平成23年6月県議会での知事提案説明

公開日 2011年06月27日

更新日 2014年03月19日

平成23年6月高知県議会定例会での知事提案説明 (6月27日)

1 東日本大震災と当面の県政運営について
(被災者の方々へのお見舞いと被災地への支援)
(本県経済への影響)
(東日本大震災と今後の県政運営)

2 6月補正予算について

3 南海地震対策の加速化と抜本的な強化について
(1)全体像
(2)分野別
 (ア)揺れ対策
 (イ)津波対策
 (ウ)災害時の医療・保健の確保
 (エ)災害時要援護者対策
 (オ)南海地震対策を踏まえた健康長寿県構想
(3)連動型地震への備えに関する国への政策提言等
(4)原子力発電所の安全対策

4 社会保障と税の一体改革について

5 産業振興計画の推進
(1)地産外商戦略の現状
(2)ものづくりの地産地消の取り組み
(3)観光振興の取り組み

6 全国学力・学習状況調査への対応

7 新図書館等複合施設の整備について

8 議案


 本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成23年6月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。

 ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。

1 東日本大震災と当面の県政運営について

(被災者の方々へのお見舞いと被災地への支援)

 去る3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震と、これに伴う津波により、1万5千人を超える方々の尊い命が失われ、7千人を超える方々の行方がいまだに不明となっております。お亡くなりになられた方々、ご遺族の皆様方に対しまして、あらためてお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆様方に、心からお見舞いを申し上げます。

 今月24日に発表された政府の試算では、被災地における直接的な被害の額は、約16兆9千億円とされております。未曽有の被害をもたらしたこの震災を受けまして、本県では、東日本大震災支援対策本部を設置し、「東日本大震災支援プロジェクトこうち」など民間の皆様との連携を図りながら、官民協働で被災地に対する物的、人的支援を積極的に行いますとともに、被災者の方々の受け入れも実施してまいりました。また、県民の皆様から多くの物資や義援金、協力の申し出などをいただき、まさに県を挙げて支援を行ってきたところであります。

 今後も、できる限りの支援を行い、震災からの一日も早い復興を応援してまいりたいと考えております。

(本県経済への影響)

 このたびの震災では、本県におきましても、津波により須崎市、土佐市、四万十市などで養殖の施設が被災するなど、水産業で約26億円の被害が発生しております。

 また、こうした直接的な被害にとどまらず、資材の不足や発注メーカーからの受注の減少などによる製造業の売り上げの低下、さらには、宿泊客や宴会客の予約のキャンセルなど、経済への様々な影響が生じております。

 県としましては、こうした状況に適切に対応するため、事業者の皆様の資金調達や受発注先の確保など緊急に対応を要するものについては、直ちに対策を講じてまいりました。さらに、津波による水産業被害への対応などについては今議会に関連予算を提案しております。

 今後も、県内の産業団体の方々との協議などを通じ、本県経済への影響に関する状況把握に努め、必要な対応を図ってまいります。

(東日本大震災と今後の県政運営)

 本県では、震災を踏まえ、被災地における貴重な教訓に学びながら、南海地震対策の加速化と抜本的な強化を目指して、「今すぐできること」と「抜本的な対策」の2つを柱とした見直しを進めております。

 あわせて、正念場を迎えております産業振興計画や、本年2月にバージョンアップした日本一の健康長寿県構想など、県勢浮揚に向けた様々な施策の推進にあたっても、南海地震への対策の視点を持って、日頃の備えを怠ることなく対応していくことが必要であると考えております。

2 6月補正予算について

 今議会では、こうした考え方と現下の情勢にかんがみ、「南海地震対策の抜本強化」、「東日本大震災への対応」、「産業振興計画の推進」、「教育改革の着実な推進」の4つの柱に基づき、総額14億8千万円余りの補正予算を提案しております。

 第一に「南海地震対策の抜本強化」に関しては、震災を踏まえた南海地震対策の加速化と抜本的な強化を図るため、事業効果の早期発現が期待される取り組みを重点的に実施することとしております。

