公開日 2023年04月05日
令和5年4月3日(月)
(はじめに)
令和元年12月に知事に就任し、はや任期の最終年度を迎えました。
これまで、「共感と前進」を基本姿勢とし、職員の皆さんとともに県政課題の解決に向けて挑戦を続けてまいりました。新たに打ち出した取り組みも着実に前進をし、手応えを感じているところです。
令和5年度は、県民の皆さんにお約束した事業の成果に徹底してこだわり、「成果重視」、そして「県民の皆さんに成果を実感していただくこと」を掲げて取り組みたいと考えます。同時に、先々の県政を見据えて、未来に向けた備えとして必要な施策の仕込みや種まきにも意を払ってまいります。
新年度のスタートに際して、大きく2つ、「仕事に当たっての基本的な姿勢」と、「各部局で共通認識としていただきたい本年度の政策課題への対応」についてお話をいたします。
(仕事に当たっての基本的な姿勢)
まず、仕事に当たっての基本的な姿勢についてであります。
皆さんには、「県政運営指針」に掲げます「高知県の目指すべき姿」、そして「高知県庁の目指すべき姿」を今一度強く意識して仕事に取り組んでいただきたいと思います。
本県は、「幸せで将来に希望が持てる県」として「県民の皆さんがいきいきと仕事し、いきいきと生活し、安全・安心に暮らせる県」を目指すべき姿として掲げております。
こうした目指すべき姿の実現に向けて、「共感」と「前進」の県政を進めるために重要となるキーワードが5つあります。「透明性」「想像力」「使命」「進化」「挑戦」の5つであります。
まず、県民の皆さんの「共感」が得られる県政を実現するために必須となる2つのキーワードについてお話をいたします。
1つは、透明性、英語で言えば「アカウンタビリティ」にあたります。
特に県庁自体が逆境にある時に、透明性をもって県民の皆さんに対する説明責任を果たさなければ、県民の皆さんからの信頼は得られません。したがって「共感」は生まれないことになります。
法令順守の徹底はもとよりですけれども、県庁が今、何を考えているかということについて県民の皆さんに丁寧にご説明をし、県民の皆さんの声に耳を傾ける。これによって「共感」を得ることで施策がはじめて「前進」すると心得ていただきたいと思います。
2つ目のキーワードは想像力、英語でいう「イマジネーション」であります。
県民の皆さんの「共感」を得ていくためには、県民の皆さんが県政に今、何を求めているかについて想像力を働かせることが大変重要であります。また、一般論としても、相手は必ずしも自分と同じ発想をしているとは限りません。事が起きてから対策を講じるということではなく、あらかじめ想像力を発揮して相手の反応を読み、先手を打って対応していただきたいと思います。
次に、県政を「前進」させるために必須となります3つのキーワードについてお話をいたします。
1つ目は、県職員としての使命、英語で言う「ミッション」であります。
「高知県の目指すべき姿」の実現に向けて、ミッション、つまり自分の仕事は何のためにやっているのか、絶えず自問自答していただきたいと思います。自分の仕事が県民の皆さんにどうお役に立てているのか、手段が目的化していないのか、漫然と前例を継続していないのかといったことを常に意識していただきたい。そして、もっと良いやり方はないのかということを絶えず考えて、改善を重ねていただきたいと思います。これこそが「前進する県庁」の座標軸となり、そしてエンジンとなります。
2つ目が、進化「エボリューション」であります。
加速化する少子化や人口減少、地球温暖化、デジタル技術の進展など、時代は刻々と変化をし、課題も複雑化・複合化しています。こうした時代の変化に合わせて県庁も進化をし続けなければ、本県のあるべき姿の実現は叶いません。
国際的なトレンドや経済情勢、あるいは国の政策の動向、こういったものを踏まえまして、時代の潮流を的確に捉えて、全国区の視点を持った先進的な施策を追求していただきたいと思います。こうして常に進化しながら、「前進」を続けてもらいたいと思います。
3つ目のキーワードが、挑戦、「チャレンジ」であります。
困難な課題が山積する中で、「自分たちが新たな道を切り拓くんだ」という挑戦心がなければ現状の打破はできません。「前進」する歩みもそこで止まってしまいます。
前例のない施策でありましても、変化や批判、あるいは失敗を恐れずに、「まずはやってみよう」という気持ちで果敢に挑戦を続けることが肝要であります。
