令和5年9月21日 令和5年9月県議会での知事提案説明

公開日 2023年09月21日

令和5年9月21日 令和5年9月県議会での知事提案説明

1 県政運営の基本姿勢
2 補正予算など

(1)9月補正予算
(2)県財政の健全化と今後の財政収支見通し
3 経済の活性化
(1)産業振興計画の推進
(2)観光振興の取り組み
(3)関西圏との経済連携の充実強化
(4)デジタル化、グリーン化、グローバル化の取り組み
4 日本一の健康長寿県づくり
(1)健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進
(2)地域で支え合う医療・介護・福祉サービス提供体制の確立とネットワークの強化
(3)子どもたちを守り育てる環境づくり
5 教育の充実
6 南海トラフ地震対策
7 インフラの充実と有効活用
8 中山間対策の充実、強化
9 少子化対策の充実・強化と女性の活躍の場の拡大
10 文化芸術とスポーツの振興
11 その他
(1)動物愛護センターの整備
(2)公正取引委員会による処分
12 議案

1 県政運営の基本姿勢
私を生み育ててくれたふるさと高知に恩返しがしたい、という強い思いを胸に、私が知事として県政の舵取り役の任に当たることとなってから、間もなく4年が経とうとしています。この間、県民の皆さんとの対話を通じて県政に対する「共感」を得ながら、課題解決に向けて確実に「前進」していくという「共感と前進」を基本姿勢として、県政運営に邁進してきました。

(新型コロナウイルス感染症への対応)
この4年間における最大の県政課題は、世界中で猛威を振るった新型コロナウイルス感染症への対応でした。未知のウイルスを前に、確たる知見がない中、感染拡大防止と社会経済活動の両立という難題に対して、臨機応変に決断を下しながら全力で取り組んできました。
中でも、県民の皆さんの安全、安心を最優先とし、医療提供体制の確保に尽力しました。誰もが不安なく検査や診療を受けられるよう、検査協力医療機関を全国に先駆けて公表し、その拡充を図りました。また、必要となる入院病床及び宿泊療養施設のほか、人工呼吸器や陰圧装置といった医療資機材の整備に取り組みました。その結果、検査協力医療機関は最大275機関にまで拡大し、入院病床も最大444床を確保するなど、全県的な医療提供体制を構築することができました。
また、感染急拡大時には、県民や事業者の皆さんに対して不要不急の外出やイベントの開催を差し控え、飲食店の営業時間を短縮することなどを呼びかけ、感染の拡大防止と医療のひっ迫の回避を図りました。
さらに、感染防止の切り札となるワクチンの接種促進にも全力で取り組みました。円滑な接種に向けた市町村への支援のほか、県営の大規模接種会場の設置などにより、これまでに県内で延べ226万回余りの接種が行われ、感染予防や重症化予防に大きく寄与しました。加えて、全国知事会において私自身がワクチンチームのリーダーに就任し、国への提言活動などを通じて現場の課題をしっかりと訴え、全国におけるワクチン接種が円滑に進むよう取り組みました。
このほか、無症状者を対象とする無料検査を全県的に実施し、感染拡大の防止と日常生活の回復を図り、加えて、高齢者施設などにおいて集中的検査を行い、集団感染の抑止に努めました。
このように感染拡大防止に取り組むと同時に、影響を受けた事業者や県民の皆さんに対して、状況に応じて様々な支援策を展開してきました。
まずは感染拡大による社会経済活動の停滞がもたらした県経済への影響を最小限にとどめるため、国に先駆けて民間金融機関と連携した県独自の融資制度を創設し、事業者の資金繰りを強力かつ迅速に支援しました。また、感染拡大によって影響を受けた事業者に対する幅広い給付金制度を創設するなど、感染状況に応じてきめ細かな支援を行いました。その結果、コロナ禍にあっても、県内事業者の倒産件数を極めて低い水準に抑えることができました。あわせて、生活福祉資金の特例貸付を継続的に実施したほか、国への政策提言を通じて特例貸付の償還免除要件を緩和するなど、生活が困窮している方への支援も進めました。
また、感染拡大により落ち込んだ経済活動の回復を図るため、オール高知による「高知家応援プロジェクト」をはじめ、県内での消費喚起に向けた様々な施策を実施しました。加えて、交通費の助成を行う「観光リカバリーキャンペーン」を全国に先駆けて展開するなど、本県観光の一刻も早い回復を目指して取り組みました。
さらに、アフターコロナを見据え、新製品の開発や新サービスの提供といった新たな事業展開への支援のほか、デジタル技術の導入に対する支援など、事業者の構造転換を促す取り組みを積極的に進めました。
新型コロナウイルス感染症は、本年5月から感染症法上の位置付けが5類感染症となりました。街中には人通りが戻り、コロナ禍で中止となった多くのイベントが再開されるなど、ようやく日常を取り戻しつつあります。また、県経済についても、一連の支援策の効果もあり、順調に回復を続けています。
これまでの間、県民の皆さんをはじめ、事業者や医療・福祉関係者の方々には、様々な取り組みにご理解とご協力をいただき、改めて心から感謝を申し上げます。
この4年間繰り返し訪れた感染拡大への対応を通じて、経験のない感染症に対しては、科学的根拠に基づいた感染防止対策をしっかりと講じた上で、できるだけ社会経済活動は止めないよう臨機応変に施策を展開することが必要であるとの教訓を得ました。またその際、県民の皆さんの気持ちに常に寄り添い、感染状況を踏まえたメッセージや県の対策について、私自身が前面に立って積極的に情報発信や説明を行うことの重要性も改めて痛感しました。
こうした知見を次なる感染症への対処に生かすため、一連の県の対応について記録を整理し、先日公表しました。加えて、年度内には感染症予防計画を改定し、次なる感染症に備えた体制をより強固にしたいと考えています。