 第二に「東日本大震災への対応」に関しては、引き続き被災地や避難被災者の皆様への支援に取り組みますとともに、津波による被害を受けた本県漁業への支援などを行うこととしております。

 第三に「産業振興計画の推進」に関しては、木質バイオマスエネルギーの利用の加速化をはじめ、企業立地や企業の設備投資の促進などを図ることとしております。

 第四に「教育改革の着実な推進」に関しては、全国学力・学習状況調査の全国的な実施が見送られたため、国から配布される問題を活用して県が独自に実施し、学力向上の取り組みの継続的な検証を行うこととしております。

 現在、国においては震災からの本格的な復興などに向けた補正予算の編成が検討されているところでありますが、いわゆる公債発行特例法案などの成立については不透明であり、歳入を見通すことが困難な状況が続いております。本県では、これまで財政調整的な基金の確保や県債残高の抑制に努めており、将来への財政的な備えは一定できていると考えておりますが、こうした状況を踏まえ事務費の執行を一部留保するなど、引き続き保守的な対応を行ってまいります。

 加えて今後も、中長期的な財政収支をきめ細かく見通し、県財政の健全性を維持しながら、南海地震対策をはじめとする各種課題への対応をしっかりと行ってまいりたいと考えております。

 また、いわゆる「ひも付き補助金」を段階的に廃止し、地域の自由裁量を拡大することを目指して、本年度創設されました地域自主戦略交付金につきましては、本県に83億円余り、県民1人当たりでは全国第3位の額が配分されたところであります。震災に伴う影響は、県内経済の幅広い分野に及んでいることも踏まえ、こうした国からの交付金や各種の基金を積極的に活用するなどして、時機を逸することなく、県内の景気の下支えを行うとともに、立ち遅れているインフラの整備なども進めてまいりたいと考えております。

3 南海地震対策の加速化と抜本的な強化について

(1)全体像

 次に、南海地震対策の加速化と抜本的な強化についてご説明申し上げます。

 概ね100年から150年の間隔で発生し、その都度本県に大きな被害をもたらしてきた南海地震につきましては、今後30年間に発生する確率が

 60パーセント程度と言われ、刻々とその切迫度を増してきております。

 さらには、東海・東南海・南海地震の連動発生も危惧されており、地震による強い揺れと大津波により、東海から九州に至る広い範囲に甚大な被害をもたらすと想定されているところであります。

 これまで、本県では人命最優先の観点から、中央防災会議の被害想定を上回る人的被害が生じることを想定した上で、県が取り組むべき111項目の予防対策や応急対策などを定めた「高知県南海地震対策行動計画」に基づき着実に取り組みを進めてまいりました。

 しかしながら、震災の発生を受け、私自身も4月に被災地にまいりましたが、「想定外」と言われます今回の大津波による被害を目の当たりにし、「想定外をも想定」した対策の必要性をあらためて痛感したところであります。

 また、津波対策の強化はもちろん、家屋の倒壊などを防止する揺れ対策、広域的な行政機能の喪失への対応、長期間にわたる医療救護体制や、社会基盤が機能を失った中での災害時要援護者への支援のあり方など、今回の震災によって、あらためて見えてきた課題も数多くございます。

 県庁としましては、外部の専門家や関係者の方々のご意見とともに、被災地に派遣した職員や被災地でボランティア活動を行った職員など多くの職員が現地で得た貴重な教訓を組織全体で共有し、こうした課題への対応に十分に生かして、南海地震対策の抜本的な強化を図ってまいります。あわせて、今すぐにでもできる対策については、工夫や手順の見直し等を通じて早期に着手できる166項目の取り組みをはじめ、優先度の高いものから順次実施していくといったスピード感ある対応を図り、事前の備えから発生後の対策に至るまで、全体を通じた見直しを進めてまいります。

(2)分野別

 次に、各分野における具体的な南海地震対策についてご説明申し上げます。

(ア)揺れ対策

 まず、揺れ対策についてであります。

 現時点の想定では、南海地震が発生いたしますと、県内のほとんどの地域で震度5強から6強、一部では震度7という強い揺れが、少なくとも、およそ100秒続くものと予想されております。

