公開日 2011年09月20日
更新日 2014年03月19日
平成23年9月高知県議会定例会での知事提案説明 (9月20日)
2 補正予算等について
(補正予算)
(今後の財政収支見通し)
3 南海地震対策の加速化と抜本的な強化
(基本的な考え方)
(当初予算の見直し)
(今すぐできること)
(6月補正)
(9月補正)
(今後の対策)
4 産業振興計画の推進
(1)活力ある県外や海外市場に打って出る
(外商)
(2)産業間の連携を強化する
(ものづくりの地産地消、食品加工)
(観光)
(3)足腰を強め、新分野へ挑戦する
(第一次産業)
(新産業の創出・企業立地の推進)
(新エネルギー)
(4)地域アクションプラン
(5)まとめ
5 日本一の健康長寿県づくり
(構想策定経緯とバージョンアップ)
(保健分野:壮年期死亡)
(保健分野:予防できるがんへの対策)
(医療分野:医師確保)
(医療分野:救急医療体制の整備)
(医療分野:県立病院の機能充実)
(高知型福祉の実現)
(ともに支え合う地域づくり)
(高齢者が安心して暮らせる地域づくり)
(障害者が生き生きと暮らせる地域づくり)
(次代を担うこども達を守り育てる環境づくり)
7 教育の充実
(1)教育改革について
(2)「志・とさ学びの日」について
本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成23年9月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。
1 これまでの4年間を振り返って
県民の皆様のご支持を賜り、私が知事として県政運営を担当させていただくこととなりましてから、まもなく4年が経とうとしております。私の任期中の最後の定例会となる今議会において、この4年間の私の思いと取り組みについて改めて述べさせていただき、さらなるご指導とご鞭撻を賜りたいと思います。
私は、知事に就任させていただいて以来、ふるさと高知の県勢の浮揚に向けて、持てる力を振り絞り、全力を挙げて取り組みを進めてまいりました。この歩みの中で、私が県政運営の基本としてきた考え方が5つございます。
その第一は、4年前の知事選挙以来掲げてきた対話と実行の姿勢であります。対話を通じて地域、地域の実情を学ばせていただき、そして、実行すべき政策についての様々なヒント、お知恵を賜る、そして、そこからより具体的に練り上げた政策をスピード感を持って実行する。これが県政運営の基本の基本となる姿勢であります。
この間、県議会の皆様方から積極的な政策論議を通じて数多くのご指導とお知恵を賜ってまいりました。また、県民の皆様との具体的な対話の機会として、県内各地で開催させていただいた「対話と実行座談会」の開催回数は4年間で65回となりました。さらに、その他の意見交換会、シンポジウム等、数々の機会において多くの皆様方にお知恵とお力を賜りましたことに、改めて厚くお礼申し上げます。
第二は、積年の根本的な課題に、逃げずに真正面から取り組む、挑戦する、という姿勢であります。戦後の重化学工業化の流れに取り残され、加えて全国でも最も早い時期から人口減少、高齢化の波にさらされた高知県。経済は縮み、地域の支えあいの力も弱まっていく、こうした現状を打破し、県勢浮揚を成し遂げていくためには、地域の強みを生かしながら、新たな知恵も加味してこの積年の根本的な課題を克服する術を見いだしていくよりほかに道はありません。根本的な課題であればあるほど、それを克服する道は険しいものとなります。しかし、臆してこれに対する取り組みが遅れれば遅れるほど、その害悪は厳しさを増し、そしてその克服は困難さを増すこととなります。正面からの挑戦、これを成し遂げる勇気を持たなければならない、こうした思いでこの4年間様々な挑戦を行ってまいりました。
第三は、協働の姿勢であります。長年にわたって疲弊し続けてきた本県において、根本的な諸課題を克服していくためには、民間の皆様の必死の自助努力に官が寄り添い、共に努力を重ねることが必要な場合が多数ある、との考えの下、官民協働型の県政運営に心がけてまいりました。官から民へでは済まない、厳しい現実に向き合わなくてはならないとの思いであります。そして、県民の皆様とより身近に接している市町村政との協働もまた極めて重要であります。高知県民はすべていずれかの市町村民であり、この協働なくしては県政は成果を上げることはできません。
第四は、県庁の政策立案、実行能力の強化を図りたいとの思いであります。課題に挑戦し、官民協働型の県政を成し遂げていくためには、職員の一人ひとりが、官民協働型の県政の推進を念頭に、アウトカムの重視と併せて県民の皆様への説明責任もしっかりと果たし、かつ、スピード感を持って仕事を進めていく必要があります。
このため、県庁組織のスリム化を図りつつも県政運営上の喫緊の課題に対しては、柔軟な対応ができる効率的な組織づくりを目指して新たな行政改革プランを策定いたしました。そして、日頃より、諸計画の立案にあたり、県民の目線に立って妥協せず協議を重ねること、実行にあたっては、PDCAサイクルを重視し、かつ、分かりやすい広報と十分な対話を徹底するよう努力を重ねてまいりました。
第五は、対外的な政策発信力を大幅に強化することが必要であるとの考えであります。国の政策が本県の後押しとなるように、国からしっかりと情報を収集し、効果的な政策提言を行うことが重要であります。このため、本県選出の国会議員の皆様方から多くのお力を賜りつつ、あわせて、東京事務所の組織と機能を大幅に拡充し、積極的な政策提言を行ってまいりました。またあわせて、全国知事会や同じ課題を持つ知事との連携の場などでの活動を通じまして、高知県としての主張を強く訴えることなどにも努めてまいりました。
私はこの4年間を通じて、地方の自立と発展のためには、国が地方に影響を及ぼす政策決定を行う際に、地域の多様性に配慮しその意思を尊重する仕組みが、政策決定過程の中に制度的に組み込まれる必要があるとの思いを、強くするようになりました。このため、全国知事会の「国と地方の協議の場の法制化」プロジェクトチームのメンバーとして、その制度設計に携わり、国の政策の企画立案段階から地方の意見を反映することの重要性や、協議の実効性を担保するための「分科会の設置」の必要性などを強く訴えてまいりました。「国と地方の協議の場の法制化」と「分科会の設置」が現実のものとなった今、その実効性を確保するため、今後はその積極活用に向けた取り組みをしっかりと行ってまいりたいと考えております。
こうした基本姿勢の下、私はこの4年間、経済の活性化、子育て支援と教育の充実、日本一の健康長寿県づくり、県民の安全・安心の確保、インフラの充実と有効活用といった5つの基本政策に全力で取り組んでまいりました。
