公開日 2025年01月01日
1 令和7年のキャッチフレーズについて
2 転職による県外への人材流出防止について
3 中山間地域の事前復興について
4 中山間地域の市町村への事前復興計画策定の呼びかけについて
5 中山間地域の事前復興の参考になる地域について
(司会)
ただ今から知事記者発表を始めさせていただきます。冒頭に知事から令和7年の年頭にあたり所感を申し上げます。
(知事)
それでは、令和7年の年頭にあたっての所感をお話させていただきます。
新年おめでとうございます。本年が皆さんにとってよい年となりますよう心からお祈り申し上げます。
私の知事としての2期目も早や1年が経過いたしました。この間、人口減少問題の克服などの県政課題の解決に向けまして全力で取り組んでまいりました。その結果、昨年は、例えば移住者数の増、あるいは新しいアンテナショップ「とさとさ」が好調なスタートを切るといった形で、県民の皆さんに実感していただける成果が表れてきていると思います。
また、パリオリンピックなどにおけます本県出身選手の活躍、高知ユナイテッドSCのJリーグ昇格などスポーツ分野で明るい話題も多い年でした。一方で、現在、本県は人口減少問題、あるいは南海トラフ地震対策といった困難な課題に直面しております。こうした困難がありましても、昨年オリンピックやパラリンピックで活躍された選手のように、諦めずに粘り強く取り組めば道は開けるという思いを胸に挑戦を続けたいと考えます。
今年も引き続き共感と前進を県政運営の基本姿勢といたしまして、県民の皆さんの気持ちに寄り添い共に歩んでまいります。そして、生き生きと仕事ができる高知、生き生きと生活ができる高知、さらに安全・安心な高知という目指すべき3つの高知県像の実現に向けまして絶えず挑戦し、さらに前進していく、そうした1年にしたいと考えます。
まず、人口減少対策について申し上げます。人口減少問題の克服に向けまして、昨年3月に「元気な未来創造戦略」をマスタープランとして策定しました。目指すところは、若者や女性に選ばれる高知を実現する、この目標に向けて取り組みを進めています。
具体的には、まず、いわゆる社会減の解消に向けまして、若者に魅力のある、稼げる仕事をつくっていく、増やしていくこと。そして、移住を促進していくこと、こういった産業振興計画による取り組みを進めています。
次に、いわゆる自然減の減少・抑制につきましては、ひとつには婚姻数の増加、そして、出生数の増加・回復、これを図る取り組みを展開しております。こうした一連の対策の実効性を高めていくために、市町村向けの人口減少対策総合交付金という制度を令和6年度から新たに設けました。市町村の実情に応じた施策を後押しすると共に、市町村と共に、いわゆる伴走型で手を取り合って対策を進めています。しかし、残念ながらこの半年間の状況を見る限りは、若年人口、あるいは出生数の減少に歯止めがかかっていないのが実情です。この傾向を早期に食い 止るために、令和7年度は大きく4つの方向性で施策を強化し、社会増減、そして自然増減の改善を進めたいと考えています。
社会増減の対策では大きく2点あります。まず第1に若者の所得向上です。若者の県内の定着を図るためには、これは必須条件だと思っております。そして、この若者の所得向上は、社会増減の対策だけではなくて、結婚や出 産の希望をかなえる、こうした希望を持つ若者の背中を押すという意味もありますので、自然増に向けた対策としての意味も持つ課題だと思っています。
具体的には、非正規の雇用を正規化していく、あるいは企業の生産性を上げていくことによりまして、若者の所得の引き上げに効果がある施策を強化していきたいと考えています。
次に、移住・定住対策の充実です。移住の促進については、先月から若い世代向けの新たな動画を作成し、プロモーションを展開しています。若者との対話・対談の中で着想をいただきまして、県内で自分らしく、そして、楽しそうに活躍している若者の姿、そして、多様な価値観を家族のように受け入れる高知の素晴らしい姿、これを広く県内外の若者や女性に届けているところです。近年の取り組みによりまして、移住者数は年々増加しております。
ただ、残念なことに、県内から県外へ転出してしまう方々の数も増加しておりますので、トータルした社会増減の改善には至っていないのが実情です。
このため、新卒ではなく転職によります県外への流出を抑制する対策を強化していく。あるいは子どもの頃から、地域への理解と愛着を深めるためのキャリア教育を充実していく。こうした取り組みを進めて、若者をターゲットとした定住対策を強化したいと考えます。