 この強い揺れへの対策といたしまして、県や市町村の所有する建築物や個人の住宅などに対する耐震化を着実に進めてまいります。

(県有建築物)

まず、県の所有する建築物につきましては、利用者の皆様の安全確保のみならず、災害発生時における応急、復旧活動の拠点や、近隣の方々などの緊急避難場所としての機能も確保するため、優先度の高いものから順次、耐震性の向上に努めております。

(市町村等の施設)

また、学校、社会福祉施設、災害拠点病院といった、市町村や民間の施設につきましても、耐震化のための改修や改築を支援するなど耐震対策を促進しているところであります。

(住宅の耐震対策と室内の安全対策)

 住宅の耐震対策については、今回の震災により県民の皆様の防災意識も大いに高まっているこの機を捉えて、最大で90万円となる住宅耐震改修への補助制度など、住宅の耐震対策に対する支援を拡充し、意識の高まりと負担の軽減の相乗効果によりまして、対策のさらなる促進を図ってまいりたいと考えております。

 さらに今後は、耐震化の促進に併せまして、倒れた家具などによるけが等を防止するため、室内の安全対策の徹底についても啓発を強化してまいります。

(イ)津波対策

 次に、津波対策についてご説明申し上げます。

(想定見直しの事前調査)

 現在、国におきましては、中央防災会議の中に専門調査会を設置し、今後の地震、津波対策の方向性を検討しております。秋頃を目途に取りまとめを行った上で、その後、東海、東南海、南海の連動型地震の被害想定の検討を開始すると伺っております。

 本県におきましても、こうした国の検討結果を受けて速やかに県内の詳細なハザードマップや被害想定の見直し作業に着手できますよう、事前準備といたしまして、過去の津波の痕跡や地形データなどに関する広範囲な調査を実施したいと考えております。

 他方、こうした津波の被害想定の精度を高める努力を続けつつも、今回の震災の最大の教訓である、「想定外をも想定」して対応することの必要性を肝に銘じて取り組みを進めてまいります。

(津波避難計画)

 現在、各市町村においては、避難場所や避難経路の再点検、津波避難計画の早期策定などを進めていただいているところであります。県としましても、本年度中には、沿岸地域の19市町村すべてで市町村計画の策定が終了するよう、積極的に支援してまいります。

(自主防災組織)

 また、それぞれの地域で津波避難などの防災への取り組みを進めていく上では、地域の住民の皆様方からなる自主防災組織が中心的な役割を担っていくものと考えております。

 特に沿岸地域につきましては、この自主防災組織を中心として津波避難に関する地域計画の策定を進める必要がありますことから、すべての沿岸地域での自主防災組織の設立を目指しまして、人的支援と財政的支援の両面でサポートし、地域の防災活動への取り組みを加速してまいります。

(訓練)

 さらに、県民の皆様に、津波から身を守るためには大きな揺れを感じたら速やかに高い場所に避難することが基本であることを日頃から意識していただき、実際の行動に移していただけるよう、まず、各小中学校において、地震、津波を想定した避難訓練を実施するとともに、9月には、市町村や地域の皆様にもご協力をいただきまして、県下一斉の避難訓練を実施することといたしております。

(県有施設)

 津波避難計画の策定を進める中、新たな避難場所の設置などの対策を講じる必要の出てくる地域もあるものと思われます。このような地域への津波避難タワーの整備や、公共的な建物への外付け階段の設置など、地域の津波避難対策を、スピード感をもって推進してまいります。

 本年度の当初予算に計上しております関連事業につきましても、津波安全対策を再検証した上で執行することとしており、例えば、県の所有する施設に関して、周辺住民の方々の一時的な避難、利用者の皆様の安全確保、業務継続のための環境確保などといった観点で見直し、外付け階段の設置や、非常用電源の上層階への設置などの検討を行っているところであります。あわせて、避難場所や避難ビルとしての指定について、所在地の市町村との協議を進めております。

(堤防耐震調査)

 また、地震や津波で被害の生じる可能性のある河川堤防につきまして、耐震化工事に向けた基礎調査を前倒しで実施するとともに、県が管理するすべての海岸で堤防の耐震化基礎調査を実施するための補正予算を今議会に提案しております。