官民協働型で積年の課題に正面から挑むことを意図して、経済面では、地産外商戦略やものづくりの地産地消戦略などを柱とする「産業振興計画」を、保健医療福祉の分野では、地域の支えあいの力を意図的、政策的に作り出そうとする高知型福祉の推進を柱の一つとする「日本一の健康長寿県構想」を、また、教育の分野では、具体的に授業を変える放課後を変える取り組みを重んじた「教育振興基本計画」を、策定若しくは後押しし、PDCAサイクルを重んじながら、各種の具体的な政策を実行すべく努力を重ねてまいりました。
県議会の皆様をはじめ、多くの県民の皆様のご指導とご鞭撻を賜ったおかげで、手ごたえが感じられ始めたものや、成果が一部に見え始めたものもあります。
しかしながら、県勢浮揚に向けては、まだまだ多くのことが道半ばであります。粘り強く取り組みを続けていかなければならない課題が数多くありますし、この4年間挑戦を続けてきたからこそ見えてきた新たな課題も山積しております。また、南海地震対策の抜本強化にも全力で取り組んでいかなくてはなりませんし、立ち遅れたインフラの整備にも一層の努力が必要です。
まずは、残された任期の間、こうした課題に全力で取り組んでまいる所存であります。そして、先の2月議会において表明させていただきましたように、次の4年間におきましても、県民の皆様のお許しを賜ることができるのであれば、県民の皆様が将来に希望を持ち、安心して暮らし続けていける県づくりに向けて、引き続き、職員の先頭に立って仕事をさせていただきたいと考えております。
この4年間を振り返るにあたり、改めて、この間に、多くの皆様方から賜りました数々のご指導、ご鞭撻、ご協力に対し、心より厚くお礼を申し上げます。
2 補正予算等について
(補正予算)
今議会では、「南海地震対策の加速化と抜本的な強化」、「産業振興計画の推進」、「日本一の健康長寿県構想の推進」、「東日本大震災への対応」、「台風6号等の災害復旧」の5つを柱として、総額49億9千万円余りの補正予算を提案しております。
第一の柱である「南海地震対策の加速化と抜本的な強化」では、県民の皆様の安全度が一日一日と高まることを目指し、具体的な津波避難対策を本格化するとともに、非常時に拠点となる施設について、「想定外をも想定」し、より高い安全性を考慮した対策を実施することとしております。
また、第二の柱である「産業振興計画の推進」では、太陽光発電の候補地調査など新エネルギー導入に向けた取り組みの加速化、第三の柱である「日本一の健康長寿県構想の推進」では、本県における医師の適正配置を実現するための調整機能等を担う地域医療支援センターの設置などを行うこととしております。さらに、第四の柱では「東日本大震災への対応」として、すべての都道府県の拠出によって設置されております被災者生活再建支援基金への出えん、第五の柱では「台風6号等の災害復旧」として、7月18日から20日にかけて本県に接近した台風6号などによる被害の速やかな復旧を図ることとしております。
(今後の財政収支見通し)
あわせまして、今議会では、平成29年度までの中期的な財政収支の見通しについてご説明をさせていただくこととしております。
県の財政運営においては、常に中期的な収支の均衡を達成するよう財政規律の維持に努め、県民サービスの確保と県財政の健全化を共に実現することが重要であります。
私が知事に就任させていただいた当時の本県の財政状況は、財政調整的な基金が平成23年度で枯渇する見込みとなるなど大変厳しい状況にありました。このため、歳出面では人件費の抑制や事務事業の徹底した見直しを行うとともに、歳入面では地方交付税の確保や国予算の積極的な獲得、さらには将来を見据え、償還について地方交付税措置のない退職手当債の発行を控えるなど、県債残高の抑制を強力に推し進めてまいりました。
こうした取り組みの結果、本県の財政状況は一定の改善が図られたものと考えております。今般、昨年度の決算状況や今後の歳入の見込み、想定される事業などを踏まえ、平成29年度までの中期的な財政収支の試算を行いましたところ、国の経済対策により積み立てられた基金事業が終了した後も必要な事業を継続することや、国の公共事業費が削減される中でも南海地震対策の加速化・強化を県単独で着実に実施することを加味しても、各年度末の財政調整的な基金残高が昨年度の試算に比べ大幅に増加し、また、実質的な地方交付税である臨時財政対策債を除く県債残高の減少傾向を維持できる見通しとなりました。
しかしながら、本県の財政は、地方交付税などの歳入に占める割合が高く、国の動向や税制の抜本改革の議論、地方分権改革などの動きに左右されます。引き続き、これらの動向を注視し、気を緩めることなく、安定的な財政運営に努めてまいります。
3 南海地震対策の加速化と抜本的な強化
次に、南海地震対策の加速化と抜本的な強化に関して、これまでの取り組みと今後の方針についてご説明申し上げます。
(基本的な考え方)
県政の最重要課題である南海地震対策につきましては、これまで平成21年度に策定した「南海地震対策行動計画」に沿って着実に取り組みを進めてまいりました。
平成26年度までの6カ年計画であるこの行動計画は、ちょうど折り返しにあたる本年度に、これまでの進捗状況などを見極めた上で見直しをする予定としておりましたが、東日本大震災を受けまして、対策の加速化と抜本的な強化が急務となったほか、来年度に予定されている国の新たな3連動地震の想定の策定にも対応した対策が必要となってまいりました。
このため、これまでに引き続き、安全安心を一日一日と高めるための具体策を講じつつ、あわせて根本に立ち返って対策の再検討を進め、来年度末迄にはこの抜本的な検討結果を反映させた新しい行動計画の策定を終えたいと考えております。
南海地震対策の抜本強化を図っていくためには、考えられる想定の精度をより精緻なものとしてそれへの備えを着実に図っていくことに加え、「想定外をも想定」した対策を積み重ねていくことも重要となります。また、震災の検証等を踏まえた「抜本的な対策」を講じるとともに、優先度が高く検証結果を待つことなく着手できる「今すぐできること」についてスピード感を持って対応していくことも重要であります。
来年度、国による新たな想定が出た後に、速やかに対策の再検討やバージョンアップが図れるよう、今から各般にわたって十分な準備を行ってまいります。加えて、明らかになった震災の教訓を踏まえ、想定の見直しに大きく左右されない対策を着実に進めることはもちろん、想定が変わる可能性があったとしても今から取り組まなければならないことなどに、スピード感を持って取り組んでまいります。
(当初予算の見直し)
こうした基本的な考え方の下、南海地震対策について、第一に「本年度当初予算の見直し」、第二に「今すぐできることの実施」、第三に「6月補正」、第四に「9月補正」の順序で、加速化と抜本的な強化を進めているところであります。
