公開日 2015年02月25日
平成27年2月高知県議会定例会での知事提案説明 (2月23日)
1 県政運営と国の動向
2 平成27年度当初予算及び平成26年度補正予算
1 経済の活性化
(1)第2期産業振興計画の推進について
(2)「地産」の取り組み強化
ア 新技術の導入による第一次産業のステージアップ
(ア)農業分野
(イ)林業分野
(ウ)水産業分野
イ ものづくりの振興とさらなるパワーアップ
ウ 産学官民連携によるイノベーションの創出
(3)「外商」の取り組み強化
ア 外商活動の全国展開の強化や輸出振興の本格化
イ 400万人観光の定着と国際観光の抜本強化
(4)地産外商の成果をさらなる拡大再生産へ
ア 事業承継・人材確保センター
イ ものづくりの振興を通じた設備投資の強化
ウ 第一次産業の担い手確保対策
エ 高知家プロモーションとの連動
2 南海トラフ地震対策の抜本強化・加速化
(1)「命を守る」対策
ア 津波避難場所の整備
イ 山津波対策
(2)「命をつなぐ」対策
(3)道路啓開計画
(4)災害時医療救護計画の見直し
(5)地域における地震対策の推進
3 日本一の健康長寿県づくり
(1)日本一の健康長寿県構想の推進
(2)保健分野
ア 子どもの頃からの健康的な生活習慣の定着
イ がん検診等の受診促進と血管病予防の推進
(3)医療分野
ア 在宅医療の推進(訪問看護)
イ 医師の育成支援・人材確保
ウ 難病相談支援センターの開設
(4)福祉分野
ア 地域福祉を支える仕組みづくり
イ 在宅医療・介護・福祉・住まいの包括的なネットワークづくり
ウ 福祉・介護人材の確保対策について
(5)児童虐待死亡事件について
4 教育の充実
(1)学力のさらなる向上
(2)県立高等学校再編振興計画の推進について
(3)体力のさらなる向上
(4)厳しい環境にある子どもたちへの支援について
7 少子化対策・女性の活躍促進
(1)少子化対策の抜本強化
(2)女性の活躍の場の拡大
第3 その他
1 持続可能な公共交通の構築について
2 イベントの開催について
(1)高知龍馬マラソン
(2)全国漫画家大会議
本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成27年2月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。
第1 平成27年度の県政運営について
1 県政運営と国の動向
本県は、全国より15年先行して平成2年から人口が自然減の状態に陥り、人口減少による経済の縮みが若者の県外流出と特に中山間地域の衰退を招き、さらに経済が縮むことで県民の皆様の暮らしが一層厳しくなるという負の連鎖をたどってまいりました。
この人口減少の負の連鎖を断ち切るため、私は、本県が抱える困難な課題に真正面から向き合い、経済の活性化や日本一の健康長寿県づくりなど5つの基本政策と、中山間対策の充実・強化や少子化対策の抜本強化と女性の活躍の場の拡大といった5つの基本政策に横断的に関わる2つの政策に積極的に取り組んでまいりました。
昨年12月の有効求人倍率が過去最高に並ぶ0.86倍になるなど、全体としては良い方向に向かっていると見られますものの、まだまだやらなければならないことは山積しております。
そのため、来年度は、これまで取り組んできたことを土台にして、積み上げてきた施策を組み合わせ、さらに高い次元の仕事にチャレンジするなど、真の県勢浮揚につながるより力強い施策を展開してまいりたいと考えております。
その際には、引き続き、県庁組織が、全国区の視点を持って創造性を発揮するとともに、成果を意識しながら仕事を進めていく必要があります。また、施策の実効性を高めていくために、官民協働や市町村政との連携協調をより一層進めていくことが重要になってまいります。
こうした基本的な姿勢の下、本県が直面している困難な課題に正面から向き合い、県民の皆様と共に飛躍に向けた挑戦を続けてまいりたいと考えております。
昨年12月27日、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定されました。
また、先月26日通常国会が開会し、今月3日には「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」等を実行するための平成26年度補正予算が成立いたしました。
私は、今回のいわゆる「地方創生」については、これまでのように単に地域の活性化を進めるという観点に止まらず、人口減少とその背景にある少子化の問題、そして地方の衰退という3つの問題を三位一体のこととして捉えている点が、これまでと違った視点であり、重要なポイントだと考えております。
また、個々の取り組みにだけ着目するのではなく川上から川中、川下までの総合的な戦略とするとともに、平成26年度補正予算に盛り込まれた地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金、いわゆる地方創生先行型の交付金のように、地方の総合的な戦略を地方の自主性を重んじて支援しようとするなど、本県が政策提言で訴えてきた内容が基本的な考え方として取り入れられております。また、個別の政策に関しても、全国移住促進センターの創設や「小さな拠点」の取り組みへの支援の強化など、本県の政策提言が数多く取り入れられているところであり、大いに評価をし期待もしているところです。
県としましても、この地方創生の動きを好機として捉え、そして、追い風として、県の産業振興計画などをさらに加速してまいりたいと考えております。あわせて、引き続き、国の施策が本県の県勢浮揚に向けた施策の大きな後押しとなりますよう、国の動向を注視しますとともに、時機を捉えた政策提言を行うなど、積極的に情報発信を行ってまいります。
2 平成27年度当初予算及び平成26年度補正予算
次に、本県の来年度の当初予算案及び2月補正予算案についてご説明申し上げます。
今回の予算編成にあたりましては、全国に先駆けて人口減少が進む中、人口減少による負の連鎖の克服に向け、経済の活性化の取り組みなど課題解決先進県を目指した取り組みをさらに力強く推進するため、国のまち・ひと・しごと創生関連予算などを積極的に活用しつつ、限られた財源で最大限の事業を実施できるよう、知恵を絞り、工夫を徹底いたしました。
その結果、来年度の一般会計当初予算案は、7年連続で前年度を上回る4,584億円余りと、さらなる県勢浮揚を図るための積極型の予算となっております。
他方、課題解決先進県を目指した経済の活性化の取り組みや南海トラフ地震対策などを大幅に加速しながらも、財政規律を維持し、引き続き将来に向けて安定的な財政運営を行っていくよう努めたところであります。
