令和7年2月20日 令和7年2月県議会での知事提案説明

公開日 2025年02月20日

令和7年2月20日 令和7年2月県議会での知事提案説明

1 県政運営の基本姿勢
2 人口減少対策
3 いきいきと仕事ができる高知
(1)産業振興計画の推進
(2)地産外商の取り組み
(3)イノベーションの取り組み
4 いきいきと生活ができる高知
(1)日本一の健康長寿県構想づくり
(2)教育の充実
(3)文化芸術とスポーツの振興
(4)その他
5 安全・安心な高知
(1)南海トラフ地震対策
(2)インフラの充実と有効活用
6 議案

本日、議員各位のご出席をいただき、令和7年2月県議会定例会が開かれますことに厚くお礼申し上げます。

ただ今提案いたしました議案の説明に先立ち、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員各位及び県民の皆さんのご理解とご協力をお願いしたいと考えます。

1 県政運営の基本姿勢
 昨年は、県経済が回復基調にある中で、関西戦略の核となるアンテナショップ「とさとさ」の好調なスタートや、四国8の字ネットワークの県内全線での事業化決定など、県勢浮揚に向けて具体的な成果が表れてきた年でした。加えて、パリオリンピックなどにおける本県出身選手の活躍や、高知ユナイテッドSCのJリーグ参入といったスポーツ分野での明るい話題も多くありました。
 一方で、1月には能登半島地震が発生し、8月には初めての南海トラフ地震臨時情報が発表されるなど、近い将来起こるとされる南海トラフ地震の切迫度の高まりをひしひしと感じた年でもありました。
来る令和7年度は、国内外から多くの来場者が見込まれる大阪・関西万博がいよいよ開幕し、また、やなせたかしさんと小松暢さん夫妻をモデルとした連続テレビ小説「あんぱん」が放送されます。この絶好の機会を生かして、県産品の外商拡大やインバウンドも含めた観光誘客をしっかりと進め、県全体を盛り上げていきます。
 県政の最重要課題である人口減少問題に対しては、若者の所得向上や「共働き・共育て」の推進といった一連の施策を抜本強化し、その克服に向けて粘り強く取り組みます。また、南海トラフ地震対策については、新たに策定する行動計画に基づき、その被害を最小限に抑え、県民の皆さんの命と暮らしを守るべく万全を期します。
こうした取り組みにより、「活力にあふれる高知」、そして「安心して暮らせる高知」の実現に向けてさらに前進する年にしたいと考えます。
 そのためにも、引き続き「共感と前進」を県政運営の基本姿勢とし、県民の皆さんとの対話を通じて県政に対する共感を得ながら、様々な課題の解決に取り組みます。
 これまで、県民座談会「濵田が参りました」などの場において、地域で活躍する方や子育て世代の女性、先進的な取り組みを行う事業者をはじめ、多くの方々から直接お話を聞かせていただきました。今後もこうした機会を積極的に設け、人口減少対策をはじめとする県の施策に生かしたいと考えます。
また、デジタル化、グリーン化、グローバル化といった新たな時代の潮流を先取りし、絶えず施策の進化を図ります。
 このうちデジタル化は、大都市部からの遠隔地という障壁を取り払い、情報の収集・処理の速度を飛躍的に高めると同時に、業務の自動化・省力化を強力に進める上で必要不可欠な取り組みです。このため、中山間地域におけるオンライン診療や遠隔教育の充実を図るほか、AIやドローンといった最新技術の積極的な活用を促すことで、県民の暮らしや働き方を一変させます。あわせて、各産業分野における生産性向上を図り、事業者の「稼ぐ力」をより一層高めます。
 グリーン化については、地球温暖化に歯止めがかからない中、あらゆる分野で2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが求められています。本県としても、豊かな自然を生かした再生可能エネルギーの導入やグリーン化関連産業の育成をさらに進め、「経済と環境の好循環」の創出を図ります。
グローバル化については、急速な成長を続ける東南アジアなどの海外市場に積極的に打って出ることで、県産品の輸出拡大とインバウンド観光の振興を図り、その効果を県経済に取り込みます。また、担い手不足に悩む各産業分野において、外国人材が活躍できる環境の整備も進めます。
 今後も、私自身が県政の舵取り役として様々な課題解決を目指す挑戦の先頭に立ち、一歩一歩、着実に前進したいと考えます。その上で、元気で豊かな、そしてあったかい高知県を実現し、次世代に引き継げるよう全力を尽くします。