第一の「本年度当初予算の見直し」では、平成23年度当初予算中の南海地震対策関連予算につきまして、津波安全対策を再検証した上で執行することといたしました。
本年度耐震化予定の、津波浸水予想地域にある県有施設などにつきましては、周辺住民の皆様の避難施設として活用すること、業務を継続するための環境を確保することなどの視点で、事業計画の見直しを行ったところであります。
(今すぐできること)
第二に、新たな予算を伴うことなく、業務の工夫や手順の見直しなどで早期に着手が可能な「今すぐできること」の洗い出しを行い、新年度早々における学校での避難訓練実施など、166項目をリストアップして順次実行に移してきたところであります。
このうち、現在、完了又は、ほぼ完了したものが44項目、進行中のものは112項目という状況であります。さらに、この夏には第2次の洗い出しをいたしまして、学校での訓練の結果を踏まえた対策の検討など33項目を追加しております。
(6月補正)
第三に、「6月補正」では、早期に効果が見込めるもので、新たな予算を伴う10事業について対応いたしました。
震災以降、県民の皆様の防災意識が大いに高まっていることを踏まえまして、啓発を強化するための事業や、揺れ対策といたしまして、住宅の耐震対策に対する支援の拡充を実施してきたところであります。
また、南海地震で最も大きな被害が予想される津波対策につきましては、震災の教訓でもあります「まずは逃げる」ことを基本に、それぞれの地域で必要な避難対策を講じていく上での第一歩となる津波避難計画の策定と、その作業の中心的役割を担う自主防災組織の設立を加速化していくための予算を計上いたしました。
あわせて、河川や海岸堤防の耐震化基礎調査を前倒しして実施するための予算も計上し、ソフトとハードを組み合わせた多重防御の視点から、地域の津波対策を進めていくこととしております。
このほか、社会福祉施設の地震防災マニュアル改訂などの災害時要援護者対策や、災害医療救護計画の見直し関連予算、物資の備蓄計画を前倒しするための予算なども計上いたしました。
(9月補正)
今般「9月補正」では、次のステップに移るため9億4600万円余りの予算を今議会に提案しております。
津波対策については、現段階で既に津波の襲来時の避難方法が明らかな箇所等について、具体的な避難場所づくりを全速力で進めていくこととしております。
このため、県内各地で、津波避難タワーの設計や設置を6カ所、避難路や避難場所の整備を67カ所、津波避難施設への外付け階段の設置を2カ所のほか、27基の避難誘導灯の整備などを行うため、3億8千万円余りの予算を提案しております。
加えて、新安芸総合庁舎など非常時に拠点となる県有施設につきまして、より高い安全性を考慮した津波対策を実施するほか、須崎の総合庁舎、第二総合庁舎につきましては、周辺住民の皆様の津波避難施設としての機能強化を図るため、外付け階段を設置することとしております。
さらに、今後、国の3連動地震の被害想定の見直しを受けまして、直ちに本県の被害想定の見直しに着手できるようにするための準備行為として、県内各地に残る古文書や史跡などに基づき、過去の南海地震の痕跡をきめ細かく調査することとしております。今後作成する津波浸水予測図に調査結果を反映させ、現在の想定を超える津波の襲来もあることを具体的にお示しすることで、県民の皆様の迅速かつ適切な避難行動につなげるとともに、国の新たな3連動地震の被害想定にも反映されるよう、国への提案も行ってまいりたいと考えております。
(今後の対策)
今月4日には、台風12号の影響も心配される中、市町村や関係機関、さらには、各地域の自主防災組織の皆様のご協力をいただきまして、これまでで最大規模となります3万3千人もの県民の皆様の参加による、県内一斉の避難訓練を実施いたしました。この訓練は、迅速な避難行動を身に付けていただくこと、また、実際に避難路を通って避難場所まで逃げていただくことを通じて、普段は気付きにくい課題を洗い出していただき今後の避難対策に反映させていくことを目的に実施したものであります。
今後ともこうした取り組みを進めながら、本年度中にすべての沿岸市町村において津波避難計画を策定することや、沿岸地域の自主防災組織の組織率を100パーセントにもっていくことを目指して、県としても強力に支援を進めてまいります。あわせまして、こうした取り組みを通じて新たに必要性が明らかになった避難施設についても可能な限り速やかにスピード感を持って整備してまいります。
加えて、県民の皆様にも南海地震に備える正しい知識を習得していただけますよう、啓発にも工夫を凝らし、一層の防災意識の向上を図ってまいります。
また、被災地での教訓を踏まえ、保健医療、福祉の分野の対策の充実を図っていくことも重要であります。
保健医療の分野におきましては、広範囲かつ長期にわたる医療救護の必要性や医療機能を早期に復旧させる対策など、様々な課題について検討し、本年度内にこれらを踏まえた災害医療救護計画を策定してまいります。
福祉の分野におきましても、本年度市町村で進めております地域福祉アクションプランの策定と、自主防災組織や津波避難計画の策定とを連動させることで、地域の防災力を高める取り組みなど、しっかりと対策を進めてまいります。
4 産業振興計画の推進
次に、産業振興計画の推進についてご説明申し上げます。
本県の経済は、人口の減少により県内市場が縮小を続けていること、資本や産業の集積が乏しく産業間の連携が弱いこと、強みである第一次産業さえも強みでなくなりつつあること、といった3つの根本的な課題を抱えてまいりました。産業振興計画では、この3つの積年の課題に対し正面から向き合い、活力ある県外市場に打って出ること、産業間連携の強化を図ること、足腰を強め、新分野へ挑戦すること、の3つの基本方向の下で各般の取り組みを進めてまいりました。
計画を実行に移して2年半、この間の産業振興計画の取り組みの成果と次のステージにおいて乗り越えるべき課題につきまして、この3つの基本方向に沿って、ご説明申し上げます。
(1)活力ある県外や海外市場に打って出る
(外商)
第一に「活力ある県外市場に打って出る」という基本方向の下での取り組みについて、まず首都圏での外商拠点として設置した「まるごと高知」につきましては、震災の影響がある中で、目標の4億円の売り上げをほぼ達成し、地産外商公社による外商活動につきましても、この1年間の商談の成約件数が708件となりました。また、名古屋事務所や大阪事務所の外商機能も大幅に強化する中で、高知フェアや展示・商談会などの外商機会も平成20年度の13件から平成22年度には111件と飛躍的に拡大しております。
