公開日 2024年04月01日
令和6年4月1日(月)
(はじめに)
本日は令和6年度の初日ということがありますので、この機会に、また私自身にとっても2期目の実質的な初年度ということになりますので、皆さんに、今の県の政策課題、そして仕事の進め方の基本的な姿勢、こういったことについて若干お時間をいただいてお話をさせていただきたいと思います。
令和6年度は、私にとりまして知事2期目の実質的な初年度にあたります。取り組みのギアを引き上げて、ロケットスタートを切りたいという気持ちでおります。
今の高知県の最大の政策課題は人口減少問題への対応であります。この問題の克服に向けて県のあらゆる政策手段を動員をして、早い時期に若年人口、若者人口の回復を図らなければなりません。今年度は、こうして持続可能な人口構造への転換の道筋をつけていくということ、そしてそのことによって高知県の未来を切り開いていく、そのための新たな第一歩にする、そうした年にしたいと考えています。
そのためにも、引き続き「共感と前進」という県政運営の基本姿勢を堅持をしながら、県民の皆さんとの対話を通じて県民の皆さんの共感を県政運営に関していただくということ、そして、課題の解決に向けて一歩でも二歩でも前に進んでいく、そうした前進を目指す県政を施行するということ、そしてその成果をもって県民の皆さんにさらなる県政に対する共感をいただく、そういった形での『共感』と『前進』のいわば好循環を引き出していくこと、そして、県政を進化していくことに挑戦をしていきたいと思います。
県政の進化、この軸として申し上げているのはかねてからの通りでありますが、デジタル化、グリーン化、グローバル化、こういった新たな時代の潮流を先取りをしていく、そして産業、生活、行政の各分野にわたって県政はもとよりでありますが、県の経済社会全体をいわば刷新をしていく、常に更新をしていく、そうした行政を展開したいと考えます。
こうした新年度のスタートを切るに際しまして、大きく2つ、冒頭申しました「人口減少の克服に向けた施策の推進」について、もう1点が「仕事に当たっての基本的な姿勢」について改めてお話をしたいと思います。
(人口減少の克服に向けた施策の推進)
まず、人口減少の克服に向けた施策の推進についてであります。何度もお聞きになることだと思いますが、改めて申し上げます。
本県の出生数は、令和4年に3,721人という数字になりました。これは過去最低を更新をいたしましたし、また全国47都道府県でも最下位、最小という大変厳しい数字が出ました。昨年はこれをさらに下回りまして、過去最少を更新するということでありまして、もはやこれはコロナ禍による一時的な下落ということではなくて、少子化が構造的に進んでいる、加速をしている、こう捉えて腰を据えた対策をとらざるを得ない、そういう段階に立っていると考えます。
この近年の出生数減少の最大の要因は若い女性の数の減少をはじめとする若年人口、若者人口の減少にあります。若年人口が進学や就職に伴いまして県外への転出超過となるということで、婚姻の件数や赤ちゃんの出生数も減っていく。そして、それがさらなる若年人口の減少を招くといった負の連鎖が続いてきているというのが実情であります。
この長年続きます負の連鎖を断ち切って、持続可能な人口構造へと転換をしていくこと、そして「元気で豊かな、そしてあったかい高知県」という我々が目指す高知県像を実現をし、こうした新しい高知県像で次の世代に我らが高知県を引き継いでいくために不退転の決意で臨む必要があるという思いを強くしております。このために、目指すべき3つの高知県像を掲げて、その実現に向けた施策を全庁をあげて総合的に展開をしたいと考えます。
目指すべき3つの高知県像、第一には「いきいきと仕事ができる高知」であります。
やはり魅力のある仕事、稼げる仕事がないと若い方々は地域においでていただけません。また、高知に残りたいという若者もそうした仕事がなければ高知に残れないというのが実情であります。若者にとって魅力のある仕事の創出、そしてそうした仕事に向けての県内就職やUターン・Iターンの促進、こうしたことを今まで以上にギアを上げて取り組まなければなりません。