具体的には、歳入面では、景気回復などに伴う県税収入の増加を見込むことにより、前年度を大きく上回る一般財源総額を確保するとともに、地方創生先行型の交付金など国の有利な財源を積極的に活用いたしました。
また、歳出面では、行政のスリム化による人件費の抑制や積極的な事務事業の見直しを行うなど、歳出削減に徹底して取り組んだところであります。特に、事務事業の見直しに関しては、昨年度に引き続き裁量的経常経費にマイナスシーリングを設定した上で、課題解決先進枠を拡充することにより、事業のスクラップアンドビルドを積極的に促したところです。その結果、昨年度を上回る約15億円、計152件の事業の見直しを実現するとともに、それにより生じた財源を活用して、約28億円の課題解決先進枠を確保し、118件の事業のさらなるバージョンアップを図ったところであります。
これらの一連の取り組みを実施してもなお生じる財源不足への対応にあたっても、中長期的な財政運営を見据え、退職手当が増額する見込みにも関わらず、増加した一般財源を活用し、退職手当債の発行を前年度比10億円減の30億円に抑制して将来負担を軽減したところであります。
あわせまして、2月補正予算においては、国の経済対策に積極的に対応しつつも、中長期的な財政の健全化の観点から、予算の効率的な執行などにより生じた財源を活用し、財政調整的な基金の取り崩しを68億円余り取り止め、将来への備えを確保したところであります。
この結果、実質的な地方交付税である臨時財政対策債を除きます来年度末の県債残高につきましては、本年度末の推計残高である5,017億円から21億円減の4,996億円と見込まれ、21年ぶりに5,000億円を下回る水準となり、引き続き減少傾向を維持しております。また、来年度末の財政調整的な基金残高につきましても、昨年9月時点での推計を54億円程度上回る213億円程度を確保できる見通しとなったところであります。
このように、当初予算及び2月補正予算の編成を通じて、人口減少による負の連鎖の克服に向け、課題解決先進県を目指した取り組みを積極的に行いながらも、財政の健全化に向けた後年度負担の軽減と将来への一定の備えの確保を図ることができたものと考えております。
第2 5つの基本政策に基づく県づくり
1 経済の活性化
(1)第2期産業振興計画の推進について
次に、経済の活性化についてご説明申し上げます。
これまで、産業振興計画の取り組みを通じ、人口減少が招く経済規模の縮小やそれによる若者のさらなる県外流出といった本県経済の根本的な課題に真正面から向き合い、県勢浮揚に向けて全力で挑戦を続けてまいりました。
その結果、例えば、地産外商公社の「外商」活動を契機とした成約件数が平成21年度の178件から平成25年度には3,333件と大幅に増加するなど、一部に成果が表れ始めております。また、これまでの6年間の取り組みの積み重ねにより、それぞれの分野を大きく動かす仕組みが整ってきているところでもあります。
こうした状況を最大限生かして、今後、「地産」の取り組みをさらに強化するとともに、「外商」の取り組みも一層強化し、加えて、この地産外商の成果を拡大再生産につなげていくための取り組みも強化してまいりたいと考えております。
この3つの取り組みの強化を柱といたしまして、第2期産業振興計画をバージョン4へと改定し、第2期計画に掲げた4年後の数値目標の達成はもとより、さらにその先のより高い次元の新しいステージを目指して、全力で取り組んでまいりたいと考えております。
国の地方創生の動きを受けまして、今後、他県においても、地産外商や移住促進などの取り組みが活発化し、地域間での競争がさらに激しくなることが想定される中で、本県としましても、この他県との競争に打ち勝つことができるよう、より実効性のある施策へと常に施策のバージョンアップを図りながら、官民が一体となって産業振興計画の取り組みをさらに加速してまいります。
(2)「地産」の取り組み強化
今回の改定の一つ目の柱である「地産」の取り組み強化のポイントとしましては、特に、新技術の導入による第一次産業のステージアップ、ものづくりの振興、産学官民連携によるイノベーションの創出の3点が挙げられます。
ア 新技術の導入による第一次産業のステージアップ
(ア)農業分野
まず、一つ目のポイントである新技術の導入による第一次産業のステージアップについてご説明申し上げます。
農業分野では、これまで、高収量で高品質の生産技術を持つ篤農家を中心とした学び教えあう場の充実や、天敵導入などのIPM技術の普及などに取り組んでまいりました。さらには、園芸農業の先進国であるオランダから学んだ環境制御などの先進技術を本県の実情に即して確立するなど、本県農業をステージアップさせる取り組みも進めてまいりました。
このようなこれまでの取り組みを土台として、来年度は、先進技術を導入した次世代型こうち新施設園芸システムの普及を強力に進めてまいります。
具体的には、まず、本県の農業生産を支える力強い家族経営体の育成が最重要であるとの基本認識の下、既存型ハウスに環境制御機器を導入することに前向きな農家の皆様を積極的に支援してまいります。加えて、規模拡大に意欲がある生産者や農業法人等の皆様に対しては、次世代型ハウスの整備を支援してまいります。
また、新たに、本県のJAグループとの連携の下、一定の資本力を持つ県内外の事業者の農業分野への誘致を図っていくこととしたいと考えております。
この取り組みでは、次世代型こうち新施設園芸システムや園芸連を中心とした園芸品の一元出荷体制など、本県ならではの仕組みが有効なセールスポイントになると考えております。
こうした新しい挑戦を支援してまいりますため、来年度、県に次世代園芸推進室を設置して専任職員を配置するなど、支援体制を強化してまいります。あわせまして、本年度より県内5ブロックに設置している環境制御技術普及推進員等が、引き続き地域や品目ごとにきめ細かな技術指導を行ってまいります。
(イ)林業分野
林業分野では、大型製材工場の稼働に続き、本年には木質バイオマス発電施設の運転が開始されるなど、本県の豊富な森林資源を余すことなくダイナミックに活用する川上から川下までの仕組みが動き出しております。来年度は、この流れをさらに力強いものとするため、森林組合を通じた原木増産などの取り組みを引き続き力強く進めるとともに、特に、次の2点を強化してまいります。
1点目は、CLT関連産業の育成であります。
具体的には、CLTパネルの材料となるラミナの生産工場の整備を支援してまいりますほか、今月までに、集成材メーカーの銘建工業株式会社やオーストリアのグラーツ工科大学木材工学技術研究所とCLTによる産業振興や技術、人材の交流を目的とした協定をそれぞれ締結したところであります。