このように、地産外商公社の活動が本格化するにつれて、事業者の方々の外商活動も活発化しております。商談会に出展されました事業者の方々へのアンケート調査では、95パーセントを超える方々が、地産外商公社の外商活動に大きな期待を寄せてくださっており、新たに外商にチャレンジする事業者の方々も着実に増えてきております。また、この間の取り組みを通して、公社はもとより、事業者の方々にも様々なノウハウが蓄積されており、全体としてさらなる外商活動の展開に向けての足固めができたものと考えております。
また、機械系のものづくりに関しては、見本市や展示会に参加される事業者の方々が、平成22年度は前年度の84から164に増え、成約の件数が32件から870件と大幅に増加するなど、積極的な外商機会へのチャレンジが新規の取引先の獲得や受注の拡大につながりつつあります。
さらに、大消費地での販路拡大に挑戦した農産物や土佐材、土佐の魚(いお)につきましては、認知度が向上し、今後の取引拡大が期待されるところでありますし、海外での外商活動につきましても、海外の百貨店でのフェアなどを通して挑戦する企業が増え、すそ野を広げることができたと考えております。
しかしながら、競争が厳しい大都市市場で勝ち抜いていくためには、もう一段、高いステージに挑戦していく必要があると考えております。
大都市市場と生産地間相互の情報交換の活発化や、商品の競争力の強化、地理的なハンディを克服するための新たな物流の構築、さらには、県産品の認知度が低い中で事業者の方々の海外への挑戦を継続、定着していくためのさらなる施策の強化といった、新たに見えてきた課題に今後さらに挑戦してまいりたいと考えております。
(2)産業間の連携を強化する
(ものづくりの地産地消、食品加工)
第二に「産業間の連携を強化する」という基本方向の下では、「ものづくりの地産地消」の推進や「食品加工」の育成によって、付加価値を高める工程を県内で拡大、強化していく取り組みを進めるとともに、すそ野の広い観光産業の戦略的展開を図るべく力を注いでまいりました。
「ものづくりの地産地消」推進関連の施策につきましては、総合相談窓口として本年6月に設置した「ものづくり地産地消センター」には、9月16日現在で102件の相談が寄せられており、生産者と機械メーカーが連携して、新しい機械の試作開発を行うといった具体的な動きも出てきております。あわせて、試作機開発や企業立地の助成制度を拡充したほか、技術力を高めるための研修や、食品加工研究棟の設置など、相談、サポート体制を整えたことにより、県内事業者の皆様同士で新たな付加価値を生み出そうとする取り組みを後押しする仕組みが本格的に動き出したところであります。
また、「食品加工」に関しましては、県内各地で地域資源を生かした30件の農水産加工の取り組みが始まりましたほか、試験研究機関との共同研究や技術支援などにより新たに59件が商品化されるなど、取り組みが活発化しております。
他方、地域経済全体の底上げにつなげていくには、まだ多くは事業の規模やボリュームが小さく、本格的な展開を図る上ではクリアすべき課題もございます。
「ものづくりの地産地消」については、県内の多様な技術力の見える化、県内事業者の皆様のさらなる参画、地場の企業が将来にわたって競争力を保ち続けるための支援策の強化といった、また、「食品加工」については、民間の皆様の新たなチャレンジや大規模化を促していくための仕組みの構築や、全国との取引を拡大するための信用の見える化といった、新たに見えてきた課題に今後さらに挑戦してまいりたいと考えております。
(観光)
すそ野の広い観光産業の戦略的展開につきましては、昨年は「土佐・龍馬であい博」の開催を通じ、官民一体となって広報や誘致活動、観光地づくりの取り組みを行いました結果、龍馬伝の強力な追い風を受け、「400万人観光、1千億円産業の実現」という目標を達成することができました。
「土佐・龍馬であい博」は、雇用の創出や大きな経済波及効果をもたらすなど、産業振興計画のリーディングプロジェクトとして他の産業をけん引する役割を十分に果たしたものと考えております。
また、現在開催中の「志国高知 龍馬ふるさと博」では、7月9日にJR高知駅前の「こうち旅広場」が完成し、この9月17日には、「龍馬伝幕末志士社中」で当初の予定より11日早く入場者数が5万人に達したところです。
さらに、今週末に四万十会場を皮切りに開催します「土佐の豊穣祭」や、土佐藩主山内家の墓所公開、さらには11月の龍馬月間における「龍馬伝幕末志士社中」を活用したイベントの開催などにより、引き続き観光客誘致に積極的に取り組んでまいります。
本県は地理的な条件から移動時間や移動料金といった面でハンディがあるという根元的課題を有しておりますため、これまでの博覧会開催の取り組みを通じて得られた成果や財産を最大限活用し、博覧会がなくても全国に通用する持続可能な観光地づくりや、本県の認知度を高めるための国内外への情報発信の強化など、ハンディを克服するための魅力づくりを目指して、さらに挑戦を続けていく必要があります。
その実現に向けましては、第一に、これまでの取り組みを通じて生まれてきた全国に発信できる施設などを、その地域への誘客の目玉、核となる観光拠点として形成していくこと、第二に、これまで各地域で取り組んできた成果やノウハウ等を生かしながら地域の観光資源をさらに磨き上げ、観光客の満足度を高めるための商品づくりを進めること、第三に、潜在化している地域の資源の中から、ストーリー性などを盛り込みながらより多くの新たな観光資源を生み出し、地域での観光客の受け皿を拡大すること、第四に、核となる観光拠点を中心とした周遊ルートづくりや、観光商品の広報・セールス活動などを担う地域コーディネート機能の充実・強化を図り、地域の面的な魅力を高めること、などの取り組みを進めてまいりたいと考えております。
その上で、これまで博覧会を通じて培ってきたノウハウを生かしながら、顧客ターゲットに合わせて様々な切り口による旅行プランを提案するなど、効果的な広報やセールス活動を展開してまいります。
室戸ジオパークにつきましては、今月18日にノルウェーで開催されましたジオパークネットワーク会議におきまして、世界ジオパークネットワークへの加盟が認定されました。
ジオパークとしての価値や地元の皆様の熱意ある取り組みが世界に通用するものとして認められたことを、私自身も、知事として、そして高知県民の一人として大変喜んでいるところであります。
このたびの認定は、室戸ジオパーク推進協議会をはじめとする地元の皆様、関係者の皆様が一体となったご尽力の賜物であり、改めて深く敬意を表します。
世界認定によりまして、室戸ジオパークが国内はもちろん海外の研究者や観光客の方々にも注目されるようになることが期待されます。