このためには、具体的には今年は7月に大阪梅田に新たなアンテナショップをオープンいたします。これを核として地産外商をさらに強化する。海外にもさらに打って出ていく。あわせまして、「どっぷり高知旅キャンペーン」あるいは、来年の連続テレビ小説「あんぱん」の放送、これらを追い風とした観光振興などによって、産業振興計画の取り組みを通じて県経済の発展につなげていく、この取り組みを重ねていく必要があります。
加えまして、県内就職、UIターンの促進に向けて新たな奨学金返還支援制度を設けることといたしました。こうした制度の活用や、女性の就業しやすい環境整備への支援、これも予算計上しております。こうした対策の強化をしていくということ、さらには、デジタル化・省力化によります生産性向上を強力に推進をしてくこと。そしてこれを通じて事業者の賃上げにつなげていく。こうした取り組みが必要だと考えます。
こうした一連の取り組みを通じまして、概ね10年先には一人当たりの県民所得、今全国47都道府県中の41位というところでありますが、これをなんとか全国中位、具体的には20位台、これに引き上げたい。これも各県との競争ですから大変高い目標、ハードルではありますが、これをなんとしても実現をして、他の県と比べても遜色のない、そういった所得水準を実現していきたいというふうに思います。
第二に目指すべき高知県像、「いきいきと生活ができる高知」の実現であります。
若者を高知県内に呼び込んでいく、そしてさらに地域にとどまってもらうためには、教育の充実をはじめといたしまして、医療、福祉、介護サービスといった生活基盤の整備が大事になります。
教育の面では、例えば校内サポートルームの拡充といった形で不登校の児童、生徒への対策を強化する、多様な教育機会を確保するといった取り組みが必要になりますし、特にこの場面では、中山間地域の状況が深刻になりつつあります。中山間地域でオンライン診療の普及、あったかふれあいセンターを活用した新しい介護サービスモデルの実証、こういった取り組みを進めますとともに、医療介護基盤の整備、これを特に中山間地域で力を入れていかなければいけません。
第三に「安全・安心な高知」の実現。これは全ての基盤、前提になる部分であります。
南海トラフ地震対策やインフラ整備を通じました災害に強い県土づくり、これを進めていく。そして、県民の安全・安心を確保していくということが、いきいきと仕事・生活をしていただく高知を実現する大前提になります。
1月に発生しました能登半島地震も決して高知県にとって他人事ではありません。
住宅の耐震化の推進は言うまでもありませんけれども、言わば事前復興的な考え方に立ちまして、例えば緊急輸送道路の整備ですとか、橋梁の耐震化などといった災害に強い道路ネットワークの整備を進めていく、これを加速をしていくことが必要であります。
あわせて、能登半島地震に関します実態調査、あるいは専門家の意見を踏まえまして、地震対策全般をさらに強化をしていきたいと考えます。
こうした3つの高知県像の実現に向けた取り組みを通じまして、人口減少問題に挑戦をしてまいります。その際、職員の一人ひとりが、それぞれの業務の上位目標となります「人口減少の克服」、言い換えますと34才以下の「若年人口の回復」を常に意識しながら職務にあたっていただく、このことを今年度は特にお願いしたいというふうに存じます。
また、こうした考え方に立ちまして新たに「高知県元気な未来創造戦略」を人口減少対策のマスタープランとして策定しました。「若者の定着・増加」、「婚姻数の増加」、「出生数の増加」、この3つの観点から対策のギアをそれぞれ強力に引き上げて取り組んでいきます。
さらに、こうした3つの政策の効果を一層高めていくためには、「男は仕事、女は家庭」といった性別の役割分担意識の解消を急ぎ図る必要があると考えます。
このために、特に男性の育休取得の促進、これを中心とした取り組みを原動力としまして、社会の意識改革を進めたいと考えます。男性の育休取得が当たり前だという社会を、全国に先駆けて高知県で実現をしたいと考えます。
これによって、1人目の出産を終えた女性が、これなら2人目、3人目ももちたいなと思ってもらえるように後押しをしていく、出生数の増加につなげるという効果が1つは見込めると思います。