自然減への対策は大きく2点あります。一つは多様な出会いの機会の拡充です。多様な出会いによる婚姻数の増加は出生数の回復に直結する効果が期待できます。このため、従来の婚活イベントに加えまして、若者の自然な出会いを創出する、そういう交流機会をさらに拡充していくように取り組みます。
もう一つは、いわゆる、共働き・共育てのさらなる推進です。昨年来、男女が分担して家事や育児を担っていく共働き・共育ての運動を強力に推進しています。県内の行政、産業界など28団体のトップの方々に賛同いただいて協働宣言を行うといった形で、県民運動としての広がりを見せつつあります。その原動力となるのは、男性の育児休暇の取得だと考えています。これを促進するため、職場や地域の意識改革に向けた周知啓発、そして、例えば、両親学級の開催の支援、こうしたものを通じまして、この県民運動のさらなる拡大を図っていきたいと考えています。
これら県によります取り組み、地方を主体の取り組みに加えまして、この人口減少問題の克服のためには、地方だけでの取り組みではなし得ないと考えられますので、国全体の社会構造を転換していく、国政を動かしていくということが必要不可欠だと考えています。このため、国におきまして、特に大都市機能、企業や大学等々ですが、こうした大都市の機能を地方に分散させていく、こうした政策に本気で取り組んでいただきますように、積極的に粘り強く政策提言を行ってまいります。
こうした若者の人口減少を食い止めるという努力と共に、現実に進行しております県の総人口の減少にうまく適応していくということも、現実の政策課題として大事な取り組みだと考えています。
先の県議会でもスマートシュリンク・賢く縮むというような言葉を引いてのご質疑もありましたけれども、特に、さまざまな公共サービスの提供体制を人口減少に合わせて見直し、効率的で持続可能なものとしていく必要があると考えます。例えば、これまでも教育の分野では、県立高校の再編の取り組み、医療福祉の分野では、国民健康保険の保険料の全県統一、こうした取り組みを進めてまいっております。
昨年は新たに、例えば、医療分野では出産のための分娩施設の在り方を含めた周産期医療の体制をどうしていくかという課題。そして、公共交通の分野で、中央地域におけます路線バス、電車などの地域交通の在り方をどう考えていくかという問題。安全・安心の分野では県内の常備消防機関の全県の一本化を目指す消防広域化の問題。こういった問題への取り組みに着手しました。それらの分野で共通しておりますのは、5年後10年後、人口減少が進んだ時点での行政サービスのあるべき姿、公共サービスのあるべき姿と、そこにいたる道筋をどう明らかにしていくか。そういった点を関係者と密に協議を進めて取り組みを始めようとしているところです。
全国に先駆けて人口減少が進みます高知県であればこそ、こうした分野で全国をリードする先駆的な取り組みに挑戦し、その成果を発信していく、そうした必然性があると信じます。こうした人口減少との戦いの中で、県職員、市長村や民間事業者の方々、さらには、各層の県民の皆さんと一緒になりまして全国初、あるいは日本一の取り組みに向けてチャレンジし、活力のある、安心に暮らせる高知県の実現に向けて、さらに前進していきたい、そういう思いで取り組んでまいります。
次に、目指すべき3つの高知県像について、それぞれお話したいと思います。
いきいきと仕事ができる高知の実現に向けてです。足元の県経済を見ますと緩やかに持ち直しの基調が続いていると考えますが、物価高騰が長期化し、人手不足も深刻化するという中で、先行きは不透明となっております。当面、国の経済対策に呼応して緊急に必要な施策を講じてまいる考えではありますけれども、さらに、その先を睨んで、県経済の持続的な成長を成し遂げるために、第5期の産業振興計画に掲げます地産外商とイノベーションの2つの柱の元で取り組みを強化します。
具体的には、外商の強化に向けて輸出品目のさらなる拡大、あるいは新しい市場の開拓に注力いたします。イノベーションの取り組みとしましては、新たな産業の創出に向けて、例えばヘルスケア・イノベーション、アニメ関連のプロジェクトなどを展開していきます。そして、外商のさらなる拡大に向けては、地産の強化、地域におきます生産力の強化の取り組みが欠かせません。例えば、ユズの有機農法への転換、林業分野におきます大径材の確保体制づくりなどの地産の取り組みを一層強化し、これを外商拡大につなげていきたいと考えています。
