令和6年6月21日 令和6年6月県議会での知事提案説明

公開日 2024年06月21日

更新日 2024年06月21日

令和6年6月21日 令和6年6月県議会での知事提案説明

1 県政運営の基本姿勢
2 人口減少対策

3 安全・安心な高知
(1)南海トラフ地震対策
(2)インフラの充実と有効活用
4 いきいきと仕事ができる高知
(1)地産外商の取り組み
(2)イノベーションの取り組み
5 いきいきと生活ができる高知

(1)日本一の健康長寿県づくり
(2)教育の充実

6 議案

 

本日、議員各位のご出席をいただき、令和6年6月県議会定例会が開かれますことに厚くお礼申し上げます。

ただ今提案いたしました議案の説明に先立ち、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員各位並びに県民の皆さんのご理解とご協力をお願いしたいと考えます。

はじめに、4月17日に発生しました豊後水道を震源とする地震で被災された方々に対しまして、心よりお見舞いを申し上げます。
 この地震では、宿毛市で震度6弱を観測しました。幸い人命に関わるような大きな被害は報告されませんでしたが、家屋の損壊や水道管の破損などが多数発生したほか、道路の寸断による集落の孤立も生じました。
近い将来起こるとされる南海トラフ地震では、県内全域にわたって甚大な被害が想定されます。1月に発生した能登半島地震の教訓も生かして、一連の対策をさらに強化します。

1 県政運営の基本姿勢    
足下の県経済は、個人消費や観光を中心に持ち直しの動きが続いています。特に観光は、先のゴールデンウィークには多くの観光客が県内各地を訪れるなど、好調を維持しています。
こうした県経済の回復軌道をより確かなものとするため、4月から開始した「どっぷり高知旅キャンペーン」による観光振興や、来月開店する大阪市梅田のアンテナショップを核とした関西戦略などの取り組みを加速させます。
一方で、人手不足は深刻化し、物価高騰も長期化しています。こうした中で持続的な経済成長を成し遂げるためには、生産性の向上や省エネルギー化などを通じて各産業分野の「稼ぐ力」を高めながら、賃金引上げと円滑な価格転嫁の好循環を実現しなければなりません。
このため、デジタル化、グリーン化、グローバル化といった新たな時代の潮流を先取りし、社会経済の構造転換を図ると同時に、事業コスト上昇分を適切に価格転嫁できる環境の整備を進めます。
さらには、先々の県政を見据え、加速する人口減少への対応や、切迫度が高まる南海トラフ地震対策といった困難な課題にも正面から立ち向かい、解決への道筋をつけることで、明るい未来を切り開いていきます。
こうした一連の取り組みを力強く進め、県民の皆さんの目に見える成果を着実に生み出します。その上で、元気で豊かな、そしてあったかい高知県を実現し、次世代に引き継げるよう、私自身が先頭に立って取り組みます。

(「共感と前進」の県政)
県政運営にあたっては、引き続き「共感と前進」を基本姿勢として、県民の皆さんとの対話を通じて県政に対する共感を得ながら、課題解決に向けて前進していきます。
これまで「濵田が参りました」による市町村訪問などにおいて、多くの県民の皆さんから直接ご意見を伺ってきました。本年度からは先進的な取り組みを行う企業や団体への訪問も始めており、先日、デジタル化や働き方改革を進める事業者から様々なご意見をいただきました。加えて、「濵田にお聞かせください」と題して、若者や女性の活躍推進などに意欲的な方々を知事公邸にお招きして意見交換を行う取り組みもスタートさせました。
こうした機会を通じて、県民の皆さんの声に真摯に耳を傾け、その声を県政に反映してまいります。