あわせまして、こうした意識改革を進めることで高知県という地域は、意外と、いわば田舎だけど、多様な価値観が尊重される、そして若者が居心地が良い社会になっているんじゃないかと、そういうイメージを持ってもらう。実態もそう進めていきたいと思いますが、そのことが若い女性に高知も変わったな、変わってきてるな、高知に帰ってみようかなと思わせる大きな誘因になるのではないかと私は考えております。
こうした社会の実現に向けましては、私自身が先頭に立って、県民運動として「共働き・共育て」を集中的に進めたいと考えております。皆さんも色んな局面でご協力をお願いしたいと思います。
さらに、中山間地域におきましては人口減少が先行して進んでいますので、より重点的な取り組みが必要です。これも新たに設けました「中山間地域再興ビジョン」を指針としまして、県と市町村がベクトルを合わせて取り組む必要があります。このために新年度は新たに10億円規模の「人口減少対策総合交付金」を創設することにしました。これによって、少子化対策と一体となった形での中山間対策を進めていきたいと考えています。
こうした一連の施策を通じて目指すところは何か。これは昨年の知事選挙で私自身、各地で訴えてまいりました。全庁を挙げての取り組みを進めることで、私のこの任期の4、5年のうちに、今まで45年以上ずっと減ってきた若年人口、34歳以下人口をなんとか減少に歯止めがかかるというところまでもっていきたい。これはこの4,5年後の目標であります。さらにそれを反転増加に持ち込んで、今から10年後には今くらいの水準まで戻していくと、そういう道筋を描くことで高知県の将来に対して県民の皆さんに、ああこの調子でいければなんとかもっていけるんじゃないかという展望、見通しを持っていただくことができるのではないかというふうに思います。
こうした取り組みを強力に進めるための県の組織改正として、県のいわば司令塔として今回、「総合企画部」を設置をいたしました。人口減少問題や中山間の対策はもとよりですけれども、様々な課題に横串を刺して、斬新で柔軟な発想で、新しい政策の創造に向けて活発な議論が県庁内で行われるようにしてもらいたい、そういう思いを込めまして全庁的な政策立案能力の向上、そして庁内の調整機能をこの総合企画部に担ってもらいたいという思いでおります。
(仕事に当たっての基本的な姿勢)
次に、仕事に当たっての基本的な姿勢についていくつか話が飛んだりしますけれども、せっかくの年度替わりの機会ですのでお話をまとまってさせてもらいたいと思います。
先に述べましたように、『共感』と『前進』の好循環を生み出して、県政の進化に果敢に挑戦をしていく、このために職員の皆さんにかねて5つのキーワードをお願いをしてきました。これを今まで以上に意識をしてもらいたいと思います。
5つのキーワード1つ目が「透明性」、2つ目が「想像力」これはイマジネーションの方の「想像力」、3つ目が「使命・ミッション」、4つ目が「進化・エボリューション」、5つ目が「挑戦・チャレンジ」。
なお、一番最初の透明性は英語訳では私はアカウンタビリティを使いたいと思っています。これを今まで以上に意識してもらいたいと思います。代り映えしませんけれども、この5つのキーワードについてもお話をしたいと思います。
まず、「共感と前進」の県政、県民の皆さんに「共感」をもってもらえる県政を進めるためには、この5つのキーワードのうち「透明性」そして「想像力」、この2つをぜひ皆さんには発揮をしてもらいたいと思います。
ちょっと話が逸れますが、谷沢永一さんという方がおられまして、私もかつて読んだ本の中で「人間通」という本を書かれています。その中で、人間の長所の中で「可愛気」という言葉が紹介をされています。人間関係の中で、他人から好意を得ることのできるというのが「可愛気」でありますが、谷沢さんに言わせますと、これがなんといっても代わるもののない人間の長所だと。豊臣秀吉はこの「可愛気」があったが故に天下を掌握できたというような言葉もあります。
ただ、問題はこの「可愛気」とは人の性格に関わりますからなかなか自分の努力では養うことが難しい、培うことが難しいという難点があります。これは確かにそうだと思います。ただ、そうであっても次に、セカンドベストの他人から好まれる素質は「律儀」というものがあると。この「律儀」は努力によってなんとか達成ができる、磨くことができる、という美徳であります、というような説明があります。
