公開日 2021年02月22日
更新日 2021年02月22日
(4)地方への新しいひとの流れを呼び込むための取り組みの強化など
(3)厳しい環境にある子どもへの支援や多様性に応じた教育の充実
本日、議員の皆さまのご出席をいただき、令和3年2月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ち、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆さま並びに県民の皆さまのご理解とご協力をお願いしたいと考えております。
昨春からの1年は、新型コロナウイルス感染症という誰もが今までに経験したことのない難題に全力を傾けて対応した、いわば「守り」の1年でありました。こうした中においてもピンチをチャンスに変えるべく、局面の変化を見据えて、各施策のさらなる発展に向けた準備を進めてきたところです。
来る令和3年度は、感染症対策に万全を期しつつも、これまで準備を進めてきた各施策を実行に移す年、いわば「攻め」に転じて具体的な成果につなげる1年にしたいと考えております。ウィズコロナ、アフターコロナの時代においてキーワードとなる「デジタル化」などの潮流を捉えて、新たな取り組みにも果敢に挑戦し、経済の活性化をはじめとする5つの基本政策と3つの横断的な政策をさらに進化させてまいります。
新たな時代の1つ目のキーワードは、「デジタル化」であります。非対面、非接触の活動の広がりといった社会構造の変化に対応し、県民生活の利便性や経済活動における生産性を飛躍的に向上させるためには、AIやIoTといったデジタル技術の活用が必要不可欠です。このため、各産業分野におけるデジタル技術の導入を加速させるとともに、医療福祉分野、教育分野、行政分野などにおいても積極的にデジタル化を進めてまいります。
2つ目のキーワードは、「グリーン化」であります。リモートワークの普及などを背景に、都会では「密」を避け、自然豊かな地方での生活を志向する新たな人の流れが生まれつつあります。また、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする、いわゆるカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言し、経済と環境の好循環を目指した取り組みを進めようとしています。こうした人々の価値観や働き方、暮らし方の変化に速やかに対応するとともに、脱炭素に向けた国の政策展開などを追い風とし、県勢の発展につなげたいと考えております。
都市部からの移住促進策を一層強化するとともに、豊富な森林資源を生かした吸収源対策と持続可能な産業振興、自然を生かした体験型観光などを推進してまいります。
3つ目のキーワードは、「グローバル化」であります。我が国全体の将来的な人口減少が避けられない中、県経済の中長期的な発展のためには、外国人観光客の誘致や海外市場の開拓など、海外に目を向けた施策についても、今からしっかりと備えておく必要があります。コロナ収束後の国際的な経済活動再開も見据え、インバウンド観光や県産品の輸出拡大、外国人材受け入れなどの取り組みを着実に進めてまいります。
また、県政運営の基本姿勢であります、「共感と前進」の実現に向け、県民の皆さまとの対話を行う県民座談会「濵田が参りました」については、来月末までに全市町村にお伺いをさせていただく予定としております。来年度からはこれまでの座談会に加え、様々な取り組みの現場を直接訪問させていただき、地域地域の実情をより具体的に把握したいと考えているところです。
引き続き官民協働、市町村政との連携協調の下、「いきいきと仕事ができる高知」、「いきいきと生活ができる高知」、「安全、安心な高知」の実現に向けて、県民の皆さまと共に全力で取り組んでまいります。
新型コロナウイルス感染症については、昨年12月に感染が急拡大し、医療提供体制が逼迫した状況となりましたことから、県内全域の飲食店に対して営業時間の短縮要請を行うなど、集中的に対策を講じてまいりました。多くの県民の皆さま、事業者の皆さまに一丸となって感染拡大防止に取り組んでいただいた結果、年明け以降、次第に感染者数が減少し、現在は比較的落ち着いた状況にあるものと捉えております。
一方、全国では、依然として10都府県で緊急事態宣言が発令されております。本県においても断続的に新たな感染者が確認されており、まだまだ気を緩めることはできません。再度の感染拡大に備え、マスクや防護服の備蓄を進めるほか、入院患者を受け入れるための病床数を増やすなど、引き続き医療提供体制の拡充に取り組みます。
また、感染収束に向けた目下の最重要課題でありますワクチン接種については、医療従事者は来月中旬、高齢者は4月以降に接種を開始することを想定して、市町村や医師会などとの調整を急ぎ進めているところです。
県においては今月8日、健康政策部内に「ワクチン接種推進室」を設け、専任の担当者を配置するなど体制を強化したところであり、円滑にワクチン接種が開始されるよう、国や関係者と緊密に連携しながら、全庁を挙げて取り組んでまいります。
(経済影響対策)
また、県経済に目を向けますと、飲食店の営業時間短縮やGo To事業の停止などの影響で多くの事業者が大変厳しい状況に置かれています。
このため、先月29日には、飲食店の取引先のほか、外出自粛などの影響を受けた幅広い事業者を支援するため、県独自の給付金を支給することとし、必要な補正予算について専決処分をさせていただいたところです。
加えて、従業員規模に応じた新たな支援策を実施するための補正予算についても、今議会に提案しております。