2 人口減少対策
 本県の将来を左右する人口減少問題の克服に向けては、昨年3月に策定した「元気な未来創造戦略」に基づき、若者や女性に選ばれる高知の実現を目指して取り組んでいます。
 しかしながら、その1年目となった昨年、県内の出生数は速報値で3,123人と、過去最低であった一昨年からさらに減少しました。加えて、県外への転出超過は3,121人と、16年ぶりに3千人を超えるなど、全国各県と比較しても大変厳しい状況となっています。
 こうした傾向を早期に食い止めるため、来年度は、社会増減と自然増減の改善に向けて、大きく4つの方向性で施策を強化します。
 1つ目は、若者の所得向上の推進です。これにより、若者の県内定着を通じた社会増だけでなく、結婚や出産を希望する方々の背中を押すことで自然増の効果ももたらすものと考えます。
このため、事業者のデジタル化による生産性向上の取り組みを強力に支援し、賃金の引き上げに向けた環境を整備します。また、一次産業における法人化や市町村と連携した企業誘致により雇用の拡大を図ることに加え、正社員を目指す方のスキルアップへの支援などを通じて正規雇用を促進します。
 2つ目は、移住・定住対策の充実です。このうち移住促進については、昨年末から、県外在住の若年層に対して「多様な価値観を家族のようにありのままに受け入れる高知」を発信するプロモーションを展開しています。
来年度は、こうした取り組みに加え、関西圏における移住相談者の増加に対応するため、大阪市内の相談窓口の充実を図ります。さらには、各分野の担い手確保に向けて、デジタルマーケティングを活用した県外への情報発信を一元化し、より効果的に対象者に届けます。
 本県における社会減の要因の一つとして、転職を契機とした県外への流出が挙げられます。これに歯止めをかけるため、転職希望者に対して県内で働く魅力や県内企業の情報をプッシュ型で発信するほか、地域への理解と愛着を深めるキャリア教育を推進するなど、若者をターゲットとした定住対策を強化します。
 また、昨年は、一昨年に比べて県や市町村の相談窓口を通じた移住者数が増加する一方で、住民基本台帳上の転入者数が大幅に減少している点を重く受け止めています。その要因について調査分析を行った上で、これらの相談窓口を通らないUIターン者への対策についても検討します。
 3つ目は、多様な出会いの機会の拡充です。本年度行った県内の若者との意見交換において、「同年代の異性と出会う機会が少ない」、「結婚を目的としない出会いの機会が欲しい」という声をお聞きしました。このため、社会人を対象にした趣味の交流イベントなどの充実を図るほか、例えば県内におけるスポーツ振興や伝統芸能の継承といった公益的な活動に独身男女の参加を促す仕組みを設け、自然な出会いの機会を創り出します。また、これまでの婚活イベントの開催支援に加え、インターネット上の仮想空間、いわゆるメタバースを活用した交流の場づくりを進めるなど、結婚につながる出会いの機会も拡充します。こうした取り組みを通じて、婚姻数の増加とその先の出生数の増加につなげます。
 4つ目は、「共働き・共育て」のさらなる推進です。本県の厳しい現状を踏まえ、出生数の増加に向けて出産や育児に係る女性の負担を軽減すると同時に、社会増に向けて特に若い女性に高知を選んでもらう必要があります。このためには、「男は仕事、女は家庭」といった地域に根強く残る昔ながらの固定観念を解消し、育児や家事への男女の共同参画を図ることが不可欠です。
 この観点から、男性育休の取得促進を原動力に、男女が分担して育児や家事を行う「共働き・共育て」の生活スタイルの普及を図ります。具体的には、「共働き・共育て」の共同宣言に参加した団体に対して、傘下の事業所における男性育休の取得状況をフォローアップし、団体を挙げてPDCAサイクルを回す場を設けるよう要請するなど、取り組みの実効性をより高めます。また、建設工事の入札参加資格審査に加え、人口減少対策総合交付金の配分において男性育休の取得状況を反映するインセンティブ策も講じます。これらの取り組みを通じて「共働き・共育て」の輪をさらに拡大し、県民運動として発展させます。
 もとより、人口減少問題の克服は地方の努力だけではなし得ず、子育て世代の経済的負担の軽減や東京一極集中の是正も含め、国全体の社会経済構造の転換に向けて国が自ら果たすべき役割を的確に遂行することが不可欠です。
 先日の施政方針演説において、石破総理は「令和の日本列島改造」を掲げ、一極集中の是正と多極分散型社会の構築を目指して、「若者や女性に選ばれる地方」や「産官学の地方移転と創生」に向けて取り組むことを表明されました。本県としてもこれを好機と捉え、国が国土政策として政府機関や企業、大学といった大都市機能の地方分散などに真摯に取り組み、具体的な成果を上げるよう、全国知事会とも連携し、粘り強く政策提言を行います。
(中山間地域再興ビジョンに基づく取り組み)
 特に若年人口の減少が先行する中山間地域の振興を図るため、「中山間地域再興ビジョン」に基づき、「若者を増やす」、「くらしを支える」、「活力を生む」、「しごとを生み出す」の4つの柱の下で対策を推進しています。
 来年度は、若者人口の減少傾向に早期に歯止めをかけるべく、各施策のバージョンアップを図ります。具体的には、中山間地域における事業者の設備投資のほか、住民の生活用水や移動手段の確保に対する支援をそれぞれ拡充します。また、集落活動センターが主体となった様々な活動を通じて、地域住民と大都市部の若者をつなぐ仕組みを構築するなど、関係人口の創出に向けた施策を強化します。

 こうした取り組みを市町村と一体となって推進するため、本年度、人口減少対策総合交付金を創設し、地域の実情に応じた支援を行っています。県の施策との相乗効果が期待できる事業などを対象とした「連携加算型」については、先日、全ての市町村の事業計画を承認しました。これらの計画には、子育て世帯の住宅新築への助成や、自営業者を対象とした出産・育児に対する支援といった新たな事業が盛り込まれています。
 本年度は市町村における事業計画づくりに多くの時間が費やされましたが、来年度は、市町村が計画に基づき本格的に事業を展開する実質的な初年度となります。このため、有識者によるフォローアップの仕組みを構築するほか、先進的な施策について市町村間で情報を共有する機会を設けるなど、各市町村の取り組みの加速を図ります。

