公開日 2024年09月19日
更新日 2024年09月19日
令和6年9月19日 令和6年9月県議会での知事提案説明
1 県政運営の基本姿勢
2 補正予算など
3 人口減少対策
4 いきいきと仕事ができる高知
(1)地産外商の取り組み
(2)イノベーションの取り組み
5 いきいきと生活ができる高知
(1)日本一の健康長寿県づくり
(2)教育の充実
(3) 太平洋島嶼国との交流促進
6 安全・安心な高知
7 議案
本日、議員各位のご出席をいただき、令和6年9月県議会定例会が開かれますことに厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ち、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員各位並びに県民の皆さんのご理解とご協力をお願いしたいと考えます。
(南海トラフ地震臨時情報への対応)
先月、日向灘を震源とする地震の発生を受け、南海トラフ地震臨時情報が初めて発表されました。本県では直ちに災害対策本部を立ち上げ、一週間にわたり警戒態勢を敷きました。この間、県民の皆さんに対しては、通常の生活を送りながら、避難場所や防災用品などの再確認をしていただくよう呼びかけました。よさこい祭り前日というタイミングでの臨時情報の発表でしたが、大きな混乱は見られず、県民や事業者の皆さんには概ね冷静に対応いただいたものと考えます。
一方で、1万人泊を超える宿泊キャンセルが発生するなど経済的な影響がありました。このため、本年度からのどっぷり高知旅キャンペーンの取り組みや、来春からの連続テレビ小説「あんぱん」の放送に向けた観光プロモーションをさらに強化し、観光需要の早期回復につなげます。
(オリンピック・パラリンピックにおける本県出身者の活躍)
先日開催されたパリオリンピックのレスリングにおいて、櫻井つぐみ選手と清岡幸大郎選手が、本県出身選手としては実に92年ぶりの金メダルを獲得されました。また、パラリンピックにおいては、車いすラグビーで池透暢選手が本県出身選手として初の金メダルを、陸上女子円盤投げで鬼谷慶子選手が銀メダルを相次いで獲得されました。今回の快挙は、県民の皆さんに夢と希望、そして感動を与えると同時に、高知のような小さな県でも、頑張れば金メダルを獲れるということを身をもって示してくれました。私自身も、人口減少問題をはじめとした困難な県政課題に対しても粘り強く挑戦し、何としても県勢浮揚を実現したいという思いを新たにしています。
今回の顕著な功績を称えるため、県民栄誉賞を創設し、4人の方々に授与することに加え、高知市内でパレードや祝賀会を開催し、県民を挙げて祝福したいと考えています。
1 県政運営の基本姿勢
知事として2期目の実質的な初年度がスタートし、約半年が経過しました。
7月末には、関西戦略の拠点となるアンテナショップが大阪市梅田にオープンしました。これまでに40万人を超える方々にお越しいただくなど、まずは順調なスタートが切れたと手応えを感じています。
また、台湾からの定期チャーター便について、このたび来年3月までの運航継続が決定したことに加え、来春からは「あんぱん」の放送が始まることで、多くの観光客の来県が期待されます。こうした追い風を最大限に生かして、地産外商や観光誘客の取り組みをさらに強化し、経済効果を県内全域に波及させます。
一方、足下では、物価高騰が依然として続いていることに加え、人手不足が深刻化しています。また、今後の県政を展望すれば、人口減少問題や中山間振興のほか、南海トラフ地震対策といった課題が立ちはだかっています。こうした課題に正面から向き合い、その解決に向けて一つ一つ成果を積み重ねていかなければなりません。
そのためには、様々な分野でアンテナを高く張り、県民や事業者の皆さんの声に耳を傾け、絶えず施策の磨き上げを図っていくことが欠かせません。
