後児保育の充実など、それぞれの市町村の実情に合った取り組みをさらに支援します。
 加えて、来年度は、発達障害の疑いなどで経過観察が必要な子どもに対し、言語聴覚士や臨床心理士などの専門職も関与してアセスメントを強化するなど、早期の療育につなげる体制の整備にも取り組みます。
 また、市町村における子ども家庭総合支援拠点の設置を促進するとともに、児童福祉司などの専門職を増員して児童相談所の体制を充実させるなど、関係機関が連携して児童虐待を未然に防ぐ取り組みをさらに強化します。

(5)新型コロナウイルス感染症対策
 新型コロナウイルス感染症につきましては、現在、国内において感染が拡大し、さらに感染経路を特定できない可能性のある症例が複数認められる状況にあります。
 本県では、今月4日から県と高知市が合同で「新型コロナウイルス相談センター」を設置し、県民の皆さまの相談に対応するとともに、必要に応じて適切な医療機関へ確実につなぐ体制を整えております。あわせて、県の衛生環境研究所におけるウイルスの検査体制の強化を進めております。
 また、13日には、私を本部長とする「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置し、感染予防に向けた対策をしっかりと講じるよう全部局に指示をいたしました。
 これまでに県内で、この感染症の患者は確認されておりませんが、引き続き県民の皆さまの安心、安全を第一に考え、国や医療機関との緊密な連携の下、不安の解消や感染予防に向けた対策を適切に実施してまいります。あわせて、手洗いの励行や咳エチケットといった基本的な感染症予防の活動に取り組んでいただくよう県民の皆さまへの啓発に努めてまいります。
 また、仮に今後、本県で新型コロナウイルス感染症の患者が確認された場合には、国の示した手順に沿って、必要な対策を迅速かつ的確に講じてまいります。

3 教育の充実

 次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。
 平成28年に策定した「教育等の振興に関する施策の大綱」に基づく取り組みにより、子どもたちの学力などの状況は確実に改善が進んでおります。
 来年度からの4年間を期間とする第2期教育大綱においては、これからの社会を生きる子どもたちがどのような力を身に付けるべきか、子どもたちの目線に立って考えるとともに、現場の声も大切にし、また困難を抱える子どもには切れ目のない支援を行うことに意を用いながら、知、徳、体の調和がとれた子どもたちの「生きる力」を育むことを目指して、各種施策のさらなる強化を図ってまいります。

(1)チーム学校の推進
 具体的には、まず、学校が組織として課題に向き合い、自律的に教育の質を高めていくことができるよう、「チーム学校」の構築を一層推進し、中学校における教科のタテ持ちや教科間連携などの取り組みをさらに充実させます。あわせて、OJTによる若年教員の育成に向けて、小学校に導入しているメンター制を中学校にも広げるなど、学校全体がチームとなった組織的な人材育成を進めます。

(2)学力向上対策の強化
 次に、学力向上対策としては、教員が学ぶことのできる機会を充実させることにより、授業力を一段と高めたいと考えております。
 また、高等学校においては、「高校生のための学びの基礎診断」を活用して基礎学力の定着度合を測り、各学校の学力向上プランに基づく取り組みを充実させます。あわせて、学校支援チームによる各学校への訪問指導を継続し、PDCAサイクルを徹底しながら、学校の組織マネジメントのさらなる強化や授業改善を進めます。