(賢く縮む「4Sプロジェクト」の推進)  
 このように若者の人口減少に歯止めをかけるべく一連の取り組みを進めていますが、当面、県の総人口の減少が続くこと自体は避けられません。今後、あらゆる分野において担い手不足がますます深刻化し、地域の産業はもとより、医療や福祉、交通といった公共サービスでさえ、その維持が困難になることが危惧されます。
 こうした状況にうまく適応し、効率的で持続可能な社会と県民生活の質の向上を図ることを目指して、「Smart Shrink for Sustainable Society」、すなわち、賢く縮む「4Sプロジェクト」の取り組みを推進します。
 このプロジェクトの眼目は、人口減少によって全体としての規模縮小は避けられないにしても、複数の事業体が「集合」して規模の利益を追求し、真に必要なサービスはむしろ「伸長」、充実させていく。その一方で、無駄や重複する部分を省き、あるいは簡素な手法に替える形で「縮小」していくことにあります。その際には、前例の踏襲ではなく、全国初の取り組みを含めて、新しいやり方の「創造」を目指します。全国に先駆けて人口減少が進む本県だからこそ、こうしたプロジェクトに果敢に挑戦する必然性があると考えます。
 このうち、県の積極的な関与が必要な分野、例えば消防の広域化や周産期医療体制の確保などについては重点プロジェクトとして位置付け、予算や組織体制の編成を通じて県の経営資源を重点的に投入します。この「4Sプロジェクト」により、「全国初」、「日本一」の成果を上げる取り組みを含め、全国の公共サービス改革をリードすることを目指して全力を尽くします。

3 いきいきと仕事ができる高知
 次に、目指すべき3つの高知県像のうち、まず「いきいきと仕事ができる高知」に向けた取り組みについてご説明申し上げます。

(1)産業振興計画の推進
 現下の県経済は、個人消費が堅調に推移し、雇用者所得も着実に増加するなど緩やかに持ち直す一方で、物価高騰の長期化と賃金水準の上昇により、事業者への影響が拡大しています。加えて、若年層の県外への転出超過が依然として続いており、担い手不足が深刻化しています。
 こうした厳しい状況を踏まえ、国の経済対策を活用して足下の影響緩和を図ると同時に、中長期を見据え、省力化投資や新分野進出などを通じた各産業分野の構造転換を進めます。あわせて、県経済の持続的な成長に向け、第5期産業振興計画に掲げる「地産外商」と「イノベーション」の取り組みを一層強化します。

(地消地産の強化)
 本県においては、地理的条件や産業構造上の理由から、原材料や製品の多くを県外からの調達に頼らざるを得ず、結果として県内で生み出された付加価値が県外に流出する状況が長年続いています。こうした状況を改善すべく、新たに「地消地産」を計画に位置付けて関連施策を推進します。
 この「地消地産」の取り組みは、「地消」、すなわち県内で消費される財やサービスを、「地産」、つまり県内産の財やサービスに可能な限り置き換えることにより、県際収支の改善と県民所得の向上を図るものです。そして、「地消」の拡大そのものではなく、それによる「地産」の拡大こそが取り組みの目的であるため、「県内需要の喚起」については、県外に外商していたものを県内に回すのではなく、「県産品の供給力の強化」と一体的に進める必要があります。
 来年度はまず、県外からの購入割合が高く、かつ一定の県内需要があるエネルギーや飲食料品といった分野において、例えば、木質バイオマスの利用拡大や土佐黒牛の販売促進から取り組みをスタートします。あわせて、本県の豊かな自然を生かした再生可能エネルギーのさらなる導入に向けて、エネルギーの「地消地産」に資する新たな施策の検討にも着手します。

(2)地産外商の取り組み
(関西圏との経済連携)
 関西圏との経済連携については、アンテナショップ「とさとさ」を拠点としたプロモーションの展開やイベントの開催により、「極上の田舎」高知の魅力を広くPRしてきました。その結果、オープンから半年余りで来店者数は120万人に上り、店舗の売上げは1億8千万円に迫るなど好調を維持しています。
 4月には、関西戦略の大きなターゲットに位置付けている大阪・関西万博が開幕します。会期中には2,800万人を超える来場者が見込まれており、本県の魅力を世界に発信する絶好の機会となります。この機を捉え、5月にはIoPクラウドを活用した先進的な施設園芸のPRブースを出展するほか、8月には「よさこいの演舞」と「街路市」をテーマとしたイベントを開催します。加えて、アンテナショップにおいても、万博会場でのイベントと連動した企画や、外国人向けの「どっぷり高知旅キャンペーン」の情報発信などに取り組み、さらなる外商の拡大と観光客の誘致を図ります。