2 人口減少対策
現在、県政における最重要課題は、本県の将来を左右する人口減少への対応です。本年4月1日時点の本県の推計人口は66万人を割り込み、また、先日公表された昨年の出生数は、過去最少であった一昨年からさらに300人以上下回る3,380人となるなど、大変厳しい結果が示されました。加えて、社会減については、これまでの産業振興などの取り組みにより近年は2千人程度に半減しているものの、依然として若年層、特に若い女性を中心とした県外への転出超過が続いています。
こうした状況から脱却すべく、若年人口に焦点を当ててその増加に向けて取り組み、持続可能な人口構造へと転換することが何より重要です。このため、「元気な未来創造戦略」に沿って、「4、5年後までに若年人口の減少傾向に歯止めをかけ、10年後には現在の水準まで回復させる」という目標の達成に向け、あらゆる政策手段を動員して取り組みます。
人口減少対策を進めるにあたっては、産学官民の英知を結集し、様々な意見を取り入れながら実効性のある施策を展開することが必要です。
先月には、各界の代表者で構成する「元気な未来創造戦略推進委員会」を開催し、女性活躍や多様なライフスタイルの確立に向けた仕組みづくりが必要といったご意見をいただきました。また、専門家からなる検討会を設置し、人口減少の要因と効果的な対策について深掘りした議論を行っています。
今後は、県内外の若い女性に対して、県外に転出した、あるいは県内にとどまった要因についてインタビューを行うほか、県内の学生などを対象に、就職や進学時の意向に関するアンケート調査を実施します。こうした議論や調査分析を踏まえ、県外へのプロモーションをはじめ、若年人口の増加に向けた新たな施策を順次展開していきます。

(元気な未来創造戦略に基づく取り組み)
人口減少問題の克服に向けては、本年3月に策定した「元気な未来創造戦略」に基づき、3つの柱で取り組みを進めています。
1つ目の「魅力ある仕事をつくり、若者の定着につなげる」では、先月、デジタルマーケティング業務を請け負う誘致企業が高知市内で開所し、女性を中心とした若者の雇用の受け皿が拡大しています。また、県内で就職した若者の奨学金返還を企業と連携して支援する制度については、4月の募集開始から既に60を超える企業が登録を行うなど、県内就職の促進に向けた取り組みが進んでいます。
2つ目の「結婚の希望をかなえる」では、こうち出会いサポートセンターに結婚支援コンシェルジュを新たに配置し、市町村へのきめ細かな支援を行っています。
3つ目の「こどもを生み、育てたい希望をかなえる」では、子どもを持ちたいと望む方々の不妊治療に対する支援の在り方について、有識者による検討会を立ち上げ、議論を開始しました。
加えて、育児や家事の分担により出生数の増加を後押しすると同時に、地域に根強く残る固定的な性別役割分担意識の解消を進めるためには、男性の育児休業取得を強力に推進することが有効であると考えます。このため、まずは県庁が率先して取り組みを進めており、昨年度に1週間以上の育児休業を取得した男性職員の割合は81パーセントに達しました。その上で、こうした取り組みを市町村や事業者に広げ、「共働き・共育て」を県民運動とするべく、官民による共同宣言の実施に向けた準備を進めます。さらに、入札参加資格審査において育休取得を評価項目に追加するよう検討を行うなど、県の持てる様々な政策手段を用いて、男性の育児休業取得を後押しします。

(中山間地域再興ビジョンに基づく取り組み)
特に、若年人口の減少が先行して進む中山間地域においては、より重点的な取り組みが必要です。本年3月に策定した「中山間地域再興ビジョン」に基づき、少子化対策と一体となった新たな中山間対策を推進します。
このうち移住促進については、昨年度の本県への移住者数が過去最多となる1,930人を記録しました。また、県の窓口を通じて移住された方のうち30歳代以下が約7割を占めており、若年人口の増加に向けた明るい兆しが現れています。令和9年度に移住者数を3千人以上とする目標の達成に向けて、本年度は、デジタルマーケティングによる情報発信を一層強化するほか、電力データを活用した空き家の掘り起こしなどを進めます。