長くなりますから私なりに谷沢さんの処世訓を要約しますと、「人の世をうまく渡っていくためには、一に「可愛気」」、これは愛嬌と言い換えてもいいと思います。「二に「律儀」、三、四がなくて五に「才能」」ということではないかというふうに思います。
私はこの4年間、知事として皆さんとご一緒に仕事をさせていただきました。その中で、県職員の皆さんは概して真面目で地道に粘り強く仕事をしていただける。その意味で、今の話で言えばこの「律儀」という長所を多くの皆さんが持っていただいているというふうに思います。
願わくばですね、行政機関でありますからなかなか「可愛気」がある県というのは難しいのかもしれません。しかし、県民の皆さんの気持ちに寄り添って、県民の皆さんの気持ちを掴んだ県政を展開していく、これはできるんじゃないかと思います。これが「共感の県政」だと思っています。皆さんには是非、この職務に当たっての「律儀」さを、もう一段アップグレードをして、県民の皆さんの「共感」をいただける県政、これ目指していただければというふうに思います。
そのためには、「透明性」、「想像力」が必要ではないかというのが私の考えであります。
まず、「透明性・アカウンタビリティ」ということでありますけれども、県民の皆さんの共感を得ていくためには、県庁が一体何を考えているのか、県民の皆さんにしっかり伝えることがまず大事だと思います。
特に、県庁で不祥事が起きた、あるいは事務処理のミスが起きた、こういった厳しい局面、逆境にある時こそ、透明性をもって県民の皆さんにしっかりと説明責任を果たすということが大事です。そうでないと県民の皆さんは県庁を信頼してくれません。
話は逸れますけれども、今回の国におきます政治資金の裏金問題を考えますと、そもそも「裏金」という言葉自体が透明性ゼロです。これに加えて「透明性」というのは必要な説明をしっかりする「説明責任」ということだと思いますから、その観点から見ても、幹部の偉い方が「私は何も知りませんでした」という釈明で済ませてしまう、これでは国民の皆さんが国政に対して「共感」しようがない状況じゃないかと思います。そういう意味で、今回の件はある意味反面教師としてしっかり受け止めるべきではないかと、県の立場でもそうではないかと思います。
そうは言いましても、都合が悪い事が起きた時には、つい隠したくなる、口をつぐみたくなるというのが人の常ではあります。しかし、そんな時こそしっかりと踏ん張って、県民の皆さんに説明責任を果たしていく。このことをぜひ危機管理の意味も含めて、皆さんに常日頃心がけておいていただきたいと思います。そうして信頼関係を築くことがまず大事だという意味であります。
2つ目の「想像力・イマジネーション」の方でありますが、これは県民の皆さんの「共感」を得るためには、県民の皆さんが県政に何を求めているか、このことついて、常に想像力を働かせることが大事だと思います。我々はこれも陥りやすい罠だと思いますが、常に暗黙のうちに相手も自分と同じようなことを考えている、あるいは同じような思考パターンで思考しているのではないかというふうに思い込みがちではありますが、現実はそうでないことの方が多いと思います。
リスクマネジメントの観点に立ちましても、相手の立場、考え方を想像をして、起こりうる事を事前に想定をして対応策を打っておく、先手を打っておく、このことが事を成す上では大変いい効果を及ぼすのではないでしょうか。事が起きてから、慌てて対策を講じるという事ではなくて、先手先手を打って手を尽くす、対応していく。そうしたことによって、県民の皆さんの「共感」が得られる県政が実現できると私は信じています。
次に、大きな塊として県政を「前進」させるために、常に何を意識して欲しいか、残りの3つのキーワードに関わる話であります。
ここで私も今回の話をするために、この4年間を色々と思い出してみたところがあります。「前進」とある意味対極にあるのが「前例」ではないかというふうに思います。
2月議会の本会議の委員長報告で、執行部に対して大変厳しいご指摘が1点ありました。ある部の予算の執行で議決を受けた予算の上限額を超えて利子補給の契約を行っていた、これは議会軽視と言われてもしょうがないじゃないかという厳しいお言葉を頂きました。私もこの件について事情を聞きますと、この部ではこの事業については、その予算の上限がいくらということには関係なくて、過去数カ年の利子補給の実績の数値をもって利子補給をすると、こういう仕事の仕方が前例になっていたと。その前例をいわば「律儀に」守っていたということのようであります。
