公開日 2023年02月21日
令和5年2月21日 令和5年2月県議会での知事提案説明
先月、国は新型コロナウイルス感染症について、5月の連休明けに感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザと同等の5類感染症とする方針を示しました。3年以上続いたコロナ禍への対応は大きな転換点を迎え、社会経済活動の正常化に向けた動きが一段と加速することが見込まれます。
一方、いまだ終わりの兆しが見えないのが物価の高騰です。昨年12月の全国消費者物価指数は、前年同月比で4パーセント上昇し、41年ぶりの高い伸びとなりました。本年も食品や日用品を中心にさらなる値上げが見込まれ、影響の長期化が懸念されます。
来る令和5年度は、このような社会経済情勢の大きな変化の波に柔軟に対応しながら、連続テレビ小説「らんまん」の放送開始や大阪・関西万博に向けた関西圏の経済活力の高まりという追い風をしっかりと捉え、県勢浮揚への道筋をより確かなものにしたいと考えています。
こうした考え方の下、来年度は大きく4つのポイントを意識して県政運営に取り組みます。
1つ目のポイントは、この春から放送が開始される連続テレビ小説を生かした観光振興です。4月の放送開始に先立ち、来月25日には観光博覧会「牧野博士の新休日」がいよいよスタートします。博覧会を核として、自然や食、人といった本県の魅力を官民一体となって全国にPRすることで、コロナ禍で打撃を受けた本県観光の再生はもとより、県産品の外商拡大など幅広く波及効果を生み出し、県経済の底上げにつなげたいと考えています。
2つ目のポイントは、関西圏との経済連携の強化です。令和7年開催の大阪・関西万博に向けた動きが本格化する中、関西戦略をエンジンとして県経済の成長スピードを加速させるべく、私自身が先頭に立って積極的なトップセールスを行い、具体的な成果に結びつけます。また、戦略の要となるアンテナショップについても、本県の魅力を余すことなく届けることができるよう、店舗のデザインや機能などを練り上げていきます。
3つ目のポイントは、今後の成長の原動力であるデジタル化、グリーン化、グローバル化という潮流を捉えた施策のバージョンアップです。
このうちデジタル化では、大都市部からの距離など本県が抱える物理的ハンディの克服、さらには暮らしや働き方が一変する社会の実現に向け、産業、生活、行政という3つの切り口であらゆる分野の取り組みを加速させます。
IoPクラウドや森林クラウドといった情報基盤の運用が本格化してきた一次産業では、集約されたデータを活用して経営の効率化や付加価値の向上に取り組む事業者への支援態勢を強化します。また、中山間地域における暮らしや医療、教育などの課題解決に向け、オンライン診療や遠隔教育の拡大を図るほか、公共交通の利便性向上を目指した実証事業に取り組みます。
加えて、行政においても、デジタル化による県庁の働き方の変革に取り組み、限られた職員で創造性を発揮しながら、複雑化、多様化する課題に向き合うことができる姿を目指します。
グリーン化については、エネルギー価格の高騰などを背景に、今や脱炭素化は持続可能な成長の必須条件となりつつあります。こうした流れをしっかりと捉え、県勢浮揚の原動力とするべく、本県の豊かな自然資源を生かした取り組みや新たな産業の芽の創出を強力に推進します。
具体的には、本県の豊かな森林資源を活用した吸収源対策として、再造林の取り組みを抜本強化します。また、木材の利用促進を図るため、県独自の環境不動産認定制度を開始するほか、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入拡大に向けた支援を強化します。さらには、プラスチック代替素材の活用やグリーンLPガスといった各プロジェクトの取り組みを加速させ、早期の事業化を目指します。
グローバル化については、人口減少に伴う将来的な国内市場の縮小が避けられない中、県経済の持続的な成長を実現するためには、海外に目を向けた施策をさらに充実していくことが重要です。コロナ禍からの本格的な回復が進む海外市場の動きをしっかりと捉え、県産品の輸出拡大やインバウンド観光の推進を図るほか、外国人材の確保、活躍に向けて取り組みを強化します。
4つ目のポイントは、中山間地域の再興です。中山間地域の活力を取り戻し、住民の皆さんが将来に希望を持って暮らし続けられるよう、改めて県政の中心に中山間対策をしっかりと位置付けたいと考えています。このため、来年度、地域で頑張っている皆さんと共に未来を切り開いていく道しるべとして、中山間地域再興ビジョンを策定します。
以上のような方針の下、引き続き「共感と前進」を県政運営の基本姿勢として、徹底して成果にこだわりながら、県民の皆さんと共に元気で豊かな高知県の実現を目指して全力で挑戦を重ねてまいります。
次に、令和5年度当初予算案及び令和4年度2月補正予算案についてご説明申し上げます。
今回の予算編成にあたっては、新型コロナウイルス感染症や物価高騰への対応を着実に進めるとともに、アフターコロナ時代の成長の原動力であるデジタル化、グリーン化、グローバル化の視点から、施策を一層強化するべく工夫を凝らしました。加えて、県民の安全、安心の確保と地域経済の発展に資する観点から、防災・減災対策をはじめとしたインフラ整備を一段と加速することとしました。
この結果、2月補正予算案に計上した物価高騰対策分を含む実質的な当初予算額は前年度とほぼ同規模である4,802億円となり、積極型の予算となっております。また、国の経済対策分を含む実質的な投資的経費は、対前年度比で32億円増となる1,203億円を確保しました。
このように、県勢浮揚に必要な施策を着実に実行する一方、財政運営の持続可能性を確保するため、歳入歳出両面で努力を重ねました。
まず、歳入面では、地方消費税清算金や地方交付税の増収で生じた前年度分の財源の活用などにより、必要な一般財源総額を確保しました。加えて、脱炭素の取り組みを加速するために創設された地方交付税措置率の高い地方債をはじめ、国の有利な財源を最大限活用し、一般財源の負担軽減を図っております。