(3)不登校など厳しい環境にある子どもへの支援や子どもの多様性に応じた教育の充実
 さらに、いじめや不登校、非行などといった困難な状況に直面している子どもたちをしっかりと支えるため、就学前から高等学校までの各段階における切れ目のない支援を充実させてまいります。
 特に近年、増加傾向にある不登校に関しては、一人ひとりの状況に応じた支援を強化することにより、不登校となっている児童生徒の割合を全国平均にまで改善することを目指します。
 具体的には、不登校の未然防止と早期発見、早期対応を徹底するため、小中学校に新たに位置付ける不登校担当の教員を中心として速やかな情報共有を図るとともに、教員や外部の専門家などからなる「校内支援会」の取り組みを一層充実させるなど、組織的な対応を強化します。
 また、不登校の要因や背景は複雑化、多様化しており、学校だけでは対応が困難な状況も見られますことから、社会的自立に向けた適切な支援を漏れなく行えるよう、市町村における教育支援センターの機能強化を後押しします。あわせて、学校、市町村の教育支援センター、県の心の教育センターの連携を強化するとともに、医療や福祉分野の関係機関の協力も得て、重層的な支援体制の構築を進めます。
 さらに、心の教育センターにおいては、不登校をはじめとする多様な相談に幅広く対応できるよう、日曜日も開所するとともに、県東部や西部地域のサテライト機能を整備します。あわせて、学校や市町村の教育支援センターが行う相談支援の質的向上を図るほか、多様な教育的ニーズに対応した特別支援教育の充実にも取り組みます。

(4)デジタル社会に向けた教育の推進
 また、Society5.0の到来を見据え、デジタル技術が進展する社会に対応した新たな教育を推進したいと考えております。
 まずは来年度から、中山間地域の小規模な高等学校10校において、遠隔教育システムを活用した授業をスタートさせます。さらに、ICTやAI教材などの活用により、生徒一人ひとりの学習状況に応じた授業についての研究を進めてまいります。
 あわせて、小学校におけるプログラミング教育を推進するため、全ての情報教育担当教員を対象とした模擬授業の研修などを行うほか、高等学校において県内大学と連携し、高度な教育プログラムの研究を進めてまいります。
 こうした取り組みを支える環境を整備するため、県立学校において、高速大容量通信に対応できる校内無線LANの整備や、生徒の学習用タブレットの導入を促進します。

(5)学校における働き方改革の推進
 教員が限られた時間の中で子どもたちと向き合い、効果的な教育活動を行っていくためには、学校における働き方改革を進めていくことも重要であります。このため、引き続き、校務支援システムの導入などによる業務の効率化を図るとともに、部活動指導員や校務支援員などの外部人材の配置を拡充するなど、教職員の負担軽減に向けた取り組みを進めます。

 以上のような取り組みに加え、「地域との連携・協働」、「就学前教育の充実」、「生涯学び続ける環境づくりと安全・安心な教育基盤の確保」に関する施策を拡充し、私も参加する総合教育会議において、PDCAサイクルをしっかりと回しながら、第2期教育大綱を着実に推進します。

4 南海トラフ地震対策の抜本強化・加速化

 次に、南海トラフ地震対策の抜本強化、加速化についてご説明申し上げます。
 第4期南海トラフ地震対策行動計画の2年目となります来年度においては、津波避難対策や、高齢者や障害のある方など要配慮者への支援対策をはじめとする諸課題への対応を着実に進めるとともに、受援態勢の強化などソフト対策にも一段と力を入れて取り組みます。

(1)津波避難対策
 先月、政府の地震調査委員会が公表した「南海トラフ沿いで発生する大地震の確率論的津波評価」では、津波高が5メートル以上になる可能性が非常に高いと評価された市町村数の約半数を本県が占めており、本県の置かれた厳しい状況を再認識いたしました。
 津波避難対策に関しては、これまでの取り組みにより、111基の津波避難タワーと1,445カ所の避難路、避難場所の整備が完成するなど、計画していた津波避難空間の整備が概ね完了しております。しかしながら、実際に避難訓練を行う中、地域によっては要配慮者の避難に想定以上に時間を要するなど、新たな課題が明らかになってまいりました。
 このため、改めて津波避難空間の整備を行う市町村を支援したいと考えております。あわせて、高等学校や福祉施設などの高台移転も着実に進めます。

(2)要配慮者支援対策
 次に、要配慮者の支援対策につきましては、災害時に自力で避難することが困難な方が迅速に避難できるよう、個別計画の策定を加速してまいります。
 具体的には、モデル地区での取り組みによって得られたノウハウを活用し、来年度は沿岸19市町村全てでケアマネジャーなど福祉の専門職の方々のご協力をいただきながら、県と市町村の防災部局、福祉部局が連携して個別計画の策定に取り組みます。
 また、福祉避難所の確保だけでなく、一般の避難所における受け入れ態勢の強化を進め、要配慮者が安心して避難生活を送ることができる環境を整備します。