役所の文化の中では、極端な話、こんなことが横行しているとは思いませんが、この種のように法令や予算の規定よりも前例の方が優先されるといったケースがまま見受けられることはあるというのが、私の長い行政経験の中の経験値であります。
確かに、この前例を大事にすることにも意味はあります。それは行政というものは、常に継続性、あるいは公平性を求められるからだ、ということであります。同じ案件で過去に県民の皆さんに行った対応と同じ対応を現在の県民の皆さんにも行っていく、これが公平だ、行政のあるべき姿だということに立ちますと、前例を守るというポジティブな意味は確かにあるとは思います。
ただ、前例を調べて対応を検討する、そのこと自体は私は大事だと思いますが、前例にとらわれ過ぎますと、今のように時代の変化が激しい中で、前進するどころか、時代に取り残されるような事態に陥るのではないか。ここは深く懸念をするところであります。
実際私自身も、県庁のある部局とある開発行為の類いの許認可の基準につきまして「時代も変わっているんだから見直したらどうか、許可したらいいのではないか」というふうな投げかけをしました。しかしですね、その課の課長さんだったか企画監だったか、これは記憶がありませんけれども、大真面目な顔で「10年前にこの案件で同じようなご要望を県民の皆さんにお断りした例があります。今回これを解禁するとなると、その方から訴訟を起こされかねません。知事やめましょう、今のままでいきましょう。」というような非常に強い意見の具申をされました。その後はいい方向に向かっていると私は聞いておりますけれども、このような事がありますので、私は「律儀」もほどほどにしないといけないのではないか、時代の変化というものもよく受け止めて考えてもらいたいという一例であります。
こうして前例にとらわれ過ぎずに「前進」をしていくためにも、残る3つのキーワード「使命」、「進化」、「挑戦」、この3つの言葉を皆さんには大事にしてもらいたいと考えます。
まず、1つ目のキーワード「使命・ミッション」についてです。
ただ今申し上げました「高知県の目指すべき姿」の実現に向けまして、ミッション、つまり自分の使命は何かという事を絶えず考えていただきたい。言い換えると、自分の仕事は何のためにやっているのか、という究極の問いを絶えず自問自答していただきたいと思います。変化が激しい中であって、前例にとらわれたり、漫然と従前どおりの仕事を行うということではなくて、この前例を生み出した背景となった状況は変わっているのではないか、そして取り得る手段は、行政の手段は変わっているのではないか、そういう問題意識を背景にして自分の「ミッション・使命」は何か。言い換えると何を目的とした事務事業なのかを考えた時に手段としてもっといい手段があるのではないか、この事は常に事あるごとに考えていただきたいというふうに思います。このことが「前進する県庁」の座標軸になりますし、エンジンにもなっていくというふうに思います。
そしてもう1つの関連で申しますと、ぜひご自身の仕事が持っている「ミッション」、これは県庁職員
3,400人いてそれぞれに細分化されていきますから、さらに上位にどんなミッションがあるのか、チーフや課長補佐の方であれば課長はどういうミッションの下に頭を働かし行動しているのか、課長さんであれば部長のミッションは何と考えて部長は動いているのか、そういう事に時に思いを馳せていただくということが県庁全体が1つの方向に向かって、最終的な目標である県民の皆さんの幸せ、幸福の実現に向かって方向を1つにしていく上で大いに意味があることではないかというふうに思います。
2つ目のキーワードが「進化・エボリューション」であります。
コロナ禍、人口減少の加速といった形で本県を取り巻く環境はどんどん変わっています。こうした時代の変化に合わせて正しく進化していかなければ、「高知県の目指すべき姿」の実現には至りません。
大事な軸がデジタル化であったり、グリーン化であったり、グローバル化。この時代の潮流を先取りをしていくということであることは既に申し上げたとおりであります。