(ウ)災害時の医療・保健の確保

 次に、災害時の医療・保健の確保についてご説明申し上げます。

 まず、医療の確保に関しては、大規模な災害が発生した場合の医療救護体制について、近年、災害派遣医療チーム、いわゆるDMATの発足や、都道府県域を超える広域医療搬送など、災害急性期における医療救護活動のための新しい手法が進んできましたことから、昨年度中に高知県災害医療救護計画を見直すこととしておりました。

 しかしながら、今回の震災では、津波による人的被害が大きく、また、広範囲かつ長期にわたる医療救護が求められるなど、これまでの災害医療対策の想定では十分に対応できないことが明らかになりましたため、それらを踏まえて計画のさらなる見直しに取り組むことといたしました。計画の見直しにあたりましては、医療関係者の方々などで構成する検討委員会において、今回浮き彫りになりました、長期にわたる医療救護の必要性や地域の医療機能を早期に復旧させる対策など様々な課題について検討し、本年度内を目途にこれらを踏まえた新たな災害医療救護計画を策定してまいります。

 また、地域の医療機能を維持していくための病院等の耐震化、医薬品や水の確保、停電対策などについても、可能な対策を着実に進めていくほか、DMATの一層の充実や広域医療搬送のための拠点整備など広域的な災害に対応できる医療救護体制の確立に取り組んでまいります。

 次に、保健活動の分野に関しては、大規模災害により被害が長期にわたる場合は、避難所や仮設住宅で長期の避難生活を余儀なくされる方々の健康相談や、被災地区の家庭を訪問しての健康チェック等、被災地域の方々の健康不安に対応する中長期的な保健活動が重要となります。

 今回の震災では、役場庁舎などが津波による壊滅的な被害を受け、行政機能の大部分が失われたことにより、他県からの保健支援チームの受け入れ態勢が整備できなかったことや、市町村が管理する保健福祉関係の台帳情報の大半が失われたことなどから、地震発生後、速やかな保健活動を開始できなかった地域などもございました。

 本県におきましても、南海地震により、沿岸部を中心に甚大な被害が想定されますことから、今回の震災で見えてまいりました課題を検証し、災害時保健活動ガイドラインの見直しに着手いたしますほか、他県からの保健支援チームが円滑に活動するための指揮命令系統の明確化など、南海地震が発生した場合におきましても、保健活動を円滑に実施できる体制の確立に取り組んでまいります。

(エ)災害時要援護者対策

 次に、災害時要援護者対策についてご説明申し上げます。

 災害時に自力で安全な場所に避難することが困難な一人暮らしの高齢者や障害者など、いわゆる災害時要援護者の方々については、特にきめ細かい支援が必要であります。

 このため、各市町村において個々の要援護者の実態を把握し、災害時の避難方法を取りまとめた避難支援プランの策定を一層推進するとともに、一般の避難所では生活が困難な方々のための福祉避難所の指定が早急に進むよう取り組みを加速してまいります。

 災害時要援護者のうち、特に、自宅で医療を受けられている方々、いわゆる在宅要医療者の支援体制については、今回の震災を踏まえ、従来の想定を超える地震や津波の被害に備えるため、本年度中に、在宅要医療者災害支援マニュアルの再検証を行いますとともに、市町村と連携した支援計画の見直しを行うこととしております。

 また、宮城、岩手両県の沿岸部では、津波により社会福祉施設などが壊滅的な打撃を受け、入所している多くの高齢者や障害者の方々がお亡くなりになりました。こうした施設は、災害時に、入所者はもとより、福祉避難所や福祉サービスを提供する拠点としての役割を果たすことが求められておりますことから、特に安全性の確保を欠かすことができない施設であります。

 このため、高知県社会福祉施設地震防災対策マニュアルの見直しを行い、個々の施設において、独自にマニュアルを作成し、地震への対応力を高めるための指針として活用していただくとともに、施設の立地条件や建物の耐震構造、避難場所などの項目を整理し、総合的な防災対策の自己点検を行うための「安全対策シート」のひな形を作成することとしております。

