公開日 2022年04月08日
令和4年4月1日(木)
(はじめに)
令和4年度を迎えるにあたり、職員の皆さんに一言お話をさせていただきます。
新型コロナウイルス感染症との戦いは、幾度となく感染拡大と収束を繰り返しながら、2年が経過した今なお続いております。現在、オミクロン株による感染の第6波は徐々に落ち着きを見せておりますが、感染症の克服にはまだ時間を要するものと思われます。また、国際情勢に目を向けますと、コロナ禍に加え、ロシアのウクライナ侵攻など、時代の大きな変化の局面を迎えていることを痛感します。
こうした逆風や変化の中にありましても、我々は歩みを止めることなく県勢浮揚に向けて着実に前進をしていかなければなりません。これまでも職員の皆さんには、ピンチをチャンスに変えるべく様々な工夫をこらして取り組んできていただいております。来る令和4年度は、これまでの取り組みを土台として、施策をさらに進化させ、次なる時代の扉を開く節目の1年にしたいと考えています。
それでは、大きく2点、「仕事にあたっての基本的な姿勢」と「新年度において各部局で共通認識としていただきたい政策課題」についてお話をさせていただきます。
(仕事に当たっての基本的な姿勢)
まず、仕事にあたっての基本的な姿勢について申し上げます。これまでも度々お話をしてまいりましたが、私は県民の皆さまとの対話を通じて、県民の皆さまの「共感」を得ながら県政運営を進めていきたいと考えています。そして、施策の実行を通じて、課題の解決に向けて「前進」をしていきたいという思いを持っております。こうした「共感と前進」の県政に必要な5つのキーワードについて、改めてお話をしたいと思います。
1つ目のキーワードは「透明性」、アカウンタビリティであります。
県民の皆さまの共感を得られる県政を実現するためには、例えば不祥事などがあったときにも、県民の皆さまに対してしっかりと説明ができる、透明性がある県政運営を行うことが大事であります。県民の皆さまから信頼され、共感を得られる県政を実現していくために、この点をまず第一に心掛けていただきたいと思います。
2つ目は「想像力」、イマジネーションであります。
社会経済構造が変化していく中で、県民の皆さまが何を求めているのかについて想像力を働かせて、そして、先手先手を打って政策の展開を図っていくことが大事であります。このことで、県民の皆さまの「共感」を呼ぶ県政の実現に近づいていけるものだと確信します。
3つ目のキーワードは「使命」、ミッションであります。
職員の皆さん一人ひとりが、今の仕事は何のためにやっているのか、どういう形で県民の皆さまに役立っているのかということを絶えず自分に問い直しながら、仕事に当たっていただきたいと思います。そして、このミッションを実現するために、今よりももっと良い仕事の進め方はないか絶えず考えていただきたいと思います。
4つ目は「進化」、エボリューションです。
今、時代は大きく動いています。時代の変化に合わせて、行政も進化し続けていかなければ、「前進」する県政は実現できません。
5つ目のキーワードは「挑戦」、チャレンジをしようということであります。
ピンチをチャンスに変えるためにも、現状に安住する、前例を踏襲する、そういうことだけではなく、時代の潮流を捉えた新たな取り組みに果敢に挑戦していただくことが大事だと考えています。
「共感と前進」の県政を進めるために、以上5つのキーワードを職員の皆さんで共有をし、常に実践をしていただくようにお願いしたいと思います。加えまして、例えば全国知事会や他県とも連携して国に提言を行うといったことを含めて、全国区の視点を持って政策展開を図るということにも意を払っていただきたいと思います。
(新年度において各部局で共通認識としていただきたい政策課題のポイント)
次に、大きな2点目、新年度に各部局において共通認識としていただきたい政策課題のポイントについて、お話をさせていただきます。
(新型コロナウイルス感染症対策)
まず最初に、新型コロナウイルス感染症対策についてであります。
年明けからのオミクロン株による感染の第6波は、ここにきて徐々に落ち着きを見せつつあります。全国では、18都道府県に適用されておりました「まん延防止等重点措置」が、先月の21日をもって全て解除をされました。本県におきましても、先月の25日に県の対応ステージを上から3番目に当たります「警戒」に引き下げました。会食等の行動制限について緩和も行ったところであります。
一方で、今後についてはオミクロン株の別系統で、さらに感染力が強いとされている「BA.2」への置き換わりや、年度替わりの人の移動などにより、今後、感染者数が再度、増加に転じる可能性も指摘をされています。
