公開日 2024年04月01日
(令和6年4月1日 (月曜日) 正庁ホール)
令和6年4月1日付けでの新規採用職員の辞令交付式にあたりまして、一言ご挨拶を申し上げます。
今年の新規採用辞令交付対象者は、155名となります。採用試験の区分は31の職種の区分におよんでいますので、様々な経験あるいは職種の職員の皆さんが新しく県職員の仲間に加わることになります。心より歓迎を申し上げます。
まず第一に、先ほどいただいた宣誓書の意味、これを改めて皆さんには噛みしめていただき、日々、反芻をしていただきたいと思います。「公務を民主的かつ能率的に運営すべき責務を深く自覚し」の後に、全体の奉仕者として、誠実かつ公正に職務を執行することを誓っていただきました。一部の県民の皆さまではなく、県民の皆さま全体に対する奉仕をして、そのことが、皆さんが今から従事をしていただく公務の本質であります。この宣誓の精神を忘れず、初心を忘れずに、県民の皆さまのために働いていく、このことをまず肝に銘じていただきたいと思います。
多くの皆さんは、今回、学生という身分から社会人に移行されると思います。そうした方々には、特に社会人といたしまして、社会人としての基本的なルール、例えば、朝夕に挨拶をするでありますとか、決められた時間は厳守をするなど、基本的なルールをまずしっかり身につけていただきたい。また、仕事の上でのマナーも身につけていただき、1日も早く、一人前の社会人として戦力の一員に加わっていただきたいというふうに思います。
そして、特に県職員といたしましては、地方自治に関する仕組み、あるいは会計事務、こういった日々の職務を執行する上でのベースとなる基本的な知識あるいはスキルを1日でも早く身につけていただきたい。そしてもう1点、特に注意をしていただきたいこととして、皆さんは本日から県職員の一員になります。様々な職場で、県民の皆さまお一人お一人からの問い合わせを受けたり、いろんなご説明をしたりという機会もたくさん出てくると思います。そうした場合に、県民の皆さまにとりましては、職員の皆さん一人一人、皆さん方一人一人が発言をした中身、そして説明した中身、これが高知県としての見解、高知県としての考え方だというふうにとらえられることになります。その意味では、独りよがりで自分が正しいと思ったことだけで突っ走るということでは、県の職員としては資質に足りないということになってしまいます。
簡単なことであります。皆さんの同僚、先輩。そうした方々と常日頃、よく「ホウ・レン・ソウ」、報告・連絡・相談と言いますけれども、こうした意思疎通を常に密にして、皆さんが、高知県の職員として、組織の一員として、しっかりと職責を果たしていく。そのための基礎を早く身につけていただきたいというふうに思います。
私は、今年5年目の知事になります。就任以来一貫して、県政運営の基本姿勢として申し上げてきているのは、「共感」と「前進」の県政を実現したいということであります。「共感」の県政、これは県民の皆さんとの対話を通じて、県民の皆さまの共感がいただけるような県政運営を実現していきたいということであります。そして、「前進」の県政、これは、高知県は課題先進県と言われるようにたくさんの課題が山積しておりますけれども、この課題の解決に向けて1歩でも2歩でも前進をして、日々の職務の遂行を通じてそういった課題解決に向けての前進を図るような県政を実現をしていきたいということであります。
こうした中で、この「共感」と「前進」の県政を実現するために職員の皆さまに、常にこれを仕事の進め方として留意をしてもらいたい5つのキーワードを申し上げています。
皆さんにもこの際、簡単にお伝えをしたいと思います。
「共感」の県政、県民の皆さんに共感をいただける県政を実現していくためには何か、2つのキーワードを掲げたいと思います。1つは「透明性(アカウンタビリティ)」であります。今、中央の世界では、政治資金の裏金問題というのが話題になっていますが、これは共感を得られる政治からすると真逆だと思っています。裏金という言葉自身がそもそも透明でないですね、不透明です。そして、いろいろと県民の皆さん、国民の皆さんが分からないことがあって、説明を求めているという状態にあるときに、「私は何も知りませんでした」では、なかなか共感が得られる政治ができないというふうに思います。