歳出面においては、当面の感染拡大防止対策や物価高騰対策と併せて、今後の県勢浮揚に向けた施策を着実に実行できるよう、事業のスクラップアンドビルドの徹底を図り、マンパワーと財源の確保に努めました。
こうした一連の取り組みにより、令和5年度当初予算編成後の財政調整的基金は178億円を確保できる見込みとなっております。
また、臨時財政対策債を除く県債残高については、国の5か年加速化対策を活用したインフラ整備などで一時的に増加するものの、令和7年度をピークに逓減する見込みであり、今後必要な投資事業を実施しても安定的に推移する見通しを立てることができております。
このように、今回の予算編成においては、県勢浮揚と県財政の持続可能性の両立を図ることができたものと考えます。
しかしながら、依然、多額の財源不足が生じていることに加え、物価高騰の影響も続いており、当面は予断を許さない財政状況が続くものと予想されます。このため、今後も国に対し、地方交付税をはじめとする一般財源の確保について積極的に政策提言を行います。あわせて、歳入歳出両面から不断の見直しを行い、安定的な財政運営に努めてまいります。
昨年12月、国において、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が抜本的に改訂され、新たな総合戦略として「デジタル田園都市国家構想総合戦略」が閣議決定されました。この新たな総合戦略では、デジタルの力を活用して地方創生の取り組みを加速化、深化させ、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を目指すとされております。
こうした国の動きを受け、まず、本年度は、「高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略」にデジタル基盤の整備などの施策を追加します。その上で、来年度は、産業振興計画や日本一の健康長寿県構想といった県の主要な計画の次期ステージに向けた議論を行うこととなりますので、これに併せて総合戦略のあり方を検討し、令和6年度を初年度とする新たな戦略を策定します。
次に、新年度における5つの基本政策と3つの横断的な政策の取り組みについてご説明申し上げます。まず初めに、経済の活性化についてです。
県経済は、新型コロナウイルス感染症の影響から持ち直しつつあるものの、原油価格や物価の高騰が長期化し、様々な分野で影響を受けています。加えて、世界のサプライチェーンの混乱やエネルギー問題、地球温暖化の進行、少子高齢化の加速など、本県を取り巻く環境は大きく変わってきています。
こうした現実を前に県経済を再び成長軌道に乗せ、より高いステージへと引き上げていくためには、足下の経済情勢の変化に切れ目なく対応することはもとより、中長期を見据えて各産業分野の構造転換を力強く進めていかなければなりません。
第4期産業振興計画の最終年度を迎える来年度は、「付加価値や労働生産性の高い産業を育む」と「社会経済構造の変化に対応した持続的な成長の促進」という2つの大きな方向性を掲げ、5つの重点ポイントにより一連の施策のバージョンアップを図ります。
1つ目の重点ポイントは、「産学官民連携によるイノベーションの創出」です。新たな時代の成長の原動力となるデジタル化、グリーン化の視点から取り組んできた各分野の施策をもう一段強化し、より大きな成果を生み出します。あわせて、産学官民の連携により新たなイノベーションの創出を加速させます。
ア デジタル化の促進
このうちデジタル化に関しては、デジタル技術の導入により事業者の目に見える形で成果が表れ始めました。来年度はこうした成果を活用しながら各分野の構造転換を一層強力に進めます。
(一次産業分野)
農業分野では、IoPクラウド「SAWACHI」を核としたデータ駆動型農業の取り組みを進めてきた結果、生産者の7割が増収となった産地が生まれるなど、具体的な成果が出てきております。
来年度は営農指導体制をさらに強化し、県内各地に横展開することにより、データ駆動型農業を県全体に波及させます。あわせて、「SAWACHI」を活用する園芸用ハウスの増加に向けて、新たに既存ハウスの長寿命化と環境制御装置などの導入による高度化を支援します。
林業分野では、4月から本格運用となる森林クラウドで地形条件や路網整備の状況を確認し、効率的に林業が行える適地の選定を進めます。加えて、伐採に係る調査や計画作成において、クラウド内に集積された樹木の種類や本数といったデータを効果的に活用するなど、ICTによって施業を効率化、省力化するスマート林業への転換を一層推進します。
水産業分野では、高知マリンイノベーションの取り組みにおいて、海水の温度や潮の流れ、赤潮発生などの情報を一元的に発信するシステムとして「NABRAS」が先月末に稼働しました。漁業者からは、「漁場の情報が分かりやすく発信されていて使いやすい」との声をいただいており、引き続き、システムの周知と発信情報の充実に努め、操業の効率化や漁業被害の防止につなげます。あわせて、操業ごとの利益シミュレーションを可能とするツールについて、対象をこれまでのカツオ漁業と定置網漁業から沿岸漁業に広げ、効率的な漁業経営への転換を加速させます。
(商工業分野)
商工業分野では、産業振興センターと商工会連合会に配置した専門人材による支援などを通じて、デジタル技術の導入に取り組む企業が徐々に増えてきました。こうした動きを量的、質的に拡大させるべく、専門人材による支援体制を拡充するとともに、ITツールの導入などを支援する補助制度の活用を積極的に働きかけ、生産性の向上や新たな付加価値の創出といった成果を数多く生み出していきます。
また、商店街の人の流れを機器で計測し、そのデータを店舗の来店予測やマーケティングに活用する取り組みを新たに進めます。このほか、デジタルマーケティングの手法を活用して、UIターンの可能性がある学生への効果的な情報発信に取り組み、新規学卒者の県内就職を促進します。