こうした状況を踏まえ、引き続き、感染防止対策を徹底することと併せて、保健・医療提供体制の確保、さらにはワクチンの3回目接種などの取り組みを進めていただきたいと思います。
あわせまして、国の制度や支援策なども活用しながら、ダメージを受けた社会経済活動の回復を段階的に図っていくことが重要であります。この感染症の収束は未だ先が見通せておりません。今後も、感染防止対策を着実に実施しながら、社会経済活動との両立を図るようにしっかりと取り組んでいただきたいと考えます。
(今後の成長の原動力となる「デジタル化」、「グリーン化」、「グローバル化」の取り組み)
次に、今後の成長の原動力となります「デジタル化」、「グリーン化」、「グローバル化」、この3つのポイントについてお話をしたいと思います。本年度もこの3つの観点から、各分野で新たな取り組みに果敢に挑戦をしていただきたいと考えます。
(デジタル化)
まず、最初の「デジタル化」についてであります。
「デジタル化」というのは、どういうものをイメージとして考えるかでありますが、現在、情報通信技術の発達により、距離や移動時間といった本県が抱える物理的な制約が、ハンディでなくなる時代が到来しつつあるということが、1つの側面だと思います。また、IoTを活用して収集したビッグデータをAIが解析をして、最適な手法や解決策を即座に提示をするといったことにより、生産性、付加価値の向上につなげていく。そういった仕組みが既に社会に実装されつつある。そういう段階であります。
こうした時代の変化を捉えまして、県のデジタル化推進計画に基づいて、生活、産業、行政という3つの切り口で、あらゆる分野のデジタル化を一層進めてもらいたいと思います。
このうち生活の分野でみますと、デジタル技術を活用したテレワークなどの普及を背景として、今や地方に住みながら大都市部の企業で働くといった、新たな暮らし方が可能になりました。こうした方々を本県に呼び込むために必要な環境整備などを進めてもらいたいと考えています。
また、特に中山間地域におきましては、ドローンを活用した物資の配送、遠隔医療、遠隔教育といった新しい技術の導入を進め、生活環境や医療、教育を大幅にレベルアップさせることができるように取り組んでもらいたいと考えています。
さらに産業分野におきましては、データ駆動型農業、スマート林業や高知マリンイノベーションといった、一次産業分野におけるデジタル化の取り組みをさらに加速をさせていただきたいと考えます。加えまして、中小企業等のデジタル化に向けた支援を一層充実させて、生産性、付加価値の向上につなげていただきたいと考えています。
さらに行政分野におきましては、電子申請、あるいは電子納付の対象業務を拡大するといった形で、行政手続きのさらなるオンライン化を進めていただき、県民生活の利便性の向上、行政事務の効率化を図っていただきたいと考えています。
本県の目指すデジタル社会を一言で言いますと「日常のあらゆるシーンにデジタル化の恩恵が及び、生活様式、そして、仕事の仕方が一変するような社会」ということであります。県民の誰もが、デジタル技術を難しく捉えずとも最大限利用ができて、より豊かな暮らしを営める、そうしたデジタル社会の実現に向けて、全庁一丸となって取り組みを進めていただくようお願いをしたいと考えます。
(グリーン化)
次に、2点目のトレンドであります「グリーン化」についてであります。
脱炭素化によって、持続可能な社会の実現を目指すという動きが世界の大きな潮流となっています。本県におきましても、2050年のカーボンニュートラル実現を目指すということを令和2年12月に宣言をいたしました。この世界的な流れを県勢浮揚の原動力としたいと考え、具体的なアクションプランを先月定めたところであります。
本年度は、いよいよこのプランを実行に移していく大事な年となります。本県の豊かな自然を生かして、例えば再生可能エネルギーの導入、森林吸収源対策を進めていくといったほか、建築物の木造化・木質化の推進によって「都市の脱炭素化」にも積極的に取り組んでいただき、これを木材需要の拡大につなげていただきたいと考えます。
加えまして、土佐和紙以来の伝統を生かした製紙業の技術などを生かしたプラスチック代替素材の活用、あるいはバイオマス資源によるグリーンLPガスの開発などに果敢に挑戦をして、本県の特性を生かした新しい産業の芽の創出を図りたいと考えています。高知県らしさを生かした脱炭素化の取り組みを通じて、地域や産業の活性化にもつなげていく。こうしたことに意を用いて、意欲的に取り組んでいただきたいと思います。