また、県内の消費拡大、需要喚起を図るため、地元での買い物や飲食、県内観光を促進する「コロナに負けるな! 高知家応援プロジェクト」を今月から実施し、順次取り組みを拡大することとしております。
今後とも、県民の皆さまの健康と生活を守ることを第一に考え、かつ県経済へのダメージを最小限に食い止めることができるよう、必要な対策を迅速に講じてまいります。
次に、令和3年度当初予算案及び令和2年度2月補正予算案についてご説明申し上げます。
今回の予算編成にあたっては、新型コロナウイルス感染症への対応を着実に進めるとともに、あらゆる分野においてデジタル技術の活用を促進するなど、5つの基本政策と3つの横断的な政策に関する取り組みを一層強化すべく、工夫を重ねてまいりました。加えて、新型コロナウイルスの影響を受けた県経済を下支えするため、国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」をはじめとする有利な財源を最大限に活用し、地域の実情を踏まえたインフラ整備などを加速することといたしました。
この結果、一般会計当初予算案は前年度を上回る総額4,635億円となっております。また、2月補正予算案に計上した国の経済対策を含む実質的な当初予算ベースでは、対前年度比205億円、4.3パーセント増の総額4,959億円となり、中でも投資的経費は、国の公共事業関係費の伸び率を大きく上回る5.4パーセント増の1,216億円を確保しております。
このように、県勢浮揚に必要な施策を着実に実行する一方、今後の財政運営の持続可能性を確保するため、歳入歳出両面で努力を行いました。
まず、歳入面では、新型コロナウイルスの影響で県税収入が減少するものの、地方交付税の増などにより、前年度を上回る一般財源総額を確保したところです。加えて、地方交付税措置率の高い地方債をはじめ、有利な財源を最大限に活用することにより、一般財源の負担軽減を図っております。
また、歳出面においては、引き続き新型コロナウイルス感染症に臨機応変に対応しつつも、県勢浮揚に向けた新たな施策を着実に実行するため、事業のスクラップアンドビルドを徹底し、マンパワーと財源の確保に努めました。
こうした一連の取り組みの結果、来年度末時点において129億円の財政調整的基金を確保できる見込みとなっております。
また、臨時財政対策債を除く県債残高については、国の5か年加速化対策を活用したインフラ整備などにより一時的に増加するものの、令和6年度をピークに逓減する見込みであり、今後必要な投資事業を実施しても安定的に推移する見通しが得られたところです。
このように、今般の予算編成においては、「県勢浮揚と県財政の持続可能性の両立」を図ることができたものと考えております。
しかしながら、感染症の影響もあり、当面は予断を許さない財政状況が続くと予想されます。このため、今後も国に対し、地方交付税などの一般財源の確保について積極的に政策提言を行うとともに、歳入歳出両面から見直しを行い、安定的な財政運営に努めてまいります。
次に、県庁の組織改正についてご説明申し上げます。
令和3年度を迎えるに際し、施策の実行力を一段と高め、具体的な成果に結び付けていくため、部及び課室の組織改正を行いたいと考え、今議会において4年ぶりに部設置条例の改正案を提出いたしました。
まず、日本一の健康長寿県づくりに関しては、妊娠期から子育て期までの関連施策を切れ目なく一体的に進めるため、子育て支援や母子保健、女性の活躍推進などの所管を地域福祉部に一元化し、同部の名称を「子ども・福祉政策部」に変更することとしております。
また、中山間地域における担い手の確保をより力強く推進するため、移住関連施策を産業振興推進部から中山間振興・交通部に移管いたします。
このほか、デジタル化の推進や在宅療養体制の充実などに向けた組織の改編を行ってまいりたいと考えております。
次に、新年度における5つの基本政策と3つの横断的な政策の取り組みについてご説明申し上げます。まず初めに、経済の活性化についてであります。
(第4期産業振興計画のバージョンアップ)
本県経済は、新型コロナウイルスの影響で観光分野をはじめとする幅広い業種が大きな打撃を受けており、経済活動の本格的な回復にはなお時間を要するものと考えられます。こうした影響を最小限に食い止め、県経済を再び成長軌道に乗せていくためには、コロナ禍を契機とした社会構造の変化に的確に対応するとともに、さらに一歩先を見据えて施策を強化することが重要であります。
来年度に向けた第4期産業振興計画のバージョンアップにあたっては、「付加価値や労働生産性の高い産業を育む」と「ウィズコロナ・アフターコロナ時代への対応」という2つの大きな方向性の下、「関西圏との経済連携の強化」や「各産業分野におけるデジタル化の加速」など6つの重点ポイントを中心に、一連の施策をさらに強化してまいります。
まず、1つ目のポイントである「関西圏との経済連携の強化」につきましては、アドバイザー会議での議論を踏まえ、「関西・高知経済連携強化戦略」の原案をとりまとめたところです。この新たな戦略は、大阪・関西万博も見据えた上で、第4期産業振興計画に合わせ令和5年度までの3年間の取り組みをまとめたものとなっており、「観光推進」、「食品等の外商拡大」、「万博・IRとの連携」の3つのプロジェクトで構成しております。
このうち、まず「観光推進」については、令和5年に関西圏からの観光客入込数を121万人以上、関西空港経由の外国人延べ宿泊者数を3万4千人泊にする目標を掲げ、公益財団法人大阪観光局とも連携し、関西圏をはじめ全国からの誘客に向けた取り組みを進めることとしております。