また、ウクライナ情勢などを背景とした原油価格や物価の高騰は、コロナ禍からの回復途上にある県経済に影響を及ぼし続けています。
影響の軽減に向けては、これまで、事業者に対する給付金の支給や資金繰りへの支援を行ったほか、生活者支援としてLPガス代の負担軽減にも取り組みました。あわせて、中長期的な負担軽減を見据え、家庭や事業者の省エネルギー対策への支援を行ってきました。しかしながら、本年7月の高知市の消費者物価指数が前年同月比で3.4パーセント上昇するなど、収束の兆しは見えていません。
こうした中、国において、ガソリン代や電気代などの上昇を抑制する措置が一定期間継続されるほか、来月中を目途に物価高騰対策を含めた経済対策が取りまとめられる予定です。
引き続き、国の動向について情報収集し、全国知事会とも連携した政策提言を通じて必要な財源を確保した上で、県内における的確な経済対策の立案と実施に努めます。

このように、コロナ禍や物価高騰といった社会経済活動全般に関わる厳しい事態に対処しながらも、経済の活性化や日本一の健康長寿県づくりなどの基本政策について、PDCAサイクルを回しながら着実に進めてきました。
その結果、様々な分野で成果が見えてきました。例えば、経済の活性化については、食品分野やものづくり分野の外商実績が輸出の拡大を含めて順調に伸び、観光面では台湾からの定期チャーター便の就航が実現しました。また、日本一の健康長寿県づくりについては、これまで重点的に進めてきた糖尿病性腎症対策が効果を見せ始め、インフラの整備については四国8の字ネットワークや浦戸湾の三重防護といった大規模事業が着実に進んできました。
改めてこの4年間を振り返り、この間いただきました多くの皆さんのご指導、ご鞭撻に対しまして、心より厚くお礼を申し上げます。

(人口減少対策)
一方、今最も早急に取り組まなければならないのは、本県の将来を大きく左右する人口減少への対応です。本県の人口は昭和60年をピークに減少の一途をたどっており、今月1日時点の推計人口は国勢調査の開始以降最少の66万6千人余りとなりました。また、昨年の県内の出生数が47都道府県で最少という衝撃的な結果が示されました。これは、長年にわたる若年層の県外への転出超過によって若年人口、とりわけ女性の若年人口が減少し続けたことが大きな要因となっています。
特に中山間地域においてこうした傾向がより顕著であることから、抜本的な人口減少対策を講じるにあたって、中山間対策と少子化対策を一体的に捉え、全庁を挙げて取り組むこととしました。本年7月には庁内にプロジェクトチームを設置し、「若年人口の増加」、「婚姻数の増加」、「出生率の向上」の3つの観点から、若者にとって魅力のある仕事の確保、出会いの機会の拡充、子育て支援の充実といった幅広い施策を総合的に展開するべく検討を進めています。
また、こうした施策をより実効性のあるものとするためには、市町村との連携が何より重要です。このため、市町村が地域の実情に応じて総合的な対策に取り組めるよう、新たな財政支援のスキームについても検討します。
今後、現在の第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略に続き年度内に策定する次期戦略や、中山間地域再興ビジョンに具体的な施策を盛り込み、市町村、事業者も含めたオール高知で施策を展開していきます。

こうした人口減少対策をはじめ、県勢浮揚に向けて取り組むべき課題は山積しています。県民の皆さんのご支持をいただけるのであれば、次の4年間も私自身が先頭に立ち、これまでの取り組みをより一層力強く発展させ、県勢浮揚をぜひとも成し遂げたい。その上で、元気で豊かな、そしてあったかい高知県を次の世代に引き継ぎたい。知事としての1期目の任期満了を控え、改めてそうした思いを強くしています。

2 補正予算など
(1)9月補正予算
今議会では、経済の活性化をはじめとする基本政策などを着実に推進するため、総額31億円余りの歳入歳出予算の補正並びに総額3億円余りの債務負担行為の追加を含む一般会計補正予算案を提出しています。
このうち経済の活性化に関しては、大阪市梅田におけるアンテナショップの開設準備や、観光博覧会「牧野博士の新休日」終了後の新たな観光キャンペーンの展開に取り組みます。加えて、土佐酒の輸出拡大や県産酒米の生産拡大に向けて精米施設の整備を支援するほか、台湾からの定期チャーター便の継続運航に必要な取り組みを進めます。
また、教育の充実と子育て支援に関しては、学習支援プラットフォーム「高知家まなびばこ」の機能拡充を図ることに加え、県西部で唯一の日本陸上競技連盟の公認施設である宿毛市総合運動公園陸上競技場の改修を支援します。
このほか、新型コロナウイルスの感染拡大時における高齢者施設や障害者施設での集中的検査の実施などに係る予算を計上しています。