(行政分野)
各産業分野の取り組みに加え、行政分野においてもデジタル化の取り組みをさらに加速します。
具体的には、より多くの県民の皆さんにデジタル化の利便性を感じていただけるよう、電子申請などの利用促進に取り組むとともに、職員の働き方の変革を目指した「県庁ワークスタイル変革プロジェクト」を開始します。
このプロジェクトでは、デジタル化を前提に業務を抜本的に再構築することに加え、一部のモデル職場にペーパーレスでどこでも業務が行える環境を整備し、場所や紙にとらわれない働き方を実践します。
また、市町村に対しては、手続きのオンライン化やシステムの標準化を踏まえた業務の再構築を支援することにより、限られた職員で質の高い行政サービスを提供できるスマート自治体への転換を後押しします。
イ グリーン化の促進
グリーン化に関しては、本年度が実行初年度となる脱炭素社会推進アクションプランの取り組みを全力で進めてきました。その結果、太陽光発電設備を導入する事業者数は大きく伸び、県内の半数を超える市町村が国の脱炭素先行地域への応募に関心を示すなど、脱炭素社会の実現に向けた動きの広がりに手応えを感じています。来年度は、こうした動きをさらに拡大し、脱炭素化を加速させるため、本県の強みである豊富な自然資源を生かした取り組みの強化を中心に、一連の施策をバージョンアップします。
日本一の森林率を誇る本県の森林資源を最大限活用して、吸収源対策と持続可能な林業を同時に実現するためには、再造林が欠かせません。しかしながら、森林所有者の経済面での負担感などを背景に、近年、皆伐面積に対する再造林率は40パーセント前後と低い水準にとどまっております。こうした課題の解決を図り、再造林率を目標の70パーセントまで早期に引き上げるべく、再造林を推進するためのプランを新たに策定し、対策を抜本強化します。
あわせて、CO2を炭素として貯蔵する木材の利用拡大を図るため、木造の商業ビルなどを環境不動産として県が独自に認定し、不動産取得税の免除といった優遇措置を講じる新たな制度を全国に先駆けてスタートさせます。
また、太陽光発電設備を導入する事業者と個人への支援策を強化し、再生可能エネルギーの活用を一層促進します。
グリーン化関連産業の育成では、プラスチック代替素材活用プロジェクトなどにおいて製品や技術の開発への支援を強化するほか、新たに農業生産などで生じる残余物をエネルギーとして有効利用するための研究を進めます。加えて、環境負荷の低減につながる有機農業の推進に向けて生産から販売、担い手確保までの総合的な支援態勢を強化します。
このほか、新たなポータルサイトを構築し、脱炭素化に関する情報を一元的に発信するとともに、web版環境パスポートのさらなる普及促進を図り、環境に優しいライフスタイルへの転換を一層促します。
(森林環境税の延長)
本県の豊かな森林環境を保全するため、県民の皆さんから幅広くご負担いただいている森林環境税は、本年度末で課税期間が満了します。
このため、課税期間延長の必要性や国の森林環境譲与税の導入を踏まえた新たな使途の考え方をお示しし、県民世論調査や企業アンケートなどを通して、県民の皆さんにご意見をお聞きしました。その結果、概ね9割の方から森林環境税の継続についてご支持をいただいたことを踏まえ、課税期限を5年間延長する条例議案を今議会に提出しております。
一方、県民世論調査の結果からは、森林環境税の使途などに関する認知度が依然として低いことも明らかになりました。このため、県民の皆さんとの意見交換の場の拡大や広報活動の充実に、より一層力を入れて取り組みます。
ウ 連携プロジェクトの推進
産学官民が連携したプロジェクトの展開を通じて、将来の本県産業の柱となりうる分野にも果敢に挑戦します。
このうちヘルスケアイノベーションプロジェクトでは、バーチャルリアリティの技術を活用した精神疾患の治療法など、新たなサービスの事業化を支援することにより、医療や健康に関わる分野への県内企業の進出や県外企業の誘致を促進します。
また、アニメプロジェクトでは、県内における人材の発掘、育成に加え、官民連携の下、アニメーションの制作者や関連企業を本県に呼び込み、その集積を図ることにより、雇用の創出や地域産業の活性化につなげます。
重点ポイントの2つ目は、「グローバル化の推進」です。コロナ禍の影響緩和による世界的な需要回復を捉え、さらなる輸出拡大を目指して支援体制の充実を図るとともに、外国人観光客の誘客に向けた取り組みなどを強化します。
ア 輸出拡大に向けた支援体制の強化
輸出については、本県の強みである農水産物や食品、防災技術などを中心に取り組みを進めてきた結果、海外への輸出額は大きく伸びてきました。一方で、今後のさらなる拡大には、輸出に取り組む事業者や品目の裾野の拡大、コロナ禍からの経済回復が進む有望市場での外商強化といった課題があります。このため、来年度は県内、海外での支援体制を大幅に拡充し、本県の輸出のもう一段のレベルアップを目指します。
まず、県内においては、新たに食品、水産物、工業製品の分野ごとにアドバイザーを配置し、輸出に取り組む事業者の掘り起こしから商品開発、販売までを強力に支援します。さらに、海外ビジネス交流会を立ち上げ、海外市場への関心を高めることで、海外展開に挑戦する事業者の裾野を広げます。
また、海外では、アメリカをはじめ、食品分野の有望市場において見本市への出展などを拡充します。加えて、今後成長が期待できる東南アジアでの支援体制を強化するため、シンガポールの地元企業と連携体制を構築し、現地ニーズに沿った商品の磨き上げや販路開拓を行うほか、ものづくり企業の支援ニーズが高いタイとベトナムにサポートデスクを設置します。
イ 外国人材の確保・活躍に向けた取り組みの強化
先月の高知労働局の発表によりますと、昨年10月末時点の県内の外国人労働者数は、過去最高の3,783人となりました。今後も外国人材のニーズは増加していくものと見込まれており、意欲ある人材を安定的に受け入れることができるよう、送り出し国との関係を一層深めたいと考えています。