(輸出拡大の取り組み)
 人口減少に伴う国内市場の縮小が避けられない中、将来にわたって県経済を発展させていくためには、活力ある海外市場への展開が不可欠です。
 食品分野では、ユズや土佐酒、水産物といった基幹品目を中心に、生産体制の強化と新市場の開拓に取り組むことで、輸出の一層の拡大を図ります。特に土佐酒については、昨年末に日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されたことも追い風に、海外でのプロモーションと酒造会社の海外展開に向けた伴走支援を強化します。
 防災関連製品をはじめとするものづくり分野では、昨年フィリピンで開催した防災セミナーで築いた政府機関とのネットワークを生かして、現地やオンラインでの商談の場を設けます。加えて、台湾やフランスで開催される展示会などに積極的に参加することで、販路拡大を図ります。また、昨年は機械部品や紙製品を取り扱う事業者が新たに輸出に参入するなど、海外展開に挑戦する事業者が着実に増加しています。今後も、海外ビジネス交流会の開催や企業への個別訪問といった取り組みを通じて掘り起こしをさらに進めます。

(観光振興の取り組み)
 観光分野では、昨年の県外観光客入込数が過去2番目に多い445万人を記録しました。これは、「らんまん」放送の効果により過去最高となった一昨年の472万人は下回るものの、本県観光の底上げが図られてきたものと捉えています。来年度は、さらなる高みを目指して観光振興の取り組みを強化します。
 このうち、連続テレビ小説「あんぱん」を生かした取り組みについては、放送開始に合わせて、来月29日に「ものべがわエリア観光博『ものべすと』」が開幕します。これに先立ち、今月9日に香南市のヤ・シィパークで開催されたプレイベントは多くの方々で賑わいました。来月には香美市の「やなせたかし記念館」のリニューアルオープンや南国市の「やなせライオン公園」の開園を控え、また、3市では観光ガイドの養成が進むなど、受入態勢が着実に整ってきています。来年2月までの開催期間中は、県内外に向けたプロモーションに加え、やなせさんゆかりの地を巡る周遊企画や中山間地域での企画展の開催といった様々な仕掛けを展開します。
 また、2年目となる「どっぷり高知旅キャンペーン」については、本県がより多くの方に選ばれる観光地となるよう取り組みを拡充します。自然や食に加え、文化や暮らしといった本県の魅力をたっぷりと味わっていただくため、体験型の観光商品の造成や、複数の宿泊施設を一体で運営する分散型ホテルの整備を進め、受入態勢の充実を図ります。あわせて、県内の観光関連事業者と連携して平日宿泊を促進するなど、旅行需要の平準化に向けた施策を展開します。さらには、「あんぱん」とこのキャンペーンの取り組みを連動させることで、各施策の効果をより高めると同時に、県内全域にその効果を波及させます。
 インバウンド観光について、一昨年5月に就航した台湾からの定期チャーター便は、9割を超える搭乗率を維持しており、本年10月末まで運航期間が延長される見込みとなっています。加えて、来年度は過去最多となる92隻のクルーズ船の寄港が予定されるなど、大阪・関西万博の開催による効果も相まって、本県を訪れるインバウンド観光客の一層の増加が見込まれます。
 このため、チャーター便の定期便化に向けて特に県民の皆さんの利用拡大を図るほか、韓国や香港からの新たなチャーター便の誘致活動にも取り組みます。さらには、アジア圏をターゲットに、高知ならではの旅行商品の造成や積極的なプロモーションを行うことで、海外からの誘客促進を図ります。
 また、本県のインバウンド観光の要となる高知龍馬空港の新ターミナルビルについては、昨年見直しを行った整備計画に沿って、現在実施設計を行っています。来年度には本体工事に着手し、令和8年秋の一部供用開始に向けてしっかりと整備を進めます。

(3)イノベーションの取り組み
(商工業分野)
 商工業分野では、デジタル化に取り組む事業者の量的な拡大と質的な向上を図るため、関連施策を強化します。
量的な拡大については、県内でも、小売業におけるセルフレジや労務管理における勤怠管理システムの導入をはじめ、多くの事業所で取り組みが進んでいます。今後も、専門家による伴走支援やデジタル人材の育成に向けた講座の開催などを通じて、事業者のデジタル化の裾野をさらに広げます。
 質的な向上については、工程管理システムの導入によって生産管理に関する情報を部門を超えて共有し、全社的な業績向上のために活用する事業者も現れてきています。来年度は、デジタル技術の導入を通じて大幅な生産性向上や高付加価値化に取り組む事業者への支援を拡充するほか、デジタル化の優良事例を表彰する制度を創設し、これをモデルとして広く発信することで県内事業者への横展開を図ります。
 また、商店街におけるデジタル化については、高知市の帯屋町商店街において、人の流れの計測により得られたデータを店舗の来店予測やマーケティングに活用する取り組みを進めています。今後は、高知工科大学データ&イノベーション学群とも連携し、商店街への誘客に向けた実証事業を行うことに加え、セミナーの開催などを通じてこうした取り組みを県内各地に展開します。

(一次産業分野)
 農業分野では、IoPクラウド「SAWACHI」の利用農家数が先月末時点で1,500戸を超え、クラウドを活用したデータ駆動型農業が着実に進んでいます。こうした中、例えばキュウリでは、クラウドを利用する農家の出荷量が未利用の農家と比べて4割程度上回るといった成果も表れています。
 来年度は、これまで利用が少なかった花きや果樹などの生産者のほか、収量を伸ばせていない農家にも個別に働きかけを行い、利用者のさらなる拡大につなげます。加えて、栽培方法に関する改善点の表示や病害の発生予測ができるよう、クラウドの機能強化を図ります。
 林業分野では、森林クラウド「Clowood」を活用した林業適地への集中投資や、高性能林業機械の導入による施業の効率化を進めることで、森林資源の再生産を促します。また、林地残材などの未利用材を発電燃料として活用する取り組みを推進します。
 このほか、環境に配慮した森林由来という、新たな価値を加えた土佐材を認証する仕組みについては、認証された木材の取扱情報を管理するシステムを構築した上で、令和8年度からの運用開始を目指します。
 水産業分野では、高知マリンイノベーションの取り組みを一層加速します。このうち、産地市場のスマート化に向けては、土佐清水市において自動計量システムと電子入札の導入を推進すると同時に、こうした先進的な事例を他地域にも展開します。さらには、メジカの漁場予測システムの構築を進め、令和8年度から情報発信システム「NABRAS」で情報提供を開始します。