県においても、特に不祥事があったり、事務のミスがあったり、逆境にある厳しい環境のときこそ、県の考え方、そして県の立場、こういったものをしっかりと説明をして県民の皆さんに理解を求める。このことが大事だと思います。これがなければ県民の皆さまの県政に対する信頼は得られません。共感も得られません。
そしてもう1つは、想像力を持って事に当たっていただきたいということであります。
県民の皆さまが県政に対して何を感じているか、何を求めているか、そういったものに想像を巡らせて、それを先取りをして県民の皆さんに提示をしていける。このことによって県民の皆さまが、県庁は県民のことをよく考えてくれているんだという共感が得られるのではないかというふうに思います。そうした意味で透明性のある、そして信頼が得られる関係を構築をし、想像力を行使して、県民の皆さんの共感が得られる県政を実現していきたい、というふうに思っています。
もう1つは、「前進」をする県政ということであります。もっとも、皆さん方はまだ仕事の基本的なルール、スキルを養っていただくというのが第一義的には必要な段階だと思います。そういう意味では、前進もさることながら、まず前例をしっかり勉強していただくのが大事な段階かもしれません。諸先輩がいろいろな課題に対してどう考え、どう対策をし、活動してきたか、このことをまず学んでいただくことがまず大事だと思います。
その上で、それを基礎にして県政の前進を図っていく、課題解決に向けて前に進んでいくためには、私は3つのキーワードが必要だと思っています。「使命(ミッション)」、「進化(レボリューション)」、そして「挑戦(チャレンジ)」ということ。この3つであります。まず、皆さん自身が、皆さん自身の仕事は一体何のためにやってるのか、そして、どう県民の皆さまに役立っているのか。私はこれをミッションと称したいと思いますが、そのことを常に考えて、これに向かって自分の仕事をよりよいやり方に変えていくという努力が必要ではないかというふうに思います。このことがしっかりしておりませんと、前進を図るというときに、どっちの方向に進むのが前進かが分からない、いわば座標軸としての自分のミッション、これを常に問い直していくことが大事というふうに思います。そして、「進化」であります。時代は絶えず変化しています。時代の変化に合わせて、県政の中身も、自分の仕事の中身も進化をさせていく、このことが私は非常に大事だと思います。それを実現するために「挑戦」をしていくこと。まず、前例を身につけていただくことは大事だと申しましたけども、前例にとらわれ過ぎていては、進化、前進がありません。やはり、この前例を変えることも恐れずに、いろいろな反対や消極論があるということも時には振り切って、挑戦をして、チャレンジをしていくということがなければ、前進はないということだと思います。そうした意味で、自分自身の仕事の使命を自覚をし、進化に向けて挑戦をしていく、チャレンジをしていく。そういう姿勢を常に持って、前進する県政、課題解決に向けて前進していく県政の展開の一翼を担っていただきたいというふうに思います。
そして、特に私自身が昨年の年末の知事選挙で県民の皆さまにお約束した大きな2点があります。これについて、皆さんとぜひ力を合わせて実現をしていきたい。このことを申し上げたいと思います。
1点目は、先ほどの「共感」と「前進」という基本姿勢によって県政を進化させていく、このことを県民の皆さまにお約束しました。具体的には大きな時代の流れであります、デジタル化、グリーン化(脱炭素化)、そしてグローバル化。この大きな流れを、先取りをして県政を進化させたい、高知県の経済社会を進化させたい、このことを県民の皆さまに私は約束をして参りました。こうした時代のトレンドは、皆さんの様々な担当の分野でも、等しく影響が及び、これを先取りをしていくべき局面にあるというふうに思います。ぜひそういった意識を持って、日々の行政に当たっていただきたいと思います。
もう1つは、県政の今の政策上の最大の重要課題、喫緊の課題は、人口減少問題への対応であります。高知県の今の人口が66万人程度でありますが、毎年8,000人から9,000人の人口が減っています。これそのものは、今の高知県の年齢構成が、高齢化が進んで亡くなってしまう方が新たに生まれてくる赤ちゃんの数よりも、7,000人から8,000人多いという状況でありますから、大きな傾向としては、この人口減少はなかなか抗い難いものがありますけれども、私が特に問題と考えていますのは、やはり高知県の明るい未来、将来を展望する場合には、若者の人口、これがここ50年近くずっと減り続けています。