(市町村との連携協調)
こうした人口減少対策の推進にあたっては、市町村との連携協調が不可欠です。地域の実情に応じた取り組みを支援するため、本年度、人口減少対策総合交付金を創設しました。この交付金では、市町村が自由度の高い形で活用できる「基本配分型」と、県の施策との相乗効果が期待できる事業や市町村独自の先駆的な事業に活用可能な「連携加算型」を設けています。
このうち「基本配分型」は、既に全ての市町村に交付を決定し、移住者の移転費用への補助や子ども医療費助成の対象拡大などの新規・拡充事業に充てられています。「連携加算型」では、これまでに3市町村から事業計画が提出され、例えば、サーフィンを軸にした移住促進や特定地域づくり事業協同組合の事業拡大などの施策が新たに実施されることとなりました。今後も、各市町村の取り組みの実効性がより高まるよう伴走支援を行います。

(国への政策提言)
 このように、県と市町村が連携して人口減少の克服に向けた取り組みを重ねていますが、こうした地方自治体の努力だけで問題を解決することは困難です。人口減少問題は国家的課題でもあり、国も自らが責任を果たすべき分野において真摯に取り組むことが必要と考えます。
このため、東京一極集中の是正に向けて、国において省庁横断的な検討体制を構築することに加え、子育てや教育に係る基幹的な経済支援については、国が責任を持って全国一律で制度化するよう提言しました。
また、先月開催された「日本創生のための将来世代応援知事同盟サミット」では、人口減少対策を国策として取り組む必要性について、思いを同じくする知事らとともに緊急アピールを取りまとめ、国に対して強く訴えました。加えて、四国知事会議においても、私から国による対策の強化について提案を行い賛同を得た上で、4県合同で関係省庁への緊急提言を行いました。
 その結果、先日国が公表した「地方創生10年の取組と今後の推進方向」では、人口減少に歯止めをかけ、東京圏への過度な一極集中を是正するため、国全体で戦略的に挑戦することが明記されました。加えて、今般の骨太方針の案でも、こうした考え方を踏まえ、地方創生の新展開を図る方針が示されています。引き続き国の動向に目を配り、必要に応じてさらに提言を行うなど、国の施策が本県の後押しとなるよう取り組みます。

3 安全・安心な高知
先の能登半島地震がもたらした被害の大きさを見ても、県民の皆さんが「いきいきと仕事」ができ、「いきいきと生活」ができる高知県の実現のための大前提として、「安全・安心」の確保が不可欠です。
目指すべき3つの高知県像のうち、まずは、「安全・安心な高知」に向けた取り組みについてご説明申し上げます。

(1)南海トラフ地震対策
能登半島地震の発生から約半年が経過しました。私自身の目で被災状況や復旧・復興の実情を確かめるべく、先日、珠洲市と輪島市を訪問しました。
現地を訪れて最も印象的であったのは、いまだに倒壊家屋のほとんどがそのままの状態で残されており、東日本大震災や熊本地震と比べても処理に時間を要していることです。その要因としては、過疎化が進む半島部という地理的な事情が考えられ、本県の中山間地域においても、南海トラフ地震の発生時には同様の事態が起こり得るものと想定しなければなりません。
こうした厳しい現状を目の当たりにし、今回の訪問の教訓として大規模災害への「事前の備え」の必要性を再認識しました。
第一に、復旧・復興作業に向けた事前の備えです。事前復興計画の策定を通じて、住民の皆さんの「被災後も住み続ける」という意思や地域の再建後の姿をあらかじめ確認しておくことが大変意義深いと考えます。また、倒壊家屋の処理を含めた復旧・復興のプロセスを迅速かつ円滑に進めるため、建物の権利関係の整理や域外からの解体業者の受入態勢づくりといった事前の準備が重要です。加えて、災害廃棄物の仮置き場や応急仮設住宅の候補地をあらかじめ選定しておくことも必要です。
第二に、発災直後の応急活動に向けた事前の備えです。今回の地震では、道路網の寸断や水道施設の損壊などによりライフラインの復旧が遅れた地域で、発災直後の避難所の開設や学校の早期再開が困難となりました。その結果、1.5次避難や2次避難といった予期せぬ広域避難を迫られ、この対応に時間を要したことが、倒壊家屋の処理など復旧・復興に向けた取り組みの遅れにもつながりました。
このため、受援計画の実効性を高めるなど、広域的な対応への備えを強化しておくことが求められます。加えて、断水が続く中でも、災害救護活動などの医療面や、避難所のトイレ対策といった衛生面を含め、衣食住の生活環境を早期に整えることができるよう備えを強化する必要があります。
第三に、災害に強いインフラの整備です。道路の寸断や集落の孤立を回避するためには、強靱な道路ネットワークの構築が何より重要です。また、大規模災害時において、住民生活に不可欠となる上水道を安定的に確保するためにも、水道施設の耐震化を一層加速させなければなりません。
こうした課題を含め、今回の地震の教訓については、これまでに専門家からの意見聴取を終え、現在、被災自治体における対応状況などの調査分析を行っています。今後、国における検証作業の結果も参照した上で、この秋を目途にその成果を取りまとめます。来年度からの次期行動計画の策定に向けては、これらの教訓を最大限生かし、対策全般の強化を図ります。さらに、現在国が進めている南海トラフ地震の被害想定の見直しについては、次期行動計画をバージョンアップする中でしっかりと反映させます。