私自身が取り組みの現場を訪問し、県民の皆さんと対話を行う「濵田が参りました」は7月から3巡目がスタートし、中山間地域における担い手の確保や、遠隔診療を支える通信環境の整備を求める声をお聞きしました。また、若者や女性を知事公邸にお招きし、ご意見を伺う取り組みでは、建設業の女性技術者の方々と、建設現場におけるデジタル化や、仕事と家庭の両立の実現などについて意見交換を行いました。加えて、20代、30代の皆さんからは、自然な出会いの機会の創出や結婚後の経済面での不安解消が必要だ、といった率直なご意見をいただきました。
こうした対話を通じて県政に対する「共感」をいただくと同時に、デジタル化、グリーン化、グローバル化という新たな時代の潮流を先取りし、県政の進化に向けて着実に「前進」します。
引き続き、「共感と前進」を県政運営の基本姿勢とし、徹底して成果にこだわりながら、様々な課題の解決を図ります。その上で、元気で豊かな、そしてあったかい高知県を実現し、次世代に引き継げるよう全力を尽くします。
2 補正予算など
今議会では、南海トラフ地震対策などの取り組みを着実に推進するため、総額49億円余りの歳入歳出予算の補正及び総額41億円余りの債務負担行為の追加及び変更を含む一般会計補正予算案を提出しています。
このうち南海トラフ地震対策では、能登半島地震の教訓も踏まえ、住宅の耐震化や各産業の早期再開に向けた支援のほか、本県における被害想定の見直しを行います。また、防災・減災に資するインフラ整備を加速します。
経済の活性化では、「あんぱん」の放送を観光振興に生かすべく、県外からの誘客の強化と県内周遊の促進を図ることに加え、物部川流域における地域博覧会の開催を支援します。
人口減少対策では、「共働き・共育て」を推進する県民運動と、県外在住の若者や女性をターゲットとしたプロモーションを展開します。
このほか、春野総合運動公園におけるプロスポーツの施設基準に対応した設備改修や、宿毛湾港への外国客船の初寄港に向けた環境整備を進めます。
また、昨年度の決算状況や今後の歳入の見込みなどを踏まえ、今後6年間の中期的な財政収支について試算を行いました。その結果、今後想定される大規模事業などを加味しても、事業の効率化や平準化を図ることで安定的な財政運営に一定の見通しをつけることができました。
しかしながら、本県の財政運営は、地方交付税など国の動向に大きく左右されることに変わりはありません。このため、引き続き国に対し、地方一般財源総額の確保などについて積極的に政策提言を行うことに加え、事務事業のスクラップアンドビルドを一層徹底します。
3 人口減少対策
(元気な未来創造戦略に基づく取り組み)
県政の最重要かつ喫緊の課題である人口減少問題については、元気な未来創造戦略に基づき、3つの柱で取り組みを進めています。
1つ目の「魅力ある仕事をつくり、若者の定着につなげる」では、若者や女性が働きやすい環境づくりに向けて、トイレや休憩室の整備といった職場環境の改善に対する支援制度を創設しました。6月の募集開始以降、これまでに商工業や建設業など多くの事業者から申請をいただいています。また、若者の県内就職の促進に向けては、7月に県内の大学や経済団体などで構成する「大学生等の県内就職促進会議」を立ち上げ、現状の分析とさらなる対策の検討を行っています。こうした施策に加え、IT・コンテンツ企業をはじめとする事務系企業の誘致や、事業者の賃上げにつながる環境整備などに取り組み、若者や女性の定着と増加を図ります。
次に、2つ目の「結婚の希望をかなえる」では、結婚の入り口となる出会いの機会を創出するため、今月から若年層の社会人を対象にした交流イベントを10回にわたって開催します。加えて、来月にはこうち出会いサポートセンターと民間の結婚相談所の会員が相互にマッチングできる仕組みを導入するなど、結婚を後押しする取り組みを一層強化します。
3つ目の「こどもを生み、育てたい希望をかなえる」では、男女が分担して家事や育児を行う「共働き・共育て」を県民運動として展開し、出産や子育てに係る女性の負担軽減と、固定的な性別役割分担意識の解消を図ります。今月2日には、市町村長や経済団体の代表者など19名の方々にお集まりいただき、「共働き・共育て」の推進に向けた共同宣言を行いました。これを皮切りに県民の皆さんへの周知啓発を強化し、男性育休の取得促進を原動力として職場や地域の意識改革を進めます。こうした取り組みを通じて、「男性が育児休業を取得することが当たり前」という社会を早期に実現したいと考えます。