(3)受援態勢の強化
 さらに、発災時に外部からの様々な支援を受け入れるための受援態勢の強化にも重点的に取り組んでまいります。
 私自身、消防庁や大阪府で東日本大震災や大阪北部地震の災害対応を行った際、受援態勢が整っていないことにより、国や他県などからの人的・物的支援がスムーズに行き渡らない事例を目の当たりにしました。
 本県では現在、消防や警察、自衛隊などの応急救助機関の受け入れや活動調整、物資受け入れのための計画などを定めており、これらについて、より実践的な訓練などを通じて検証や見直しを行い、実効性をさらに高めてまいります。加えて、現在、医療支援チームの受け入れや応急給水活動などについてマニュアルの策定に取り組んでおり、早期の完成を目指します。
 また、現在のところ、こうした計画などを定めている市町村は少なく、県として、市町村の受援態勢の整備に向けた支援を強化していく必要があると考えております。
 このため、県や市町村における受援態勢の強化を行動計画の重点課題として新たに位置付け、国や市町村、関係機関と連携しながら、スピード感を持って取り組みを進めます。

5 インフラの充実と有効活用

 次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。
 道路や堤防、港湾などのインフラは、南海トラフ地震などの自然災害から県民の生命や財産を守るとともに、地域の皆さまの生活や産業を支える大変重要な基盤であります。
 このため、「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」や国の補正予算なども積極的に活用しながら、「命の道」である四国8の字ネットワークや浦戸湾の三重防護事業をはじめ、地震や津波対策などに向けたインフラ整備をスピードを緩めることなく推進します。
 あわせて、台風災害、豪雨災害などに備えるため、豪雨災害対策推進本部を通じ、全庁を挙げてハード、ソフトの両面で対策を推進します。特に、治水対策に関しては、国が新たに創設した緊急浚渫推進事業費を最大限活用し、前年度の3.8倍となる予算を確保して河川の浚渫を加速させるなど、積極的に取り組みます。
 さらに、中山間地域の道路整備など、地域の実情を踏まえたインフラ整備も着実に進めます。

6 中山間対策の充実・強化

 次に、中山間対策の充実、強化についてご説明申し上げます。
 来年度においても、若者が住み続けられる中山間地域の実現なくして高知県の発展はないとの強い思いの下、「産業をつくる」、「生活を守る」の2つを政策の柱として、全庁を挙げて各分野の施策を展開してまいります。
 まず、「産業をつくる」では、先ほど申しましたとおり、中山間地域において付加価値や労働生産性を高める取り組みを進めます。
 次に、「生活を守る」では、中山間地域で安心して暮らし続けられる環境を整えるため、生活用水や移動手段の確保対策を進めるとともに、高知版地域包括ケアシステムの構築などに注力します。あわせて、中山間地域の子どもたちの教育環境の充実を図るため、小規模な高等学校へのデジタル技術を活用した授業の配信を行います。
 また、中山間地域における暮らしや経済活動を支える拠点である集落活動センターについては、先月末までに31市町村58カ所で立ち上がり、さらに30カ所程度で開設に向けた協議が進むなど、着実に広がりを見せております。引き続き、それぞれの集落活動センターにおいて、「生活を守る」取り組みや、産業振興計画とも連動した「産業をつくる」取り組みがさらに拡充していくよう、積極的に後押しをしてまいります。