これらの取り組みを通じまして、CLTパネルの原材料供給体制を整備するとともに、CLTに関する建築技術や加工技術などを積極的に蓄積し、あわせて、これらの取り組みを背景として将来的にはCLTパネル工場の誘致を目指すなど、本県におけるCLT関連産業の育成に取り組んでまいりたいと考えております。
2点目は、小規模林業従事者に対する支援であります。
今後のさらなる原木の増産に向けては、小規模林業活動に従事する方々にも、その一翼を担っていただきたいと考えております。また、様々な形態で小規模な林業活動に携わる方が増えていくことは、中山間地域の活性化にもつながることから、小規模な林業活動の本格的な振興を進めてまいりたいと考えております。
その第一弾としまして、先月、自伐林家やNPO法人など事業者相互間の情報共有やスキルアップを目的とした推進協議会を設置したところであります。
来年度は、この協議会の活動を引き続き支援してまいりますとともに、木材の伐採や運搬に必要な機材の購入費用への助成、技術研修や安全パトロールの実施など、小規模林業を実践する方々のニーズに応じた総合的な支援を実施してまいります。
(ウ)水産業分野
水産業分野では、生産量の確保と魚価の向上による漁業所得の向上を目指して、カツオなどの県内への水揚げの促進や、計画的な生産が可能な養殖業の振興、高知家の魚応援店制度や築地にっぽん漁港市場への出店といった都市圏での「外商」の拡大に取り組んでまいりました。このようなこれまでの取り組みを土台に、来年度は、特に、次の2点を強化してまいります。
まず、1点目は、都市圏でのさらなる外商強化であります。
具体的には、現在、350余りの店舗に加盟いただいている高知家の魚応援店制度を活用し、都市圏での商談会や産地での見学会を開催してまいります。また、県内の漁協や産地買受人等とのネットワークを持つ高知県漁協の販売子会社の機能をさらに強化し、県産水産物の外商拠点である築地の「さかな屋高知家」でのテストマーケティングや、高知家の魚応援の店に対する県産水産物のサンプル出荷と店側の評価の収集、さらには、都市圏の高級飲食店への高鮮度魚の試験出荷を実施することとしております。このような、少量多品目という本県水産物の特性を生かした取り組みを通じて、都会の飲食店と本県の水産業に携わる事業者の皆様との結びつきをさらに強めてまいります。
2点目は、人工種苗の生産・中間育成ビジネスの展開であります。
これまでの人工種苗の生産技術開発で得られた成果や知見を基に、現在、民間企業と連携してカンパチとクロマグロの人工種苗の量産技術開発に取り組んでいるところであり、順調に成果も出始めているところであります。
来年度は、カンパチについては、さらなる品質向上に向けた技術開発や養殖現場への導入を進めてまいります。また、クロマグロに ついては、平成29年度の養殖現場への試験的な導入を目指して、引き続き技術開発に取り組んでまいります。
今後、こうした取り組みをできるだけ加速いたしますことで、早期の新たなビジネス展開につなげてまいりたいと考えております。
イ ものづくりの振興とさらなるパワーアップ
二つ目のポイントである商工業などのものづくりの振興では、特に、次の2点を強化してまいります。
まず、1点目は、企業のものづくり力や商品力をさらに高めていくための支援の充実であります。
これまで第一次産業の強みを生かした食品加工の促進や、産業間の連携によって付加価値を高める取り組みを進めてまいりましたが、中小企業の中には、経営基盤の弱さゆえに新製品の開発や販売促進が十分に進まないという課題を抱えている企業も多くございました。このため、昨年、ものづくり地産地消・外商センターを設置し、事業化プランの策定、試作機の開発、見本市への出展、設備投資など、ものづくり企業の一連のものづくりの流れを一貫してサポートする体制を強化したところであります。
その結果、同センターでの外商支援による成約額が、平成24年度は2億5千万円、昨年度は16億2千万円、本年度は先月末時点で22億1千万円と大きく伸びております。また、新たな事業化プランについても、ほぼ目標とする30件を達成する見込みとなるなど、一定の成果が上がりつつあります。来年度は、ものづくり地産地消・外商センターに新たに主任コーディネーター制度を設けて、企業に一層寄り添いながら、より質の高い一貫したサポートを行いますことで、企業のものづくり力、商品力をさらに強化していくこととしております。
2点目は、本県の強みである紙産業の競争力強化であります。
紙産業の振興については、昨年9月、高知県紙産業の在り方検討会を設置し、本県紙産業の目指すべき方向性や方策について検討を進めてまいりました。昨年11月の中間とりまとめでは、本県の持つ高い技術力を生かした高付加価値製品の開発と加工技術確立への支援、外商支援の徹底と新分野への進出支援などの対応方針が示されたところであります。
今後は、この中間とりまとめを踏まえ、研究開発の拠点である紙産業技術センターの機能強化を図ることにより、複合加工技術や新素材を活用した高付加価値製品の開発を積極的に進めてまいります。また、売れる商品づくりに向けて、ものづくり地産地消・外商センターによるビジネスプラン作成支援を強化するほか、首都圏への販売拡大に向けて、見本市や展示会への出展を支援してまいります。
ウ 産学官民連携によるイノベーションの創出
三つ目のポイントである産学官民連携によるイノベーションの創出に関しては、2つの大きな取り組みをスタートさせてまいります。
まず第一に、高知県立大学にある永国寺キャンパスを県民の皆様に開かれた知の拠点とするため、同キャンパスにおいて、本年4月、新たな取り組みをスタートさせてまいります。
具体的には、高知県立大学文化学部の入学定員を80人から150人に増員し、地域、法、観光といった分野を新たな学びの領域として加えるとともに、高知工科大学についても、現在のマネジメント学部を改組して永国寺キャンパスに経済・マネジメント学群を開設し、入学定員を100人から160人に増員いたします。
また、高知県立大学文化学部に、社会人が働きながら学士の取得ができる夜間主コースを設置するほか、県民の皆様のニーズに応じた公開講座を実施するなど、両大学における多彩な学びの機会の提供を通じまして、生涯学習、社会人教育を充実することとしております。
こうした取り組みを進めることが、県内高校生をはじめ、県民の皆様にとって多様な学びの場の創設につながり、本県における人材育成力を抜本強化する一つの契機になると考えております。
第二に、永国寺キャンパスに、「高知県産学官民連携センター」を開設いたします。