また、子どもを望む方々がより円滑に不妊治療を受けられるよう、有識者による検討会で、治療費助成のあり方や仕事との両立支援などの議論を深めています。この検討会において来月を目途にとりまとめていただく予定の提言を踏まえ、施策の充実強化を図ります。
(新たなプロモーションの展開)
本年度実施した調査では、進学や就職時に県外を志向する理由として、県内に希望する仕事や暮らしをかなえる場が少ない、大都市部と比べて、周囲と異なる意見や価値観に対する寛容性が低いといった意見が出されました。
このため、県内で希望をかなえて活躍している若者の姿や、「共働き・共育て」の県民運動によって変わりゆく高知を積極的に発信するプロモーションを展開します。その際、これまでの「高知家」の取り組みで培ったノウハウを生かし、「誰もが活躍できる高知」、「家族のように、ありのままのあなたを受け入れる高知」を伝えるキャッチコピーや映像を通じて、県外の若者や女性にきめ細かく届けます。あわせて、大都市部において記者発表や集中的な広告展開を行うなど、話題性や盛り上がりの創出にも意を払います。
こうした取り組みを通じて、「若者や女性が自分らしく活躍できる高知に変わったよ、変わりつつあるよ」というメッセージを強力に発信することで、若年人口の増加につなげます。
(全国知事会との連携)
先日開催された全国知事会議において、人口減少問題を我が国が直面する最大の危機として捉え、知事が一致結束してこの危機に立ち向かっていくため、新たに「人口戦略対策本部」を設置することが決議されました。
今後は、この全国知事会における本部とも手を携え、国における人口減少対策の司令塔組織の設置や、子育てに係る全国一律の経済支援などの実現に向けて積極的に政策提言を行い、国を動かしていくよう取り組みます。
(中山間地域再興ビジョンに基づく取り組み)
少子高齢化が先行して進む中山間地域の活力を取り戻すため、昨年度末に策定した中山間地域再興ビジョンに基づき、少子化対策と一体となった中山間対策を推進しています。
このうち移住促進については、デジタルマーケティングを活用した情報発信の強化により、ポータルサイトへのアクセス数や新規相談件数が大幅に増加し、本県への移住者数は昨年度を上回る水準で推移しています。今後は、アンテナショップの開設を契機に関西圏における移住プロモーションを一層強化するほか、空き家の掘り起こしを含め、移住者の住宅確保に向けた取り組みをさらに拡充し、中山間地域に多くの若者を呼び込みます。
また、7月に開催したビジョン推進委員会においては、有識者などから、地域で活躍する女性の情報発信や、林業現場における働き方改革といった点についてご意見をいただきました。今後は、これらの意見も踏まえ、ビジョンに掲げた令和9年度の目標達成に向けて各施策のバージョンアップを図ります。
こうした人口減少問題の克服に向けた取り組みを、市町村との連携協調の下で効果的に進めるため、本年度から人口減少対策総合交付金を創設し、地域の実情に応じた支援を行っています。
このうち、県の施策との相乗効果が期待できる事業などを対象とする「連携加算型」については、これまでに10市町村の事業計画を承認し、男性の育休取得や若者の地元就職の促進といった取り組みを支援しています。また、出会い、結婚、出産、共働き・共育てという一連の施策をパッケージ化した取り組みについて、交付率のかさ上げを行うこととしました。こうした支援策の充実のほか、事業計画づくりにおける伴走支援などを通じて、市町村をしっかりとサポートします。
4 いきいきと仕事ができる高知
次に、私が思い描く目指すべき3つの高知県像のうち、まず「いきいきと仕事ができる高知」に向けた取り組みについてご説明申し上げます。