(2)インフラの充実と有効活用
県民の皆さんの命と暮らしを守るインフラ整備のうち、大規模災害時の広域的な救援活動や物資輸送の大動脈となる四国8の字ネットワークについては、早期の完成を目指し、関係自治体とともに国に強く働きかけてきました。
その結果、本年4月には宿毛内海道路の「宿毛和田~宿毛新港」間と、奈半利安芸道路の「奈半利~安田」間の新規事業化が決定され、いよいよ県内全線で整備されることとなりました。また、来年春頃には南国安芸道路の「高知龍馬空港~香南のいち」間と、北川道路の一部区間が開通する予定となるなど、着実に整備が進んでいます。
また、地震による津波から県都を守る浦戸湾の三重防護事業については、現在、種崎地区の防波堤の整備などに取り組んでいます。令和13年度の事業完了を目指し、引き続き国や高知市と連携して整備を進めます。

(国への政策提言)
南海トラフ地震対策の推進に向けては、道路や河川などの地震・津波対策の加速化のほか、災害時の医療救護体制や応急給水対策の強化といった施策を取りまとめ、先日、関係省庁に提言を行いました。特に、県や市町村が管理する緊急輸送道路を含む災害に強い道路ネットワークの整備や、水道施設の耐震化などのインフラ整備については、国の5か年加速化対策の終了を待たず、大幅にスピードアップする必要があります。このため、これまでの加速化対策に代わる「国土強靭化実施中期計画」を年内に前倒しで策定した上で、必要な予算を別枠で確保するよう強く要望しました。
 その結果、骨太方針の案では、本年度早期に新たな中期計画の策定に取りかかる方針が示されました。引き続き、国の力強い後押しを得ながら、災害に強い県土づくりを進めます。
 
4 いきいきと仕事ができる高知
 次に、「いきいきと仕事ができる高知」に向けた取り組みについてご説明申し上げます。
 これまでの4期にわたる産業振興計画では、県産品を磨き上げ、活力のある県外市場に打って出る「地産外商」を戦略の柱に、県経済の底上げを図ってきました。その結果、例えば昨年度の防災関連産業の売上額は124億
4千万円と、3年連続で100億円の大台を超え、本県産業の柱の一つとして成長してきています。さらなる高みを目指し、関西圏との経済連携や海外への輸出拡大といった取り組みを加速しなければなりません。
また、デジタル技術の導入によって生産性の向上を図り、事業者の稼ぐ力を高めるほか、脱炭素に資する製品開発や新事業展開を一層進めるなど、各産業分野の構造転換を通じて足腰をより強くすることが重要です。
このため、本年度からの第5期計画では、県経済の持続的な発展につなげるべく、「地産外商」と「イノベーション」という2つの柱の下で一連の施策を展開します。