 また、津波による被害の恐れのある区域にあります社会福祉施設につきまして、現地での建て替えによる施設の高層化や高台などの浸水のない地域への移転改築を進めるための新たな補助制度の創設を、国に提案しているところであります。

(オ)南海地震対策を踏まえた健康長寿県構想

 また、今回の震災の教訓から、災害時の安全・迅速な避難や避難した方々による支えあいを実現するためには、日頃の地域の絆が重要であることを再認識したところであります。

 本県では、日本一の健康長寿県構想の中に、市町村をはじめ社会福祉協議会や民生委員・児童委員など地域の皆様と連携した見守り相談体制の充実や、特定健診やがん検診の受診勧奨に市町村と共に取り組む健康づくり団体の育成などを掲げているところであります。こうした取り組みは、まさに日頃からの地域における支え合いの仕組みづくりであり、これらをしっかりと進めることが同時に南海地震対策にもつながるものと考えておりますことから、引き続き、構想の実現に全力で取り組んでまいります。

(3)連動型地震への備えに関する国への政策提言等

 次に、東海・東南海・南海地震の連動発生への備えに関する国への政策提言についてご説明申し上げます。

 県としましては、これまでに震災による新たな知見も踏まえた連動型地震の被害想定の早期見直しや、高速道路など多様なインフラ施設を津波避難施設としても利活用することなどに関する政策提言を、いち早く国に行ってきたところであります。

 こうした活動が功を奏し、国においては、高速道路などの整備に関する事業評価基準に、新たに防災機能を加える方針が決定されました。このことは、従来から本県が行ってまいりました道路が持つ多様な効果を事業評価基準に反映させるべきとの主張に沿ったものであり、大いに評価できる見直しであると考えております。

 また、地震の発生が予想される圏域内の複数の県が歩調を合わせて行動することで、国家的な課題として対策を講じるべきであることを、より強い説得力をもって国に働きかけていくことが可能となります。あわせて、圏域内の各県がお互いのノウハウを共有し、連携体制を構築することにより、各々の防災力を高めていくことも有益であります。こうしたことを踏まえまして、本県の呼びかけにより、今月16日、「東海・東南海・南海地震による超広域災害への備えを強力に進める9県知事会議」を立ち上げ、超広域災害に備えた連携体制の構築などについて国に政策提言を行ったところであります。

 今後も、本県独自の提言活動と併せまして、9県が緊密に連携し、連動型地震の発生に備えた対策を加速するよう国に訴えてまいりますとともに、お互いのノウハウを共有し、顔の見える関係を構築することによって、西日本全体、また、本県の防災力を高めていきたいと考えております。

(4)原子力発電所の安全対策

 福島第一原子力発電所の事故から3カ月経った現在も、なお多くの方々が避難生活を余儀なくされ、また、農林水産物の出荷制限や風評被害などその被害は甚大で広範囲にわたっております。国においては、一刻も早く事態の収束が図られるよう全力で取り組むとともに、事故原因の徹底した究明と、その結果を踏まえた安全基準の見直しを早急に行うことが必要であると考えております。

 また、事故に関する正確な情報が国から迅速に提供されなかったことが、周辺住民の方々をはじめ多くの国民の皆様の不安と不信を招いたことは、大きな反省点として、今後、十分な検証が必要ではないかと考えております。

 原子力発電施設の事故による被害の大きさを考えるとき、本県におきましても、四国電力伊方原子力発電所の安全の確保は、極めて重要な問題であると認識しております。

 四国電力からは、「想定外をも想定」した危機管理の発想で対策を講じていくこと、国から示される新たな知見を待つだけでなく、必要なことは自主的に取り組むことなどにより、さらなる安全と安心の確保に万全を期したいとの安全対策に関する基本姿勢をお伺いしております。

 今後も、伊方原子力発電所の具体的な安全対策について説明を求めていくなど、県民の皆様が安心できる安全性の確保を四国電力に対して強く求めてまいります。

4 社会保障と税の一体改革について

 現在、政府・与党におきまして、社会保障制度の機能強化と持続可能性の確保を目的とする「社会保障と税の一体改革」の成案決定に向けました、詰めの作業が行われております。