県としましても、この認定を大きなチャンスととらえ、室戸ジオパークを核とした東部観光のPRを強化していく等といった取り組みを通じて、室戸市や地元の皆様とも十分連携を図りながら、東部地域、ひいては県全体の経済活性化にもつながるものとなるように一層の努力を重ねてまいります。
(3)足腰を強め、新分野へ挑戦する
(第一次産業)
第三に「足腰を強め、新分野へ挑戦する」という基本方向の下では、第一次産業の強みを維持していくための生産地の強化や担い手の育成、新たな強みを見いだすための新産業の創出などに取り組んでまいりました。
第一次産業では、農業、林業、水産業それぞれに生産から流通、販売を見通した足腰の強い生産地づくりの取り組みが進展し、県外での認知度の向上や取引の拡大、次代を担う若い世代などの新たな担い手の増加など、明るい兆しも見えてきているところであります。
このような中、林業分野では、核となる課題として、大型製材工場の誘致に取り組んでまいったところでありますが、このたび、岡山県に本社を置く国内有数の集成材メーカーである銘建工業株式会社から、大豊町への進出の内諾をいただき、本日午後には、正式に進出協定を締結する運びとなりました。
銘建工業が中心となる新たな大型製材工場では、年間10万立法メートルの原木を加工する予定であり、成熟した森林資源をダイナミックに活用する仕組みが整いますことで、県産材の販路拡大や地域における雇用創出など大きな効果が期待されます。
今後、平成25年度の操業開始に向けて、県としましてもできる限りの支援策を検討してまいりたいと考えております。あわせて、木材価格が低迷する中、厳しい経営環境の中で頑張っておられる意欲ある県内事業者の皆様が、地域の主要な産業として、持続的な経営を続けられますよう、対応策を検討してまいります。
第一次産業全体としては、足腰の強化に向けた取り組みが着実に進展しつつあるものの、生産基盤の弱体化の傾向を大きく改善するまでには至っていない状況にあります。林業分野において先ほど申し上げた取り組みを着実に進めてまいりますとともに、農業分野では、高度な生産技術の普及やこうち型集落営農など所得の向上に向けた取り組みのさらなる推進と法人化など担い手の経営の強化と雇用の拡大、さらに、水産業分野では、養殖漁業や種苗生産などの生産活動や加工、流通過程へのさらなる民間活力の導入、大消費地に向けた新たな物流の仕組みの構築、といった新たに見えてきた課題にさらに挑戦してまいりたいと考えております。
(新産業の創出・企業立地の推進)
新産業の創出に向けては、成長が期待される食品、天然素材、環境、健康福祉、コンテンツの5つの分野の研究会に年々参加者が増え、本年度は、約250の事業者の皆様や支援機関の参加の下、情報の交流や事業者のマッチング支援、事業化プランの検討などが進められております。こうした活動により、これまでに24件の新たなビジネスが動き出し、雇用の創出や売り上げの増加などの成果が見え始めております。また、継続的な企業誘致活動により、平成21年度以降、21件の立地を実現し、フル操業時には687人の雇用が見込まれるなど、産業の厚みを増すことにつながっているところであります。
今後は、南海地震などの自然災害への備えを進める観点からも期待される防災関連産業の振興と併せ、本年度に強化した産学官のネットワークをさらに太く、強いものにしていくことで、新たな産業を生み出す活動をより大きな動きとするよう、取り組んでまいりたいと考えております。
(新エネルギー)
本県は、全国一の森林率による豊富な森林資源、トップクラスの日照時間や年間降水量など、全国でも優位な再生可能エネルギーの資源を備えております。こうした強みを十分に生かすことが、地球温暖化の防止に寄与するとともに、本県の産業振興や県民生活の向上につながっていくものと考えております。
このため、本年3月、新エネルギー推進の具体的な施策を示す「高知県新エネルギービジョン」を策定いたしました。また、「高知県産業振興計画」におきましても、本年度、新たな改定の柱として「新エネルギーを産業振興に生かす」ことを掲げ、太陽光発電や木質バイオマスなどの新エネルギーの導入に向けた取り組みを進めているところであります。
このような中、「再生可能エネルギー特別措置法」の制定により、来年7月から全量固定価格買取制度が始まるなど、全国的に新エネルギー導入に向けて条件整備が進んできております。
この制度の開始後3年間は、促進期間として再生可能エネルギー電気の供給者の利潤に特に配慮することとされておりますため、このチャンスを逃すことのないよう本県における新エネルギー導入を加速化する必要があります。
太陽光や小水力、風力など恵まれた新エネルギー資源のメリットを、地域で最大限に生かすためには、新エネルギーによる発電施設を県内企業や地域住民の皆様、地元市町村など地域が参画して整備していく体制を構築する必要がありますし、また、木質バイオマスエネルギーの普及を拡大していくためには、地域の実情に即した効率的な利用システムの構築や、エネルギー以外の様々な利用方法も総合的に組み合わせたバイオマス燃料の安定供給を検討する必要があると考えており、これらの取り組みを進めるための予算を今議会に提案しております。
(4)地域アクションプラン
地域アクションプランの推進にあたっては、県内7つのブロックに地域本部を設置し、ソフト、ハードの施策を組み合わせて、生産の強化から販売の拡大まで一貫した支援を行ってまいりました結果、地域地域で持てる資源を生かしたプランが228件動き出したところであります。中でも、総合補助金の活用により、30件の農水産加工の取り組みが始まり、地域の雇用や売り上げが増加しましたほか、20件の観光資源の磨き上げが行われ、室戸ジオパークや海洋堂ホビー館四万十に代表されるような地域の新たな核となり得る観光資源も誕生しました。
動き出したこれらの事業が軌道に乗り、地域地域での若者の定着につながるような基幹産業として根付いていくことを目指して、ソフト、ハードの支援策を駆使して今後とも粘り強く支援を続けていくとともに、取り組みのすそ野を広げ、さらなる挑戦を促していくため、計画の周知・徹底や、民間のスピード感といった現場実態に即した制度の改正なども行いながら、より大きな事業、より多くの雇用を生む事業の展開や、地域の観光資源を点から線、線から面につなげて売り込む体制づくりなどに取り組んでまいりたいと考えております。
(5)まとめ
産業振興計画がスタートしてから2年半、走りながら、試行錯誤を繰り返し、挑戦を続けてまいりました。これまでの取り組みにより、本県産業の振興に向けて、積年の課題に立ち向かうための仕組みが整い、県内各地で官民一体となった新たな事業が数多く動き出したところであります。