経済の活性化に向けては、昨年度の地産外商公社の活動を契機とした成約額や昨年の食品輸出額がそれぞれ過去最高を更新するなど、着実に成果が現れてきました。本年度からは、これまでの取り組みを土台に、新たな第5期産業振興計画に基づき、「地産外商」と「イノベーション」という2つの柱の下で各分野の施策を進めています。
「地産外商」については、さらなる成果を生み出すべく、関西圏アンテナショップも最大限活用し、県産品の販売拡大や観光誘客を図ります。加えて、海外市場への展開や、台湾からの定期チャーター便を生かしたインバウンド観光の振興といったグローバル化の取り組みを一層推進します。
また、「イノベーション」に向けては、一次産業分野をはじめとしたデジタル化やグリーン化の取り組みを通じて新たな価値を生み出し、事業者の「稼ぐ力」を高めていきます。このほか、アニメ関連産業の集積を目指すプロジェクトなど、将来の本県の柱となり得る産業づくりも進めます。
あわせて、これら一連の取り組みを支える人材の育成や担い手の確保を推進します。このうち外国人材の確保に関しては、ベトナムやインドといった送り出し国との関係強化を図り、人材の受け入れ拡大につなげます。
(1)地産外商の取り組み
(関西圏との経済連携)
関西圏との経済連携については、7月31日にアンテナショップ「SUPER LOCAL SHOP とさとさ」がオープンしました。開店初日には私自身が店頭に立ってPRを行い、来店者からは「大阪で手に入らないものが買えるようになり嬉しい。高知に行ってみたい。」といった声をいただきました。また、今月始めにはオープン1カ月記念イベントを開催し、多くの方々で賑わいました。
今後は、さらなる集客を図るべく、カツオや土佐酒といったテーマを月単位で設定して集中的に情報発信を行うほか、市町村や四国各県と共に物産展を開催するなど、様々な仕掛けを展開していきます。
また、開幕まで200日余りとなった大阪・関西万博において、本県の魅力を国内外に広く発信したいと考えています。来年5月にIoPクラウドを活用した先進的な施設園芸のPRブースを出展し、8月には「よさこいの演舞」と「街路市」をテーマとしたイベントを開催するべく、今議会に関連する補正予算案を提出しています。
(観光振興の取り組み)
観光分野のうち、本年度からスタートしたどっぷり高知旅キャンペーンについては、旅行会社を対象とするモニターツアーや本年度創設した支援制度などを通じて、県内を周遊する旅行商品の造成に取り組んでいます。また、改修した複数の空き家などを宿泊施設として一体的に運営するモデル事業や、宿泊施設を中心として長期滞在を促すプランづくりなどを進め、受入態勢の充実を図っています。こうした取り組みをさらに強化し、観光客の方々に高知ならではの魅力をじっくり、深く、たっぷりと味わっていただきたいと考えます。
また、「あんぱん」の放送を契機とした物部川流域における地域博覧会については、先月の実行委員会において名称を「ものべがわエリア観光博『ものべすと』」とし、来年3月から約1年間開催することが決まりました。現在、観光ガイドの養成や周遊促進に向けた企画をはじめ、開催準備が着々と進んでいます。
今後は、どっぷり高知旅キャンペーンの中で、やなせたかしさんを前面に打ち出した情報発信や旅行商品づくりを進めるなど、「あんぱん」を最大限に生かして県内全体の観光振興につなげます。
インバウンド観光について、台湾からの定期チャーター便は平均搭乗率が9割を超え、2万人以上の方々にご利用いただくなど好調を維持しており、先月には来年3月末までの運航期間の延長が決定しました。引き続き台湾との交流拡大を図り、高い搭乗率を維持することで、さらなる運航継続はもとより、その先の定期便化につなげます。加えて、韓国や香港からの新たなチャーター便の誘致にも取り組みます。
また、高知龍馬空港の新ターミナルビルについては、昨年秋の検討会議で了承された整備計画の具体化の過程で、航空会社や関係官庁などから、施設規模や仕様の充実を求める強い意見をいただきました。これを受け、計画の見直しを行い、改めて設計を進めたところ、現下の資材価格の高騰などもあり、現時点において整備費用は36億円余りに上り、最終的な完成時期は令和9年春となる見込みです。費用、工期ともに昨年秋時点の見通しを大きく上回ることとなりますが、新ターミナルビルは、将来数十年にわたって利用される本県のインバウンド観光の要となるものです。県民の皆さんのご理解を得て、新たな計画に従い、早期の供用開始に向けて整備を進めたいと考えます。