(2)県財政の健全化と今後の財政収支見通し
県の財政運営については、常に中期的な展望の下、財政規律を維持しながら、県勢浮揚と県財政の持続可能性の両立を図ることが重要です。
この4年間、新型コロナウイルス感染症や物価高騰に対応しながらも、経済の活性化やインフラ整備といった取り組みを着実に進めてきました。その一方で、国の有利な財源を活用するなど一般財源の負担軽減を図ったことにより、災害や景気悪化といった不測の事態に一定対応できる程度の財政調整的基金を確保できました。加えて、県債残高については、国の5か年加速化対策の活用による一時的な増加にとどめることができています。
今般、昨年度の決算状況や今後の歳入の見込みなどを踏まえ、今後6年間の中期的な財政収支について試算を行いました。その結果、今後想定される大規模事業などを加味しても、事業の効率化や平準化を図る取り組みを行うことで安定的な財政運営に一定の見通しをつけることができました。
しかしながら、物価高騰による県経済への影響の長期化も懸念され、当面は予断を許さない財政状況が続くものと考えられます。加えて、本県の財政運営は地方交付税制度など国の動向に大きく左右されます。
このため、引き続きこうした動向を注視しながら、国に対して地方交付税などの一般財源の確保について積極的に政策提言を行います。また、事務事業のスクラップアンドビルドと行政のデジタル化を一層推進し、施策の有効性や効率性をさらに高めます。

3 経済の活性化
続いて、基本政策の取り組みなどについてご説明申し上げます。まず初めに、経済の活性化についてであります。

(1)産業振興計画の推進
令和2年度からの第4期産業振興計画の取り組みは、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けました。この間、各分野において事業者への影響軽減策を講じたことで、コロナ禍により減少していた観光総消費額や製造品出荷額等が上昇に転じるなど、回復傾向がより鮮明になってきました。
このようにコロナ禍による影響に対応しながらも、計画に基づく取り組みを着実に進めてきました。その結果、第3期計画の最終年度である令和元年度と比較すると、地産外商公社の活動を契機とした成約金額は1.2倍となる57億円に達し、防災関連産業の売上額は2倍となる120億円を超えるなど、着実に成果が表れています。また、関西戦略の核となるアンテナショップのオープンに向けた準備や、関西と高知を結ぶ旅行商品の造成をはじめ、さらなる外商拡大と観光誘客に向けた仕込みが進みました。
今後は、急速な人口減少、デジタル化やグリーン化の進展、さらには長期化する物価高騰といった社会経済情勢の変化にスピード感を持って対応していく必要があります。加えて、深刻さを増す各産業分野の人手不足は、今後の持続的な経済成長の足かせとなりかねません。
こうした状況を踏まえ、次期計画では「地域における新しい挑戦により、持続的に経済が発展する高知県」を将来像として掲げ、その戦略の柱には、これまでの「地産外商」に加えて、新たな価値を生み出す「イノベーション」を据えたいと考えています。この2つの柱の下、デジタル化やグリーン化の取り組みを通じた新しい技術の導入により生産性の向上や環境負荷の軽減を図るほか、国内外への外商拡大に向けた施策を質、量ともに充実させます。また、こうした取り組みを支える人材を積極的に育成することに加え、人手不足の解消に向けて、UIターンの促進や外国人材の確保などの取り組みをさらに強化します。

(2)観光振興の取り組み
観光分野においては、新型コロナウイルス感染症の影響を特に大きく受け、順調に推移していた県外観光客入込数がかつてない水準にまで落ち込みました。これを受け、国の支援策も活用しながら「観光トク割キャンペーン」といった需要喚起策を継続的に講じてきました。さらに、アフターコロナを見据え、アウトドア施設の整備を進めたほか、無線LANなどの受入環境の充実を図りました。その結果、昨年の県外観光客入込数は、感染拡大前である令和元年の8割を超える水準まで回復しました。
さらに本年は、連続テレビ小説「らんまん」の放送という絶好の追い風を生かして、3月から観光博覧会を開催してきました。加えて、先月には4年ぶりの通常開催となるよさこい祭りが、70回目の節目の大会として盛況のうちに行われました。こうした効果もあり、先月末までの県内の主要観光施設の利用者数がコロナ禍前の同時期を上回るなど、本県観光は大変好調に推移しています。
この勢いを「らんまん」の放送終了後も持続させることが重要であり、本年度の下半期においても、高知城での冬のナイトイベントや県内の周遊キャンペーンを切れ目なく実施します。
さらに、観光博覧会が終了する来年4月以降の誘客策について、これまで有識者や観光事業者の方々のご意見をいただきながら検討を重ねてきました。その結果、来年度から4年間、「極上の田舎、高知。」をコンセプトとする新たな観光キャンペーン「どっぷり高知旅」を展開して、観光客の皆さんに長期滞在を促し、本県の魅力を深く、たっぷりと味わっていただくよう準備を進めることとしました。今後は、官民一体でキャンペーンの推進組織を立ち上げ、県外へのプロモーションやセールス活動に着手したいと考えており、今議会に関連する補正予算案を提出しています。