 当初に公表されました社会保障改革案では、地方が自ら提供する社会保障サービスの議論が抜け落ちるなど、地方の意見がほとんど反映されていない内容となっていましたことから、全国知事会をはじめとする地方6団体として、政府・与党に対する要請活動や意見交換を行ってまいりましたし、私自身も、地方単独事業や国と地方の役割分担に応じた財源確保の必要性などについて、子ども・子育て新システム検討会議に設置されましたワーキングチームや政府・与党の関係者などとの議論の場を通じて、強く訴えてまいりました。

 あわせて、こうした場を通じて、本件は地方に大きな影響を及ぼす問題でもあり、法制化された「国と地方の協議の場」で議論すべきであることを強く訴えてきたところであります。

 こうした取り組みの結果、法律に基づく初めての「国と地方の協議の場」が今月13日に開催されることとなり、この協議を踏まえて、現在取りまとめられております案では、地方が取り組む単独事業を含めた安定財源の確保と併せて、今後の改革を進めるにあたっては、「国と地方の協議の場」において、地方団体の意見に十分な配慮を行い、真摯に協議を行うことなどが盛り込まれる方向だとお聞きしております。

 県としましては、今後、消費税を含めた税制抜本改革の議論はもちろんのこと、具体的な詰めの作業が求められます社会保障制度の個別分野ごとの改革に向けまして、これまで以上に全国知事会などとの連携を強めながら、「国と地方の協議の場」や「分科会」などでの議論を通じまして、県民の皆様が安心して生活ができる社会保障制度となりますよう取り組みを進めてまいります。

 また、今回の「社会保障と税の一体改革」の議論にとどまらず、地方自治に関係する諸課題につきましては、法制化された「国と地方の協議の場」を通じて実効性のある協議を積み重ねることが、真の意味での分権型社会の実現に向けまして極めて重要であります。今後とも、全国知事会などとも連携して、「国と地方の協議の場」を通じた政策形成プロセスの確立に向けて取り組みを進めてまいります。

5 産業振興計画の推進

 次に、産業振興計画についてご説明申し上げます。

 産業振興計画につきましては、PDCAサイクルを働かせてバージョンアップを図りながら、官民一体となった取り組みを積み重ねてまいりました。

 本年度は、県勢浮揚に向けた歩みを確かなものにしていくための正念場の年であります。震災以降の全国的な経済の冷え込みなどがある中、この2年間で蓄積した様々な仕組みやノウハウを生かして、産業振興計画による官民協働の取り組みを着実に進めていくよう、努力を重ねてまいります。

(1)地産外商戦略の現状

 地産外商活動につきましては、例えば首都圏では、「まるごと高知」を拠点として個別の営業活動を強化するとともに、物販・飲食部門を活用した試食・商談会の開催や大規模な展示・商談会への出展に取り組み、さらには、県内でも「食の大商談会」の開催などに精力的に取り組んでまいりました。

 先の震災により、ホテルなどでのフェアが一部延期、中止になるなど、地産外商活動にも様々な面で影響が生じておりますが、これまでの地道な活動によりまして、平成21年度に178件であった商談の成約件数が、平成

 22年度には444件に増加するなど、外商活動の成果が着実に表れていると考えております。

 引き続き、県外のバイヤーの産地への招へいや、マーケティングの専門家と連携した営業活動の強化、さらには、県内の卸売業者の方々との協働による「まるごと高知フェア」の開催などに努めてまいりますとともに、これまで培ってまいりました人脈を生かし、首都圏以外での外商活動にもさらに力を入れて取り組んでまいります。

 「まるごと高知」の物販・飲食部門の開業初年度の売り上げは、合計で約2億4,800万円と、目標を達成いたしました。震災の影響もあり、物販部門は目標を下回りましたが、飲食部門は一年を通して好調を維持し、目標の1.4倍の売り上げとなりました。

 本年度につきましては、震災の影響で落ち込んでいた物販部門の売り上げを上昇させるため、集客力のあるフェアの実施や、旬の県産品をはじめ、商品のラインアップを充実するといった、魅力ある店舗づくりに向けた取り組みを引き続き進めてまいりますほか、お中元用の「まるごと高知」オリジナルのギフトカタログを活用した販売促進活動といった店舗外での取り組みも進めてまいります。