(四万十市新食肉センターの整備)
県内で唯一、豚のと畜を行う四万十市営食肉センターは、操業開始から
50年を超え老朽化が著しく、運営に支障を来している状況です。
このため、新たな施設の整備に向けて、四万十市をはじめとする関係市町村や県、加工事業者などで構成する検討会において協議を重ねてきました。このたび、県と関係市町村との間で整備に係る費用負担について合意に至り、今議会に関連する補正予算案を提出しています。
新たな施設の稼働によって高度な衛生管理が実現し、県産豚肉の品質向上と販売力強化が期待されます。今後は、令和10年の操業開始に向けて、県としても豚の増頭対策に取り組み、施設の安定的な経営につなげます。
(2)イノベーションの取り組み
デジタル化に関しては、高知市の帯屋町商店街において、AIカメラで人の流れを計測し、得られたデータを店舗の来店予測やマーケティングに活用する取り組みが今月から始まりました。今後は、専門家による各店舗への伴走支援を通じて売り上げの増加などを図った上で、成功事例を県内各地に横展開します。
また、建設業においては、橋梁やトンネルの点検業務でドローンや無人艇の導入が進み、工事現場では三次元測量機器や自動制御建設機械の活用が広がるなど、ICTが普及しつつあります。今後も、現場見学会や研修会の開催を通じて、建設業におけるデジタル化の裾野を一層拡大します。
グリーン化に関しては、県が木造の商業ビルなどを環境不動産として認定する制度について、いの町に建築中の4階建ての集合住宅が初の認定事例となる見込みです。こうした事例をさらに増やすべく、建築関係者への周知に加え、設計や施工に関する技術支援を強化します。
また、環境に配慮した森林由来という、新たな価値を加えた県産材を認証する仕組みについて、有識者からなる検討委員会において具体的な制度設計の議論を進めています。これらの取り組みを通じて森林資源の再生産を促進し、本県林業の持続的発展を図ります。
全国植樹祭については、先月、主催団体から令和10年に本県で開催する旨の内定をいただきました。この大会を通じて、本県の豊かな森林への関心を高め、森林資源の循環利用につなげたいと考えます。今後は、市町村や関係者のご意見をいただきながら開催に向けた準備をしっかりと進めます。
5 いきいきと生活ができる高知
次に、「いきいきと生活ができる高知」に向けた取り組みについてご説明申し上げます。
(1)日本一の健康長寿県づくり
日本一の健康長寿県づくりについては、「県民の誰もが住み慣れた地域で、健やかで心豊かに安心して暮らし続けることのできる高知県」の実現に向けて、4つの柱に基づき取り組んでいます。
このうち、「地域で支え合う医療・福祉・介護サービス提供体制の確立とネットワークの強化」では、中山間地域を中心に、住み慣れた地域でサービスを受けられる体制の整備を進めています。
特に中山間地域において課題となっている介護サービスの提供体制の確保に向けては、介護事業所の生産性向上や人材確保を図るため、「こうち介護生産性向上総合支援センター」を来月1日に開設します。このセンターにおいて、介護現場へのデジタル技術の導入や職場環境の改善、さらには新たな介護報酬体系における加算の取得サポートを含め、事業所に対する幅広い支援を行います。加えて、高知市の訪問介護事業所から嶺北地域の利用者に対してサービスを提供するモデル事業も進めます。
このほか、あったかふれあいセンターに介護福祉士や看護師を配置し、要介護者を受け入れる取り組みを来月から大月町で開始するなど、必要なサービスの確保を図ります。
次に、「こどもまんなか社会の実現」では、安心して妊娠・出産・子育てができる社会の実現を目指して取り組んでいます。