ベトナムについては、ラムドン省との間で締結を予定している覚書に基づき、人材の送り出しに係るキーパーソンの招へいや、入国前の日本語講習に対する支援を行います。加えて、木材産業分野では、ベトナム国営の大手林業企業及び県内の木材加工事業者と連携して、受け入れ拡大に向けた態勢整備を進めます。
また、昨年から県内で技能実習生の受け入れが始まったインドについて、州政府などの訪問を通じて関係を築き、より多くの外国人材の確保につなげるとともに、新たに東ティモールからの実習生の受け入れを進めていきます。
ウ インバウンド観光の推進
インバウンド観光につきましては、昨年10月の訪日入国制限の緩和以来、本県を訪れる外国人観光客が少しずつ増え始めております。また、台湾、香港、韓国と高松空港を結ぶ便をはじめ、国際便の再開が進んでおり、近県の空港を経由した本県への誘客のチャンスも広がってきています。
こうした流れを着実に取り込めるよう、東アジアを主なターゲットとして、本県を周遊するツアー商品の造成を促進するほか、高知龍馬空港へのチャーター便の誘致に取り組みます。加えて、2年後に迫った大阪・関西万博を念頭に置きながら、大阪観光局や関西エアポートとの連携をさらに強化し、関西から本県へのインバウンド誘客の取り組みを進めます。
さらに、来月10日には、3年ぶりに高知新港への外国客船の寄港が予定されており、これを皮切りに今後も増加していく見込みです。高知市や関係団体と連携しながら万全の準備をもってお迎えし、外国客船によるインバウンド回復の流れもしっかりと取り込んでいきます。
重点ポイントの3つ目は、「関西圏との経済連携の充実強化」です。観光分野では、大阪観光局と連携して関西と高知を結ぶモデルルートを作成し、積極的なセールスプロモーションを進めてきました。その結果、シンガポールからのツアーが継続的に実施されているほか、台湾や香港からのツアーも徐々に増えつつあります。また、外商分野では、量販店を中心とした販売促進活動により、フェアにおける水産物の販売が好調に推移するなど、関西戦略の取り組みの成果が見え始めてきました。
来年度は、戦略の大きなターゲットである大阪・関西万博も見据えながら関西の企業などとの連携を深め、観光の誘客や外商の拡大に向けた各プロジェクトの取り組みを一層強化します。
まず、観光推進プロジェクトでは、連続テレビ小説「らんまん」の放送を生かして、関西圏での広告展開をはじめ、牧野博士ゆかりの地である神戸市と連携したPRなどを行い、本県への誘客を図ります。
食品等外商拡大プロジェクトでは、関西の大手グループ企業や量販店と連携したフェアを開催するほか、県内事業者のECサイトの情報を集約したポータルサイトを構築するなど、さらなる外商の拡大に取り組みます。
万博・IR連携プロジェクトでは、製材品の輸送に係る費用を支援し、万博関連施設での県産材の利用を促進します。また、万博会場において、よさこいなどの祭りや文化、さらにはIoPプロジェクトといった本県発の先進的な取り組みが発信できるよう、具体的な検討を進めます。
このほか、各プロジェクトを横断的に支える取り組みとして、関西での県産品や本県観光の認知度向上を目指し、関西メディアとのネットワークのさらなる強化を図ります。加えて、カツオのタタキを販売するキッチンカーを活用し、本県の食文化や旬の情報の発信に取り組みます。
(アンテナショップの設置に向けた取り組み)
大阪、関西において本県の魅力を強力に発信する拠点となるアンテナショップについては、出店を計画している商業施設との調整が整い、希望する区画に入居できる見込みとなりました。
このアンテナショップは、高知らしさがあふれ、東京とはひと味違った店舗にしたいと考えており、今般、コンセプトや機能を含めた基本計画案を取りまとめました。この計画案に基づき、都会では味わうことのできない「スーパーローカル」、すなわち「極上の田舎」高知の豊かさや素晴らしさを体感でき、関西の皆さんに広く受け入れられる店を目指して、令和6年の開設に向けた準備を進めます。
こうした一連の取り組みを、県内の市町村や事業者のみならず、関西にお住まいの本県出身者や本県にゆかりのある方々を含めた「オール高知」の態勢で展開し、関西戦略の取り組みをさらに加速させます。
4つ目の重点ポイントは、「中山間の暮らしを支える地域産業づくり」です。テレワークの普及や若年層の地方移住への関心の高まりといった社会情勢の変化を捉え、IT・コンテンツ関連企業の誘致を進めるほか、移住促進策を強化します。あわせて、豊富な地域資源を最大限に生かして観光や一次産業などの振興を図り、中山間地域の持続的な発展につなげます。
5つ目の重点ポイントは、「SDGsの広がりによる持続可能な地域社会づくり」です。世界的なSDGsに対する関心の広がりを背景に、持続可能性に配慮した取り組みの重要性が一段と高まっております。
こうした動きを捉えて、観光分野における次の展開を見据え、地球環境や地域の持続的な発展を意識した「高知版サステナブルツーリズム」を進めるための指針を策定します。また、引き続き「こうちSDGs推進企業登録制度」の活用を促進することに加え、登録企業やSDGs関連の支援策を広くPRする新たなサイトを構築し、県内事業者の取り組みを一層推進します。
観光分野では、全国旅行支援や本県独自の「観光リカバリーキャンペーン」といった需要喚起策によって、本県観光の回復に向けた足取りが力強さを増してきました。この勢いをさらに加速させるべく、連続テレビ小説「らんまん」の放送という追い風を最大限に生かした誘客に取り組みます。あわせて、デジタル化、グリーン化の潮流を捉え、本県観光のさらなるレベルアップを図り、目標とする460万人観光を実現したいと考えています。
このうち、「らんまん」の放送を生かした観光振興では、今月4日から牧野植物園などで観光博覧会のプレイベントがスタートしました。また、越知町の横倉山自然の森博物館をはじめ、主要な施設のリニューアルが進められ、来月4日には、博覧会のメインエリアの一つである桂浜公園の商業施設がグランドオープンを迎えるなど、受け入れ態勢も着実に整ってきております。