 あわせて、先週、県内3ブロックで開催しました「まるごと高知報告会」や「まるごと高知レポート」の発行などを通じて、県内事業者の皆様に店舗の情報を積極的に発信し、さらなる活用をお願いするとともに、販売や外商活動で得られた情報を事業者の皆様にタイムリーにフィードバックすることによりまして、商品の磨き上げにつなげてまいりたいと考えております。

(2)ものづくりの地産地消の取り組み

 ものづくりの地産地消については、その強化に向け、今月3日、高知県産業振興センター内に「ものづくり地産地消センター」を開設し、県内でのものづくりに関する総合相談窓口として、ものづくりに関する支援策の紹介や、県内事業者のマッチング支援などをきめ細やかに行い、県内のものづくりのニーズに応えていくことといたしました。

 この「ものづくり地産地消センター」には、食品加工の分野において、県外に外注している加工工程の県内受注先に関する問い合わせや、県内産野菜の加工機械についての相談など、今月24日現在で、39件の相談が寄せられております。

 また、センターの開設に併せまして、県内のものづくりに関する技術力を紹介し、商談のきっかけにしていただく「ものづくり技術展示会」を、本県の強みである「食」をテーマに開催いたしましたところ、加工機器や製造受託等に関わる29の事業者の方々に出展いただき、それぞれの技術力をPRする良い機会になったと高い評価をいただいたところであります。

 さらに、隣接する工業技術センターの食品加工研究棟では、ものづくりの地産地消を専門的な技術によりバックアップする体制を整えておりますほか、こうした相談体制、技術支援の整備と併せまして、本年度から県内企業向けの設備投資の促進策を充実させるなど、本県のものづくりの技術力を結集したメイド・イン高知の製品を増やし、外商活動にもつなげていくことで、県経済の活性化を図ってまいりたいと考えております。

(3)観光振興の取り組み

 次に、観光振興の取り組みについてご説明申し上げます。

 震災後の全国的な自粛ムードにより、宿泊予約のキャンセルが相次くなど、本県の観光業界にも少なからぬ影響が生じたところでありますが、4月以降、徐々に持ち直しの動きが見られ始め、ゴールデンウィークには、高知城懐徳館やアンパンマンミュージアムなどでは昨年を上回る来場者があり、震災による影響もやや緩和されてまいりました。

 他方、今月19日には、本県観光への追い風となっていた高速道路休日上限千円の特別割引制度が終了したことから、個人旅行を中心に本県への入込客数の減少が懸念される状況となっております。

 こうした中、本県への誘客を促進するためには魅力あるコンテンツがこれまでにもまして必要となっており、その中核となる取り組みが3月5日に開幕しました「志国高知 龍馬ふるさと博」であります。

 この「志国高知 龍馬ふるさと博」は昨年の龍馬ブームを継続させながら、歴史や文化、自然や食といった本県の強みを余すことなくPRし、リピーターとなっていただける多くの高知ファンを獲得するための取り組みです。来る7月9日には、JR高知駅前の「こうち旅広場」が完成し、NHK大河ドラマで使用された龍馬の生家セットを再現いたします「『龍馬伝』幕末志士社中」がオープンするとともに、県内外から大いに注目を浴びた「三志士像」も集結いたします。こうしたコンテンツが情報発信館「とさてらす」と併せて、本県観光のエントランス機能と、各地域への周遊を促すハブ機能を大いに発揮してくれるものと期待しているところであります。

 さらに、同日には、四万十町に「海洋堂ホビー館四万十」がオープンいたしますことから、「龍馬伝幕末志士社中」、「三志士像」、「海洋堂ホビー館」を本県誘客の目玉となる三点セットとして活路を見いだし、テレビやラジオ、旅行雑誌などでの露出を高めるとともに、旅行エージェントに対して、これまで以上に積極的なセールス活動を実施し、県外からの誘客に取り組んでまいります。