中には成果の上がり始めたものもありますし、これからのものもありますが、この間、産業振興計画への参加者が着実に拡大し、地域の元気な実践者の活躍の場が広がったと実感しております。
今後、県経済の底上げに向けて、腰を据えて継続的な取り組みを行うとともに、積年の課題に正面から取り組んだからこそ見えてきた新たな課題や残された課題の解決に向け、より高いレベル、より広がりのある産業の振興を目指してさらなる挑戦を全力で行ってまいりたいと考えております。
5 日本一の健康長寿県づくり
次に、日本一の健康長寿県づくりについてご説明申し上げます。
(構想策定経緯とバージョンアップ)
保健、医療、福祉の分野については、働き盛りの40歳代、50歳代の方々の死亡率の高さ、医師の偏在、全国に先行する人口減少と高齢化による地域の支え合いの力の弱体化といった構造的な課題に対応するため、従来の様々な計画を一つの体系として位置付け、「あったかふれあいセンター」などの新たな要素や、健診受診などのより重点的に取り組むべき対策を盛り込んだ上で、平成22年2月に「日本一の健康長寿県構想」を策定いたしました。
また、この構想に掲げた取り組みを着実に実行するため、構想自体をPDCAサイクルを通じて毎年点検し、見直すこととしており、本年2月には、これまでの検証結果や社会情勢の変化を反映させ構想を改訂したところであります。
(保健分野:壮年期死亡)
同構想に係るこの間の取り組みや今後の課題に関し、まず保健の分野についてご説明申し上げます。
40歳代、50歳代の方々の死亡率が高い状況を改善するため、市町村と連携し、がん検診や生活習慣の改善を目的とした特定健診の受診促進に取り組んでまいりました。
その結果、昨年度は、2つの健診共に受診率が増加いたしましたし、特にがん検診においては、個別通知などの新たな取り組みを行った市町村では、40歳代、50歳代の受診者が、前年度に比べて2割程度増えております。
さらに今後は、市町村との連携に加えて、被用者保険の加入者の方やその被扶養者の方への呼びかけを強化するため、各保険者など関係者の皆様との連携方策などを検討してまいりたいと考えております。
(保健分野:予防できるがんへの対策)
がん予防につきましては、検診による早期発見・早期治療と合わせて、本年度から予防可能ながんに対する徹底した対策を講じております。
特に子宮頸がんについては、国の交付金を活用するとともに、本県独自の対策も加え、中学校1年生から大学1年生に相当する年齢の女子への子宮頸がん予防ワクチンの接種費用の助成を行っております。
全国で多くの方が接種を希望したことによりワクチンに不足が生じたことから、3月から7月の間、接種制限が行われておりましたが、こういった状況の中でも、6月末現在で、7,453人の方が接種されております。
また、ウイルス性肝炎につきましては、徹底した広報により県民の皆様に理解を深めていただくとともに、検査の受検勧奨や感染者を適切に治療に結びつける肝炎治療コーディネーターの養成など、対策を一層強化し、肝がんへの進行を防止するように努めております。
(医療分野:医師確保)
次に医療の分野についてご説明申し上げます。
まず、医師確保の取り組みにつきましては、地域の偏在、診療科の偏在、若手医師の偏在という医師の3つの偏在の改善を進めるため、平成22年3月に高知医療再生機構を設立し、対策を強化してまいりました。
中長期的な医師確保対策として、専門医、指導医等の資格取得支援事業をはじめ、高知大学医学部への地域医療教育研修拠点施設の整備などを通じて、若手医師のキャリア形成支援を着実に進めてまいりますとともに、現在不足している地域や診療科の医師を確保するため、本年度からは、即効性のある医師確保対策の強化を図っております。
具体的には、高知医療再生機構が医師を一定期間雇用して県内の医療機関に派遣する医師派遣事業により、本年度1名の医師を派遣しております。また、インターネットで県内医療機関の求人情報を提供する医師ウェルカムネットの運営や、首都圏等の医師を協力員として委嘱し、人脈を使った情報の収集・提供を行う取り組みなど、県外在住医師へのアプローチも進めております。
今後は、高知大学医学部の地域枠の定員の拡大や、現在84名の学生に対して貸し付けを行っております奨学金などによりまして、近い将来、本県で新たに職に就く医師が増加していくことが予想されます。
このため、高知大学医学部に新たに地域医療支援センターを設置し、県内の医師の適正配置等の調整や、医師が地域医療機関と高知大学等を循環しながら、キャリア形成が行えるシステムの構築に取り組み、県内医学生や若手医師の県内定着率の向上につなげてまいります。
(医療分野:救急医療体制の整備)
救急医療に関しましては、本年3月、消防防災ヘリに加え、四国では初めてとなるドクターヘリを導入いたしました。
これまで、医療機関や消防機関等関係者の皆様のご努力により順調に運航され、運航開始後の6カ月間で191件の出動があり、医師による早期の治療開始と病院への早期搬送による救命率の向上や後遺障害の低減に大きく貢献しているものと考えております。
(医療分野:県立病院の機能充実)
次に、県立病院についてご説明申し上げます。
現在のあき総合病院と芸陽病院を統合した上で整備いたします安芸地域の新病院につきましては、平成26年4月の開院に向け、本年4月、本体工事に着手いたしました。
さらに今回の東日本大震災による被災地域での津波被害などを踏まえまして、災害拠点病院として診療機能を維持することができるよう、電気室や機械室を2階相当以上の高さに変更するなど、「想定外をも想定」した津波対策を講じることとしております。
他方、幡多けんみん病院は、開院以来、地域の中核病院として、地域でほぼ完結できる医療を提供してまいりました。
中でも、がん医療につきましては中心的な役割を担っており、本年4月には、県が新たに制度化したがん診療連携推進病院の指定を行ったところです。加えて、この10月には、国に対して地域がん診療連携拠点病院の申請を行うこととしております。
(高知型福祉の実現)
次に福祉の分野についてご説明申し上げます。
子どもから高齢者、障害者など、すべての県民の皆様が住み慣れた地域で安心して、ともに支え合いながら生き生きと暮らすことができる「高知型福祉の実現」に向け、「ともに支え合う地域づくり」、「高齢者が安心して暮らせる地域づくり」、「障害者が生き生きと暮らせる地域づくり」、「次代を担うこども達を守り育てる環境づくり」の4つを柱に取り組んでまいりました。
(ともに支え合う地域づくり)