(新たな産業の創出)
 産学官民の連携の下、次世代における新たな産業づくりも一層推進します。
このうち、医療・健康分野の製品やサービスの事業化を目指すヘルスケア・イノベーション・プロジェクトでは、これまでの取り組みにより、9社が実証事業を展開し、このうち2社が県内での拠点の設置に至っています。こうした事業者への継続的なサポートのほか、新たな事業者の掘り起こしと伴走支援を行うことで、新事業の創出とその拡大につなげます。
 また、アニメプロジェクトでは、令和9年度にアニメクリエイターの拠点となる複合施設「GEAR」が整備されることを見据え、アニメに関わる人材の育成に向けて施策を強化します。具体的には、県内学生を対象としたアニメ制作の体験講座を開催することに加え、専門学校が行う教育プログラムづくりを支援します。このほか、4月に開催される「高知アニクリ祭」といった交流イベントを通じて関連業界とのネットワークをさらに強化し、クリエイターや関連企業の誘致につなげます。

 あわせて、こうした一連の取り組みを支える人材の育成を一層進めることに加え、あらゆる産業分野の担い手不足の解消に向けて、外国人材などの確保策をさらに強化します。
 昨年10月末時点の県内の外国人労働者数は、前年比で約17パーセント増となる5,293人と過去最高を更新し、今や県内事業者にとって欠かすことのできない人材となっています。
 外国人材の受入拡大に向けては、インドのタミル・ナド州やベトナムのラムドン省といった、本県と人材の受け入れに関する覚書を締結した地域との関係を一層強化します。加えて、インドのナガランド州やフィリピンのアクラン州をはじめ、新たな送り出し地域の開拓にも取り組みます。さらには、新たに外国人材を雇用しようとする事業者の相談窓口を設置し、円滑な受け入れを図ります。
 また、賃金水準の高い大都市部への人材流出を防ぐためにも、生活費の安さや治安の良さ、人の温かさといった本県の強みを生かして、県内定着を促す取り組みが欠かせません。このため、外国人と地域住民との交流活動や交流拠点づくりに対する支援制度を創設するほか、日本語教室の開催や住宅改修への支援といった施策を通じて生活環境の充実を図ります。こうした多文化共生に向けた取り組みにより、県内で暮らす外国人の満足度を一層高めます。

4 いきいきと生活ができる高知
 次に、「いきいきと生活ができる高知」に向けた取り組みについてご説明申し上げます。

(1)日本一の健康長寿県づくり
 日本一の健康長寿県づくりについては、第5期構想に掲げる「県民の誰もが住み慣れた地域で、健やかで心豊かに安心して暮らし続けることのできる高知県」の実現に向けて取り組みを進めています。
 しかしながら、特に中山間地域においては担い手不足が深刻化し、医療・福祉・介護サービスの提供体制の確保が困難な状況にあります。また、地域のつながりや支え合いの力の弱まりによって、社会的孤立といった問題も顕在化しています。こうした厳しい現状を踏まえ、4つの柱に基づく施策をさらに強化します。
1つ目の柱では、県民の皆さんの健康増進に向けて取り組み、中でも全国と比べて高い壮年期男性の死亡率の改善を目指します。
 具体的には、高知家健康パスポートアプリを活用したイベントの開催などを通じて、事業者が主体的に健康づくりに取り組む環境を整備します。また、糖尿病性腎症対策において透析予防強化プログラムの普及を図るほか、都道府県では全国初の取り組みとして、高血圧や脂質異常症などの循環器病の重症化予防プログラムを令和8年度から開始するべく準備を進めます。
 2つ目の柱では、中山間地域を中心に、在宅での生活を希望される方に対して必要なサービスが提供されるよう、体制の充実と人材の確保を図ります。
 体制充実に向けた取り組みについて、介護分野では、遠隔地の利用者にサービスを提供する訪問介護事業者への支援を拡充します。加えて、「こうち介護生産性向上総合支援センター」において、介護現場へのデジタル技術の導入などの取り組みをきめ細かく支援します。また、医療分野では、オンライン診療について、現在10市町で導入が進んでおり、今後は全市町村に拡大すべく、医療機関の体制整備に対する支援の充実を図ります。
 人材確保に向けた取り組みについて、介護人材に関しては、事業者の海外での採用活動に対する支援制度を創設するなど、外国人材の受け入れを促進します。また、看護人材については、病院や診療所にアドバイザーを派遣し、働きやすい職場づくりや処遇改善を進めるほか、看護学生の県内就職の促進に取り組みます。さらには、県東部地域における人材確保を図るため、安芸市内において、令和9年4月の看護師養成所の開校に向けて施設整備を進めます。
 3つ目の柱では、安心して妊娠・出産・子育てができる社会の実現を目指し、出生数の増加に向けた施策を抜本強化します。
 まず、子どもを持ちたいと望む方が適切な時期に不妊治療を受けられるよう、総合的な取り組みを進めます。具体的には、一般不妊治療への助成は市町村が担い、経済的負担の大きい生殖補助医療への助成は県が担うという役割分担の下で、不妊治療費に対する県の助成制度の対象地域を全市町村に拡充します。あわせて、若い世代に対して妊娠や出産に関する正しい知識の習得を促すほか、不妊治療と仕事を両立できる環境を整備します。
また、周産期医療体制の確保については、昨年12月に有識者会議で承認された方針に基づき取り組みを推進します。このうち、無痛分娩の導入に向けては、来年度から高知大学における産科麻酔医の育成を支援します。その上で、令和8年度に医学的配慮が必要なハイリスク分娩から導入を開始し、令和9年度にはローリスク分娩にも対応できるよう準備を進めます。
 4つ目の柱では、制度や分野を超え、地域で相互につながり支え合う「高知型地域共生社会」を推進します。行政が主体となった取り組みでは、早期に全市町村で包括的な支援体制が整備されるよう、引き続き伴走支援を行います。また、地域が主体となった取り組みでは、地域住民が在宅で支援を必要とする方の買い物やゴミ出しなどの生活援助を行う仕組みづくりを進めます。加えて、防災力強化の観点から、消防団にも見守り活動への参加を呼びかけるなど、地域における支え合いの力をより高めます。