これについても、私も1つまた思い出話をさせていただきますと、私が福岡県庁勤務時代に民営化をしたJR九州の方から10年くらいたった時点で民営化してどうでしたかという話を聞いたことがあります。その時に、元々は国営企業であったわけでありますから、大変でありますが、特に大変なのは単なる前例踏襲ではお客様に評価をいただけない、色んな創意工夫をして新しいサービスをする、それは大変お客様には喜んでいただけるけれども、それが大変受けたから同じサービスを翌年も再来年もずっとやっていったとするとこの満足度は下がっていく。あれだけ期待していたのに思ったほどじゃない、受けが良くないということを言われていました。満足度というのは、お客様の期待と現実の実績との隙間にあるわけでありますので、そういう意味ではあるいいサービスをしてお客様に喜んでいただいた、期待度は上がっているわけでありますから、期待度が上がっているのに同じサービスを漫然としていたのでは満足度は下がってしまう、そういう事を言われました。正しく民営のサービスというのはそういうことであろうと思いますし、県の行政も、既成行政もありますけれども、サービス行政の範囲も多いわけでありますから、そうした形で何らかのサービスの進化、改善を図っていかないと県民の皆さんの満足度を維持していくことはできないという一つの証明ではないかというふうに思います。
3つ目のキーワードが「挑戦・チャレンジ」であります。
困難な課題が山積をしております。こうした中で「自分たちが新たな道を切り開く」という挑戦心がなければ現状は打破できません。「前進」の歩みがそこで止まってしまうということだと思います。
今立ち向かっている人口減少というのが前例のない課題であればこそ、前例の縛りを意識的に外して、あえてリスクを取って、斬新で柔軟な発想で取り組むことが必要だと思います。
ここでも著名人の発言を引用させていただきます。京セラを創業された稲盛和夫さんの名言と私は思いますが、仕事の進め方についての一種の処世訓があります。これは「楽観的に構想をし、悲観的に計画をし、そして楽観的に実行をする」、この3段階で仕事を進めていくのがベストだいうお考えであります。
新しい事を成し遂げるには、まず「こうありたい」という夢や希望を持って、超楽観的にまず目標を設定する。これは構想段階。しかし計画段階では一転して悲観的になって起こりうる、あらゆる全ての問題、課題、障害、これを想定してそれをどう対応するか、克服するかを慎重に考え尽くしておく。これが計画段階。そして、また実行段階では楽天的、楽観的に戻って「やれば必ずできる」という自信を持って、楽観的に堂々と実行していく。こうしたことで事は成るということであります。
もう1つ思い出した事があります。四国4県の県庁の担当者が集まって会議をすると、高知県の担当者の特徴的な発言、フレーズがあると聞きました。「まぁ、なんとかなりますろう」という非常に楽観的、楽天的で私はこの事自体は大変好きです。高知県人のいい特性だというふうに思っていますが、ただ楽観的に構えていて、ただ手をこまねいているだけ、何もしないのでは前進がないわけであります。
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉もありますように、楽観的な思いを持ちながらもまずはリスクを取って、「新しい事をやってみよう」という気持ちで新たな取り組みにぜひ果敢に挑戦をしていただきたいと思います。時々茶化して知事室で私もよく言いますけれども、宝くじも買わなければ当たりません。確率が低いと思っても、まずチャレンジをしなければ成果は出ませんので、その心意気でぜひ皆さんリスクをとってチャレンジいたしましょう。
実際、やや厳しい物言いになりますけれども、今やAIの技術が日進月歩であります。前例踏襲だけであったら今からの時代AIがやってくれます。やはり人間でなければできない事を我々職員、そして県庁マンは挑戦をしていっていただかなければならないと思います。この県政の前進に向けて、今からどう施策を進化させていくか、自ら突き詰めてミッションと照らし合わせて考えていただく、そして自律的にボトムアップの形で皆さんから「知事、こんな事やりましょうよ」という声があちこちから起こってくる、こんな県庁を私は理想としたいというふうに思っています。