まず、「ともに支え合う地域づくり」に関しては、人口減少や高齢化の進行に伴って弱まりつつある地域の支え合いの再構築に向けて、地域の課題やニーズを整理し新たな支え合いの仕組みをつくる、市町村の地域福祉計画と市町村社会福祉協議会の地域福祉活動計画の策定が21市町村で進んでおります。現在、それぞれの地域の住民座談会や住民アンケートなども踏まえ課題を整理し、地域の実情に応じた地域福祉のアクションプランが策定されるように各福祉保健所と高知県社会福祉協議会が一体となって支援しているところです。今後も引き続きこのような支援を行うとともに、さらに、自主防災組織と連動して、地域の防災力を高めるといった観点も加味しながら、より実効性のある地域福祉アクションプランが策定されるよう、積極的に取り組んでまいります。
また、国の全国一律の縦割りの福祉サービス基準を超えて一つの施設で必要なサービスを受けられる「あったかふれあいセンター」につきましては、現在31市町村40カ所に設置され、地域ニーズの掘り起こし、世代間の交流、高齢者の元気づくりや介護予防等の効果が表れ始めているところであります。さらに、地域の実情に応じた訪問・相談活動や様々な生活支援のニーズに対応できるよう、「あったかふれあいセンター」の機能強化を図る事業展開について検討を進めてまいります。
また、地域福祉活動を担う人材に関しては、本年度高知県社会福祉協議会に設置いたしました福祉研修センターにおいて、地域福祉の視点を持った専門職や地域活動リーダーなどの養成と資質の向上に取り組みますとともに、福祉人材センターの体制を強化し、施設や事業所と福祉人材のマッチングに取り組んでいるところであります。
(高齢者が安心して暮らせる地域づくり)
次に、「高齢者が安心して暮らせる地域づくり」につきましては、本年度から、中山間地域にお住まいの方にも必要な介護サービスが行き届くよう、在宅介護サービス事業者に対する助成制度を実施しており、これまでに13の市町村で延べ61事業所に助成を行っております。
このほか、認知症の方やそのご家族に地域で安心して暮らしていただけますよう、本年4月1日に認知症疾患医療センターを設置し、認知症の専門医療相談や初期の対応等を実施するとともに、認知症コールセンターを中心とする相談体制を充実するなど、地域の支援体制の構築に取り組んでおります。
(障害者が生き生きと暮らせる地域づくり)
次に、「障害者が生き生きと暮らせる地域づくり」につきましては、県の療育福祉センターでの発達障害の受診者数が、この10年間で3倍に増加しているのに対し、発達障害に関する専門医師は県内に4名程度であり、医師不足への対応が急務となっております。
このため、本年度は、児童精神医学の世界的な権威であるスウェーデンヨーテボリ大学のクリストファー・ギルバーグ博士による講演会や診断・治療技術の直接指導を実施することとしております。
さらに、今後、ヨーテボリ大学と共同研究を行う「発達神経精神医学センター」を平成24年度に設置し、児童精神医学を志す医師にとって魅力のある臨床と研修が行えるよう取り組んでまいります。
(次代を担うこども達を守り育てる環境づくり)
「次代を担うこども達を守り育てる環境づくり」に関しては、児童虐待への対応といたしまして、虐待対応の手順を見直し、虐待通告後の速やかな安全確認、すべての在宅虐待ケースの定期的な再評価の徹底、必要に応じた職権による一時保護など、子どもの最善の利益を優先して取り組んでまいりました。
今後さらに、虐待死亡事例の検証委員会からの提言に沿って取り組んできた児童相談所の組織と運営力の強化と併せて、市町村の児童家庭相談体制の強化に向けても一層の支援を行ってまいります。
また、少子化対策では、本年度は県主催の出会いのきっかけ交流会の開催を8回に拡充し、あわせて、約50名の婚活サポーターの活動を促進するなど、積極的に未婚化・晩婚化への対策に取り組んでまいりました。さらに、共働き世帯や核家族世帯が多い本県では、働きながら子育てを行う家庭や子育てに孤立感や不安感を持つ家庭への支援が大切でありますことから、保護者の皆様の声や市町村の意向なども踏まえ、多様なニーズに応じた子育て支援の一層の充実について検討を重ねてまいります。
6 インフラの充実と有効活用
次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。
社会資本の整備が全国水準から大きく立ち遅れている本県では、この整備水準を少しでも引き上げ、県民の皆様の安全・安心を確保するとともに、地域間競争力を高めることが、県勢浮揚のために必要不可欠であります。こうした観点から、この4年間、地域の実情を踏まえながら、必要性や緊急性の高い道路をはじめとするインフラの整備に重点的に取り組んでまいりました。あわせて、国等に対しまして、政策提言を積極的に重ねることにより、インフラ整備の重要性を訴えてまいりました。
この結果、四国8の字ネットワークの整備に関しては、4年前と比べまして県内の整備率は34パーセントから42パーセントへ、供用延長は88キロメートルから109キロメートルへと伸びることとなりました。また、本年度には、高知東部自動車道の芸西西・安芸西間が、平成17年度の片坂バイパス以来6年ぶりに新規事業採択されました。今後も平成27年度までの間は、毎年度、県内の東西で新たな供用が予定されており、年を追うごとに8の字ネットワークの姿が見えてまいります。
他方、県独自の取り組みとしましては、普通建設事業費について、国の公共事業費が減少傾向にある中で、県の単独事業費を大幅に拡充し、平成20年度から4年連続で前年度を上回る事業費を確保してきているところであります。
こうした中、南海地震対策として、地震の揺れによる堤防の損壊を防ぐため既存堤防の耐震化を進めるとともに、橋梁の耐震補強について優先的に取り組み、この4年間で緊急輸送道路の耐震化率は、35パーセントから65パーセントへと対策が進んでおります。
また、中山間地域の道路整備につきましては、地域の方々のご意見を伺いながら1.5車線的道路整備を重点的に進めてまいりましたし、河川事業におきましては、国から個別ダムの検証を要請されていた芸西村の和食ダムにつきまして、去る8月12日に「継続」との方針が出されて事業の促進が可能となりました。さらに、港湾分野では、高知新港・東第一防波堤の延伸実施や、宿毛湾港・池島第二防波堤の整備の再開が認められるなど、県の働きかけにより、厳しい予算環境の中にある国にもその整備の必要性を認識していただいているところであります。
しかしながら、本県のインフラ整備はまだまだ他県に比して大きく立ち遅れている状況にあり、さらに今後は南海地震対策の加速化と抜本的な強化が大きな課題となってまいります。このため、国の事業費が削減される中にあっても、西日本での連動型巨大地震への対策の必要性を関係する県と連携を図りながら国に対し強く訴えていくなど、インフラ整備に関し効果的な政策提言を行い、予算の確保を図りながら、インフラの充実と有効活用に全力で取り組んでまいります。