具体的には、自然体験型観光の基盤を活用したワーケーションやグリーンツーリズムなどを推進するとともに、大阪の都市型観光と高知の自然体験型観光を組み合わせた新たな観光ルートの創出に取り組みます。加えて、今後のインバウンド需要の回復を見据えた外国人観光客の誘致などの取り組みを積極的に進めてまいります。
「食品等の外商拡大」については、地産外商公社の支援による関西圏での成約金額を令和5年度までに65パーセント増の20億3千万円とするなど、産業分野ごとの目標を掲げ、これまでに培ってきた関西圏の卸売市場関係者などとの連携を一層強化し、外商活動を拡大することとしております。
具体的には、大阪市中心部で再開発が進められている大規模商業施設をターゲットとした販路開拓に取り組むと同時に、外商エリアをこれまでの大阪府中心から兵庫県や京都府まで拡大し、地域に密着した量販店においても高知フェアを開催するなど、活動を一段と強化します。
さらに、「万博・IRとの連携」については、大阪・関西万博などの大規模プロジェクトを契機に、関西圏を訪れる国内外の観光客を本県へ誘致するとともに、万博関連施設の建設にあたっての県産木材の活用や、同施設における県産食材の利用に向けた取り組みを展開したいと考えております。
あわせて、これらの取り組みをスピード感を持って実行していくため、県大阪事務所の体制を強化するとともに、地産外商公社や産業振興センター、TOSAZAIセンターの関西圏における外商支援体制を拡充します。
今後、来月末までに戦略を策定し、関西圏との経済連携を強化する取り組みを本格的にスタートさせます。
産業振興計画のバージョンアップの2つ目のポイントは、「各産業分野におけるデジタル化の加速」であります。ウィズコロナ、アフターコロナにおける社会構造の変化も見据え、各産業分野のデジタル化の取り組みをスピード感を持って展開します。
ア 第一次産業分野
まず、農業分野では、「Next次世代型こうち新施設園芸システム」の開発をさらに進めます。具体的には、インターネット上の共有基盤「IoPクラウド」に集積される各ハウス内の環境データや出荷データを分析し、その結果をフィードバックして収量や売り上げの増加につなげるなど、データを活用した営農支援体制の構築に取り組みます。あわせて、県内外の機器メーカーなどと連携し、さらなる生産性向上につながるシステムの開発に取り組んでまいります。
また、林業分野では、情報通信技術などを活用して効率化や省力化を図る「スマート林業」を推進します。具体的には、航空レーザー測量による地形や森林資源の情報をデータ化し、効率的な伐採計画の策定につなげるほか、資材の運搬を行う大型ドローンなど先進機器の導入を支援し、林業事業体の生産性向上を図ってまいります。
水産業分野では、生産、流通、販売の各段階においてデジタル化を図る「高知マリンイノベーション」の取り組みをさらに加速させます。来年度は、海洋観測の結果や赤潮プランクトンの発生状況に加え、漁場の位置や赤潮発生の予測などに関する情報を漁業者に発信するシステムを構築します。また、産地市場において、魚の計量結果など様々な電子データを関係者間で共有する自動計量システムの導入を推進するとともに、電子入札についても導入を進め、作業の省力化と情報伝達の迅速化を図ってまいります。
こうしたデジタル化の取り組みを着実に進めることにより、本県の第一次産業の生産流通体制を効率化し、生産者や事業者の所得向上を図るとともに、担い手の確保につなげたいと考えております。
イ 商工業分野
商工業分野においても、生産性の向上や付加価値の高いサービスの創出を実現するためには、デジタル技術を活用していくことが重要であります。例えば、製造業においては、IoT技術を介して生産工程の情報を社内の管理部門や営業部門ともリアルタイムで共有することにより、生産の効率化や受発注の拡大が期待できます。また、小売業においても、来店者の行動をAIで解析することで、より効果的な販売促進が可能になると期待されます。
しかしながら、県内ではこうした活用事例が少ないことに加え、デジタルの専門人材が不足していることから、全体的に取り組みが進んでいないのが現状であります。このため、デジタル技術を活用して生産管理の効率化や顧客サービスの向上を実現するモデル事例を創出し、その取り組みの過程で得られた効果を多くの県内事業者に展開したいと考えております。
さらには、産業振興センター内にデジタル技術導入を支援する専門部署を新たに設け、中小企業からの相談にきめ細かく対応し、伴走支援を行います。
あわせて、「IT・コンテンツアカデミー」を「高知デジタルカレッジ」に改称し、企業の経営者や従業員を対象とした講座を新規に開設するなど、企業のデジタル化を担う人材の育成にも取り組んでまいります。
ウ 建設業分野
また、県内の建設事業者においては、頻発、激甚化する自然災害への対応が期待される中で担い手不足が顕著となっており、建設現場の生産性向上や働き方改革の観点からもデジタル技術の活用を進める必要があると考えております。このため、建設事業者のICT機器導入を支援し、その効果を県内全域へ横展開してまいります。
エ 行政分野
こうした各産業分野の取り組みに加え、行政分野においてもデジタル化の取り組みをさらに加速させてまいります。
具体的には、本年度から取り組みを開始した電子申請システムの対象業務を拡大するとともに、市町村に対して同システムの共同利用を働きかけることにより、県全体で行政手続きのオンライン化を促進します。あわせて、押印手続きの見直しを進めるほか、手書きの文字をデジタルデータに変換するAI-OCRの導入、24時間オンラインで問い合わせ対応を行うAI-FAQの拡充などに取り組み、県民サービスの向上と行政事務の効率化を図ってまいります。