(3)関西圏との経済連携の充実強化
関西圏との経済連携については、令和7年開催の大阪・関西万博に向けて高まる関西圏の経済活力を呼び込み、県経済の底上げを図るため、関西・高知経済連携強化戦略を策定し、3つのプロジェクトに取り組んできました。
このうち、観光推進プロジェクトでは、大阪観光局と連携して関西と高知を結ぶモデルルートを作成し、積極的なプロモーションを展開してきました。その結果、シンガポールからのツアーが継続的に実施されるなど、本県を訪れる外国人観光客数はコロナ禍前の水準まで回復してきています。
食品等外商拡大プロジェクトでは、関西の卸売市場関係者と連携した販売促進活動の強化により、量販店などのフェアにおける農水産物の販売が順調に推移し、継続的な取引にもつながっています。
また、本年7月には、関西有数の集客力を誇るあべのハルカスにおいて、県産品の販売を行う期間限定の店舗を開設しました。オープニングセレモニーには数多くのメディアが訪れ、広くPRしていただいたこともあり、これまでの来店者は2万人を超え、予想を上回る賑わいを見せています。
こうした取り組みの成果も生かして、来年7月には大阪市梅田にアンテナショップを設置することとしています。このアンテナショップは、「極上の田舎」高知の豊かさや素晴らしさを存分に味わっていただける店舗にしたいと考えています。今後、オープンに向けて店舗名称の公募や商品選定を行うほか、内装工事などの準備を進めます。
加えて、万博・IR連携プロジェクトでは、万博に自治体が積極的に参加できるよう、全国知事会を通じた働きかけや日本博覧会協会へのトップセールスを精力的に行ってきました。そうした中、自治体向けのイベント枠が設定されることとなり、本県からは「よさこいの演舞」と「街路市」を柱とする内容で参加を申請しました。
今後は、こうした一連の取り組みをオール高知で展開し、県産品の販売拡大や観光誘客にしっかりと結び付けていきます。

(4)デジタル化、グリーン化、グローバル化の取り組み
新たな時代の潮流を指し示すデジタル化、グリーン化、グローバル化の取り組みについては、関連施策を絶えず進化させてきました。

ア デジタル化の取り組み
このうち、デジタル化については、令和3年3月に策定した推進計画に基づき、「デジタル化の恩恵により、暮らしや働き方が一変する社会」の実現を目指して、産業、生活、行政の3つの切り口で取り組んできました。
産業分野のうち、一次産業においては、園芸農業に係る情報基盤「SAWACHI」や森林クラウド「Clowood」、漁業情報提供システム「NABRAS」の運用が相次いで本格化し、多くの事業者に業務効率化やコスト削減といった効果を実感していただいています。また、産業振興センターや商工会連合会の専門家によるきめ細かな支援により、商工業をはじめ、建設業や宿泊業など幅広い業種において事業者のデジタル化が進んできました。
生活分野のうち、医療においては、通信・医療機器を搭載した車両、いわゆるヘルスケアモビリティを活用したオンライン診療を新たに開始しました。また、教育においては、中山間地域の小規模な高等学校などにおいて、遠隔授業の実施校や配信科目の拡充を図りました。
行政分野では、県庁における3千を超える手続で電子申請の導入が進んだほか、電子契約の締結件数も公共工事を中心に昨年度3千件以上に上りました。さらに、本年度から、職員の働き方の変革を目指した「県庁ワークスタイル変革プロジェクト」を進めており、今月、庁内のモデル職場においてペーパーレスでどこでも仕事ができる環境を整備しました。
今後も、様々な分野の生産性向上や住民の利便性向上を図るため、デジタル化の取り組みをより一層加速します。
また、デジタル社会の基盤となるマイナンバーについては、全国での紐付け誤りを受け、現在、国による総点検が進められています。本県でも、先月設置したマイナンバー情報総点検本部が中心となって点検作業を進め、情報連携の正確性の確保に万全を期すこととしています。引き続き、マイナンバー制度に対する県民の皆さんの信頼回復に向け、国や市町村とも連携してしっかりと取り組みます。

イ グリーン化の取り組み
グリーン化については、本県として2050年のカーボンニュートラル実現を目指すことを宣言し、脱炭素社会推進アクションプランによる取り組みを進めてきました。
CO2の削減に向けた取り組みのうち、事業者については、県の補助制度も活用して、農業用ハウスにおけるヒートポンプの導入や事業所における太陽光発電設備の設置が進むなど、具体的な動きが広がっています。その結果、2030年度の温室効果ガスの排出量を2013年度比で47パーセント以上削減するという当面の目標達成に向け、産業部門では目標を上回るペースで進捗しています。
一方で、家庭やオフィス部門は、コロナ禍による換気の徹底などを背景にエネルギー使用量が増加しており、現時点では排出量削減のペースが目標を下回っています。このため、次期アクションプランでは、目標達成に向け、県民や事業者の皆さんのさらなる意識醸成を図ることに加え、本県の豊かな自然資源を生かした再生可能エネルギーの導入や省エネルギー対策を一層後押ししていきます。
また、森林吸収源対策では、持続可能な林業の実現に向けて重要となる再造林率が近年4割程度にとどまっています。このため、今月策定した「再造林推進プラン」に基づき、林業適地への集中投資や林業収支のプラス転換、造林の担い手の育成・確保という3つの柱の下、令和9年度の再造林率7割という目標達成に向けて関連施策の抜本強化を図ります。
こうした一連の取り組みを通じ、脱炭素社会の実現に向けて着実に前進していきます。加えて、プラスチック代替素材やグリーンLPガスの開発といった、本県の特色を生かした脱炭素化に資する新たな産業の育成などにより「経済と環境の好循環」の実現を目指します。