こうした機運の盛り上がりをしっかりと生かし、スタートダッシュが切れるよう、来月25日の開幕当日には、メインエリアの牧野植物園をはじめ、県内各地で大規模なオープニングイベントを開催し、県内外に強力に発信します。あわせて、県外の牧野富太郎博士ゆかりの地との連携はもとより、女性や若者をターゲットとしたイベントの企画と情報発信に力を入れ、切れ目のない誘客につなげます。
さらに、地域の旬の草花やグルメ情報をリアルタイムで発信するほか、スタンプラリーをはじめとする県内周遊策を積極的に展開することにより、博覧会を契機に訪れた方を県内各地に呼び込み、県全体の観光振興を図ります。
一方、「らんまん」による盛り上がりを一過性のものに終わらせないためには、本県観光のもう一段の底上げが重要です。このため、自然体験型観光をはじめとするコンテンツの磨き上げやセールスプロモーションに加え、宿泊施設の魅力向上を後押しします。また、一泊でも長く宿泊していただく滞在型の観光地域づくりを進めるため、観光客の滞在時間や移動経路といったビッグデータを分析し、周遊促進などに取り組む広域観光組織を積極的に支援します。
県、市町村、JAグループ、食肉事業組合が一体となって整備を進めてきた高知市の新食肉センターが来月完成を迎え、4月から操業を開始します。
この新たな食肉センターは、牛をメインに、と畜から部分肉加工、卸売販売までを一貫して行う施設であり、畜産振興にとどまらず、安全、安心な食肉の供給といった観点からも極めて重要な役割を担います。このため、県としても、センターの安定的な経営が図られるよう、JAグループなどと連携し、産業振興計画に基づく増頭計画の推進、畜産物の販路拡大などにしっかりと取り組みます。
次に、日本一の健康長寿県づくりの取り組みについてご説明申し上げます。
新型コロナウイルス感染症につきましては、本県も含め、全国的に新規感染者数の減少傾向が続いています。依然として警戒が必要ではあるものの、感染の第8波は徐々に落ち着きつつあるものと受け止めております。
また、昨年来の国の対応方針や現在主流となっているオミクロン株の特性などを踏まえれば、平時への移行を具体的に検討すべき時期を迎えたものと考えています。国においても、原則本年5月8日から感染症法上の位置付けを5類に引き下げることを決定し、来月上旬には現在の公費負担や医療提供体制などの見直しに係る方針が示される見込みです。
一方、今後も一定の感染が続くと見込まれることから、5類への引き下げ後も、重症化リスクの高い高齢者などの命を守りながら、平時の社会経済活動への円滑な移行を実現する必要があります。先週開催された全国知事会と厚生労働大臣との意見交換会では、こうした考え方を踏まえ、受診控えやワクチンの接種控えを招かないよう、各種の公費負担の見直しは段階的に進めていく必要がある旨、私から大臣に直接訴えました。
引き続き、国に万全の対応を求めるとともに、県内の医療機関の理解と協力が得られるよう努めます。また、県民の皆さんに混乱を生じさせないよう、来月13日に予定されている国のマスク着用基準の見直し方針の周知も含め、丁寧な情報発信を行います。
日本一の健康長寿県構想については、3つの柱に基づく取り組みの成果と課題をしっかりと検証した上で、デジタル化や国の動向を捉えた施策展開といった観点から同構想のバージョンアップを図り、目標の達成を目指します。
ア 健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進
1つ目の柱の「健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進」では、重症化のリスク要因を持つ人、いわゆるハイリスク層に対するアプローチと、県民全体の健康増進を図るポピュレーションアプローチの強化に取り組んできました。その結果、女性の健康寿命が目標値を上回って延伸するといった成果が表れております。しかしながら、依然として壮年期の男性の死亡率が全国より高いといった課題が残っていることから、血管病重症化予防対策の一層の推進や、県民の健康増進に関する取り組みの拡充を図ります。
具体的には、これまでの取り組みにより、重度の糖尿病性腎症患者の透析導入時期を5年程度遅らせる可能性が見えてきたことを踏まえ、透析予防強化プログラムを早期に県内全域に展開できるよう、医療機関や市町村のご意見も伺いながら地域ごとの普及計画を策定します。さらに、このプログラムを糖尿病性腎症の軽度から中等度までを対象とした重症化予防プログラムと統合し、患者を切れ目なく支援できる仕組みへと発展させます。
このほか、加齢に伴う心身の衰え、いわゆるフレイルの状態を自身で簡単にチェックできるアプリの導入などを進め、健康増進に向けた行動変容を一層促します。
イ 地域で支え合う医療・介護・福祉サービス提供体制の確立とネットワークの強化
2つ目の柱の「地域で支え合う医療・介護・福祉サービス提供体制の確立とネットワークの強化」では、在宅での療養を希望される方が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、環境整備をもう一段進める必要があると考えています。このため、デジタル技術も活用しながら在宅療養体制のさらなる充実を図るほか、高知型地域共生社会の実現を目指した施策や中山間地域のサービス提供体制への支援を拡充します。
(在宅療養体制の充実)
在宅療養体制の充実に関する取り組みでは、昨年末、宿毛市の医療機関に通信・医療機器を搭載した車両、いわゆるヘルスケアモビリティが県内で初めて導入されました。看護師が同乗して検査やオンライン診療を行うことが可能となり、利用者から「通院に2時間かかっていたが、自宅で診察してもらって本当に助かった」という声をいただいています。
こうした効果も踏まえ、来年度は導入する医療機関の拡大を図ります。あわせて、国の規制緩和が実現され次第、近隣のあったかふれあいセンターでの診療が可能となるようネットワーク環境の整備などを進め、県内全域でのオンライン診療の展開を目指します。