(2)教育の充実
 教育の充実については、本年度からの第3期教育大綱に基づき、確かな学力、健やかな体、豊かな心の育成を目指して取り組んでいます。
 こうした中、全国学力・学習状況調査では、特に中学校で全国平均を下回る結果が続くなど、学力の定着が課題となっています。また、不登校児童生徒の出現率は近年全国平均を下回っているものの、不登校者数は依然として増加傾向にあり、その改善と教育機会の確保に向けた取り組みが求められます。これらの課題を含め、複雑化・多様化する教育課題に正面から向き合い、その解決を図るべく関連施策を一層強化します。
 学力の向上については、1人1台端末の日常的な活用をさらに進め、個々の児童生徒に応じた学習習慣の定着を図ります。このうち中学校においては、対話型AIを活用して問題の解き方をサポートする学習支援アプリの実証事業に取り組みます。
 また、自己の将来とのつながりを見通した学びを推進するため、キャリア教育の取り組みを強化します。具体的には、小中学校における地域の文化や産業に関する学習活動への支援制度を創設します。加えて、高校生が地域の現状や今後のあり方について考える宿泊研修を新たに開催するほか、海外留学を通じて地域課題の探究に取り組む高校生への支援を拡充します。
 不登校対策については、未然防止と早期対応を一層徹底すべく、校内サポートルームを新たに18校に設置することに加え、専門人材による相談支援体制を充実します。
 また、不登校児童生徒の多様な教育機会を確保するため、いわゆるメタバースを活用したオンラインでのサポートや、フリースクールの運営支援に取り組みます。さらに、学びの多様化学校については、先日開催した高知市との連携会議において市から設置の意向が示されました。今後は県において、特色ある教育課程の編成や、養護教諭などの専門職の配置といった学校のあり方を示したガイドラインを策定し、早期の設置に向けた支援を行います。
県立高等学校の改革については、年度内に策定する県立高等学校振興再編計画に基づき取り組みを進めます。具体的には、学校の所在地域や役割などを踏まえて5つのグループに分類し、グループごとに目安となる学校規模や再編基準を設定した上で、各学校の魅力化に向けた様々な施策を展開します。このうち、中山間地域などの小規模校においては、遠隔教育による教育機会の確保や特色ある部活動の推進に加え、市町村とも連携した積極的な情報発信を通じて、地元はもとより県外からの生徒の受入拡大を図ります。
 こうした教育施策を進めるにあたっては、教職員が安心感を得ながら子どもたちと向き合える、魅力ある職場環境をつくることが何より重要です。このため、若年教員のサポート体制の充実に加え、教員業務支援員といった外部人材の活用や事務作業のさらなる見直しにより、教職員の負担軽減を図ります。あわせて、本県で教職員として働く魅力についてのPRを強化するほか、教職調整額の引き上げなどの国の動向も踏まえて処遇改善を図ることで、安定的な人材確保につなげます。
 一方で、ここ最近、不祥事による教職員の懲戒処分が相次いでいます。このことは、学校が子どもたちにとって安全・安心な場であるという、教育活動の大前提を揺るがす事態だと捉えており、大きな危機感を持っています。今後は、県教育委員会において研修の一層の充実を図るほか、私自身が全ての県立学校長に対して直接訴えかける場を設けるなど、教職員の不祥事の根絶に向けてしっかりと取り組みます。