この新たなセンターでは、産学官民連携を推進し、県内外の英知を導入しながら、次の3つの拠点機能により新たな事業展開に挑戦する皆様を後押しすることで、様々なイノベーションの創出につなげてまいりたいと考えております。
一つ目は「知の拠点」機能であります。具体的には、産学官民連携についての企業や地域などのニーズにしっかりと対応し、大学などと連携した事業化につなげるためのワンストップ窓口を設置してまいります。
二つ目は「交流の拠点」機能であります。具体的には、県内のみならず、県外からもより多くの人材や知恵を呼び込むことができるよう、テーマごとのワークショップや様々な連続講座を開催するなど、産学官民の交流の機会を積極的に設けることとしております。この交流の機会の中で生まれた様々なアイデアを、県内外の大学等の知恵やノウハウを活用した一連の支援プログラムにより具体的な事業プランとして磨き上げていくことで、新たな事業展開へとつなげてまいりたいと考えております。
三つ目は「人材育成の拠点」機能であります。具体的には、さらに内容をバージョンアップした土佐まるごとビジネスアカデミーなど、様々な研修事業を実施してまいります。
新たなセンターの3つの拠点機能を十分に発揮させることで、知が人を呼び、人が知を呼ぶという好循環を生み出し、様々なイノベーションの創出につなげてまいりたいと考えております。
(3)「外商」の取り組み強化
ア 外商活動の全国展開の強化や輸出振興の本格化
次に、改定の二つ目の柱である「外商」の取り組み強化についてご説明申し上げます。
まず、国内の外商活動については、地産外商公社の外商機能を高めながら、県内事業者の方々との官民協働による挑戦を続けてきた結果、首都圏を中心に成約件数が大きく伸びてまいりました。来年度は、これまで培ってきたノウハウを生かして、外商活動の全国展開を図ってまいります。
具体的には、地産外商公社の職員を増員するなど体制を強化し、これまで首都圏が中心であった公社の活動範囲を、関西、中部、中国、四国、九州にまで広げて積極的な支援を展開することとしております。あわせまして、各地域での活動を支える外商支援ツールとなります県産品データベースのバージョンアップも進めてまいります。
次に、輸出振興については、これまで食品分野で培ってきましたネットワークやノウハウを生かして、機械分野での海外販路の開拓支援にも本格的に取り組んでまいります。具体的には、貿易協会内に配置する貿易促進コーディネーターを増員して支援体制を強化するとともに、海外の見本市や商談会への出展を支援してまいります。
また、台湾においては、昨年4月、県内の食品、工業、観光の各分野の企業が参画した高知県台湾販路開拓経済ミッション団の訪問を契機に、商談会での成約や、その後の販路拡大が進み、さらには、台湾企業との取引に意欲を示す県内事業者も増えてきているなど、新しい販路を切り開く足掛かりができつつあると考えております。こうした好機を逃すことなく、シンガポールと上海に加え、新たに台湾に海外支援拠点を設けて、食品や機械分野の製品などについて現地企業とのマッチングなどを支援することとしております。
これらの施策によりまして、さらなる貿易の促進に取り組んでまいります。
イ 400万人観光の定着と国際観光の抜本強化
次に、観光振興の取り組みについてご説明申し上げます。
県外観光客の入込客数は、一昨年の407万人に引き続き、昨年は401万人となり、夏場の大雨や台風などによる影響があった中でも、なんとか400万人台を維持することができたところであります。このように400万人観光が定着しつつあるという現状を踏まえ、次の目標として掲げております435万人の入込客数の達成を目指し、旅行商品をつくる、売る、もてなすという一連のサイクルをより強化するため、特に、次の2点に重点的に取り組んでまいります。
1点目は、地域が一体となった戦略的な観光地づくりの推進であります。
さらなる誘客に向けては、県内各地域が主体となって全国から人を呼べる旅行商品を生み出していくことが欠かせません。このため、広域観光組織と地域の事業者の協働を支援する地域コーディネーターを新たに配置し、持続的に観光資源を磨き上げ、魅力的な旅行商品を造成していく仕組みを構築してまいります。
中でも、4月29日に開幕いたします「高知家・まるごと東部博」につきましては、成功に向けて引き続き支援してまいりますとともに、今回の東部博開催を契機に、東部地域において地域が一体となった観光地づくりと魅力ある観光商品の造成が進んでまいりますよう、継続的に支援してまいります。
あわせて、県内全域において、地域での中心的な役割を担う広域観光組織に対し、それぞれが定める中長期計画に基づく事業を支援することにより、さらなる組織の機能強化を図ってまいります。
2点目は、国際観光の抜本強化であります。
全国的に見ても、海外からの観光客数はまだまだ増加傾向にあることから、オリンピック・パラリンピック東京大会の開催も視野に入れつつ、国外からの誘客対策や受け入れ態勢を抜本的に強化してまいりたいと考えております。
具体的には、日本政府観光局の香港事務所へ県職員を派遣いたしますとともに、先ほど申し上げました台湾などの支援拠点も活用し、国別の誘客戦略を展開してまいります。また、県の国際観光戦略全般についてアドバイスを行う国際観光推進コーディネーター2名を高知県観光コンベンション協会に配置し、国内外の博覧会や商談会でのセールス活動はもとより、外国人観光客向けの旅行商品づくりも強化することとしております。
あわせて、早期に外国人観光客の受け入れ態勢の充実を図るため、市町村や商店街振興組合などが行う標識やサインの多言語化、消費税免税店の開設など、受け入れ基盤の整備を集中的に支援してまいります。
(4)地産外商の成果をさらなる拡大再生産へ
次に、改定の三つ目の柱である地産外商の成果を拡大再生産へとつなげる取り組みの強化についてご説明申し上げます。
地産外商によって成果を上げた企業が、雇用を拡大し、さらに設備投資を行うといった経済の好循環を生み出してまいりますため、人材の確保や設備投資の促進といった観点から、特に、次の3点について施策の強化を図ってまいります。
ア 事業承継・人材確保センター
1点目は、新たな事業承継・人材確保センターの開設であります。
平成22年の国勢調査によりますと、県内の経営者のうち60歳以上が占める割合は、企業の役員で約5割、従業員のいる個人事業主で約6割となっている一方、民間調査会社の調査結果によりますと、後継者が決まっていない企業は約5割を超え、売り上げ規模が1億円未満の企業では約7割となっております。このような状況を受け、平成25年度の休廃業件数は倒産件数の6倍余りの215件となるなど、県内企業の経営者の高齢化による休廃業が増加しており、早期の対策が必要であると考えております。