(1)地産外商の取り組み
(関西圏との経済連携の本格化)
関西圏との経済連携については、関西戦略の拠点となるアンテナショップ「SUPER LOCAL SHOP とさとさ」がいよいよ来月31日にオープンします。先日、店舗のロゴマークを発表したほか、ホームページを開設しました。
 開店に向けては、明日までの2日間、大阪駅でPRイベントを開催するなど情報発信を精力的に行い、多くの来客につなげます。今後は、この店舗を最大限活用し、「どっぷり高知旅キャンペーン」などの観光情報をダイレクトかつタイムリーに発信するほか、テストマーケティングを通じた県産品の磨き上げを進め、観光誘客や外商拡大を図ります。
 また、開幕まで1年を切った大阪・関西万博において、本県の魅力を多くの来場者にアピールすべく、「よさこいの演舞」と「街路市」を柱としたイベントの開催に向けて市町村などと協議を重ねています。加えて、万博を契機とした外国人観光客の誘致を図るため、大阪観光局とも連携し、欧米で開催される旅行イベントへの出展などの取り組みを進めます。

(輸出拡大の取り組み)
今後、人口減少に伴う国内市場の縮小が見込まれる中、県経済を持続的な成長軌道に乗せるためには、活力ある海外市場をターゲットにした輸出拡大を図ることが重要です。
 食品分野では、有機ユズや養殖ブリなどを新たに戦略品目として位置付け、生産体制の拡充に取り組んでいます。このうち有機ユズについては、嶺北地域において有機農法への転換に向けた協議を進めています。また、先月にはタイで開催された東南アジア最大級の食品見本市に出展するなど、今後成長が見込まれる国や地域への販路拡大に取り組んでいます。
ものづくり分野では、本年度からインドと台湾に現地の市場動向に精通したアドバイザーを新たに配置し、商談会の開催や取引先への同行といったサポートを行っています。このほか、海外展開に挑戦する事業者の掘り起こしを行うなど、輸出のさらなる拡大に向けた取り組みを進めます。

(観光振興の取り組み)
観光分野では、昨年の県外観光客入込数が過去最高の472万人を記録しました。本年も、4月末までの主要観光施設の利用者数が昨年の同時期を上回るなど、好調な状況が続いており、これまでの官民一体による取り組みが着実に成果として現れてきたものと捉えています。
本年度からの「どっぷり高知旅キャンペーン」では、これまで磨き上げてきた歴史、自然、食に加え、地域の文化や暮らしを新たな切り口として、高知の魅力をじっくり、深く、たっぷりと味わっていただくこととしています。
4月には東京で観光イベントを開催し、私自身が旅行会社に対してトップセールスを行いました。加えて、先日、県内5カ所で旅行商品づくりに関する説明会を実施するなど、地域の方々とともにさらなる商品の造成と受入態勢の充実に向けて取り組んでいます。
また、来春の連続テレビ小説「あんぱん」の放送を観光振興につなげるため、物部川流域における地域博覧会の開催に向けて実行委員会が立ち上がり、現在、イベントや周遊企画などの検討が進められています。「あんぱん」の効果が県内全域に波及するよう、広域観光組織とも連携して情報発信や受入環境の整備に取り組みます。
インバウンド観光については、台湾からの定期チャーター便の就航などにより、昨年の外国人延べ宿泊者数は速報値で過去最多となる12万9千人泊を記録しました。加えて、外国客船の寄港回数も最多を更新するなど、本県を訪れる外国人観光客は飛躍的に増加しています。この流れをより確かなものとするため、チャーター便の定期便化や東アジアからの新たなチャーター便の誘致といった取り組みを進め、さらなる誘客につなげます。