さらに、中山間地域の訪問看護ステーションへのサポート体制を強化するため、看護協会や県立大学との連携の下、人材の確保と育成、業務の効率化などを支援する訪問看護総合支援センターを高知市に設置します。
(高知型地域共生社会の推進)
地域共生社会の推進では、8050問題などの解決に向け、分野を超えた多機関協働型の包括的な支援体制の整備を進める市町村が来年度は6から19に拡大するなど、着実に取り組みが広がってきました。昨年10月の「高知家地域共生社会推進宣言」には県内全ての市町村長と社会福祉協議会会長が参画し、オール高知で取り組もうとする機運も高まっています。
こうした分野を超えた包括的な支援体制の整備を「縦糸」として促進し、地域における人と人とのつながりの再生に向けたネットワークづくりを「横糸」としてしっかりと展開します。この縦糸と横糸で織りなす地域共生社会の拠点としてあったかふれあいセンターを活用することにより、これまでの「高知型福祉」の取り組みを、「高知型地域共生社会」へと発展させることを目指します。
このため、来年度は全ての市町村で早期に包括的な支援体制が整備されるよう働きかけを強め、体制整備に着手する際の伴走支援も強化します。あわせて、各分野の相談支援員や教員、ボランティアなどを対象とした研修事業をスタートさせ、地域における支援ネットワークの構築を進めます。また、各分野の支援サービスを一元的に情報発信するほか、ひきこもりやヤングケアラーなどに関する総合的な啓発イベントを開催し、県民一人ひとりの理解促進と参画意識の醸成を図ります。
(中山間地域における介護・障害福祉サービス提供体制の確保)
中山間地域の介護、障害福祉サービス事業所においては、職員の高齢化に加え、労働人口の減少などを背景に人材確保が厳しさを増しており、強い危機感と支援の充実を求める関係者からの切実な声をお聞きしています。
そのため、ケアマネジャーやホームヘルパーの新規雇用に係る一時金や転居費用などの経費を新たに支援するとともに、報酬の上乗せ支援の対象事業所を拡大します。こうした取り組みを通じて、中山間地域におけるサービス提供体制の維持と事業者の新規参入の促進を図りたいと考えています。
ウ 子どもたちを守り育てる環境づくり
3つ目の柱は「子どもたちを守り育てる環境づくり」です。
コロナ禍を経て、地域における人と人との関わりの希薄化が一段と進み、子育て家庭を取り巻く環境は厳しさを増しております。このため、育児経験者による相談体制の構築や子育て家庭に寄り添う地域ボランティアの拡大など、住民参加型の子育て支援を推進し、子育て家庭の孤立防止と育児不安の解消につなげます。
また、行政による支援体制の強化にも取り組みます。具体的には、国が進める母子保健部門と児童福祉部門を統合した「こども家庭センター」への移行も見据え、市町村における両部門の一体的なマネジメント体制の構築が進むよう、アドバイザーの派遣などの支援を拡充します。
加えて、支援にあたる市町村職員などについては、各家庭のリスクに応じた対応力の向上が図られるよう、研修メニューを充実させます。あわせて、学校との連携を強化するため、校内支援会への参加やスクールソーシャルワーカーとの迅速な情報共有といった活動を促進します。
次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。
全ての子どもたちが社会や時代の変化に応じて課題を発見、解決する力を身に付け、自らの可能性を最大限に発揮できるよう、学びのさらなる充実が求められています。このため、「デジタル技術を活用した学力向上対策の強化」、「不登校対策の強化」、「地域や学校の実情に応じた学校部活動の地域連携等の推進」といった観点の下、施策をさらに強化します。
学力向上対策では、一人ひとりの学習のつまずきを早期に発見、解決し、基礎学力の定着を図るため、デジタル技術の活用をさらに進めます。
具体的には、児童生徒の理解に応じて出題されるAIデジタルドリルを用いた実証研究を行い、効果的な活用方法を県内全ての小中学校に普及させていきます。また、高等学校においても、デジタルノート機能などを備えた学習支援アプリやAIデジタルドリルの活用に取り組み、個々の生徒の学習状況に応じた学びの充実を図ります。
あわせて、授業と家庭学習のサイクル化が図られるよう、家庭にタブレットを持ち帰り、効果的に学習を行っている学校の事例を横展開するなど、タブレットの日常的な活用を推進します。
地域や学校を問わず、子どもたちの多様なニーズに応じた教育の機会が確保されることは大変重要です。そのため、中山間地域の多い本県では、デジタル技術による教育機会の格差解消を目指し、教育センターを配信拠点とした同時双方向型の遠隔授業や補習に取り組んできました。
来年度は、遠隔授業の実施校を増やすほか、配信科目についても教員不足が課題となっている「情報Ⅰ」を追加し、量、質ともに一層充実させます。また、自身が持つ免許以外の教科を教える教員、いわゆる免許外教員への遠隔教育システムを活用した支援では、対象となる教科の追加や支援地域の拡大を進めます。
不登校対策については、全国平均を上回るペースで不登校の児童生徒数が増加するなど依然厳しい状況にある中、これまでの取り組みを通じて一定の効果も見られています。
例えば、小学校では、不登校担当教員の配置校において、不登校の新規発生率に一定の抑制効果が表れており、中学校では、校内適応指導教室の設置により、不登校日数の減少につながっています。また、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置の充実などに取り組んだ結果、支援を受けている不登校児童生徒の割合は全国に比べ大幅に高くなっています。
こうした成果を踏まえ、来年度は、課題のある地域において一連の対策を集中的に行うことで相乗効果を生み出し、不登校の改善につなげたいと考えています。