ウ グローバル化の取り組み
グローバル化については、人口減少の進展に伴う国内市場の縮小が避けられない中、海外に目を向けた施策の充実に向けて取り組みを進めてきました。

(輸出拡大の取り組み)
このうち、輸出拡大の取り組みについて、食品分野では、基幹品目であるユズや土佐酒、水産物を中心に、ヨーロッパ、アメリカといった重点市場において外商活動を強化してきました。その結果、昨年の食品の輸出額は令和元年と比較して1.6倍となる23億円と過去最高を記録しました。
防災関連製品をはじめとするものづくり分野においても、産業振興センターの支援による昨年度の輸出の成約額は、令和元年度と比較して1.5倍となる15億1千万円と着実に伸びてきました。加えて本年度は、県内事業者が業種を問わず情報交換を行う場として海外ビジネス交流会を立ち上げたほか、タイとベトナムにビジネスサポートデスクを新たに設置し、現地における支援体制を強化しています。
引き続き関係機関と連携し、海外展開に挑戦する事業者の拡大と、海外における成約額の増加に向けて取り組みます。

(インバウンド観光の取り組み)
インバウンド観光については、令和2年度以降、訪日入国制限の強化により本県を訪れる外国人観光客が激減していましたが、昨年10月に制限が大幅に緩和されて以降、回復傾向にあります。
こうした中、本年5月、台湾からの定期チャーター便の就航がようやく実現しました。これまでに6千人を超える観光客にお越しいただくなど、搭乗実績は好調を維持しています。こうした状況を背景に、今月にはチャーター便の運航会社、旅行会社、空港関係者との協議が整い、来月末までの運航期間を来年3月末まで延長することとなりました。
延長に際しては、本県から台湾への渡航も可能となるよう、一般客向けの座席販売が予定されています。この度の一般販売を今後の定期便化の弾みとするべく、台湾と本県の往来を活発化させ、経済や文化面での交流の拡大を図ります。
また、本年3月に再開された外国客船の高知新港への寄港は、本年度、過去最高の54回となる見込みです。寄港日には多くの乗船客に県内の日帰りツアーや市街地での滞在を満喫していただくなど好評を博しています。
今後もこうしたインバウンド観光需要を確実に取り込むことができるよう、本県を訪れる観光客が多い東アジアからの誘客に向けたPRや、多言語対応をはじめとする受入環境の整備を一層進めます。

(外国人材確保の取り組み)
県内の様々な分野で人手不足が深刻化する中、外国人材に活躍していただくことがますます重要となっています。このため、外国人材確保・活躍戦略に基づき、優秀な人材の確保や就労、相談体制の充実といった観点から取り組みを進めてきました。
その結果、昨年度、新たにインドからの技能実習生の受け入れを開始し、さらに、先日、これまで関係構築に取り組んできた東ティモールから日本初となる技能実習生の受け入れを始めました。加えて、先月にはベトナムのラムドン省と人材交流に関する覚書を締結し、現在、人材の受け入れに向けた準備を進めています。
今後は、県内における外国人の雇用実態なども踏まえて受入態勢のさらなる充実を図り、より多くの人材確保に向けて取り組みます。

4 日本一の健康長寿県づくり
次に、日本一の健康長寿県づくりの取り組みについてご説明申し上げます。
第4期日本一の健康長寿県構想では、「県民の誰もが住み慣れた地域で、健やかで心豊かに安心して暮らし続けることのできる高知県」の実現に向け、3つの柱の下、各施策に数値目標を掲げて全力で取り組みを進めてきました。

(1)健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進
一つ目の柱では、健康寿命の延伸を目標に掲げ、重症化のリスク要因を持つ人、いわゆるハイリスク層に対するアプローチと、県民全体の健康増進を図るポピュレーションアプローチの強化に取り組んできました。
このうち、ハイリスクアプローチについては、糖尿病の重症化予防対策として、透析予防強化プログラムの取り組みを重点的に進めてきた結果、糖尿病性腎症患者の透析導入時期を5年程度遅らせる可能性が見えてきました。また、ポピュレーションアプローチについては、高知家健康パスポートを活用した健康づくりを推進してきた結果、アプリのダウンロード数は先月末時点で4万6千件を超え、県民の健康意識の向上につながっています。
こうした取り組みをはじめ、様々な施策を展開してきたことにより、健康寿命が男女ともに着実に延伸しつつあります。しかしながら、男性の壮年期の死亡率は依然として全国に比べて高い状況にあります。
このため、次期構想に向けては、特に男性の健康寿命の延伸に重点を置き、壮年期をターゲットにした対策の強化に向けて検討を進めます。

(国民健康保険の保険料水準の統一)
国民健康保険については、人口減少と高齢化が進む中、制度の持続可能性と加入者間における負担の公平性の確保に向けて、市町村とともに保険料水準の統一を目指した議論を重ねてきました。その結果、昨年8月には県内全市町村との間で、令和12年度に保険料水準を統一することについて合意に至り、本年6月には統一保険料の賦課方式や激変緩和措置の実施に関する方針を取りまとめました。
今後はこの方針に基づき、医療費の適正化によって保険料負担の抑制を図るなど、円滑な統一に向けて市町村と一丸となって取り組みます。