3つ目のポイントは、「新しい生活様式や社会・経済構造の変化への対応」であります。各産業分野において、非対面、非接触など新しい生活様式に対応した商品やサービスの開発を促進します。
さらには、社会の構造変化によって生じた新たな消費者ニーズを捉え、県産品の外商、観光客誘致などの取り組みを強化いたします。
(食品分野における取り組み)
このうち、食品分野においては、「地産」と「外商」の両面から県内事業者の取り組みに対する支援を強化します。
具体的には、まず「地産」に関しては、県内事業者のコロナ禍を踏まえた事業戦略の策定と、新たな消費者ニーズに対応した保存性の高い商品の開発、衛生管理の高度化などを支援します。
また、「外商」に関しては、消費者行動の変化に対応し、地域密着型の量販店やネット通販、宅配サービスといった新たな販路開拓にも取り組みます。
さらに輸出に関しては、コロナ禍で海外への渡航が制限される中、県内事業者の販路開拓を現地で支援するため、「食品海外ビジネスサポーター」の配置地域を拡大するほか、販売サイトや動画コンテンツなどを活用した県産品のプロモーションを強化いたします。
(観光振興の取り組み)
他方、観光分野では、全国的にいまだ感染収束の時期が見通せず、
「Go To トラベル」の停止も継続されるなど、本県観光にとって厳しい状況が続いております。
このため、まずは県民の皆さまのご協力を得て県内観光の振興を図るべく、「高知家応援プロジェクト」の一環として、来月から県内宿泊施設の割引クーポンの発行や、交通費助成などの取り組みを実施するとともに、感染状況を踏まえながら、対象エリアを四国、中国、全国へと段階的に広げたいと考えております。
また、全国の感染状況が落ち着いてきた際には、速やかに本県の観光需要の回復が図られるよう、観光商品を「つくる」、「売る」、「もてなす」という3つの施策群の取り組みを一段と強化いたします。
まず、観光商品を「つくる」取り組みでは、自然とアクティビティなどを組み合わせたアドベンチャーツーリズムや、仕事と休暇を両立するワーケーションを推進するほか、観光資源を広域エリア単位で組み合わせた滞在型の観光地域づくりに取り組みます。
また、「売る」取り組みでは、本県がこれまで磨き上げてきた自然、歴史、食といった観光資源を余すことなく活用した、新たな「リョーマの休日」キャンペーンを4月からスタートさせます。JRグループの協力の下、四国4県が連携して10月から開催する「四国デスティネーションキャンペーン」も追い風に、全国に向けたプロモーションを展開してまいります。
さらに、「もてなす」取り組みでは、旅行者のアウトドア志向の高まりや、コロナ禍における新しい旅のスタイルに対応するため、屋外観光施設の磨き上げを進めるほか、宿泊施設における無線LAN、キャッシュレス決済の導入といった受け入れ環境の整備を支援してまいります。
こうした取り組みを通じて観光需要の回復を図り、早期に435万人観光を取り戻したいと考えております。
(4)地方への新しいひとの流れを呼び込むための取り組みの強化など
バージョンアップの4つ目のポイントは、「地方への新しいひとの流れを呼び込むための取り組みの強化」であります。コロナ禍を契機とした人々の意識の変化や、リモートワークの広がりなどをチャンスと捉え、移住促進策などの取り組みをより一層拡充します。
また、各分野における人手不足に対応するため、外国人材の受け入れに取り組むとともに、後継者不足などによって廃業を検討している事業者の円滑な事業承継に向け、関係機関と連携した支援策を強化してまいります。
ア 移住促進策の強化
移住促進に関しては、感染症の影響を受けて対面での移住相談やイベントの開催が困難となったこともあり、本県への移住者数は、先月末時点で735組、対前年同期比93パーセントにとどまっております。一方、コロナ禍を契機に、都市部に住む人々の間で地方暮らしへの関心が高まっていることから、地方への新しい人の流れを本県にいち早く呼び込むことができるよう、施策を大幅にバージョンアップいたします。
具体的には、既に本県と関わりのある、いわゆる関係人口へのアプローチを強化するとともに、ターゲット別に効果的なメディアを組み合わせた戦略的な情報発信や、オンラインと対面を組み合わせた相談会などを充実させます。また、高知市中心部に整備中のシェアオフィス拠点施設などを活用し、地方でテレワークを実践する方々や都市部企業のサテライトオフィスを本県に呼び込んでまいります。
さらには、コロナ禍を契機に地元へのUターンを検討する方が増えてくると考えられることから、県出身者への情報提供といったUターン促進策も強化します。
こうした一連の施策により、来年度は移住者数1,150組の目標を達成したいと考えております。
イ 外国人材の確保・活躍に向けた取り組みの強化
県内の様々な産業分野で人手不足が深刻化する中、外国人材に活躍していただくことも大変重要であります。
このため、県内事業所の外国人材受け入れに関する実態調査を行うとともに、庁内の関係課で組織するプロジェクトチームにおいて、今後の施策の方向性などについて検討を行ってきたところです。これらを踏まえた「高知県外国人材確保・活躍戦略」を本年度内に取りまとめることとしております。
今後は、この新たな戦略の下、ベトナムやインドをはじめとする人材の送り出し国との関係を強化するとともに、地域における生活相談体制を充実させ、外国人材の確保と活躍につなげたいと考えております。