最後に、これら5つのキーワードの実行に加えまして、いわゆる官民連携、市町村政との連携協調が極めて重要であります。県庁だけでできることは限られています。「オール高知」を意識して関係する方々と真摯に対話を重ねて、ベクトルを合わせて取り組みを進める、こういったことを心掛けていただきたいと思います。
本年度は取り組みの成果を実感いただくことで県民の皆さんの共感が得られ、それによって取り組みがさらに前進して新たな成果を生んでいくという意味で、「共感と前進の好循環」が実現するように目指していただければありがたいと思います。
(全部局で共通認識としていただきたい本年度の政策課題への対応)
次に、全部局で共通認識としていただきたい本年度の県の政策課題への対応について、お話をいたします。
3年以上続きましたコロナ禍への対応は大きな転換点を迎えております。ようやく平時への移行期を迎えつつあると言えると思います。NHKの連続テレビ小説「らんまん」や大阪・関西万博に向けた関西圏の経済活力の高まりといった追い風をしっかりと捉えまして、県勢浮揚への道筋をより確かなものにしていきたいと考えます。
(連続テレビ小説「らんまん」を生かした観光振興)
まず第1に、連続テレビ小説「らんまん」を生かした観光振興についてであります。
待ちに待った放送が開始をされました。先月25日には観光博覧会も開幕をし、既に県外から多くの観光客の方々が本県を訪れておられます。
この千載一遇のチャンスをしっかりと生かし、自然や食、歴史、人といった本県の魅力を全国にPRをしていくことによりまして、本県観光の再生はもとよりでありますが、例えば県産品の販路拡大などといった形で幅広く波及効果を生み出していただきたいと思います。
(関西圏との経済連携の強化)
第2に、関西圏との経済連携の強化について申し上げます。
令和7年開催の大阪・関西万博に向けまして、関西の企業などとの連携を深めると同時に、観光や外商拡大などに具体的な成果を生み出して、関西戦略がしっかりと前進していることを県民の皆さんに発信していただきたいと思います。
拠点となるアンテナショップにつきましては、「極上の田舎」高知の魅力を体感できる店として関西の皆さんに広く受け入れられますように、県の総力を結集して機能を練り上げていただきたいと思います。
(デジタル化、グリーン化、グローバル化、という潮流を捉えた施策のバージョンアップ)
第3に、デジタル化、グリーン化、グローバル化、という時代の潮流を捉えた施策のバージョンアップについてであります。
このうちデジタル化については、具体的に「何がどう変わるのか」という将来イメージを県民の皆さんと共有をし、利便性を実感していただきながら進めていくことが肝要だと考えます。
生活面では、特に地理的ハンディを抱えます中山間地域の課題解決という点を意識して、オンライン診療や遠隔授業の拡充、生活物資の輸送手段の確保といった取り組みを進めていただきたいと思います。
産業面では、ハウス園芸農業など一次産業分野の取り組みを中心に成果が見え始めております。こうした取り組みをあらゆる分野で展開していくことで、各分野におけます構造転換を一層推進して下さい。
行政面では、県民の皆さんに利便性を実感してもらえますように、電子申請などの一層の利用促進を図ってもらいたいと思います。また、デジタル化による県庁の働き方改革も進めて下さい。
このうちのグリーン化についてでありますが、再造林の取り組みの抜本強化あるいは本県発の環境不動産認定制度の普及などといった形で、全国のロールモデルを目指した取り組みを軌道に乗せてもらいたいと思います。また、省エネ設備の導入促進などによりまして、資源高・物価高に打ち勝てる、そういった産業・生活への転換を促していくことも今の喫緊の課題になっております。
3つ目のグローバル化につきましては、輸出拡大に向けたサポート体制の充実やインバウンド観光を推進をしていくことのほかに、外国人材の受け入れ拡大を軸に反転攻勢に転じていただきたいと思います。
(中山間地域の再興)
第4に、中山間地域の再興についてであります。
10年後、20年後の本県の中山間地域の将来像を大きな構図として描き、その実現に向けた具体的な施策、道筋を「中山間地域再興ビジョン」として策定をしたいと考えます。そしてこれを未来を切り拓いていくための道しるべとして県民の皆さんに力強く示したいと考えております。