7 少子化対策の充実・強化と女性の活躍の場の拡大

 次に、少子化対策の充実、強化と女性の活躍の場の拡大についてご説明申し上げます。
 まず、少子化対策の充実、強化については、出会いや結婚への支援を希望する方々に多くの出会いの機会を創出するため、マッチングシステムの利便性向上などに取り組むとともに、高知版ネウボラを推進することにより、安心して妊娠・出産、子育てができる環境づくりを進めます。
 あわせて、男性の育児休業取得や時間単位の年次有給休暇制度の導入について先進事例の横展開を図るなど、働きながら子育てしやすい環境づくりに向けて、引き続き官民協働で取り組みます。
 特に、男性の育児休業については、県内企業などの取得率を平成30年の7.6パーセントから令和6年までに30パーセントとすることを目指して、取り組みを充実させます。県庁としましても、率先垂範を心がけ、知事部局などの男性職員の育児休業取得率について早期に30パーセントを達成するとともに、令和6年度末までに50パーセントとする目標を掲げ、積極的に取り組んでまいります。
 また、女性の活躍の場の拡大に向けては、引き続き、市町村と連携しながらファミリー・サポート・センターの拡充に努めるとともに、高知家の女性しごと応援室の取り組みを通じて女性の就労や定着支援に取り組むなど、子育てしながら働く女性を社会全体で支援する仕組みづくりを推進します。

8 文化芸術とスポーツの振興

 次に、文化芸術とスポーツの振興についてご説明申し上げます。
 文化芸術の振興については、「文化芸術の力で心豊かに暮らせる高知県」の実現に向け、高知県文化芸術振興ビジョンに基づき、文化芸術活動への支援や、その振興を担う人材の育成などに取り組むほか、新たな県史の編さんなどを通じて本県固有の文化資源の継承や活用を進めます。
 スポーツの振興に関しては、第2期高知県スポーツ推進計画を改定し、地域スポーツハブの活動を拡充するとともに、障害者スポーツの振興に向けて体験イベントを開催するなど、県民の皆さまの「スポーツ参加の拡大」に取り組みます。あわせて、全高知チームの取り組みをさらに充実強化するとともに、ジュニア期に関わるスポーツ指導者の確保及び育成を進め、「競技力の向上」を図ります。
 また、本年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されますことから、事前合宿やホストタウン登録国との継続的な交流などを通じて、スポーツの振興や地域の活性化につなげたいと考えております。

9 第2期高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略の策定

 次に、第2期高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略の策定についてご説明申し上げます。
 平成27年度にスタートした高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略の計画期間が、本年度末を持って期限を迎えることとなります。
 これまでの取り組みにより、雇用の創出や出生率の向上などにおいて一定の成果が見られるものの、人口動態の改善効果が発現するためには、継続した取り組みが必要であると考えます。
 このため、これまで申し上げてきました政策を総合的に組み合わせて、第2期高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略として策定することといたしました。
 この総合戦略では、2060年の本県の人口を約55万7千人にとどめるという現行の目標を維持したいと考えており、引き続き、この実現に向けまして、さらなる若者の定着、増加と出生率の向上を図るための4つの基本目標、すなわち「地産外商により魅力のある仕事をつくる」、「新しい人の流れをつくる」、「結婚、妊娠・出産、子育ての希望をかなえる、女性の活躍の場を拡大する」、「高齢者の暮らしを守り、若者が住み続けられる中山間地域をつくる」に基づき全力で取り組んでまいります。

第3 その他

1 犯罪被害者等支援条例の制定

 続いて、高知県犯罪被害者等支援条例の制定についてご説明申し上げます。
 本県においては、犯罪被害者等基本法などに基づき、関係機関と連携しながら犯罪被害者とそのご家族への支援に取り組んでおります。しかしながら、全国的な状況として、犯罪に巻き込まれた方々が直接的な被害にとどまらず、周囲の無理解により、さらに二次被害で苦しめられるなどといった事例が発生しており、本県においても支援策の一層の充実が必要であると考えております。
 こうしたことから、県、市町村、民間支援団体などの関係機関が一層の連携を図り、必要な支援を被害直後から途切れることなく行うことができる体制の構築などを目指してまいりたいと考え、今議会に犯罪被害者等支援条例議案を提出させていただきました。
 この条例では、犯罪被害者の方などへの支援を総合的かつ計画的に進めるため、県の責務をはじめ、県民、事業者、市町村などの役割を明示するとともに、相談窓口の設置や経済的負担の軽減といった県が講ずべき支援に関する基本的施策などを定めることとしております。4月からは県の担当部署に専任の職員を配置し、犯罪被害者の方などからの相談に対応するとともに、市町村や関係機関との調整などを行います。
 加えて、今後、条例に基づき高知県犯罪被害者等支援推進会議の意見もお聞きしながら、支援に関する指針を策定することとしており、新たな施策についても検討を行い、支援策を充実してまいりたいと考えております。
 こうした取り組みを通じて、犯罪被害者の方などが受けた被害の早期の回復、軽減などを図り、誰もが安心して暮らすことができる社会を目指します。