ウ 事業承継
民間調査会社によると、昨年、県内で休廃業又は解散した企業は321件に上り、平成12年の調査開始以来最多となっております。今後も経営者の高齢化や後継者不足に加え、新型コロナウイルスの影響による売り上げの減少などから、休廃業を選択する事業者の増加が懸念されるところです。
このため、来年度は、小規模事業者の事業承継に向けた検討を後押しし、円滑な事業承継につなげることができるよう支援制度を拡充するなど、関連の施策を強化します。
また、国の事業としては、4月から機構再編で「事業承継・引継ぎ支援センター」が立ち上がり、企業の合併や買収、事業の引き継ぎなどに対応するスタッフが増員される見込みとなっております。
県としましても、このセンターや金融機関、移住促進・人材確保センターといった関係機関と一層緊密な連携を図り、中小事業者の円滑な事業承継につなげてまいります。
バージョンアップの5つ目のポイントは、「脱炭素化・SDGsを目指した取り組みの促進」であります。このうち脱炭素化に関しては、先の12月県議会において、2050年のカーボンニュートラル実現を目指して取り組んでいくことを宣言いたしました。今後、本県の特色を生かしながら、気候変動への対応と産業振興に向けた取り組みを着実に実行してまいります。
具体的には、日本一の森林率を誇る本県ならではの豊富な森林資源を生かした間伐、再造林などの吸収源対策に加え、新たに耕作放棄地への早生樹の植林に取り組みます。あわせて、都市部の企業などと連携し、建物の木造化や木質化による「都市の脱炭素化」を進めます。さらには、省エネルギー化に資する生産性向上の取り組みについても支援を行ってまいります。
来年度は、こうした施策の具体化と着実な実行に向け、新たに庁内にプロジェクトチームを立ち上げ、有識者の方々からご助言、ご提案をいただきながら、カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプランを策定します。
また、国連が掲げる持続可能な開発目標、いわゆるSDGsの達成に向けて、県内事業者の取り組みを後押しするため、SDGs登録制度の創設や優良事例集の作成などにも取り組んでまいります。
6つ目のポイントは、産業振興計画関連の様々な施策について、中山間地域での展開を特に意識していくことであります。第一次産業分野や観光分野を中心とした産業成長戦略の展開に加え、地域の資源を生かした地域アクションプランの取り組みを進めることにより、魅力ある仕事を数多く創り出し、中山間地域の持続的な発展につなげてまいります。
次に、日本一の健康長寿県づくりの取り組みについてご説明申し上げます。
第4期日本一の健康長寿県構想においては、「県民の誰もが住み慣れた地域で、健やかで心豊かに安心して暮らし続けることのできる高知県」の実現を目指して、令和5年には男性の健康寿命を全国平均を上回る73.02年以上に、女性は76.05年以上にするなどの数値目標を定め、意欲的に一連の対策を進めております。
今般、これまでの成果と課題を検証した上で、3つの柱からなる各施策をさらに充実させ、同構想をバージョン2に改定することといたしました。
(健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進)
1つ目の柱の「健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進」については、県民全体の健康増進を図るためのポピュレーションアプローチと、重症化のリスク要因を持つ人、いわゆるハイリスク層に対するアプローチをさらに強化します。
このうち後者については、糖尿病性腎症対策として、特定健診の結果やレセプトデータから重症化リスクの高い人を抽出し、早期治療につなげるプログラムと、透析導入が数年後に予測される患者に対し、市町村などの保険者と医療機関が連携して強力に保健指導を行うプログラムをそれぞれ推進しているところです。来年度は、これらのプログラムの効果をさらに高めるため、保健指導の実施状況とその後の結果を分析するシステムの開発に取り組むとともに、薬剤師による服薬指導など、糖尿病性腎症患者に対する支援体制の強化を図ります。
さらには、脳卒中をはじめとする重篤な循環器病を未然に防ぐため、高血圧や高脂血症の治療中断者などに対して、AIを活用して効果的に受診勧奨を行う取り組みを新たに実施してまいります。
(地域で支え合う医療・介護・福祉サービス提供体制の確立とネットワークの強化)
2つ目の柱の「地域で支え合う医療・介護・福祉サービス提供体制の確立とネットワークの強化」については、在宅療養体制の充実を図るとともに、障害者やひきこもりの人の社会参加に向けた施策を一段と強化します。
具体的には、在宅医療に取り組む医療機関の人材育成や初期投資を支援するほか、介護事業所を併設した高齢者向け住居の整備や、GPSを活用した高齢者の見守りサービスを進めるなど、それぞれの地域で高齢者の在宅療養を可能とする環境の整備を図ります。
また、障害の特性に応じて就労や社会参加ができる環境づくりを進めるため、市町村における相談支援体制の充実を図るとともに、農業現場の人手確保にも資する「農福連携」などの取り組みをさらに広げてまいります。
(子どもたちを守り育てる環境づくり)
3つ目の柱の「子どもたちを守り育てる環境づくり」に向けては、妊娠期から子育て期まで切れ目なく、総合的に支援する高知版ネウボラの取り組みを推進します。
具体的には、身近な地域における子育て支援を拡充するため、市町村の地域子育て支援センターの機能強化を図ることとし、一時預かりや病児保育といったニーズの高いサービスの提供、子どもの遊び場の整備、利用者の支援を行う専門員の配置などを進めます。