また、元の学校への登校を目指すことのみにとらわれず、多様な教育機会を確保するといった新たな観点も必要であると考えます。そのため、国の方針にも示されている不登校特例校の設置やフリースクールとの連携などを視野に入れ、具体策の検討に着手します。
(保幼小の連携強化)
学力の向上、あるいは不登校の未然防止といった取り組みを進めるにあたっては、就学前教育の充実に加え、保幼小が一体となって子どもたちの成長を共に支えていくことが大変重要となります。
このため、現在、高知市のモデル地域において作成が進められている、小学校への円滑なつなぎに向けたカリキュラムについて、市と共にその実行、検証、改善に取り組みます。その上で、成果やノウハウを県内全域へ普及させ、保幼小の連携をさらに強化します。
昨年12月、国から「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」が公表されました。
この中では、学校部活動の「地域移行」に加え、拠点校方式による合同部活動や部活動指導員の配置といった学校部活動の「地域連携」という考え方が示されました。また、こうした部活動改革について、令和5年度から7年度を改革推進期間として取り組みながら、地域の実情に応じて可能な限り早期の実現を目指すとされています。
今回のガイドラインを受け、本県では、新たに示された「地域連携」の手法も含めて、県の検討会議でさらに議論を深めていきます。あわせて、市町村においても、地域の実情に応じた今後の部活動のあり方や具体的な取り組みについて検討が進むよう後押しします。
さらに、部活動指導者への外部人材の活用を進めるほか、地域における受け皿の充実を図るなど、子どもたちがスポーツや文化芸術活動に親しめる持続可能な環境の整備に向けてしっかりと取り組んでいきます。
以上のような取り組みについて、第2期教育大綱の第3次改訂に反映させ、私も参加する総合教育会議において引き続きPDCAサイクルをしっかりと回しながら、教育の振興を図ります。
次に、南海トラフ地震対策についてご説明申し上げます。
第5期南海トラフ地震対策行動計画の2年目となる来年度は、想定死者数を約8千8百人から約4千3百人に半減させるという計画目標の達成に向けて一連の取り組みを加速させます。
まず「命を守る」対策では、津波からの早期避難や室内の安全対策といった自助の取り組みを促すため、動画サイトやSNSを活用した県民への啓発活動を強化します。加えて、要配慮者の個別避難計画の作成に関する支援策を拡充し、市町村の取り組みを力強く後押しします。
「命をつなぐ」対策では、災害時における飲料水の確保も非常に重要となります。そのため、給水車や給水用資機材の整備費用を新たに補助するなど、市町村が行う水道BCP策定への支援と併せて、応急給水態勢をハードとソフトの両面から強化します。
「生活を立ち上げる」対策では、事前復興まちづくり計画の策定を本格化させ、令和6年度末までに沿岸19市町村全てにおいて策定に着手できるよう、新たに策定経費に対する補助制度を設けます。あわせて、今後予定している堤防整備などの効果も踏まえた津波浸水シミュレーションを行い、浸水区域を考慮した土地利用の検討を後押しします。
こうした取り組みに加え、危機管理部内に「事前復興室」を新たに設置し、市町村の計画策定をよりきめ細かくサポートしていきます。
次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。
地域の経済活動を支え、南海トラフ地震といった大規模災害に備えるためには、道路や堤防、港湾などのインフラ整備が重要であることは言うまでもありません。これまでの取り組みにより四国8の字ネットワークの整備や浦戸湾の三重防護事業などが着実に進んできたものの、依然として整備を急ぐべき箇所は数多くあります。このため、国の5か年加速化対策も最大限活用しながら、スピードを緩めることなく、地域の実情に応じたインフラ整備を引き続き全力で進めます。
また、先月には、四国8の字ネットワークの整備促進に向け、関係する市長、町長と共に、残る未事業化区間である「宿毛和田~宿毛新港」間と「奈半利~安田」間の早期事業化などを国に対して強く訴えました。
引き続き、必要なインフラ整備が着実に進むよう関係市町村や他県と連携し、国などに対して積極的に政策提言を行います。
(インフラ分野におけるデジタル化の取り組み)
建設現場の生産性向上、施設の維持管理の効率化といった観点から、インフラ分野においてもデジタル技術の導入を積極的に進めております。
来年度は、特に、道路をはじめとするインフラ施設の維持管理の効率化、高度化を図るため、日常の巡視や定期点検においてドローン、AIなどの新技術の活用を拡大します。加えて、現実の地形、建物などを仮想空間に再現する技術、いわゆる「デジタルツイン」を活用して、効果的な災害対策や施設管理手法などの検討を進めます。
次に、中山間対策の充実、強化についてご説明申し上げます。
本年度、中山間対策を抜本強化し、「地域に活力を生む」、「くらしを支える」、「しごとを生み出す」の3つの柱と関連施策による取り組みを展開してきました。来年度は、引き続き市町村と連携、協調しながら、一連の施策をさらに進化させます。
具体的には、まず、中山間対策の核となる集落活動センターの開設を引き続き積極的に後押しするほか、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて活動が停滞しているセンターの再始動を支援します。あわせて、地域外との関係人口づくりを強化するため、センターを地域活動のフィールドとした、大学との連携促進を図ります。
また、本年度から開始した小さな集落の維持、活性化の仕組みづくりでは、取り組む市町村を増やし、地域が抱える課題の解決に向けた住民同士の主体的な動きの拡大へとつなげます。さらには、地域の暮らしを支える取り組みとして、新たにマイナンバーカードを活用したバス乗降システムの実証実験を行います。