次に、目指すべき高知県像2点目のいきいきと生活ができる高知の実現に向けてです。誰もが住み慣れた地域で暮らし続けるためには、医療や福祉、あるいは教育といった生活基盤の確保が不可欠です。特に本県では、中山間地域の医療、福祉、介護サービス基盤が脆弱です。深刻な担い手不足の状況を踏まえまして、オンライン診療の拡大、この分野での人材確保などに取り組んでまいります。とりわけ、訪問介護サービスにつきましては、昨年開設いたしました「こうち介護生産性向上総合支援センター」を核といたしまして、介護報酬加算の取得などの事業者へのきめ細かな支援をさらに進めてまいります。併せまして、安心して妊娠・出産していただけます周産期医療体制の確保や子育て支援の充実といった取り組み。そして教育面ではデジタル技術や一人一台端末を活用した学力向上、さらには不登校への対策の強化といった課題に取り組んでまいります。
最後に3つ目の高知県像、安全・安心な高知の実現に向けてです。昨年は、元日に能登半島地震が発生、4月には、県内でも最大震度6弱の地震が発生しました。8月には、初めてとなります南海トラフ地震臨時情報が発表されるといった事態も続きまして、大規模災害への備えの必要性が改めて浮き彫りになった1年でもありました。これらの教訓を踏まえまして4つの観点で事前の備えを強化します。
1つ目には、例えば津波からの早期避難、食料、水の備蓄、住宅の耐震化といった自助の取り組み。さらには、ボランティア活動への支援などの共助の取り組み強化です。
2つ目には、国の対策にも呼応して、避難所のトイレやベッド、空調設備などの避難環境の整備を進めることです。
3つ目には、復旧・復興作業に向けた事前の備えを強化する。具体的には、事前復興まちづくり計画の策定を中山間地域にまで拡大したいと考えています。
4つ目には、災害に強いインフラ整備の加速化です。国の経済対策も最大限活用しながら、道路網、上下水道設備の耐震化などを加速化します。
最後に、一言申し上げます。今年は、いよいよ大阪関西万博が開催されます。連続テレビ小説「あんぱん」の放送もスタートし、高知県観光にとっても大きな追い風になると確信しています。この絶好の機会を生かしまして、インバウンドも含めた県内各地への観光誘客などによって県経済の活力を高めたいと考えます。
また、4月からは、次期の南海トラフ地震行動計画がスタートします。現在進めております被害想定の見直しを順次反映しながら対策のさらなる強化を図ってまいります。
この1年は「活力にあふれる高知」、そして「安心して暮らせる高知」の実現に向けまして、さらに確実に前進する、そうした1年にしたいと考えます。県民の皆さんからのご指導、ご鞭撻、一層のお力添えを心よりお願いいたしまして、私の年頭所感とさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
(司会)
それでは、年頭所感に関する質疑に移ります。社名とお名前の発言をしていただいてから質問をお願いいたします。
令和7年のキャッチフレーズについて
(井上・高知新聞社記者)
今年のキャッチフレーズと言いますか、先ほどのお話でも「粘り強く」という言葉が繰り返されたり、最後には「確実に前進」というような言葉がありましたが、濵田知事が思うこういう年にしたいというキャッチフレーズ、端的にどんな1年にしたいかというのをお聞かせ下さい。
(知事)
ひと言で言えば、最後の方にまとめて申しましたが「活力と安心の高知に向けて、更なる前進をする年」にしたいということかと思います。
やはり、人口減少の問題は県民の皆さんに高知の元気が将来的に無くなってくるのではないかという不安感、そして、南海トラフ地震への不安感、こういったものが率直に言って少なからずあるのだと思います。人口減少に負けない活力、そして、大規模災害に負けない安心、こういったものに向けてさらに前進していく。確実に前進していく。そうしたことを実感していただけるような1年にしたいという思いです。
転職による県外への人材流出防止について
(古谷・読売新聞社記者)
2点お伺いします。先ほどの説明の中で、転職による流出を防ぐということがありましたけれども、具体的に何か考えていることがあればお聞かせ下さい。
(知事)
これから予算編成の中で詰めてまいりますけれども、一番ありますのは、一旦県内に新卒の時点では就職してくれた若者が、何年か勤めた中で、最近は2、3年で転職される方も少なくありませんので、転職しようという場合に、県内で転職していただけるのならプラスマイナスゼロなのですけれども、転職を機に都会へ出て行ってしまう。この数が結構、無視できない規模になるのではないかというところが問題意識としてございます。