さらに、子育て家庭の孤立化や児童虐待の防止に向けては、県から専門家を派遣して助言や指導を行い、市町村の母子保健、児童福祉、子育て支援といった部門間の連携を強化するとともに、個々の家庭の状況に応じた支援力の向上を図ってまいります。
また、発達障害のある子どもへの支援については、より早い段階で適切な支援が受けられるよう、本年度から臨床心理士を乳幼児健診に派遣するなどの取り組みを進めているところです。今後は、中山間地域において支援体制のさらなる充実を図るため、専門職による保育所などへの訪問支援を行ってまいります。
医療、介護、福祉の人手不足が深刻化する中、住み慣れた地域で健やかに安心して暮らし続けることができる環境を確保するためには、デジタル技術を活用して効率的かつ効果的にサービスを提供する仕組みを整えていくことが重要であります。
このため、医療機関や薬局、介護事業所が保有する患者の情報をリアルタイムで相互に共有する「高知あんしんネット」や「はたまるねっと」、「高知家@ライン」の普及を推進し、各地域において医療、介護、福祉の情報が切れ目なくつながるネットワークを広げてまいります。
さらには、健康パスポートアプリの機能充実、オンラインによる服薬支援、介護ロボットの導入など、県民の身近な場所でデジタル技術の活用を推進し、生活の質、いわゆるQOLの向上を図ってまいります。
次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。
新型コロナウイルスの影響が長引く中、子どもたちが安定した学校生活を送りながら、バランスの取れた知、徳、体を育み、変化の激しい社会を生きる力を身につけることができるよう、教育大綱に基づく各施策を一段と強化していく必要があります。
このため、外部や地域の人材も活用して組織的に課題解決を図る「チーム学校」の取り組みを推進するとともに、来年度は「デジタル社会に向けた教育の推進」、「不登校への総合的な対応」、「厳しい環境にある子どもへの支援や子どもの多様性に応じた教育の充実」、「学校における働き方改革」という4点を中心に施策を充実させてまいります。
まず、「デジタル社会に向けた教育の推進」については、子どもたち一人ひとりの学ぶ意欲を引き出すとともに、理解度に合わせた最適な個別指導を実現するため、デジタル技術を活用し、教育内容の一層の充実を図ります。
具体的には、来年度から県内全ての公立小中学校において1人1台タブレットを活用した学習がスタートすることに合わせて、授業や放課後学習などに活用できるデジタル教材を備えた「高知県版学習支援プラットフォーム」の運用を開始します。
また、県立高等学校においても1人1台タブレットの整備を進め、オンラインによる専門講座の受講や企業と連携した協働学習、学習成果の発信などができる環境を整えます。
さらに、特別支援学校においては、個々の障害の特性に応じたアプリケーションの活用を進めるほか、オンラインによる現場実習やスポーツ交流などを充実させ、一人ひとりの自立と社会参加につなげたいと考えております。
あわせて、教員がタブレットを使いこなし、子どもたちの日々の学習活動を充実させていくことができるよう、各種の教科指導研修や学校訪問などを通じて、教員のデジタル機器活用力、指導力の向上を図ります。
次に、「不登校への総合的な対応」については、一人ひとりの状況に応じた学習の場の提供や自立に向けた支援に取り組みます。
具体的には、教室での集団学習に馴染めない生徒に対しては、モデルとなる4つの中学校に適応指導教室を設置し、個々に合わせた学習支援を行うなど、不登校を未然に防ぐ取り組みを強化します。
また、登校することが困難な生徒に関しては、家庭学習の機会を確保するため、市町村の教育支援センターを核としたモデル地域を指定し、タブレットを活用した効果的な学習方法の研究を進めてまいります。
さらに、心の教育センターにおいては、日曜日に加え土曜日も開所し、相談しやすい環境を整えるとともに、センターのスタッフが高い専門性を生かして学校や市町村への助言を行うなど、重層的な支援体制の強化を図ります。
(3)厳しい環境にある子どもへの支援や多様性に応じた教育の充実
次に、「厳しい環境にある子どもへの支援や子どもの多様性に応じた教育の充実」については、経済情勢が厳しさを増す中、貧困の世代間連鎖を教育の力で断ち切るために、子どもたちの社会的自立に向けた支援を一層充実させたいと考えております。
具体的には、中学生の段階から職業に必要な能力や資格、進学時の経済支援制度などの情報を十分に理解し、将来の自立に向けた進路を選択できるよう、進路指導の充実を図ります。
また、目標に向かって学ぶ高校生や自立した新卒者といった身近なロールモデルを中学生が知ることができるPR動画を制作するなど、中学校と高等学校との連携を強化します。
さらに、保護者も含め生活面でのサポートが必要な家庭に対しては、スクールソーシャルワーカーが市町村の児童福祉担当部署とより緊密に連携し、定期的な情報共有や家庭への同行訪問を行うなど、支援態勢の強化を図ってまいります。
教員が限られた時間の中で子どもたちに向き合い、効果的な教育活動を行うためには、ベテラン教員がチームを組んで若手を指導するメンター制など、「チーム学校」の取り組みを通じて指導力の向上を図ることに加え、働き方改革を進めていくことも重要であります。
このため、校務支援員や部活動指導員など外部人材の配置を拡大するとともに、研修のオンライン化や自動採点システムの導入を進め、業務の効率化を図ります。