(2)地域で支え合う医療・介護・福祉サービス提供体制の確立とネットワークの強化
二つ目の柱では、地域における医療、介護、福祉のインフラの確保や高知版地域包括ケアシステムの構築といった取り組みを進めてきました。その結果、訪問看護サービスの拡充などにより在宅療養体制の充実が図られ、在宅での介護サービスの利用者の平均要介護度が、令和元年の2.095から昨年には2.117となるなど、住み慣れた地域で暮らし続けられる環境整備が進みつつあります。
一方で、高齢化が加速する中、中山間地域における脆弱な医療、介護、福祉サービス基盤の底上げに加え、担い手不足へのさらなる対応が求められています。このため、次期構想では、中山間地域においても在宅など身近な場所で必要なサービスが受け続けられるよう、オンライン診療の推進や小規模事業所の経営の効率化といった取り組みを重点的に進めたいと考えています。

(高知型地域共生社会の推進)
高知型地域共生社会の推進については、分野を超えた多機関協働型の包括的な支援体制の整備を行政主体の「縦糸」として、人と人とのつながりの再生に向けたネットワークづくりを地域主体の「横糸」として取り組みを進めてきました。
このうち、「縦糸」については、昨年10月の「高知家地域共生社会推進宣言」による機運の高まりなどから、包括的な支援体制の整備に取り組む市町村が19にまで拡大してきました。また、「横糸」については、郵便局などの民間事業者と連携した地域の見守り活動や、NPOと連携した高齢者の生きがいづくりといった取り組みが着実に広がってきています。加えて、こうした取り組みの拠点となるあったかふれあいセンターは、現在県内309カ所で設置され、幅広い世代に様々な用途で活用されています。
引き続き、全市町村における包括的な支援体制の整備と地域の支援ネットワークの拡大に向けた取り組みを進めることにより、制度や分野を超え、相互につながり支え合う高知型地域共生社会の実現を目指します。

(3)子どもたちを守り育てる環境づくり
三つ目の柱では、安心して結婚、妊娠・出産、子育てができる社会を目指して、妊娠期から子育て期まで切れ目のない包括的な支援の充実に取り組んできました。
その結果、妊娠期からの総合相談窓口となる子育て世代包括支援センターが全市町村で開設されたことに加え、妊婦への支援プランの策定率が9割近くになるなど子育て支援の環境整備が大きく前進しました。
一方、核家族化や地域の支え合いの力の弱まりによって子育て家庭の孤立化が進んでおり、それぞれの家庭に寄り添った支援が一層求められています。
次期構想では、母子保健部門と児童福祉部門の機能を一体化した「こども家庭センター」の設置や、住民参加型の子育て支援といった施策の強化を図ります。こうした取り組みにより、子どもたちを守り育てる環境をさらに充実させ、出生数の増加につなげたいと考えています。

5 教育の充実
次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。
この4年間、教育分野においては、学校の臨時休業や部活動の制限など、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けてきました。そうした中でも、第2期教育大綱に基づき、知・徳・体の調和のとれた「生きる力」を育むため、小中学校全学年への35人以下学級の導入や不登校担当教員の配置をはじめ、様々な施策を展開してきました。
こうした一連の取り組みを通じて、着実に成果が表れてきました。学力向上の面では、本年度の全国学力・学習状況調査の結果によると、小学校は引き続き全国上位に位置し、また、中学校は全国平均に達していないものの、着実に全国平均に近づきつつあります。加えて、全小中高等学校への1人1台端末の配備や遠隔授業の配信拡充などにより、教育現場におけるデジタル化が大きく前進しました。
また、不登校対策の面では、不登校の児童生徒が学校内外の関係機関から支援を受けている割合が全国を大きく上回る約9割に達するなど、手厚い支援体制を構築することができました。こうしたことにより、昨年度の公立小中学校の不登校児童生徒数が10年ぶりに前年度を下回るという明るい兆しも見えてきました。加えて、不登校の未然防止などに向けて進めてきた保幼小連携の取り組みは、県内全域に広がりつつあります。
一方で、全国平均を下回る中学校の英語をはじめとする学力の底上げのほか、1人1台端末の家庭学習での日常的な活用を図る必要があります。また、不登校の児童生徒に対する支援体制のさらなる充実や多様な教育機会の確保が求められています。
こうした中、先日、県内の高等学校や特別支援学校の生徒の皆さんと意見交換を行う「次世代総合教育会議」を初めて開催し、理想的な教育や学校の姿について貴重なご意見をいただきました。次期教育大綱の策定に向けては、これまでの取り組みの成果と課題を検証した上で、関係者のご意見なども踏まえ、総合教育会議においてさらに議論を深めます。