ですので、そういった方々が転職を考えた時に、転職先として県内の企業の色々な仕事を分かっていただいた上で、それでも敢えて県外を選んでおられるなら仕方ないのですけれども、その点はPR不足というのも、我々にはあるのではないかと。どちらかというと新卒の方に今まで力を入れてきましたので、そうした意味で、それこそ、色々なメディアも活用して、有効な方策を検討して、ルートを検討した上で、そうした潜在的に転職を考えておられるような若い層ですね、新卒よりはプラスアルファ、そうした方々に高知の企業、仕事、こんな魅力的な仕事があるという点のPRを強化していく。例えば、こんな取り組みが考えられるのではないかと思っています。
中山間地域の事前復興について
(古谷・読売新聞社記者)
もう1点ですけれど、事前復興で中山間地域という話が、当然、能登半島地震を受けて出てきていると思っているのですけれども、なかなか東北でのケースがあったとしても、新潟はちょっと参考になるかもしれないですけれど、具体的に中山間地域の事前復興はなかなかイメージとしては難しいところもあると思うのですが、知事がイメージをされている部分をお聞かせいただければと思います。
(知事)
これは、私自身の着想としては、能登半島地震の現場を拝見してということです。今まで沿岸部は津波の想定をされて、津波に襲われて、その後の復興ということでイメージが掴みやすかったと思います。中山間地域でも、ある意味、耐震性に欠けた古い建物が多い、そうした建物は、恐らく地震でかなり崩壊して、もう撤去しないといけないということになるであろうと。そうした時に、ここ10年、20年のタームで見ますと、かつてと比べて、中山間地域でも土砂災害の特別警戒区域の指定などが進んでおりまして、そうした地域では、今は建ててある建物が壊れても、そこへの再建はできないわけですね。安全なところに移らなければいけない。という時に、あらかじめ事前復興の計画ができていないと、この機会にその地域を離れて都市部に出て行くということになりかねないし、現実に能登半島ではそういう現象が起きていると思います。そうしたことを防ぐためには、やはり事前に、住んでいた所は無理にしても、その近辺で、例えば、その町村の中心集落であったりとか、そういう規制がかかってなくて再建ができるところをピックアップして、肝心なのは、そういう災害が起こった時に域外に出ないで、その地域にやはり住み続けるという意思を、今の方々が確認しておく。そのための具体的な青写真をできる限り共有しておくという意味での事前復興のまちづくり計画をですね、中山間地域でこそ、ある意味、考えておく必要があるのではないかと。
これはもちろん強制ではありませんから、各市町村でそうした問題意識をお伝えして、これはある意味、災害ということをひとつのテコにして、災害の問題を離れても、ちょっとコンパクトシティというと、やや手垢のついた感じではありますけれども、まちづくりのあり方の問題としても、ある意味、大事なポイントではないかと思いますので、そうした持続可能なまちづくりの取り組みの一環という意味も含めて、そうした必要性を潜在的に感じておられた市町村に呼びかけて、特に中山間地域における事前復興のまちづくりを呼びかけていく、そのための指針づくりなどからまず始めるという作業の手順を考えています。
中山間地域の市町村への事前復興計画策定の呼びかけについて
(古谷・読売新聞社記者)
沿岸部だったら、19市町村が対象でありましたけれども、これは要するに中山間地域の市町村に策定を、例えばいつまでに呼びかけるとか、そういうようなイメージはありますか。
(知事)
一律といいますか、網羅的にするかどうかというのは、もう少し意見交換もした上で考えたいと思いますし、これは今、沿岸の市町村も同時に中山間地域を抱えているところもあるわけですので、それは沿岸市町村が除外ということでもないと思っていますので、ここはまず指針づくりの作業をやろうと思っております。そうした過程で市町村の方々と意見交換をして、どういう形の目標設定をして進めるのが良いのかということは、改めて検討したいと思っています。
中山間地域の事前復興の参考になる地域について
(古谷・読売新聞社記者)
全国的にも事前復興で中山間地域というのは、あまり例がないと思うのですけれども、例えば新潟であるとか、これまでの何かケースで参考にされるような地域、あるいは事例というのはありますか。
(知事)
私自身は、ちょっとそこまで勉強が及んでおりませんので、今後、指針づくりの過程の中で勉強もし、必要であれば先進地の調査なども行えれば良いと思っております。