これらの取り組みに加えて、コロナ禍における「学校の新しい生活様式」に対応しながら子どもたちの学校生活を充実させるためには、学級あたりの規模を小さくすることも一つの方策であります。
国からは、来年度以降、小学校2年生から段階的に少人数学級を実施する方針が示されたところですが、本県では、既に小学校5年生までの少人数学級を実現させております。この取り組みを6年生にまで拡充し、小学校全学年で35人以下の少人数学級を実現することにより、きめ細かな指導の充実につなげてまいります。
次に、南海トラフ地震対策の抜本強化、加速化についてご説明申し上げます。
東日本大震災の発生から、まもなく10年が経とうとしております。あの未曾有の災害により、多くの尊い命が失われたことを、そして今なお被災地では多くの方が苦しまれていることを、私たちは決して忘れてはなりません。
本県ではこの10年間、東日本を教訓として、南海トラフ地震対策に全力で取り組んでまいりました。その結果、津波避難場所の確保をはじめ、様々な対策が着実に進んできております。しかしながら、死者数を限りなくゼロに近づけるためには、依然として多くの課題があり、引き続きスピード感を持って取り組みを進めていくことが重要であります。
来年度は第4期行動計画の最終年度となることから、目標の達成に向けて、「命を守る」、「命をつなぐ」、「生活を立ち上げる」対策を全力で進めます。また、第4期計画の取り組みを総括し、明らかになった課題を踏まえて、対策をさらに強化する第5期計画の策定にも取り組んでまいります。
「命を守る」対策のうち住宅の耐震化については、本年度も既に年間目標の1,500棟を超える補助申請をいただくなど、着実に進捗しております。引き続き第4期計画の目標である耐震化率87パーセントの達成に向け、市町村と連携して取り組みを進めます。
また、自力での避難が困難な高齢者や障害者などの迅速な避難に関しては、これまで、沿岸19市町村全てにおいてワーキンググループを立ち上げ、福祉の専門職が個別計画の策定に参加するなど、取り組みを強化してまいりました。今後は、沿岸市町村における取り組みを県内全域に拡大し、個別計画の策定をさらに加速させます。
一方、本年度行った県民世論調査では、津波から避難するタイミングについて「揺れが収まった後、すぐに」と答えた方の割合が65パーセントと、平成28年度からの4年間で8.6ポイント低下しております。南海トラフ地震で想定される死者数の8割以上が津波によるものであり、早期避難の意識を高めることは大変重要な課題であります。このため、「南海トラフ地震に備えちょき」の冊子やテレビ、新聞、SNSを活用した啓発に加え、法律に基づく津波災害警戒区域の指定などを通じて、市町村とも連携しながら避難意識の向上に粘り強く取り組んでまいります。
次に、「命をつなぐ」対策については、不足している避難所の確保を図るため、引き続き集会所の耐震化や学校の教室利用を進めてまいります。あわせて、市町村が行う資機材の整備を引き続き支援し、避難所における感染症対策にも取り組みます。
また、発災時における受援態勢の強化に向け、本年度は県外の医療支援チームなどを円滑に受け入れるための計画策定に取り組んでまいりました。今後、この計画に沿って訓練を実施し、応急活動の実効性を高めてまいります。
さらには、発災時に県内の医療従事者を速やかに地域へ派遣する仕組みを構築するため、医療機関や市町村と共に具体的な計画づくりに着手します。
「生活を立ち上げる」対策については、発災後速やかに復興に着手し、住民の生活再建を図ることができるよう、市町村における「事前復興まちづくり計画」の策定を進めたいと考えております。
具体的には、有識者や市町村長などで構成する検討会において、東日本大震災における復興の取り組み事例や課題を踏まえた議論を開始したところであり、来年度中に計画策定の指針を取りまとめることとしております。
その上で、指針の内容に関する勉強会を開催するなど、早期の計画策定に向けて市町村の取り組みを支援します。
次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。
道路や堤防、港湾などのインフラは、南海トラフ地震や豪雨災害から県民の皆さまの生命や財産を守るとともに、地域の生活や産業を支える大変重要な基盤であります。
本県においては、依然として整備を急ぐべき箇所が多数ありますことから、昨年12月に閣議決定された国の5か年加速化対策を最大限に活用しながら、浦戸湾の三重防護をはじめとする地震津波対策や、1.5車線的道路整備など地域の実情を踏まえたインフラ整備をスピード感を持って推進します。
あわせて、河川の浚渫などの治水対策を加速させるとともに、橋梁、トンネル、排水機場といったインフラの老朽化対策についても計画的に進めます。
(四国8の字ネットワークの整備)
今月27日、高知インターチェンジと高知龍馬空港とを結ぶ高知南国道路が全線開通します。これにより県内のアクセスが一段と向上し、地産外商や観光振興に大いに寄与するだけでなく、救急搬送時間の短縮や、災害時における円滑な救援活動や物資輸送、地域住民の津波避難場所の確保など、「命の道」としての役割も期待されます。
県としましては、四国8の字ネットワークの早期完成に向けて、周辺道路の整備を進めるとともに、沿線市町村や他県とも連携して国などに強く働きかけてまいります。
次に、中山間対策の充実、強化についてご説明申し上げます。
本県の中山間地域は、人口減少と少子高齢化の急速な進展により、産業の担い手不足や集落活動の衰退が深刻化するなど、依然として厳しい状況にあります。