このうち周産期医療については、医療資源が限られる中、将来にわたり必要な分娩施設を確保するため、医療関係者による検討会で、出産リスクに応じた受入医療機関の役割分担や助産師の活躍促進などの議論を進めています。年度内には将来を見据えた方向性をとりまとめていただく予定であり、これを踏まえて施策の具体化を図ります。
このほか、産後ケア事業の受け皿の拡大や住民参加型の子育て支援策の充実などを通じて、子育てしやすい環境整備を進めます。
(2)教育の充実
教育の充実については、本年度からの第3期教育大綱に基づき、確かな学力、健やかな体、豊かな心の育成に向けて取り組んでいます。
こうした中、7月末に本年度の全国学力・学習状況調査の結果が公表されました。中学校は昨年度並みの結果となりましたが、小学校では国語、算数ともに平均正答率が低下し、特に算数は全国平均を下回りました。その要因として、基礎的な知識は身に付いているものの、知識を応用する力が不足していることが挙げられます。また、家庭学習において1人1台端末が効果的に活用されていないことも考えられます。
このため、課題解決力の向上に重点を置き、ICTを活用した授業改善に関する研修を実施するほか、1人1台端末を利用した家庭学習を一層進めることなどにより、学力の底上げにつなげます。
不登校については、昨年度実施した調査の速報値によると、小中学校の不登校児童生徒数は前年度から増加したものの、コロナ禍以降全国的に大きく増加傾向にある中、本県では一定程度その伸びを抑えることができています。これは、専門人材による相談支援体制の整備や、中学校における校内サポートルームの設置といった取り組みによるものと考えます。
また、不登校の状態にあっても学びを途切れさせることがないよう、個々の状況に応じた学びの場を提供することが重要です。先月には、県教育委員会と県立大学が連携し、中高生が自分のペースで学ぶことができる場として「Kochi Teens Base」を開設しました。
こうした取り組みを含め、不登校の未然防止や早期対応の徹底と、不登校児童生徒の様々な教育機会の確保を図り、子どもたちが安心して学べる環境を整えます。
(3)太平洋島嶼国との交流促進
本年7月、太平洋島嶼国と我が国の地方自治体との交流促進を図るため、島嶼国13カ国と国内16道県の参加の下、「第3回太平洋島嶼国・日本地方自治体ネットワーク会議」が東京で開催されました。会議では私が議長を務め、保健医療、スポーツ、青少年交流の3つの分野を中心に人的交流や人材育成の取り組みを進めていくことを確認しました。
また、会議後にはミクロネシア連邦とトンガ王国の首脳にご来県いただき、本県とのさらなる交流促進に向けた意見交換を行いました。ミクロネシア連邦に対しては、先方からの要請に応え、県内の建設事業者の協力を得て中古の重機を寄贈するため、今議会に関連する補正予算案を提出しています。
今後も太平洋島嶼国と末永く交流が続くよう、様々な機会を捉えて関係強化に努めます。
6 安全・安心な高知
次に、「安全・安心な高知」に向けた取り組みについてご説明申し上げます。
本年1月の能登半島地震や先月の南海トラフ地震臨時情報の発表は、大規模災害に対する「事前の備え」の必要性を改めて浮き彫りにしました。本県においても、これらの教訓を踏まえ、南海トラフ地震の発生時に向けた備えを再点検し、強化することが必要です。
第一に、「自助」や「共助」の取り組みの強化です。南海トラフ地震対策を進める上で、まずは県民の皆さん自身に命を守る行動をとっていただくことが何より重要です。このため、津波からの早期避難意識の向上や住宅の耐震化をはじめとする一連の「自助」を促す対策の強化を図ります。
また、能登半島地震では、復旧活動に必要となる災害ボランティアの受入態勢の整備に時間を要しました。この教訓を踏まえ、「共助」の取り組みを進める観点から、先日、高知県社会福祉協議会との間でボランティアの円滑な受け入れに向けた協定を締結しました。
あわせて、臨時情報対応全般については、国の検討会議における議論を踏まえてしっかりと検証し、今後の備えに万全を期します。