また、地産外商で成果を上げた事業者がさらなる拡大再生産を図っていく上でも、事業の中核となる人材を積極的に確保することが重要になってまいります。
こうしたことから、来年度、円滑な事業の承継や事業者の中核人材の確保などを支援する「高知県事業承継・人材確保センター」を、高知商工会議所に設置することとしたいと考えております。
このセンターでは、まず、事業承継の経験を有する専門スタッフが、事業者の相談を受けて状況を把握いたします。その上で、案件ごとに、商工会議所などの産業支援機関や公認会計士、税理士などの専門家をメンバーとする支援チームを設けることとしております。この支援チームが、事業者の課題解決の方向性や事業承継の方針決定を行い、承継計画に基づいて事業展開をサポートすることとしております。あわせて、センターが、後継者として事業者が求める人材と外部人材とのマッチング支援を行うなど、一貫した支援を行うこととしております。
また、民間人材ビジネス事業者とのタイアップなど、これまで取り組んできた様々な移住促進、人財誘致の取り組みと、新たなセンターの取り組みを連動させることで、さらなる人材の確保にもつなげてまいります。具体的には、同センターにおいて、全国移住促進センターや民間人材ビジネス事業者などとも連携し、事業拡大や新しいビジネスにチャレンジする事業者が求める中核人材の都市部からの人財誘致に取り組むなど、事業者の人材確保を支援してまいります。
新しいセンターの開設により、事業者の事業承継や人材確保のサポート体制を整備し、積極的に支援することで、それぞれの事業者の皆様の次なる事業展開や拡大再生産の取り組みにつなげてまいりたいと考えております。
イ ものづくりの振興を通じた設備投資の強化
2点目は、事業者の設備投資に対する支援の強化であります。
具体的には、ものづくりの各段階における企業ニーズに対応できるよう、ものづくりに関する複数の補助金を統合し、企業を一貫して支援できるパッケージ型の補助制度を創設いたします。特に、事業拡大に向けた企業の設備投資を後押ししてまいりますため、県経済への波及効果が高い事業の補助率かさ上げなど、設備投資に対する補助を充実してまいりたいと考えております。
ウ 第一次産業の担い手確保対策
3点目は、第一次産業の担い手確保対策の強化であります。
第一次産業のステージアップにつながる取り組みと併せて、各分野の成長を担う人材の育成がより一層重要となってまいりますことから、各分野での担い手確保対策をさらに強化してまいります。
まず、農業分野では、これまで、担い手確保対策として、県内外でのPR活動や、農業技術の習得、営農への支援などの対策を精力的に実施してまいりました結果、本年度の新規就農者は261人となっております。
しかしながら、平成27年度の年間280人という目標に向けては、さらなる対策の強化が必要となることから、産地自らが、受け入れたい人物像や研修から就農までの道筋などを提案して募集をいたします、提案型の担い手確保対策を新たに実施することとしております。
あわせて、県内の農業関係団体が参画した農業会議が設置している新規就農の総合窓口を「就農コンシェルジュ」として明確に位置付け、体制も強化した上で、産地や就農情報を収集し発信するとともに、就農希望者のニーズに応じた一貫したサポートを強化することとしております。
林業分野では、現行の研修制度だけでは、関係者のニーズに沿った学びの場が十分に確保されていないといった課題に対応するため、即戦力となる担い手から将来の本県の林業界を担う人材までの幅広い人材を育成する、林業学校を開校することといたしました。
本年4月には、就業前に実践的な技術や知識をしっかりと学んでいただく基礎コースと、林業関係者の方が知識や技術のスキルアップを図るための短期コースを先行して開校いたしますほか、林業事業体の経営を担う高度で専門的な人材を養成する専攻コースについては、平成29年度の本格的な開校を目指して検討を進めてまいります。
エ 高知家プロモーションとの連動
高知家プロモーションについては、これまで、官民が一体となった様々なプロモーション活動を展開してまいりました結果、本年度、高知家の認知度が目標である25パーセントを大きく上回る33パーセントとなるなど、一定の成果が上がっております。
来年度も、産業振興計画に基づく一連の取り組みと高知家プロモーションとをしっかり連動させることで、さらなる成果の上積みを目指してまいりたいと考えております。
来年度の高知家プロモーションでは、高知家を認知した方々の、高知のものを買う、高知に行く、高知に住むといった具体的な行動をさらに誘発するため、できるだけ多くの高知家の家族の方々に直接参加いただくなど、行動誘発に有効なプロモーションを大幅に強化してまいります。その上で、宗田節やニラなど重点品目の個別セールスプロモーションと連動させるなど、高知家の効果を最大限生かして、外商や観光、移住などでの具体的な成果につなげてまいります。
2 南海トラフ地震対策の抜本強化・加速化
次に、南海トラフ地震対策についてご説明申し上げます。
南海トラフ地震対策については、これまで、未曾有の被害となった東日本大震災を教訓としつつ、第2期南海トラフ地震対策行動計画に基づき、地震による揺れや津波から命を守る対策に最優先で取り組むとともに、助かった命をつなぐための応急期の対策についても全力で取り組んでまいりました。
その結果、避難路、避難場所、避難タワーといった津波避難空間の整備や小中学校をはじめとする学校施設の耐震化などが一定進捗するとともに、総合防災拠点の整備や避難所の確保なども着実に進んできております。
来年度は第2期行動計画の最終年度でありますことから、計画に掲げた目標の達成に向けまして、命を守る対策と命をつなぐ対策にさらに全力で取り組みたいと考えております。
(1)「命を守る」対策
ア 津波避難場所の整備
まず、命を守る対策につきましては、対策の総仕上げの年度と位置付けまして、津波避難施設の整備に引き続き最優先で取り組むとともに、各市町村の避難計画について各地域での現地点検を徹底してまいります。
具体的には、各市町村とも連携しながら、これまで整備された避難路、避難場所、避難タワーなどに計画どおりの手段や時間で避難できるか、避難ルートの安全性は確保できているのかといった点について、現地での点検を引き続き進めますとともに、点検の結果、計画に課題があることが明らかになった場合には、新たな避難場所の整備など必要な対策を迅速に講じてまいります。
イ 山津波対策
また、来年度からは土砂災害対策、いわゆる山津波対策を抜本的に強化してまいります。