(その他の主要政策)
第5に、その他の主要施策について簡明に申し上げたいと思います。
(日本一の健康長寿県づくり)
まず、日本一の健康長寿県づくりについてであります。
県民の皆さんの健康寿命の延伸に向けまして、成果が見え始めました透析予防強化プログラムの全県展開、そしてデジタル技術を活用した健康づくりを推進をしていくということ。また、「高知型地域共生社会」の実現に向けました市町村の体制整備と地域での支援ネットワークの構築、これをしっかりと進めていただきたいと思います。
加えまして、住民参加型の子育て支援の充実などを通じまして、安心して結婚、出産、子育てができる県づくりに一層努めていただきたいと思います。
(教育の充実)
次に、教育の充実についてです。
学力の向上に向けましては、デジタル学習教材を効果的に活用するなど、個々の生徒に応じた学びの充実をしっかりと推し進めて下さい。また、不登校対策につきましては、問題を抱える学校に対して集中的に効果的な対策を講じること。それと同時に、子どもたちの主体性を尊重した多様な教育機会や場の確保策について幅広く検討を進めるようにお願いいたします。
(南海トラフ地震対策)
南海トラフ地震対策についてであります。
新設した「事前復興室」を中心に関係部局がしっかりと連携をし、沿岸19市町村の事前復興まちづくり計画策定の伴走支援をはじめといたしまして、生活を立ち上げる対策を一気に進めて下さい。
(インフラの充実)
インフラの充実についてであります。
「安全・安心な高知」の実現に向けまして、道路や河川などのインフラ整備を着実に前進をさせると同時に、新設した「高規格道路用地室」や「盛土対策室」を効果的に機能をさせ、新たな課題に迅速かつ丁寧に対応してもらいたいと思います。
(少子化対策と女性の活躍推進)
少子化対策と女性の活躍推進についてであります。
国におきまして、次元の異なる少子化対策の具体的なたたき台が取りまとめられました。今後、国の動向をしっかりと捉え、本県としても少子化対策の抜本強化を進めたいと考えます。
女性の活躍推進については、県でも率先して進めるべく、今年度の人事異動では、管理職・ポスト職への女性の登用に一層の意を用いました。引き続き、キャリアアップに向けた意識の醸成、能力を最大限発揮できる適材適所の人材配置に努めてまいります。
(文化芸術とスポーツ)
文化芸術とスポーツ振興についてです。
伝統的な祭りや民俗芸能の継承への支援、地域スポーツの振興などを進めてまいります。これによって文化芸術・スポーツの観点からも中山間地域の活性化をしっかりと後押しをしてもらいたいと考えます。
(管理職へのお願い)
続けて、管理職の皆さんに特に留意していただきたい事項をお伝えをいたします。
デジタル化や中山間対策、女性の活躍促進など、部局の枠組みを超えた連携協力が求められる場面が増えております。各部局がこうした課題を「我が事」として捉え、率先して施策に取り込む、そういった積極姿勢で臨んでいただきたいと思います。
組織の成果を最大化するために、特に所属長と補佐、次長がしっかりと連携をしながらマネジメントを行い、職員間のコミュニケーションの活性化に努めてもらいたいと思います。また、新規採用職員に対しては職場全体でしっかり目配りを行ってあげて下さい。
職員のワーク・ライフ・バランスの実現に向けましては、時間外勤務の削減、休暇の取得、男性の育児休業取得などにつきまして、職場全体で推進しようとする機運を高め、行動につなげて下さい。あわせて、適正な事務執行やハラスメントの防止についても一層意を払っていただきたいと思います。
(おわりに)
全体の最後に、冒頭でも申し上げましたとおり、本年度は徹底して成果にこだわりながら、5年10年先の県政もにらんで各般の取り組みを強力に推し進めること、そして、県政をより高いステージへ引き上げることを目指してまいります。将来振り返って見た時に、令和5年度が未来への弾みとなった1年であったと、そういう評価をいただける、そんな年にしたいと思います。
元気で豊かな高知県、そしてあたたかい高知県の実現を目指して前へ前へと着実に進んでいけますように、そしてよりよい形で高知県を次世代に引き継いでいけますように、私自身も一層精進をしてまいる考えであります。職員の皆さんにも今まで以上に自らのミッションの達成に向けて挑戦と進化を続けていただきたいと思います。本年度もどうかよろしく申し上げます。