第二に、復興作業に向けた事前の備えです。このうち、事前復興まちづくり計画については、これまで津波被害が想定される沿岸市町村を対象として策定支援を行ってきました。今後は、復興作業の遅れによる人口流出を防ぐ観点からも、沿岸部のみならず、土砂災害特別警戒区域が広がる山間部の市町村にも対象を拡大し、計画策定の取り組みを支援します。
また、各産業の早期の事業再開に向けた備えとして、畜産業の事業継続に必要となる設備導入への支援や漁港施設の被害想定調査を行うほか、事業者における事業継続計画、いわゆるBCPの策定を一層促進します。
第三に、災害に強いインフラの整備です。本県ではこれまで、四国8の字ネットワークや浦戸湾の三重防護事業、さらには水道施設の耐震化といった地震・津波対策を加速させるよう、国に強く働きかけてきました。
その結果、国土交通省の来年度予算の概算要求において、上下水道施設の耐震化に係る新たな補助制度が盛り込まれたほか、道路事業や港湾・海岸事業などで前年を上回る要求額が計上されました。
引き続き、全国知事会や南海トラフ地震に関する10県知事会議とも連携し、整備の加速化に向けて必要となる財源の確保や、国土強靱化実施中期計画の早期の策定が図られるよう、国に対して積極的に提言を行います。
このほか、現在国が進めている南海トラフ地震の被害想定の見直しに合わせて、本県における被害想定を見直すべく、今議会に関連する補正予算案を提出しています。この見直し結果については、次期の南海トラフ地震対策行動計画をバージョンアップする中で反映させていきます。
(消防の広域化)
今後、人口減少が進行する中にあっても、高齢化に伴う救急需要の増大や、大規模災害などへの対応に必要となる消防力を将来にわたって確保していかなければなりません。そのためには、現在15の消防本部に分立している常備消防組織を一本化することで、人事管理や通信指令業務などの間接部門をスリム化し、そこから生じた余力を現場要員の配置に振り向けることが最も有効な手法だと考えます。
本県では、このような考え方に立ち、昨年度から各消防本部との間で消防の広域化に関する協議を進めており、概ね共通の理解に達しています。今後は、県において、広域化を担う新たな組織の設置に向けた基本構想を年度内に策定した上で、市町村や消防本部を交えてさらに具体的な協議を進めます。
(四国の新幹線)
新幹線は、交流人口の増加などに伴う大きな経済効果をもたらすことに加え、大規模災害時の代替輸送ルートの確保や災害対応力の強化といった重要な役割を果たします。全国的に新幹線の整備が進められる中、四国が他の地域と同じスタートラインに立って地域間競争に打ち勝つためには、不可欠な交通インフラだと考えます。
昨年度、四国4県の県庁所在地と岡山市を結ぶルートの実現を優先する方針で4県の足並みがそろい、加えて、国の骨太方針で初めて基本計画路線について言及されるなど、早期整備に向けた機運が飛躍的に高まっています。
また、6月には4県で整備促進を求める署名活動が始まったほか、先月開催された四国新幹線整備促進期成会の東京大会には過去最大規模となる
600人余りが参加し、官民を挙げた取り組みが広がりつつあります。
引き続き、整備計画路線への格上げに必要となる法定調査の実施や、新幹線整備事業の国土強靱化実施中期計画への明記に向けて国に働きかけを行うなど、官民一体で四国における新幹線の早期実現を目指します。
7 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、令和6年度高知県一般会計補正予算など5件です。
条例議案は、高知県行政手続条例の一部を改正する条例議案など14件です。このうち高知県立都市公園条例の一部を改正する条例議案など6件については、近年の物価や賃金水準の上昇を踏まえ、指定管理施設における職員の処遇改善と安定的な運営を図るため、利用料金の見直しを行うものです。
その他の議案は、県有財産の取得に関する議案など8件です。
報告議案は、令和5年度高知県一般会計歳入歳出決算など23件であります。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。