本県は急峻な地形が多く、台風などの雨による土砂災害などが度々発生してまいりました。昨年8月の豪雨でも、県内でも多くの土砂災害が発生したところであり、山津波は、いつ、どこででも起こりうるという危機感を県民の皆様と共有しながら、防災・減災対策をより一層推進していかなければならないと強く感じているところであります。
このため、既に本年から土砂災害警戒区域の指定を加速して、18,112カ所の危険箇所について平成31年度頃までに指定が完了するよう基礎調査などを進めており、今後は、土砂災害危険箇所の住民への周知や、住民参加型の避難訓練、防災学習会の実施などソフト対策を充実し、砂防事業などハード対策と一体的に推進してまいります。
(2)「命をつなぐ」対策
次に、命をつなぐための応急期の対策については、まず、まだ不足しております避難所につきまして、地域地域でその確保対策をしっかりと進めてまいります。
また、実際に避難所の運営を主体的に担っていただく地域の皆様の参考となるよう、本年度、施設の利用計画、避難生活に配慮が必要な高齢者や障害者を受け入れる態勢の考え方などを盛り込んだ避難所運営マニュアル作成の手引きを、県として作成したところであります。
来年度は、5つの地域本部ごとに条件の異なるモデル避難所を2カ所程度選定し、このマニュアル作成の手引きを活用して、市町村とともに避難所ごとの具体的なマニュアル作成を支援してまいります。
また、避難所のほか、医療救護所や応急救助機関の活動拠点、物資の集積所、仮設住宅の用地など、地震発生後に必要となる様々な機能の配置については、本年度、中土佐町をモデルとして発災後の時間経過に応じた計画づくりを進めているところであります。
今後は、新たな補助制度を創設して、まずは沿岸の全市町村でこの機能配置計画が策定されるよう支援することとし、さらに内陸部を含めたすべての市町村で計画の策定が完了するよう取り組んでまいります。あわせて、各市町村ごとの計画では機能の過不足が生じてまいりますことから、広域での配置計画づくりについても支援してまいります。
(3)道路啓開計画
また、応急活動を地震発生直後から迅速かつ効率的に行うためには、道路の速やかな啓開活動が不可欠であります。
このため、あらかじめの備えとして道路啓開計画を策定することとし、これまで、国や自衛隊、建設業協会、警察本部など関係機関の方々に参加をいただき、防災拠点や啓開ルートの選定、啓開日数の算出基準などについて、協議を行ってまいりました。
このうち、啓開ルートの選定については、これまでに、道路の被災リスクなどを考慮した上で、病院をはじめとした地域における防災拠点と広域的な救助救援・物資輸送の拠点である総合防災拠点などを結ぶ1,192の地域内のルートと、総合防災拠点と高規格道路などを結ぶ35の広域的なルートを、優先して啓開するルートとして位置付けたところであります。
今月18日には、そのうち、さらに啓開の優先度が高いと判断される防災拠点へのルートについて、近傍の総合防災拠点から結ぶ161のルートと直近のインターチェンジから結ぶ92のルートなど、合計282ルートの啓開日数を算出してお示ししたところであります。
この結果、啓開に長期間を要するルートの存在が明らかとなっており、発生頻度が低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの地震と津波を想定して算出したものとはいえ、大きな課題であると受け止めております。
このため、啓開日数のさらなる短縮に向けまして、橋梁の落下や道路法面の崩壊、長期浸水など、啓開に長期間を要する原因に応じて、道路整備による対策とそれ以外の対策を迅速に講じてまいります。
まず、道路整備による対策については、揺れによる落下を防ぐ橋梁の耐震対策や津波による橋梁の流失が想定される箇所の仮設道路計画の作成のほか、道路法面からの落石や崩壊が想定される箇所の解消に向け、法面の防災対策を進めることとしております。さらに、代替ルートとなる高規格道路などの整備も推進してまいります。
道路整備以外の対策については、ヘリコプターや船舶の活用、さらには備蓄の強化などを組み合わせた対応が考えられますことから、緊急用ヘリコプター離着陸場や防災拠点港の整備などを着実に進めますとともに、来年度以降、それぞれのルートや防災拠点の地理的な特性などを考慮して、より具体的な対策の検討を進めてまいります。
(4)災害時医療救護計画の見直し
災害時の医療救護計画については、道路網の寸断などにより他の地域からの支援や災害拠点病院などへの搬送が困難となるケースが想定される中、より負傷者に近い場所において、総力戦で医療の提供を行う前方展開型の医療救護活動を強化するための見直しを進めてまいりました。
先日開催された災害医療対策本部会議において、前方展開型の医療救護活動の考え方を盛り込んだ計画の改定案をご承認いただいたところであり、来年度からは、この計画を踏まえ、地域の医師会や市町村など関係機関の皆様とともに、被害想定や医療資源の状況を勘案した地域ごとの医療救護の行動計画づくりに取り組んでまいります。
また、この取り組みを通じて、災害時における関係機関の連携を促すとともに、医療救護所や救護病院の増加や充実などを図ることで、災害時医療救護の面的な機能強化につなげていきたいと考えております。
さらに、日頃、救急医療などに携わっていない方も含めた県内全ての医師の皆様に医療救護活動に参画していただけるよう、災害医療に関する知識や技術の向上を目指した研修制度を創設するなど質的な機能強化も図ってまいります。
(5)地域における地震対策の推進
以上申し上げましたような一連の命を守る対策や命をつなぐ対策を推進していくためには、各地域の実情をしっかりと捉えつつ、地域と一体となって取り組むことがより重要となります。このため、来年度は、本年度から立ち上げました南海トラフ地震対策推進地域本部の体制をさらに強化することといたしました。
具体的には、防災専任職員を8名増員し、あわせて各土木事務所や福祉保健所の防災関係業務を統括する立場にある26名の職員を地域本部の兼務職員とすることにより、現行の17名から51名体制にしたいと考えております。
この新たな体制の下、津波避難計画の現地点検や避難所運営マニュアルの作成支援など、各地域において命を守る、命をつなぐ対策をより積極的に支援してまいります。
あわせまして、災害対策支部や総合防災拠点の運営体制の強化も図ることとし、具体的には、県内8カ所の総合防災拠点について、発災時の前方展開型による応急救助活動の実施に向けて、本年度内に各拠点の運営マニュアルを策定いたしますほか、来年度には、非常用電源や情報通信機器などの整備を完了することとしております。また、地域本部ごとに、市町村や応急救助機関と連携した実践的な訓練を実施いたしますほか、本年6月の県総合防災訓練において、地域本部が運営する総合防災拠点を活用するなど、より多くの職員が訓練に参加することで、県として発災時に即応できる態勢を強化してまいります。