こうした中、現行の過疎法が本年度末に期限を迎えるため、新たな法律が本県の実情を反映したものとなるよう、国に対して積極的に政策提言を行ってまいりました。
その結果、新法制定に向け、本県と県内過疎市町村の要望を踏まえた形で議論が進められております。また、国の来年度予算案において、過疎地域に対する交付金事業や5G基地局の整備事業が拡充されるなど、本県からの提言の多くが実現する見通しとなっております。こうした国の支援策も最大限活用しながら、全庁を挙げて中山間地域の振興に取り組みます。
また、中山間対策の核となる集落活動センターについては、これまでに32市町村61カ所で設置され、着実に広がりを見せております。引き続き新たな開設を後押しするとともに、持続的な運営に向けた担い手の確保などの取り組みを強化します。
このほか、複数集落が連携した野生鳥獣対策、高知版地域包括ケアシステムの構築、小規模校における遠隔教育の拡充など、各分野における中山間対策の取り組みを着実に進めます。
来年度は、中山間地域の集落の実態や住民の皆さまの思いを直接お聞きするため、10年ぶりに県内全域の小規模集落を対象とした実態調査を実施します。この調査結果を詳細に分析し、これまでの中山間対策を検証した上で、若者が住み続けられる中山間地域の実現に向けて、さらなる対策を講じてまいります。
次に、少子化対策の充実、強化と女性の活躍の場の拡大についてご説明申し上げます。
人口動態統計の速報値によると、昨年1月から11月までの本県の出生数は、前年同期より5.1パーセント、婚姻件数も8.2パーセント減少しております。この結果の背景には、女性人口の減少に加え、全国と同様にコロナ禍で出会いの機会が減ったことや、雇用環境の悪化に伴う将来への不安感があるのではないかと考えるところです。
こうした中、国においては来年度、不妊治療に対する助成など少子化対策を強化することとしております。県としても、国の事業を最大限に活用しながら、県民の皆さまの出会い・結婚、妊娠・出産、子育ての希望を叶えられるよう、一連の取り組みをさらに充実させます。
特に来年度は、親世帯と同居又は近居する新婚世帯に対する住居費用の助成を開始するなど、安心して結婚や子育てができる環境を整備する市町村の取り組みを一層後押しします。
県庁においても、令和6年度末までに男性職員の育児休業取得率を50パーセントとする目標の達成に向け、率先して子どもを産み育てやすい職場環境づくりを進めます。
また、女性の活躍の場の拡大については、男女共同参画プランと女性活躍推進計画を改定し、子育てしながら働く女性を社会全体で支援する仕組みの拡大に向けた取り組みを強化します。
具体的には、延長保育など様々な保育サービスの拡充を図るとともに、「高知家の女性しごと応援室」において企業に対し、働きやすい職場づくりに向けたアドバイスを行うなど、女性が出産や子育てのために一定期間仕事を離れても、再び仕事と育児を両立しながら働くことができる環境の整備に取り組みます。
次に、文化芸術とスポーツの振興についてご説明申し上げます。
文化芸術の振興につきましては、廃藩置県によって本県が誕生してから今年で150年を迎えますことから、これを契機として新たな県史の編さんに着手し、本県の歴史や文化などの調査研究を進めてまいります。
また、本県のまんが文化の振興を図るために平成4年から開催している「まんが甲子園」は、次回で30回目の節目を迎えます。来年度は、この記念大会を開催するとともに、国内外に本県の取り組みを広く発信し、まんがを通じた交流や人材育成をより一層推進したいと考えております。
スポーツの振興に関しては、児童生徒の減少など、地域のスポーツを取り巻く環境の変化を踏まえて第2期スポーツ推進計画を改定し、取り組みを強化します。
具体的には、地域スポーツハブを拠点とした新たなスポーツサークルの立ち上げや、複数校による合同部活動の推進、障害児が気軽にスポーツに参加できるイベントの開催など、地域における子どものスポーツ環境づくりを進めるほか、全高知チームなどによる競技力の向上を図ります。
さらには、本県の有する施設や自然環境を生かして、カヌー、ゴルフ、レスリングなど、ターゲットを絞って戦略的にアマチュアスポーツ合宿の誘致を行うとともに、プロスポーツやラグビートップリーグのキャンプの誘致にも取り組み、交流人口の拡大と地域の活性化につなげます。
(犯罪被害者に対する支援)
次に、犯罪被害者に対する支援についてご説明申し上げます。
犯罪の被害に遭われた方やそのご家族への支援に関しては、昨年4月に施行された犯罪被害者等支援条例に基づき、関係者の声をお聞きしながら具体策の検討を進めてまいりました。来月には、犯罪被害者の経済的な負担の軽減や、犯罪被害者を切れ目なく支援する体制の構築などを盛り込んだ指針を策定します。
この新たな指針に基づき、犯罪被害からの回復を支援するための助成制度を創設したいと考えております。さらには、県、警察、市町村、民間支援団体の連携を一層強化し、被害者の方が必要とする支援を速やかに提供してまいります。
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、令和3年度高知県一般会計予算など41件です。
条例議案は、高知県中小企業・小規模企業振興条例議案など21件です。
その他の議案は、高知県が当事者である和解に関する議案など17件です。
報告議案は、令和2年度高知県一般会計補正予算の専決処分報告など2件であります。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。