最後に、こうしたキーワードに加えまして、官民の連携、そして市町村政との連携協調、これが極めて重要であります。「オール高知」で当たっていくということであります。県庁だけで一人できる事はしれていますので、市町村と一緒に、そして民間の事業者の皆さん、県民の皆さんお一人お一人と一緒に対話を重ねて、ベクトルを合わせて取り組みを進めてくことが何より大事だと思います。
(管理職へのお願い)
続けまして、特に管理職の皆さんに留意をいただきたい事項をお話をしたいと思います。
今申し上げてまいりました人口減少や中山間の対策、女性の活躍推進、こういったように今部局の枠組みを超えて取り組んでいただかなければいけない課題が山積をしています。こうした課題を各部局が「我が事」として捉えて、率先して施策に取り込んでいく、そうした積極な姿勢で臨んでいただきたいと思います。ポテンヒットを許さないということであります。
そして斬新かつ柔軟な発想を生み出すためには、時間外勤務の縮減、あるいは仕事のスクラップに取り組んでいくことで、新たな時間を作り出す必要がある。これは私自身痛切に思っています。追われるように分刻みで仕事をしているだけでは、なかなかクリエイティブな仕事ができません。職員の健康管理の観点から言いましても、今ある業務の見直しにもしっかりと取り組んで下さい。特に、以前からやってきた仕事をやめる決断、これをするのは管理職の皆さんでなければできない仕事であります。私自身も上申をしていただければ「それはやめよう」という決断はぜひしたいということが、たくさんあるというふうに思っています。やめる決断をして新しい仕事、より必要度が高い仕事へシフトさせていくと、そういうことをしっかりやっていきませんと今の働き方改革と重要な課題を解決していくという事の両立ができないと思います。管理職の皆さんにはその観点もしっかり持っていただいて、この場面でこそリーダーシップを発揮してもらいたいと思います。
ただ今申し上げた前例打破についてもリーダーシップを発揮していただくのが、管理職の皆さんの責任であるということは言うまでもないと思います。
そして、より具体的な話になりますが、特に男性の育児休業の取得につきましては県庁が「隗より始める」取り組みであります。職場全体で推進しようという機運を高めていただいて、行動につなげてもらいたいと思います。あわせまして、コンプライアンス確保という点についても、これはあらゆるベースになっていく事でありますので一層意を用いていただきたいと思います。出るとこ出たら前例よりは、法令、予算であります。
(おわりに)
終わりになりますけれども、冒頭から申し上げておりますように、県の最重要、喫緊の課題であります人口減少への対応については、県庁の全職員が危機感を共有をし、これがラストチャンスだという思いで取り組まなければならない。これも地道で粘り強く取り組まなければならない課題だというふうに思います。
先ほど申しましたように、私が掲げる目標、旗は4、5年後までに若年人口の減少傾向になんとか歯止めをかけていく、10年後には今の水準まで戻すくらいまで反転をさせる、これは決して簡単な目標ではありません。極めて野心的な高いハードルだというふうに自覚をしています。しかし、人口構造を若返らせて、将来にわたって活力ある高知県を築いていく、そして県民の皆さんにそこに希望の光を見い出していただくためにはぜひとも成し遂げなければいけない目標だというふうに思いを定めています。
時代は刻一刻と変わっておりますので、今までどおりやっていたことをそのままやっていても課題は解決しません。これは先程来申し上げているとおりであります。時代の変化に合わせて、県民のためになる県政を進めていくという観点に立ちまして、職員の皆さんには、斬新で柔軟、そして新しい発想を持って、今まで以上に自らのミッションを問い直し、自覚をして、挑戦と進化を重ねてもらいたい。リスクをとって挑戦をして、高知県民にとって希望のある未来を皆さんと共に作り上げていきたい。
2期目の実質的なスタートにあたって、改めて皆さんに申し上げて、一緒に戦っていただくことをお願いして私からの講話とさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。