3 日本一の健康長寿県づくり
次に、日本一の健康長寿県づくりについてご説明申し上げます。
(1)日本一の健康長寿県構想の推進
保健・医療・福祉の分野では、第2期の日本一の健康長寿県構想バージョン3に基づき、乳児や40歳代から50歳代の死亡率が高い、若手医師が不足している上に県中央部に集中している、あるいは、中山間地域では人口の減少と高齢化により地域の支え合いの力が弱まっているなどといった様々な課題の解決に向けて、全力で取り組んできたところであります。
これまでの取り組みの結果、がん検診や乳幼児健診の受診率が向上し、県内で初期臨床研修を行う若手医師や中央部以外の医師が増加するとともに、「高知型福祉」の拠点となる「あったかふれあいセンター」が県内38カ所、サテライトを含めると212カ所で設置、運営されるなど、一定の成果も表れてまいりましたが、依然として多くの課題が残されております。
このため、現行の日本一の健康長寿県構想を、第2期構想に掲げた4年後の目指す姿の達成はもとより、さらにその先の高い次元の目指す姿の実現に向けて、第2期構想バージョン4へと改定することといたしました。
(2)保健分野
この改定のポイントについて、まず、保健分野についてご説明申し上げます。
ア 子どもの頃からの健康的な生活習慣の定着
生涯を通じた県民の健康づくりを進めるためには、子どもの頃から健康に関する知識を習得し、実践する力を身に付けることが重要でありますことから、来年度は学校における健康教育をさらに徹底してまいります。
本県では、小中学生の肥満傾向児の出現率が全国と比較して高いことに加えて、学年が高くなるほど朝食欠食の割合が高くなるといった傾向にあることから、本年度、全ての小中高等学校において、健康教育を学校経営計画に位置付けた上で、副読本などを活用しながら取り組みを進めているところであります。来年度は、教員を対象にした研修の充実や体育と健康両面での指導ができる体育・健康アドバイザーの増員、体育と健康を担当する指導主事の新たな配置などを通じて、学校組織として健康教育をさらに強化してまいります。あわせて、就学前の子どもたちが基本的な生活習慣を身に付けられるよう、その保護者に対して保育所などで学習会を行うなど、働きかけを強化してまいります。
イ がん検診等の受診促進と血管病予防の推進
また、働き盛り世代の健康づくりについては、早期発見、早期治療に重要な役割を果たしますがん検診の受診率のさらなる向上を目指すとともに、特定健診の受診勧奨の強化などの血管病対策を強化してまいります。
本県における死亡原因の第1位であるがんによる死亡率の改善に向けましては、これまで、検診対象者への個別通知や未受診者への再勧奨を行うなど、様々な受診率向上のための施策に取り組んできたところであります。その結果、肺がん検診については、40歳代、50歳代で目標としておりました受診率50パーセントに到達したものの、肺がん以外の検診では、未だ目標に達していないといった状況にあります。このため、来年度は検診の個別通知の対象年齢を拡大するとともに、セット検診の日数や、医療機関での乳がん、子宮頸がんの土日検診日数を増やすなど、さらなる利便性の向上を図ることで、一層の受診率向上を目指してまいります。
加えて、本県では、働き盛りの男性が脳血管疾患や心疾患などの血管病で死亡する割合が全国と比べて高いことから、特定健診の個別通知のほか、高知家健康づくり支援薬局や地域の健康づくり団体が行う受診勧奨への支援を通じて、正しい生活習慣を促す特定健診の受診勧奨を強化してまいります。
さらに、血管病の一つである糖尿病についても、日常生活における食習慣を改善していくことが重要となりますため、高知県栄養士会と連携して、栄養士の派遣による栄養指導を拡充してまいります。
(3)医療分野
次に、医療分野についてご説明申し上げます。
ア 在宅医療の推進(訪問看護)
まず、在宅医療につきましては、療養が必要な場合となっても居宅で生活を続けたいという県民の皆様のニーズに応えてまいりますためには、特に、中山間地域などで不足する訪問看護師の確保がより重要となりますことから、その育成の取り組みを強化してまいります。
具体的には、高知県立大学に訪問看護師育成のための寄附講座を開設し、医師会や看護協会の協力の下、研修プログラムを実施しますとともに、看護協会による小児に対応できる訪問看護の指導者の育成も支援してまいりたいと考えております。
あわせて、不採算となる中山間地域での訪問看護サービスを支援してまいりますため、来年度は、現行の支援制度の対象地域を拡大するとともに、事業所だけでなく医療機関がサービスを行う場合も助成対象に追加するなど、住み慣れた地域において誰もが必要な医療を受けながら暮らしていける環境づくりをさらに進めてまいります。
イ 医師の育成支援・人材確保
また、医師の確保につきましては、これまで、本県が抱える若手医師の減少、地域の偏在、診療科の偏在という3つの医師の偏在の緩和に向け、奨学金制度の創設や高知医療再生機構による医師のキャリア形成支援などの対策を講じてまいりました。その結果、若手医師の減少に一定歯止めがかかるなど、改善の兆しが見え始めているところであります。
今後、奨学金を受給した若手医師の方々が大幅に増加することから、そうした若手医師が県内に定着するよう、高知大学医学部附属病院や地域の中核的な医療機関が行います、新しい専門医制度を踏まえた研修プログラムの作成や研修体制の整備を引き続き支援してまいります。このほか、県外からの医師の招へいや聖マリアンナ医科大学及び大阪医科大学との連携などを進めることにより、本県における医師の確保と定着を図ってまいります。
ウ 難病相談支援センターの開設
難病を抱える患者や家族の皆様に対する相談支援体制については、これまで、福祉保健所において、主に療養生活など医療面を中心とする相談に応じてまいりました。しかしながら、難病を抱える皆さまの、生活面や就労面などの複合的な問題を気軽に相談できる窓口に対するニーズも高いこと、また、本年1月に施行されました「難病の患者に対する医療等に関する法律」によりまして、医療費助成の対象疾病が大幅に拡充されますことから、来年度、新たに難病相談支援センターを高知市内に設置することといたしました。
このセンターの設置を通じて、患者同士の交流会、勉強会や地域に出向いた出張相談の実施など、難病患者の皆様とそのご家族に対する相談支援体制を充実してまいります。
(4)福祉分野
次に、福祉の分野についてご説明申し上げます。