 また、こうした施設は、県民の皆様にも十分に楽しんでいただける内容となっております。多くの県民の皆様にもご来場いただき、高知の新しい賑わいの創出に是非ともご参加いただきたいと考えております。

6 全国学力・学習状況調査への対応

 次に、教育分野の取り組みについて、ご説明申し上げます。

 本年度の全国学力・学習状況調査につきましては、震災の影響等により、従前の形での全国的な調査の実施は見送られることとなりましたが、国においては、各教育委員会や学校における教育に関する検証改善サイクルの継続を支援するため、希望する各教育委員会や学校等に対して、国が作成した問題冊子等の配布を行うこととしております。

 本年度は、「学ぶ力を育み 心に寄りそう 緊急プラン」の最終年度であり、教育委員会では、学力の全国水準への引き上げという目標の達成に向け、一つ一つの施策の詰めを徹底しているところであります。子どもたち一人ひとりの成長に施策が有効に働いているのか、継続的に検証していくことが非常に重要であると考えております。

 このため、本県といたしましては、子どもたちの学力の定着度や学習状況を的確に把握するため、国から配布される問題冊子を活用し、すべての公立小中学校で10月初旬を目途に調査を実施することとしております。今後、得られたデータを活用し、学校や市町村への支援・指導などこれまでの学力向上の取り組みのPDCAサイクルを継続することで、本県の子どもたちの学力向上を着実に図ってまいりたいと考えております。

7 新図書館等複合施設の整備について

 新図書館等複合施設の整備につきましては、本年3月に策定されました、新図書館、新点字図書館、科学館のそれぞれの基本構想や、複合施設のあり方検討委員会からのご意見を踏まえ、4月以降、基本計画の作成に取り組んでまいりました。

 このたび取りまとめられました基本計画案では、新しい施設を県内の生涯学習や文化の発展に寄与する施設とすることや、県民・市民の暮らしと仕事の中で起きる様々な課題の解決を支援する知的・文化的な基盤とすることを目指して、具体的なサービスの内容や施設・設備の構成、運営体制の考え方などが示されております。

 また、災害時に緊急避難場所として活用できる機能を持たせるなど、地震等の災害に備えた施設とすることも盛り込まれております。

 施設の構成については、津波・浸水への対応を第一に考え、1階部分では、エントランスや点字図書館、物流スペースといった必要最小限の機能にとどめ、他の施設については2階以上に配置することとされております。

 駐車場の整備方法につきましては、利用者の利便性・安全性から敷地内に整備し、コスト面については運営面も含め負担を少なくするとともに浸水への備えはもちろん、まちづくりに欠かせない景観への配慮や空間の確保、さらには、工期を十分確保することなど、様々な面から比較検討を行い、それらの結果を総合的に判断いたしまして、1階のピロティ部分を平面式の駐車・駐輪スペースとして活用いたしますとともに、施設の西側に設けられる予定の多目的広場の一部に、機械式の地下立体駐車場を整備することで、必要台数を確保することとされております。

 また、周辺道路からの進入路等につきましては、北側の追手筋と東側の中の橋通りの双方に車両の出入口を設けた上で、日曜日については、追手筋での日曜市の開催を考慮しまして、東側の出入口のみ使用することとされております。

 このように、基本計画案につきましては、災害時の緊急避難場所としての整備を検討すべきであるといった、パブリックコメントやフォーラムでのご意見、また、県議会でいただきました、周辺地域での渋滞対策や駐車場のあり方などのご意見を踏まえながら、作成を進め、このたび取りまとめられたところであります。この内容の詳細につきまして、今議会で詳しくご説明をさせていただき、ご理解をいただいた上で、教育委員会において基本設計に取り組んでまいりたいと考えております。

8 議案

 続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。

 まず予算議案は、平成23年度高知県一般会計補正予算など3件です。

 このうち、一般会計補正予算は、先ほど申し上げました南海地震対策などに必要な事業の経費として14億8千万円余りを計上しております。

 条例議案は、高知県税条例の一部を改正する条例議案など8件であります。

 その他の議案は、高知県公立大学法人に係る中期目標の制定に関する議案など3件であります。

 以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。

 何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。

 

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