2 高知龍馬空港新ターミナルビルの整備

 次に、高知龍馬空港新ターミナルビルの整備についてご説明申し上げます。
 我が国を訪れる外国人旅行者は年々増加傾向にあり、こうした旅行者のほとんどが空路を利用している状況にある中、本県においてもさらなる誘客拡大を図っていくためには、国際チャーター便の増便に加え、国際定期便の誘致に取り組むことが重要であると考えます。
 これまでの間、空港施設の機能強化に向け、県や国、航空会社などの関係者からなる「高知龍馬空港・航空ネットワーク成長戦略検討会議」において協議を重ねてまいりました。先日開催された同会議では、国際線の増便に対応するために必要となるボーディングブリッジや出入国審査スペースなどの機能を備えた、新ターミナルビルの整備に関する基本構想が確認されました。
 この構想に基づき、高知龍馬空港において国際線ターミナルビルを整備したいと考えており、来年度は、基本設計と実施設計に着手し、令和4年度の早期の供用開始を目指したいと考えております。
 本県の新たな空の玄関口の整備に向け、引き続き、国際チャーター便の増便はもとより、早期の定期便の就航につながるよう全力で取り組みます。

3 新たな管理型産業廃棄物最終処分場の整備

 新たな管理型産業廃棄物最終処分場については、現在、施設整備に向けた各種の調査や、長竹川の増水対策などの周辺安全対策の取り組みを進めております。こうした取り組みの過程においては、節目節目でその状況を住民の方々へ丁寧にご説明させていただくこととしており、先月中旬にも加茂地区の皆さまへの説明会を開催いたしました。
 来年度は、施設本体の実施設計に取り組むとともに、上水道整備への支援をはじめとする周辺安全対策をさらに進めます。あわせて、地域振興策についても、佐川町と協議を重ね、最終案の取りまとめを行いたいと考えております。
 引き続き、管理型産業廃棄物最終処分場の整備に向け、佐川町、佐川町議会、加茂地区の皆さまのご理解とご協力を賜りながら、着実かつ丁寧に取り組みを進めてまいります。

4 県政運営指針の改定

 次に、県政運営指針の改定についてご説明申し上げます。
 県政運営指針は、課題解決先進県を目指し、高知県庁が県民の皆さまのために成果を求めて挑戦し続ける県庁であるために従うべき原理原則として、平成27年に策定したものであります。策定から約5年が経過した現在も、本県を取り巻く環境は依然として厳しく、南海トラフ地震対策や中山間対策など喫緊の課題も山積しております。さらに、デジタル化や働き方改革の進展といった社会状況の変化に対応していく必要があります。
 このため、県職員の意識向上や職場環境づくりなどについて、これまでの取り組みを推進しつつ、もう一段発展させることができるよう県政運営指針の改定を検討しております。県民の皆さまの共感を得て、成果にこだわって前進していく県庁となるよう、この指針を職員が常に意識し実践していくための方策や検証方法についても、検討を進めます。

第4 議案

 続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
 まず予算案は、令和2年度高知県一般会計予算など39件です。
 このうち一般会計予算は、先ほど申し上げました5つの基本政策と3つの横断的な政策を推進するための経費を中心に、4,632億円余りの歳入歳出予算などを計上しております。
 条例議案は、高知県犯罪被害者等支援条例議案など26件です。
 その他の議案は、高知県が当事者である仲裁の申立てに関する議案など8件です。
 以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
 何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。

 

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