7 教育の充実
次に、教育の充実の取り組みについてご説明申し上げます。
(1)教育改革について
厳しい状況にある学力や体力の問題をはじめ、不登校や暴力行為などの本県が抱える教育課題を早急に解決するため、平成20年7月に「学ぶ力を育み 心に寄りそう 緊急プラン」を教育委員会において策定し、4年間で「学力、体力をまずは全国水準に引き上げる」、「不登校や暴力行為の発生率をまずは全国水準まで改善する」ことを目標に取り組んでまいりました。
学力向上対策としましては、「全国学力・学習状況調査」や到達度把握調査の結果を分析した上で、すべての学校が学力向上に向けた学校改善プランを立て、PDCAサイクルに基づく組織的な実践を行っております。また、放課後の学び場を充実しますとともに、授業改善や家庭学習習慣の確立を図るために、「算数・数学シート」や「国語学習シート」、さらに本年度からは「英語ライティングシート」や「理科思考力問題集」などの教材を活用して学力向上に取り組んでおります。
体力向上につきましては、平成21年度に「こうちの子ども体力アップアクションプラン」を策定し、魅力ある体育学習・体育的活動の充実、運動習慣の定着など5つの重点施策を中心に取り組みを進めております。
子どもたちの心の問題につきましては、児童生徒や保護者の悩み、課題を解消するために、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を拡充しますとともに、24時間いじめ電話相談の開設により「いつでも・誰でも・どこでも相談できる」体制を整備いたしました。
こうした取り組みにより、「全国学力・学習状況調査」につきましては、平成19年度から平成22年度にかけての改善率が、小学校では全国第6位、中学校では全国第1位となるなど、一定の成果も見え始めております。特に、小学校においては、国語、算数共に全国の平均正答率とほぼ同じ水準に達しております。また、「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」におきましても、平成20年度から平成22年度にかけての体力の伸び率は、小学校・中学校で、男子・女子とも全国トップの結果となっておりますし、不登校や暴力行為なども徐々にではありますが改善傾向にあります。
しかしながら、中学生の学力、小中学生の体力については依然として全国水準には達しておりませんし、生徒指導上の課題についても、厳しい状況が続いており、まだまだ道半ばであります。
本年度は計画の最終年度であり、「学力、体力をまずは全国水準に引き上げる」といった目標達成に向けて引き続き詰めを徹底してまいります。
加えて、来年度以降も引き続き、小中学生の学力や体力の向上、いじめや不登校など生徒指導上の諸問題の解決に向けて取り組んでいくことが必要でありますことから、これまでの取り組みをしっかりと検証し、効果的な施策を構築するため、現在、教育委員会において、現計画の検証作業と併せ、次期計画の策定に向けて取り組んでいるところです。
また、今後ますます充実が求められる発達障害への支援や豊かな感性や表現力などを育む読書活動の推進といった重点課題に対しましても、「発達障害等のある幼児児童生徒の指導及び支援の充実に関する指針」、「第二次高知県子ども読書活動推進計画」を新たに策定しまして、引き続き、一人ひとりの子どもたちが将来を力強く生き抜いていくための確かな力の育成に取り組んでまいりたいと考えております。
(2)「志・とさ学びの日」について
昨年11月の全国生涯学習フォーラム高知大会閉会式におきまして、毎年11月1日を高知県教育の日「志・とさ学びの日」とする教育宣言が行われました。本年度は、県民の皆様に高知県の教育に関するデータをお示しすることや、市町村や教育関係の団体に教育文化に関する行事を11月に開催していただくことなど、教育への理解と関心を高める取り組みを中心に行う予定であります。また、11月6日には、県内の中学生、高校生による「志」をテーマとした発表会などを行う「志・とさ学びの日」フォーラムも開催することとしております。
この「志・とさ学びの日」を契機といたしまして、本県の教育振興への機運が一層盛り上がりますよう、市町村や関係団体とも連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。
8 永国寺キャンパスの整備について
次に、県立大学の永国寺キャンパスの整備についてご説明申し上げます。
本県の高等教育の改革、社会人教育の充実により、人材育成や若者定着を図っていくことは、本県にとってますます重要となっております。このため、県立大学改革につきましては、知事就任以来、関係する皆様の様々なご意見をお伺いしながら、保健・医療・福祉分野の整備を急ぐとともに、県内学生の進学先の確保による大学進学率の向上と若者の県外流出の防止、県内産業振興に貢献する人材養成のための社会人教育の充実等を目指して取り組んできております。
その結果、池キャンパスを保健・医療・福祉のキャンパスとして拡充いたしますとともに、永国寺キャンパスにつきましては、昨年の永国寺キャンパス検討会の報告を踏まえ、社会貢献する「知の拠点」として充実させていくため、関係する大学と検討を進めますとともに、県内の高等学校や経済関係団体の皆様から、ご意見をお伺いしてまいりました。
今後は、永国寺キャンパスに関していただいたご意見を踏まえ、高校生の進学先の拡充や本県の産業振興、経済の活性化に資する人材の育成などといった観点から、平成27年4月に向け、高知工科大学の新たな社会科学系学部の設置や、社会人教育の充実、大学間連携の強化などについて、さらに検討を深めてまいります。あわせて、高知県立大学の文化学部の拡充についても、県と関係する大学で構成するチーム会で検討が行われております。
また、今議会では、今後のキャンパス整備をスムーズに進めていくため、その前段といたしまして、まず必要となる周辺環境の調査や用地測量等の予算を提案しております。
9 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、平成23年度高知県一般会計補正予算など4件です。
このうち一般会計補正予算は、先ほど申し上げました南海地震対策の加速化と抜本的な強化などに必要な事業の経費として、49億円余りを計上しております。
条例議案は、高知県税条例の一部を改正する条例議案など5件であります。
その他の議案は、県有財産の取得に関する議案など4件でございます。
報告議案は、平成22年度高知県一般会計歳入歳出決算など22件でございます。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。