このほか、高知の豊かな自然を生かすという観点からしますと、例えば自然体験型観光の推進や、自然を愛する大都市部の方々に高知に移り住んでいただくといった移住促進につきましても、さらに取り組みを加速してほしいと考えます。
(グローバル化)
3点目のトレンドの「グローバル化」についてであります。
我が国は中長期的に人口減少に向かっています。こうした中、県経済をさらに拡大をさせていくためには、海外市場にこれまで以上に積極的に打って出る必要があります。例えばユズや土佐酒、養殖マグロといった県産品のさらなる輸出拡大を図ることに加えまして、外国人材の受入対策、そして、コロナの収束後を見据えました海外からのインバウンド観光客誘致の取り組み、こうした取り組みを着実に進めてもらいたいと考えています。
(関西圏との経済連携の強化)
次に、関西圏との経済連携の強化に関しまして、本年度は組織体制を大幅に強化をいたしました。関西圏では、今後、令和7年に予定されています大阪・関西万博などに向けた動きが本格化をしてまいります。このチャンスを県経済の起爆剤とできるよう「関西・高知経済連携強化戦略」に基づきまして、第1に「観光推進」、第2に「食品等の外商拡大」、第3に「万博・IRとの連携」、この3つのプロジェクトの取り組みを大きく前に進め、コロナ禍からの反転攻勢につなげたいという思いでおります。
加えまして、関西圏におけます外商の取り組みを、もう一段レベルアップさせるように「関西圏外商強化対策協議会」を中心として、効果的な外商強化策の調査、検討を急ぎ進めていだきたいと考えています。
(中山間対策)
次に、中山間対策について申し上げます。
私が掲げます本県が目指すべき3つの姿、すなわち「いきいきと仕事ができる高知」、「いきいきと生活ができる高知」、「安全、安心な高知」、この3つの姿を実現をしていくためには、県内余すところなく「地域の再興」を図っていくことが不可欠であります。
この度、10年ぶりに実施をしました集落実態調査の結果を踏まえまして、集落の維持、活性化を後押しをする。そして、地域で暮らし続けたいという県民の皆さまの希望を叶えることができるように、中山間対策を抜本的に強化をしてまいります。
まず本年度は、新たに小さな集落の維持・活性化に向けた仕組みづくりや、デジタル技術を活用した課題解決などの取り組みを進めます。今後は、調査結果の詳細な分析を進めて、全庁を挙げて中山間対策のさらなる充実、強化について検討してもらいたいと思います。また、中山間地域における担い手確保の観点から、移住促進の取り組みが重要であります。しかし、これまで住宅が見つからないことで移住を断念するケースが多く発生をしております。その一方で、県内では空き家が増え続け、居住環境、防災面からも課題となっております。こうした状況を踏まえ、これは本年度の取り組みとして、庁内に空き家対策のチームを設置し、取り組みを強化することといたしました。市町村や関係団体ともしっかりと連携を図りながら、移住者の住宅確保などを進めてもらいたいと考えています。
(5つの基本政策と3つの横断的な政策)
次に、5つの基本政策と3つの横断的な政策についてお話をさせていただきます。
(経済の活性化)
5つの基本政策、第1に経済の活性化についてであります。
このマスタープランに当たります第4期の産業振興計画は、本年度から計画期間の後半に入ります。計画に掲げる目標の達成を目指して「産学官民連携によるイノベーションの創出」や、先に述べました「関西圏との経済連携の充実強化」などといった5つの重点ポイントにより、バージョンアップをした各施策を、スピード感を持って実行してもらいたいと考えています。また、先ほど申し上げましたデジタル化の促進、グリーン化の促進、グローバル化の促進、さらに外商活動の全国展開、担い手の育成・確保といった連携テーマについては部局横断的に取り組んでいただき、具体的なプロジェクトを推進してもらいたいと考えています。これとあわせまして、コロナ後を見据えた経済の活性化策について、特別経済対策プロジェクトチーム等を中心にしっかりと検討をしていただき、速やかな本県経済の回復を図ってもらいたいと考えています。
(日本一の健康長寿県づくり)
5つの基本政策の第2は、日本一の健康長寿県づくりであります。
本年度、第4期日本一の健康長寿県構想の施策につきまして、デジタル化などの視点から見直し、そして強化を図りました。
県民の皆さまの健康寿命の延伸に向けまして、引き続き生活習慣病の予防や糖尿病性腎症対策を進めるということに加えまして、デジタル技術も活用して中山間地域の在宅療養体制をより一層充実させていただきたいと考えます。また、「ひきこもり」や「ヤングケアラー」といった今日的な困難な課題に対応していくために、市町村によります包括的な支援体制の整備などに全力で取り組み、地域共生社会の実現を図ってまいりたいと思います。