(2)イノベーションの取り組み
商工業分野では、一昨年度に創設したデジタル技術の導入に対する県独自の補助制度について、これまでに約300事業者に活用いただきました。また、本年度からは、全社的なデジタル化に取り組む事業者を個別に支援するため、産業振興センターに支援チームを編成するなど体制を強化しています。
農業分野では、IoPクラウド「SAWACHI」の利用農家数が
1,200戸を超え、データを活用した園芸農業の取り組みが進んでいます。これにより、例えば幡多地域のキュウリの生産グループにおいて、面積当たりの収量が地域平均の約1.3倍になるといった成果が現れています。
林業分野では、森林クラウド「Clowood」を利用する林業事業体数が昨年から倍増するなど、着実に普及してきました。クラウドの活用により、現地調査や施業計画の作成といった面で大幅な省力化につながっています。
水産業分野では、高知マリンイノベーションの取り組みにおいて、情報発信システム「NABRAS」の利用が広がり、漁業者からは評価する声を数多くいただいています。本年度は、さらなる操業の効率化に向けて情報発信システムを改修するほか、産地市場のスマート化を図るため、土佐清水市内の全市場に自動計量システムを導入します。
こうした各産業分野におけるデジタル技術の活用を一層進めることで、生産性向上や高付加価値化を図り、事業者の所得向上につなげます。

(新たな産業の創出)
産学官民が連携し、本県の柱となり得る新しい産業の創出にも引き続き取り組みます。
このうちアニメプロジェクトでは、アニメ関連企業などに本県の取り組みをPRし、また、関係者の交流を図るため、金融機関などからなる実行委員会が4月に「高知アニクリ祭」を開催し、多くの方にご来場いただきました。こうした取り組みを通じてアニメ業界との関係を強化し、関連企業の誘致といった成果につなげます。
このほか、グリーン化関連産業では、これまで県と事業者が共同で開発を進めてきた、竹繊維を配合したプラスチック代替素材について、このたび県内での工場立地が決定し、来年7月から本格生産が始まることとなりました。今後も、製品開発に対する補助制度や関係機関による技術支援を通じて、付加価値の高い製品や技術の創出を図ります。

5 いきいきと生活ができる高知
 次に、「いきいきと生活ができる高知」に向けた取り組みについてご説明申し上げます。

(1)日本一の健康長寿県づくり
日本一の健康長寿県づくりについては、第5期構想に基づき、4つの柱の下で取り組みを進めます。
まず、1つ目の「健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進」では、全国と比べて高い壮年期男性の死亡率の改善を図るため、働き盛り世代をターゲットとした生活習慣病対策を強化します。先月には、経済団体や市町村、保険者などで構成する「高知家健康会議」に生活習慣病対策を推進するための部会を設置しました。この部会のご意見も伺いながら、従業員の生活習慣の改善に取り組む事業者を一層増加させます。
また、糖尿病性腎症対策では、これまで透析予防強化プログラムの普及を進めてきた結果、現在11市町14医療機関で実施されています。本年度からは、医療機関と保険者を円滑につなぐための連絡窓口を設置するなど支援体制を強化しました。こうした取り組みを通じて、来年度中にプログラムの全県展開を図ります。
2つ目の「地域で支え合う医療・福祉・介護サービス提供体制の確立とネットワークの強化」では、中山間地域を中心に住み慣れた地域でサービスを受けられる体制の整備をより一層進めます。このうちオンライン診療の普及に向けては、医療機器と通信機器を搭載した車両、いわゆるヘルスケアモビリティを活用した診療について、先月から新たに室戸市で運用が開始されました。加えて、あったかふれあいセンターでも診療が可能となるよう、機器の設置などの環境整備に向けた支援を行っています。
3つ目の「こどもまんなか社会の実現」では、安心して妊娠・出産・子育てができる社会の実現を目指して取り組みます。出生数や産婦人科医の減少を背景として県内の分娩取扱施設が減少する中、妊婦が安心して出産できる環境を確保する必要があります。このため、医療関係者による検討組織を設置し、本県の実情に即した周産期医療提供体制の構築に向けて、早期に結論が得られるよう議論を進めています。また、市町村の母子保健部門と児童福祉部門を一体化する「こども家庭センター」については、これまでに7市町で設置されました。他の市町村でも設置を進めるべく、アドバイザーの活用などを通じて個別支援を行います。
 4つ目の「高知型地域共生社会の推進」では、行政主体の「縦糸」として、包括的な支援体制の整備に取り組む市町村が24にまで拡大しています。早期に全市町村で整備されるよう、先月には市町村長向けのトップセミナーを開催したほか、専門家の派遣などを行っています。また、地域主体の「横糸」として、企業や大学生との協働による避難訓練の実施に向けて協議を進めるなど、人と人とのつながりを実感できる地域づくりに取り組みます。