6 南海トラフ地震対策
次に、南海トラフ地震対策についてご説明申し上げます。
南海トラフ地震による死者数を限りなくゼロに近づけるため、南海トラフ地震対策行動計画に基づき、「命を守る」、「命をつなぐ」、「生活を立ち上げる」対策をハード、ソフトの両面で全力で進めてきました。
「命を守る」対策のうち、住宅の耐震化については、市町村と連携して様々な支援策を講じた結果、昨年度末時点の耐震化率は88パーセントに達しました。また、126基に上る津波避難タワーの整備計画に対してこれまでに124基が完成するなど、津波避難空間の確保が大きく前進しました。
さらに、以前から大きな課題となっていた要配慮者の個別避難計画の作成については、福祉専門職の参画を促進するなど、市町村の取り組みを強力に後押ししました。その結果、作成率は令和元年度末の19パーセントから昨年度末には54パーセントにまで大きく上昇しました。
「命をつなぐ」対策については、発災時に県外からの支援を円滑に受け入れるための受援計画の策定を進めてきました。その結果、昨年度末時点で
40計画のうち37計画が完成し、残りの計画についても本年度末に完成する見込みです。加えて、避難所の確保にも取り組み、想定される最大避難者数を上回る21万9千人分を確保しています。
「生活を立ち上げる」対策については、令和3年度に事前復興まちづくり計画の策定指針を作成し、市町村がスムーズに計画を策定できるよう技術的、財政的支援を行ってきました。その結果、沿岸19市町村のうち7市町が既に計画策定に着手しています。
こうしたこれまでの取り組みにより、県内の想定死者数は、東日本大震災後に想定した約4万2千人から令和3年度末には約8,800人へと8割減少させることができました。今後は、来年度末に約4,300人にまで半減させるべく、課題となっている津波からの早期避難意識の向上を含め、行動計画に掲げる目標達成に向けて取り組みを強化します。
加えて、津波浸水予測区域にある住居や事業所の高台移転を促進するにあたり、市街化調整区域における開発規制の緩和に向けた検討を進めています。
先月には、県と市街化調整区域を有する高知市など4市町で構成する協議会を開催し、民間事業者の方々のご意見をお聞きした上で、規制緩和の方針の素案を決定しました。今後、パブリックコメントの結果も踏まえて関係市町とともに検討を深め、年内に方針を取りまとめる予定です。

7 インフラの充実と有効活用
次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。
地域の経済活動を支え、南海トラフ地震をはじめとする大規模災害に備えるため、道路や堤防、港湾などのインフラ整備を加速してきました。この4年間で、四国8の字ネットワークについては高知南国道路の全線開通などにより、県内の整備率が61パーセントに達したほか、浦戸湾の三重防護事業については海岸堤防の耐震化などが進み、整備率が69パーセントに上りました。加えて、日下川、宇治川流域の浸水対策や河川の浚渫といった治水対策も着実に進みました。
しかしながら、依然として整備を急ぐべき箇所は数多くあります。このため、国の5か年加速化対策も最大限に活用して、地域の実情に応じたインフラ整備を引き続きしっかりと進めます。あわせて、こうした整備がさらに加速するよう、関係市町村や全国知事会とも連携し、また、全国高速道路建設協議会の副会長として、国などに対して積極的に政策提言を行っていきます。

8 中山間対策の充実、強化
次に、中山間対策の充実、強化についてご説明申し上げます。
中山間対策については、高齢者の暮らしを守り、若者が住み続けられる中山間地域の実現を目指し、「くらしを支える」、「活力を生む」、「しごとを生み出す」の3つを柱として全庁を挙げて取り組んできました。
その結果、集落活動センターが32市町村66カ所で設置され、中山間地域の暮らしや経済活動を支える拠点として県内に着実に広がっています。
また、移住相談体制の充実や空き家対策の強化を図ったことにより、県外からの移住者数は令和元年度から昨年度までの合計で6,237人に上り、6年連続で全市町村において移住者を迎え入れています。加えて、地域おこし協力隊については、昨年度の隊員数が令和元年度から約3割増となる270人となり、中山間地域の担い手として活躍していただいています。このほか、安定的な雇用環境づくりに資する特定地域づくり事業協同組合が県内2カ所で立ち上がり、さらに12カ所で設立に向けた検討が進んでいます。
こうした成果が表れる一方、中山間地域では若い世代、中でも若い女性の流出が進むことで婚姻数や出生数が大幅に減少しており、人口減少がさらなる若者の流出を招き、人口減少につながるという負の連鎖が加速しています。
この負の連鎖を断ち切るためには、若者を増加させることによって人口の若返りを図ること、すなわち持続可能な人口構造へと転換することが何より重要です。県土の約9割を占め、県民の約4割が暮らす中山間地域の再興なくして県勢浮揚は成し得ません。
このため、今月公表した中山間地域再興ビジョンの骨格案では、目指す姿の中心に「若者の人口増加」を置き、10年後の若者の人口と出生数を現状より増加させることを数値目標として掲げました。この目標の達成に向けて、少子化対策と一体となった新たな中山間対策を推進します。
今後は、市町村長や有識者の方々のご意見も踏まえて具体的な施策の検討を進め、12月上旬には外部委員会でビジョンの素案をお示しした上で、新たな財政支援制度と併せて年度内に最終決定を行いたいと考えています。