(教育の充実)
基本政策の第3は、教育の充実についてであります。
急激に変化する時代において、子どもたちが知・徳・体の調和のとれた「生きる力」を身に付けて、持続可能な社会の創り手となることができるように、教育大綱に基づく施策を強化いたしました。具体的には、まず中学校全学年での35人学級の実現など、質の高い教育の実現に向けた学校における組織的な取り組みを強化いたします。加えて、デジタル技術を活用した学習スタイルの充実、発達障害や不登校といった多様な子どもたちへの支援の充実、さらには、学校における働き方改革の加速化などを進めたいと考えます。それらの施策にしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
(南海トラフ地震対策)
第4の基本政策が、南海トラフ地震対策であります。
今年1月には九州で震度5強の地震が発生し、この際には、宿毛市でも震度5弱を記録しました。先月には東北で震度6強の大きな地震が発生しています。こうした中で、近い将来の発生が予測されます南海トラフ地震についても備えを急がなければなりません。本年度からは第5期の行動計画の取り組みがスタートいたします。計画目標の達成に向けて、第一に住宅の耐震化、早期避難意識率の向上といった「命を守る」対策、第二に受援態勢の強化などの「命をつなぐ」対策、さらには第三に事前復興まちづくりなどの「生活を立ち上げる」対策、これらをそれぞれ全力で進めていただきたいと考えます。
(インフラの充実と有効活用)
基本政策の第5がインフラの充実と有効活用であります。インフラの充実と有効活用については、国の支援策などを最大限活用し、地域の経済活動を支え、南海トラフ地震といった大規模災害に備える上で、重要なインフラの整備を着実に進めていただきたいと考えます。
(3つの横断的な政策の推進)
これに加えまして、3つの横断的な政策に関しては、先に述べました「中山間対策」のほか、「少子化対策の充実・強化と女性の活躍の場の拡大」、そして「文化芸術とスポーツの振興」、この3つの取り組みにつきまして、部局横断的にしっかりと推進をしていただきたいと考えます。
(まとめ)
以上が、新年度において各部局で共通認識としていただきたい政策課題のポイントに当たる部分であります。県勢浮揚に向けては、引き続き、時代の変化を先取りして、5つの基本政策と3つの横断的施策を絶えず進化させていくことが重要であります。このためには、アンテナを高く、そして広く張って、国の政策等についても情報収集を行っていただく。そして、積極的にその活用を図っていくことと同時に、改善、拡充が求められる点等につきましては、現場の意見を汲み取り、県自らの施策を強化する。あるいは国へ政策提言や要望を行っていく。そうした形で政策形成、政策実行の好循環を生み出していくように意を払っていただきたいと考えます。
また、県庁組織において、多様な人材が活躍をするということが、組織の活性化とともに施策の実効性の向上、そして、新たな取り組みにつながってまいります。こうした観点から、能力のある女性職員の積極的な登用に努めました結果、知事部局のポスト職に占める女性の割合は、今や28%と過去最高の水準に達しました。職員の皆さんがそれぞれの立場で、その能力を最大限に発揮をしていただいて、活躍をいただくということを大いに期待いたしております。
(おわりに)
最後に、管理職の皆さんに、特に留意していただきたい事項についてお話しをいたします。
県の様々な施策を前進させ、県庁が組織として最大の成果を挙げていくためには、職場の風通しを良くしていくことが重要であります。職場がチームワークを発揮できるように、職員間のコミュニケーションの活性化には特に意を用いていただきたいと考えます。また、仕事をするときはしっかり仕事をする、休むべき時はしっかり休むというメリハリをつけた仕事の仕方、いわゆる職員のワーク・ライフ・バランス、管理職の皆さんには、この実現にもぜひ留意をしていただきたいと考えます。
このほか、基本的なことにはなりますが、昨年度は事務の不適切な執行や単純ミスといった事態が相次ぎまして、県民の皆さまにお詫びをする場面がしばしばございました。改めて適正な事務の執行について徹底をいただくように、管理、そして監督をよろしくお願いしたいと考えます。
コロナ禍からの本格的な回復を図っていうということと併せて、より一層元気で豊かな高知県の実現を目指して、皆さんとともに私も挑戦を重ねてまいる考えであります。本年度もどうかよろしくお願い申し上げまして、私からの職員の皆さんへのお話とさせていただきます。