地域の担い手確保の取り組みでは、令和8年度に地域おこし協力隊員を現在の約2倍となる500人確保することを目指して、情報発信のさらなる強化や隊員のサポート体制の充実を図ります。あわせて、地域における安定的な雇用環境の確保に資する「特定地域づくり事業協同組合」の設立を促進するため、市町村への支援を拡充します。
(移住促進)
県外からの移住の促進に関しては、相談者数の増加を図るとともに、中山間地域における受入体制をさらに強化します。
このうち、相談者を増やすための取り組みでは、デジタルマーケティングの手法を活用し、今まで十分にアプローチできなかった移住関心層に支援制度やイベントの情報などを的確に届け、相談窓口への誘導を図ります。
加えて、移住促進のメインエンジンである「高知県移住促進・人材確保センター」の名称を「高知県UIターンサポートセンター」に改めます。これにより、Iターンだけでなく、Uターンを希望される方も支援する機関であることを明確に示し、県内外から広く相談を呼び込みます。
また、受入体制の強化では、引き続き魅力的な仕事の掘り起こしと住まいの確保を進めます。特に住まいに関しては、デジタル技術を活用してインターネット上で空き家の内覧ができる機能を移住ポータルサイトに導入し、移住希望者に効果的かつ効率的に紹介していきます。あわせて、市町村の担当者などを対象に、空き家のマッチングに関する講演会や研修を開催し、他県の先進事例の手法やノウハウを県全体に普及させます。
これらの取り組みを通じて、来年度は第4期産業振興計画の最終目標である年間移住者数1,300組の達成を目指します。
以上のような施策の着実な実行と併せて、有識者や市町村代表の皆さんからご意見、ご提案をいただきながら中山間地域再興ビジョンの策定に向けて検討を深めます。その中で、県が目指す中山間地域の姿、その実現に必要な施策、達成すべき目標などをしっかりと示してまいります。
次に、少子化対策の充実・強化と女性の活躍の場の拡大についてご説明申し上げます。
昨年の全国の出生数は初めて80万人を下回る見通しとなっており、本県においても4千人台を割り込む厳しい状況が見込まれています。
こうした中、岸田総理は少子化を国家の存続に関わる問題として「次元の異なる少子化対策」を打ち出し、政権の最重要政策に位置付けました。今後、来月末を目途に子ども政策の抜本強化に向けた具体的なたたき台を示した上で、4月に発足する「こども家庭庁」を司令塔として、必要な政策を体系的に取りまとめ、将来的に関連予算の倍増を目指すこととしています。
こうした動きを捉え、国の施策が質と量の両面から十分なものとなるよう、県民の皆さんのご意見もお聞きしながら、積極的に政策提言を行い、併せて国の強化策を踏まえた本県の少子化対策のさらなる充実強化を図ります。
このほか、来年度は、新たに取り組む異業種間の交流の場を含め、出会いの機会を大幅に拡充するほか、男性の家事育児への参画を強力に推進し、社会全体で子育てを応援する意識の醸成を図ります。また、少子化対策推進県民会議と連携し、若い世代の意見を反映しながら、ライフステージに応じた少子化対策を官民協働で力強く推し進めます。
女性の活躍の場の拡大につきましては、性別にかかわらず、社会や職場、家庭、地域で活躍できるよう、来月、「女性活躍推進計画アクションプラン」を取りまとめます。
女性が活躍する社会の実現には、固定的な性別の役割分担意識の解消をはじめとする、社会全体の意識改革が欠かせません。このため、アクションプランでは、「女性の活躍に向けた意識改革」と「女性が活躍できる環境づくり」を柱に掲げ、働き方改革に関する先進事例の横展開や女性の就労支援の強化など、各分野において実効性のある施策を展開したいと考えています。
このアクションプランの下、女性が自らの希望や意思に基づいて人生を選択し、個性や能力を最大限に発揮できる高知県を目指し、より一層強力に取り組みを進めていきます。
次に、文化芸術とスポーツの振興についてご説明申し上げます。
文化芸術の振興につきましては、近年、中山間地域における伝統的な祭りや民俗芸能の維持、存続が大きな課題となっております。このため、地域の担い手の育成や、祭りの衣装をはじめとする用具の整備への支援について、その対象を広げるなど、地域の価値ある伝統芸能を絶やすことなく、次世代に継承できるよう取り組みを強化します。
また、新たな県史の編さんに関しては、古代中世及び現代の2つの専門部会を加え、体制の充実を図ります。今後とも県民の皆さんのご要望もお伺いしながら、編さん方針を具体化した上で、各地に残る歴史資料の調査を精力的に進め、その成果を早期にお示しします。
スポーツの振興につきましては、来年度スタートする第3期スポーツ推進計画において3つの柱を掲げ、スポーツの楽しさや感動を共有し、希望と活力ある社会の実現を目指して取り組みを進めたいと考えています。
まず1つ目の柱は「スポーツ参加の拡大」です。子どものスポーツ環境づくりや、中山間地域における住民のスポーツ活動を支援するなど、誰もが身近な地域で安心してスポーツに親しめる機会の拡大を図ります。2つ目の柱の「競技力の向上」では、全国や世界を目指す選手の育成に向け、競技団体による選手の強化を支援するほか、スポーツ科学センターによるサポートのさらなる充実を図ります。3つ目の柱の「スポーツを通じた活力ある県づくり」では、プロスポーツのキャンプや大会の誘致に加え、市町村などと連携を強化し、地域の特色を生かしたスポーツツーリズムを推進します。
さらに、3つの柱に横断的に関わる施策として、スポーツにおけるデジタル技術の活用促進や、産学官民の連携によるスポーツを支える体制の充実を図り、本県のさらなるスポーツ振興につなげます。
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、令和5年度高知県一般会計予算など41件です。
条例議案は、高知県環境不動産の建築の促進に関する条例議案など23件です。
その他の議案は、高知県立月見山こどもの森の指定管理者の指定に関する議案など12件であります。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。