(3)文化芸術とスポーツの振興
 文化芸術の振興については、来年10月からの「よさこい高知文化祭2026」の開催に向けて、様々な広報を通じて機運の醸成を図るほか、市町村が実施する文化芸術活動への支援を行うなど、着実に準備を進めます。また、中山間地域における伝統的な祭りや民俗芸能の継承に向けた取り組みについては、地元の保存団体と大学や企業といった外部の支援者とのマッチングを強化し、担い手の確保につなげます。
 スポーツの振興については、第3期スポーツ推進計画に基づき、子どもや障害者が身近な地域でスポーツに親しめる場づくりのほか、スポーツを通じた地域活性化などの取り組みを進めます。
 昨年末に悲願のJリーグ入りを果たした高知ユナイテッドSCについては、先日、栃木県で初戦を迎えました。惜しくも敗れはしましたが、今週末に本県で開催されるホーム戦での勝利と、今後のさらなる躍進を期待しています。
 こうしたプロスポーツクラブの活躍は、スポーツの振興はもとより、観光誘客や交流人口の拡大といった様々な効果をもたらします。このため、今回のJリーグ参入という機を捉え、高知ユナイテッドSCの経営基盤の強化を図るべく高知市と協調して出資を行います。加えて、ふるさと納税制度を活用してその運営を後押しするなど、県民の皆さんと共に応援する機運を高めたいと考えます。

(県民体育館の再整備)
 県民体育館については、建築後50年が経過し老朽化が著しく、利用に支障を来していることに加え、大規模なスポーツ大会やイベントに必要なスペースや観客席が不足するといった課題を抱えています。
 このため、本年度有識者を交えて検討を行った結果、利用者の利便性の観点から、現地での建て替えが望ましいという結論に至りました。これを踏まえ、新たな県民体育館は、プロスポーツの試合やコンサートの受け入れも可能なアリーナとして、現有地で整備したいと考えます。今後は、専門家や競技団体の代表者などによる検討委員会を設置し、必要な機能や管理運営の手法といった点について議論を進めた上で、来年度中に整備の骨格となる基本計画を策定します。
 この新たな施設が、スポーツの振興はもちろん、県民の皆さんの生きがいづくりや若者が楽しめる場の創出につながる施設となるよう、令和11年度末までの供用開始を目指してさらに検討を深めます。

(4)その他
(公共交通の維持確保)
 中央地域の公共交通については、人口減少に伴う利用者の減少に加え、乗務員不足による度重なる路線バスの減便など、大変厳しい状況に置かれています。
 こうした状況を踏まえ、中央地域における公共交通の目指す将来像について、県と沿線市町、事業者が議論を深め、先日、概ね5年後の中期的な姿と10年後の長期的な姿の2段階からなる方向性を取りまとめました。
 まず、中期的な姿として、路面電車は、利用者数や収支率、乗務員の確保状況から、当面現状を維持することを前提に検討を進めることが妥当と考えます。一方、路線バスについては、今後5年間で乗務員が約4割減少することが見込まれるため、来年度、市町と共に5年後の姿を描いた上で、毎年、路線再編を実施していきます。
 長期的には、路面電車についても車両や施設の老朽化による維持管理費の増加や大規模な設備投資が見込まれることから、そのあり方について幅広い観点からの検討が必要です。このため、まずは来年度、今後見込まれる設備投資のコストや社会便益などに関する詳細な調査を実施した上で、路面電車のあり方を長期的な姿をめぐる課題として検討することとします。なお、この調査の結果、より早期の対応が必要と認められる場合には、中期的な姿と合わせて前倒しで見直しを行うことも検討したいと考えます。一方、路線バスの長期的な姿については、来年度取りまとめる中期的な姿やその後の取組実績の検証を行った上で、次の5年間の取り組みを検討します。
 中央地域における公共交通については、以上のような将来的な方向性を踏まえ、事業者や沿線市町と共に、持続可能な公共交通ネットワークの構築に向けて取り組みます。
 こうした公共交通のあり方の見直しとあわせて、事業の主たる担い手となるとさでん交通の経営の安定化を図る必要があります。このため、路線バスなどの公共交通部門における公的支援の強化や、貸切バスなどの収益部門における収益拡大の取り組みへの支援について、国の重点支援交付金を活用した来年度補正予算での措置も含めて、検討を進めます。