(2)教育の充実
近年複雑化、多様化する教育課題の解決に向けて、高校生や大学生、教職員など多くの方々のご意見を踏まえ、本年3月に第3期教育大綱を策定し、一連の施策を強化しました。
まず、学力の向上については、教育現場におけるデジタル化、いわゆる「教育DX」を進め、子どもたち一人ひとりの理解度に合わせた個別指導を実践します。小中学校の授業で1人1台端末を週3回以上使用する学校が昨年度には9割を超えるなど、端末の利用が着実に広がってきました。本年度は家庭学習など授業外での活用をさらに進め、授業と授業外の学習を切れ目なくつなぐことに重点を置いた学習指導に取り組みます。また、デジタル人材の育成を目指して国が新たに進める「DXハイスクール」について、県内13校が指定を受けました。これらの学校においてデータサイエンスによる課題解決に取り組むなど、デジタル技術を活用した文理横断的、探究的な学びを推進します。
次に、不登校への対応については、専門人材による相談支援体制を昨年度以上に充実させたほか、校内サポートルームを新たに6校で設置するなど、未然防止や早期対応の取り組みを進めています。加えて、心の教育センターを拠点としたオンラインによる学習支援をスタートさせました。あわせて、「学びの多様化学校」の設置に向けては、有識者会議において検討を進めており、年度内に学校の設置主体を含めた基本方針を取りまとめる予定です。
また、中山間地域における若者の定着に向けて、都市部と遜色ない教育機会を確保するため、高等学校の遠隔授業の配信数を拡充しました。加えて、高等学校における県外からの入学者数を増加させるべく、「こうち留学フェア」の開催や移住相談会への出展などを通じて、学校の魅力発信に積極的に取り組んでいます。
こうした教育施策を進めるにあたっては、学校が児童生徒や教員にとって安全・安心な場であり、また、充実した教育活動を行える場であることが大前提です。このため、本年度から小学校の新規採用者に対するサポート教員を配置したほか、若年教員向けの相談窓口を設置するなどメンタルヘルス対策を強化しました。また、不祥事防止対策として、年度内に各学校に地域住民などを含めた組織を設置し、校内研修の実施や初期対応に係る体制の構築に取り組みます。

(国民文化祭の開催)
令和8年度に本県で開催される国民文化祭に向けては、本年4月に官民協働の実行委員会を立ち上げ、大会の基本構想を定めたほか、統一名称を「よさこい高知文化祭2026」と決定しました。
本県の文化芸術のさらなる振興と中山間地域に伝わる伝統芸能の再興、継承につながる大会となるよう、引き続き市町村や関係団体と連携してしっかりと準備を進めます。

6 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、令和6年度高知県一般会計補正予算など2件です。
このうち一般会計補正予算については、動物愛護センターの基本設計やふるさと納税制度を活用した学校支援などの経費として、総額8千6百万円余りの歳入歳出予算の補正を含む補正予算案を提出しています。

条例議案は、高知県税条例の一部を改正する条例議案など7件です。
その他の議案は、高知県公立大学法人定款の変更に関する議案など2件です。
報告議案は、令和5年度高知県一般会計補正予算の専決処分報告など2件であります。

以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。

お問い合わせ

総合企画部 広報広聴課
TEL:088-823-9046
FAX:088-872-5494
Topへ