このことが積もり積もって、今のような人口減少の社会に高知県を陥れていくということでありますから、何とかこの34歳以下と定義しておりますが、若年人口、若者の人口の減少を向こう4、5年のうちには何とか歯止めをかけたい。そして、向こう10年のうちにはこれは反転して、今の数字まで戻していくといったような道筋を早く示していきたいということを申し上げています。まさしくこれは、高知の元気な未来を作っていくための戦略ということでありますので、今年度から「高知県元気な未来創造戦略」という名前の人口減少対策のマスタープランを策定して、これは県庁の持てるあらゆる政策手段を動員して実行していこうというふうにしています。具体的にどうしていくか。これはまたそれぞれの部署でよく学んでいただきたいと思いますが、大ざっぱに言いまして3つの大きな、為すべき方向性があります。
1つは、生き生きと仕事ができる高知にしていくこと。若い方々に高知に残っていただく、あるいは高知に帰ってきていただくためには、やはり稼げる、そして魅力のある仕事を若い方々に提供できなければいけません。そのための産業振興の取り組みであります。例えば、今年の夏には、大阪梅田に新たに高知県のアンテナショップを開きます。こういった地産外商の取り組みを、海外も含めてさらに強化をしていく。そして、ただいま申し上げましたデジタル化、グリーン化といった流れをとらえて、この産業の世界にイノベーションを起こしていく、こういったことがぜひ必要だと思っています。
大きな2点目であります。生き生きと生活ができる高知にしていく。中山間地域を中心に、福祉・医療・介護、こういった基盤が今揺らぎ始めています。これをしっかりと整備をしていくこと。併せて若い方々に魅力ある高知にしていくためには、学校の教育、子育て支援、
こういったものもしっかりと整備をしていかなければいけませんし、「男は仕事、女は家庭」といった固定的な性別役割分担意識、これは子育て支援の意味でも打破していく、解消していく必要がありますけれども、特に若い女性が高知を選んでくれる、そのためには、こういった性別役割分担意識を早く解消して、例えば、男性職員の育児休業を取るのが当たり前といった世の中を高知県が率先して実現していく。そのことによって、多様な価値観が尊重されて、若者たちの居心地が良い高知県、そう多くの若者に思っていただくような高知県、これを作っていく。このことが私は非常に大事ではないかと思って、新年度、重点的に取り組みたいというふうに思っています。
3つ目は、基盤としての安全・安心な高知です。能登半島地震を見ましても、迫り来る南海トラフ地震への備えを万全にしていく、豪雨災害対策への備えを万全にしていくということ。そして、インフラの整備、道路、河川、港湾といったインフラ整備を進めていくということ。これは安全・安心の基盤としても重要でありますし、ひいては産業、あるいは生活の面での進歩をもたらしていくための基盤としても必要だと思っています。
こうした県政全般にわたる取り組みを、私は、市町村の皆さん、そして民間の事業者の皆さん、何よりも県民の皆さまお1人お1人と力を合わせて、まさしく「共感」と「前進」の県政で、オール高知で取り組んでいきたいというふうに思っています。
皆さんにもぜひその一翼を早く担っていただきたいというふうに思います。時代の流れ、働き方自体が大きく変わりつつある中でも、そうした中で採用された皆さんでありますが、何度も申し上げますが、まずは高知県庁の仕事の仕方、これにしっかり慣れていただく、習熟していただくということが大事だと思います。
しかしその上で、自分のそれぞれの仕事が、県民の皆さまの生活、仕事に直結をしている、そういうことを日々意識をし、認識をしていただきまして、それぞれの職場で、高知県の前進のために、共感と前進の県政を実現していくためにご活用いただくように、1日も早くそのスキルを身につけて、共にこの人口減少の克服に向けて戦っていただくことを心より期待をいたしまして、私からの辞令交付式にあたってのご挨拶といたします。
皆さん、一緒に頑張りましょう。よろしくお願いいたします。