5 安全・安心な高知
次に、「安全・安心な高知」に向けた取り組みについてご説明申し上げます。

(1)南海トラフ地震対策
 本年度を期限とする第5期南海トラフ地震対策行動計画においては、これまでの取り組みを土台に、「命を守る」、「命をつなぐ」、「生活を立ち上げる」の3つの柱を掲げ、総合的に対策を進めてきました。その結果、住宅の耐震化や津波避難タワーの整備が着実に進んだ一方、津波からの早期避難意識率の伸び悩みもあり、想定死者数を4,300人に半減させる目標については、7,800人への減少にとどまることとなりました。
 第6期となる新たな行動計画では、想定死者数を3,500人にまで減少させることを目標に、能登半島地震や南海トラフ地震臨時情報から得られた教訓も踏まえ、4つの観点で対策を抜本強化します。
第一に、「自助」や「共助」の取り組みの強化です。発災後、行政による支援が十分に行き届かないことも想定される中、住民一人ひとりが命を守り、また、住民同士が互いに助け合うことが何より重要です。「自助」については、津波からの早期避難をはじめ、各家庭における備蓄や臨時情報発表時の対応などに関する啓発を一層強化します。加えて、耐震診断に係る補助上限額の引き上げと補助予算の増額を図り、住宅耐震化をさらに加速します。また、「共助」については、災害ボランティアの円滑な受け入れに向けて、市町村に開設される災害ボランティアセンターにおける運営スタッフの研修や訓練の充実を図ります。
 第二に、避難環境の整備の強化です。避難生活を原因とした災害関連死を防ぐためにも、避難所における生活環境の充実が不可欠です。このため、県においてトイレカーを整備し、県内5カ所の総合防災対策推進地域本部に配置するほか、事業者によるトイレカーやキッチンカーの導入を後押しします。また、福祉避難所については、市町村における定期的な訓練の実施や資機材の整備を支援します。
 第三に、復旧・復興作業に向けた事前の備えの強化です。中でも事前復興まちづくり計画の策定については、発災前に住民の皆さんが地域の再建後の姿をあらかじめ共有しておくことで、防災対策の強化にとどまらず、持続可能なまちづくりにもつながる大変重要な取り組みと考えます。このため、来年度からは、沿岸地域の市町村に加え、土砂災害特別警戒区域の広がる中山間地域の市町村にも計画策定の支援対象を拡大し、全県で取り組みを推進します。各市町村の計画づくりが一層進むよう、中山間地域特有の事情を反映した新たな指針を作成するほか、地域における勉強会や協議の場に参画して助言を行うなど、きめ細かな支援を行います。
 第四に、災害に強いインフラ整備の加速です。地震による被害の軽減と復旧・復興活動の円滑な実施のためには、強靱な県土づくりが欠かせません。国の補正予算も最大限活用して、緊急輸送道路の整備や上下水道施設の耐震化などをさらに進めます。
 新たな行動計画においては、こうした対策を含め、各施策に明確な数値目標を設定した上で、PDCAサイクルを徹底しながら、その達成に向けて全力で取り組みます。

(消防の広域化)
 人口減少が進行する中で、地域に必要な消防力を将来にわたって確保するためには、県内の常備消防組織を一本化することが最も有効だと考えます。
 昨年11月には、県として消防広域化のあるべき姿を示した基本構想の骨子案を作成し、現在、年度内の構想決定に向けて、パブリックコメントなどで出された意見への対応の取りまとめを行っています。
 この基本構想には、令和10年度を目途に県と市町村からなる広域連合を設立し、各消防本部の総務や通信指令といった間接部門の集約に加え、人事・給与制度の統一などを段階的に進める方針を盛り込みたいと考えます。
 来年度は、市町村長や消防長、各界の有識者で構成する「消防広域化基本計画あり方検討会」を設け、基本構想を基にさらに議論を深めるなど、市町村や消防本部と共に消防広域化に向けた基本計画の策定を目指します。

(2)インフラの充実と有効活用
 地域の経済活動を下支えし、南海トラフ地震などの大規模災害に備えるためには、道路や堤防、港湾といったインフラ整備の加速が不可欠です。
 中でも、四国8の字ネットワークについては、関係市町村や全国知事会と連携して、また、全国高速道路建設協議会の副会長として、早期の整備に向けた政策提言を重ねてきました。
 その結果、今月8日には北川道路の一部区間が開通し、来月15日には高知東部自動車道の「高知龍馬空港~香南のいち」間が開通します。これらによって東部地域へのアクセスが向上し、観光振興や災害対応力の強化など様々な面での効果が期待されます。しかしながら、県内の整備率は未だ6割余りにとどまっていることから、今後も必要な予算がしっかりと確保されるよう、国などに対して粘り強く提言を行います。
 また、地震による津波から県都を守る浦戸湾の三重防護事業については、津波防波堤の整備や海岸堤防の耐震化などが順調に進み、本年度末時点の整備率は77パーセントとなる見通しです。令和13年度の完成に向けて、国や高知市とも連携して着実に整備を進めます。
 加えて、豪雨災害対策についても、国の有利な地方債制度を活用して河川の浚渫や改修を推進するなど、一層の充実を図ります。

6 議案
 続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
 まず予算案は、令和7年度高知県一般会計予算など40件です。
 今回の当初予算の編成にあたっては、人口減少対策の強化をはじめ、目指すべき3つの高知県像の実現に向けた施策を一層進化させるべく工夫を重ねました。また、県民の皆さんの安全・安心の確保と地域経済の活性化を図るため、防災・減災対策をはじめとするインフラ整備を着実に推進することとしました。
 その結果、一般会計当初予算額は4,741億円となり、前年度を86億円上回る規模となっています。また、投資的経費は前年度と同規模となる924億円を確保しました。
 一方で、財政運営の持続可能性の確保に向けては、国の有利な財源の活用や事業のスクラップアンドビルドの徹底なども含め、歳入歳出両面で努力を重ねました。これにより、令和7年度当初予算編成後の財政調整的基金は前年度同期を上回る199億円を確保できる見込みであり、県勢浮揚と県財政の持続可能性の両立を図ることができたと考えます。
 しかしながら、本県の財政運営は地方交付税制度など国の動向に大きく左右されます。このため、引き続き、国に対して地方一般財源総額の確保に向けて積極的に政策提言を行うと同時に、歳入歳出両面から不断の見直しを進め、安定的な財政運営に努めます。

条例議案は、職員の旅費に関する条例の一部を改正する条例議案など19件です。
その他の議案は、県有財産の取得に関する議案など10件です。
報告議案は、高知県が当事者である訴えの提起の専決処分報告の1件であります。

以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。

お問い合わせ

総合企画部 広報広聴課
TEL:088-823-9046
FAX:088-872-5494
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