9 少子化対策の充実・強化と女性の活躍の場の拡大
次に、少子化対策の充実・強化と女性の活躍の場の拡大についてご説明申し上げます。
少子化対策の充実・強化については、安心して結婚、妊娠・出産、子育てができる高知県を目指して、出会いから子育てまでのライフステージに応じた取り組みを進めてきました。その効果もあり、本県の合計特殊出生率は全国と比較して高い水準で推移しています。
また、女性の活躍の場の拡大については、女性が働きやすい環境づくりや就労支援といった取り組みを進めてきました。具体的には、ワークライフバランス推進企業の認証数は令和元年度から倍増し、高知家の女性しごと応援室においてはこの4年間で500人近くの就職支援を行ってきました。
一方、本県においては若い女性の人口流出が続き、このことが出生数の減少を招いています。より多くの女性に本県へ残り、あるいは本県に戻ってきてもらうためには、中山間地域を含め、若い女性がいきいきと仕事ができ、いきいきと生活できる環境の整備をさらに踏み込んで、不退転の決意で進めなければなりません。このため、建設業や一次産業といったこれまで男性中心とされてきた職場において、女性の進出を強力に後押しします。こうした職場においてこそ、デジタル技術の導入などを通じて女性や若者が就業しやすい環境を重点的に整備し、事業の持続的発展を支える人材の確保と女性の活躍の場の拡大という2つの課題の同時解決を図ることを促してまいります。
あわせて、若い女性に高知を選んでもらうためには、地域に根強く残る「男性は仕事、女性は家庭」という固定的な性別役割分担意識の解消が急務です。
このため、まずは「隗より始めよ」との考えの下、県庁の男性職員の育児休業取得の取り組みを進めた結果、昨年度の取得率は70パーセントを超えました。本年7月には来年度末の目標を85パーセントに引き上げ、「男性の育休取得が当たり前」という社会の実現をリードしてまいる覚悟です。こうした取り組みを県内の市町村や民間事業所にも波及させ、職場や地域における意識改革を進める県民運動の原動力としたいと考えます。このように、男女が共に家事、育児を分担し合う、いわゆる「共働き・共育て」の生活スタイルを本県が率先して推進することで、全ての人が希望に応じて家庭でも仕事でも活躍できる社会への転換に向けて挑戦していきます。

10 文化芸術とスポーツの振興
次に、文化芸術とスポーツの振興についてご説明申し上げます。
文化芸術の振興については、コロナ禍で多くの活動が縮小を余儀なくされる中にあっても、県民が文化芸術に触れる機会の創出などに取り組んできました。昨年度の県芸術祭では80を超える行事が開催され、その参加者数は14万人近くに達しました。
また、本年度からは、中山間地域に伝わる民俗芸能の保存と活性化に向けて補助制度を拡充し、これまでに県内28団体に活用いただいています。加えて、来月8日には県内各地の民俗芸能団体が高知市中心部で公演し、商店街を練り歩くイベントを開催します。こうした取り組みを通じて、広く県民の皆さんに伝統芸能の価値を周知することに加え、中山間地域における保存、伝承活動のさらなる振興につなげたいと考えています。
そして、本県の文化資源をアピールする場として、令和8年度の「国民文化祭」及び「全国障害者芸術・文化祭」を本県で開催するよう国に申し出ることとしました。全国から注目を集めるこの大会を機に、本県における文化芸術のさらなる振興と、中山間地域に伝わる民俗芸能の次世代への継承と発展につなげるべく、市町村や関係団体とも協力して取り組みを進めます。
スポーツの振興については、第2期スポーツ推進計画において、「スポーツ参加の拡大」、「競技力の向上」、「スポーツを通じた活力ある県づくり」の3つを施策の柱として取り組んできました。
その結果、小中学生の運動習慣と体力が全国平均にまで改善したことに加え、成人のスポーツの実施率は県内全ての地域において上昇傾向にあります。
また、全国や世界で活躍する選手が着実に育成されてきたほか、ホストタウン相手国や国内トップチームの合宿の受け入れなども進んでいます。
今後は、本年3月に策定した第3期計画に基づき、県内各地域において、子どもたちが身近な場所でスポーツが続けられる環境の整備や、競技力の底上げ、スポーツツーリズムを通じた地域の活性化などの取り組みをさらに強化していきます。

11 その他
(1)動物愛護センターの整備
動物愛護に関する取り組みについては、不幸な犬や猫を少しでも減らすため、これまで各種の普及啓発や不妊手術費用への助成などを進めてきました。
一方、県と高知市が共同運営している中央小動物管理センターは、施設の老朽化が進行しているほか、敷地が狭隘なため動物との触れ合いといった動物愛護の役割が果たせていない状況にあります。このため、新たな動物愛護の推進拠点となる動物愛護センターの設置に向けて、平成30年に基本構想を策定し、敷地面積の広さや住宅地からの距離といった要件にかなう設置場所の選定を進めてきました。その結果、このたび高知市にある高須浄化センターの敷地の一部を最終候補地として検討することとしました。
今後は、具体的な整備内容、費用負担などについて市や関係者と協議を進め、早期の整備を目指します。

(2)公正取引委員会による処分
本県から地質調査業務を受注している測量業者などによる談合が疑われた事案について、本年7月、公正取引委員会からいわゆる事前通知が行われました。この通知は、独占禁止法違反による処分を行う際に事前にその処分案を示すものです。
県では、こうした事前通知を受けた事業者と契約を締結することは適当ではないとの考えから、現在、入札契約手続を保留しています。今後公正取引委員会からの正式な処分が決定された場合は、速やかに指名停止措置を行うなど厳正に対処します。
また、有識者からなる検討委員会において入札契約制度の改正やペナルティの強化などの議論が進められており、処分内容を踏まえて最終的な取りまとめが行われる予定です。この取りまとめを踏まえ、県として再発防止に向けてしっかりと取り組みます。

12 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、令和5年度高知県一般会計補正予算など4件です。
条例議案は、知事等の損害賠償責任の一部免責に関する条例等の一部を改正する条例議案など3件です。
その他の議案は、県有財産の取得に関する議案など8件です。
報告議案は、令和4年度高知県一般会計歳入歳出決算など23件であります。

以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。

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