ア 地域福祉を支える仕組みづくり
少子高齢化の進行とともに、支援を必要とする高齢者の増加が見込まれる中では、住民参加の支え合いのネットワークを構築して、こうした高齢者などを見守る高知型福祉の充実が求められます。
このため、来年度から、ワンストップで地域住民の相談などを受け止めて、適切な支援機関へと確実につなぐ地域福祉ネットワーク構築に向けた市町村社会福祉協議会の取り組みに対して、県、福祉保健所、高知県社会福祉協議会が一体的に支援していくことといたしました。
あわせて、社会福祉協議会の職員を対象とした地域と組織をマネジメントできる力をつけるための研修を充実させることで、地域福祉を支える仕組みづくりを着実に推進してまいります。
イ 在宅医療・介護・福祉・住まいの包括的なネットワークづくり
また、来年度からの介護保険制度の見直しに伴い、全国一律のサービス基準に基づく要支援者向けの訪問介護及び通所介護が、市町村が独自に取り組む新しい地域支援事業に移行されることとなり、今後は、より地域の実情に応じた多様なサービスを総合的に提供することが可能となってまいります。
県としましても、円滑な移行を推進するため、市町村があったかふれあいセンターなどを新たな介護予防サービスの提供拠点として、積極的に活用する取り組みなどを支援してまいりたいと考えております。
あわせて、今後、低所得や一人暮らしといった配慮が必要な高齢者の方が増えてまいりますと、こうした新たなサービスを利用しながら、住み慣れた地域で安心して生活を送っていける住まいの確保が重要な課題となってまいります。このため、県としましても、配慮が必要な高齢者の方が低廉な家賃で入居できる住まいの整備に取り組む市町村を積極的に支援してまいります。
ウ 福祉・介護人材の確保対策について
今後も、高齢化の進行に伴い介護ニーズが高まる中で、中長期にわたって県内の福祉介護人材をしっかりと確保していくため、新たな人材の参入促進や他産業への流出防止の取り組みを強化してまいります。
具体的には、高知県社会福祉協議会の福祉人材センターにおいて、マッチングのノウハウを持った民間人材の積極的な活用を図ることなどにより、センターが持つ紹介、あっせん機能などを抜本強化するとともに、県においても、新たに福祉介護人材対策室を設置し、人材の安定確保に向けて重点的に取り組むこととしております。
あわせて、就職後の介護技術のスキルアップなどを支援する福祉研修センターにおいて、福祉人材センターと連携し、新規就労や復職希望の求職者向け研修の拡充を図るなど、新たな人材の参入促進にも努めてまいります。
こうした一連の取り組みは、経済の活性化や雇用の確保にもつながりますことから、来年度以降より重点的に進めてまいりたいと考えております。
(5)児童虐待死亡事件について
昨年末に香南市で起こりました虐待による児童の死亡事件は、極めて痛ましく、お亡くなりになりました児童のことを思いますと、深い悲しみを覚えますとともに、大変残念で悔しい思いがいたします。
あらためて、お亡くなりになった衣斐 瑠維さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
本県では、平成20年に発生いたしました児童虐待死亡事例に係る検証委員会からの提言を受け、児童相談所の体制強化を図りますとともに、職員の専門性の向上などに取り組んでまいりましたが、死亡事件が再び起きてしまうという大変残念な結果となってしまいました。
今回の事件は、児童相談所が2年半以上にわたり保護者と児童を支援した後、高知市に引き継いだ事案でありました。このような痛ましい事件に至ったことは痛恨の極みであり、県と高知市でもう一段の何らかの対応が必要ではなかったかと大変重く受け止めております。
今後、県と高知市が合同で設置いたしました検証委員会において、今回の事案の各段階における対応の妥当性などを検証していただくこととしております。また、その際には、子どもの命と安全を守るという観点から、県と市町村との連携のあり方や多職種が参加する要保護児童対策地域協議会による地域の見守り体制のあり方などについても、実践的な議論をいただければと考えております。
他方、今回の事件の検証を待つことなく、直ちにできる対応として、児童相談所と県内の要保護児童対策地域協議会においてリスク管理されている全ケースについて、緊急に安全確認を実施いたしますとともに、市町村における組織的な対応や児童相談所などの関係機関との情報共有の必要性などについて、改めて周知、徹底を図ったところです。
また、来年度からは、中央児童相談所に市町村の要保護児童対策地域協議会の活動をサポートする専門職員を配置するとともに、休日、夜間の電話相談への対応力の向上を図るなど、支援体制を強化してまいります。
県としましては、このように、早急に対応すべきものについては直ちに着手いたしますとともに、5月を目途になされる検証委員会からのご提言をもとに、再発防止策をさらに強化し、このような事件が二度と起こることのないようしっかりと取り組んでまいります。
4 教育の充実
次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。
これまで、全国と比較して深刻な状況にあった本県の子どもたちの学力や体力、生徒指導上の諸問題の状況などを踏まえ、高知県教育振興基本計画重点プランに基づき、「知」、「徳」、「体」それぞれに目標を定めて、教育改革を推進してまいりました。その結果、子どもたちの状況は改善傾向にありますものの、重点プランに掲げた目標を達成するためには、より一層の取り組みの充実が必要であると考えております。
このため、重点プランの最終年度となる来年度は、思考力や表現力の育成などの学力向上や、オリンピック・パラリンピック東京大会を一つの契機とした総合的なスポーツ振興などの取り組みをさらに強化してまいります。
特に、家庭の経済状況により十分な学習機会が与えられていないなどの厳しい環境にある子どもたちについて、子どもたちを取りまく貧困等が世代を超えて連鎖することのないよう、学習支援や相談体制などを大幅に充実、強化してまいります。
(1)学力のさらなる向上
学力向上の取り組みについては、昨年4月の全国学力・学習状況調査の結果に見られるように、本県児童生徒の学力は一定改善してきているものの、ここ数年は足踏み状態にあり、今後は、基礎的な学力の習得に加え、身につけた知識を様々な場面で活用し課題を解決していく力の育成といった、次の段階への対応が必要となっております。
このため、小中学校では、特に思考力や表現力の育成に重点を置いた新たな教材を開発し、授業で活用するほか、担当教員が児童生徒の課題を分析し、課題解決策を検討するシートを活用することなどにより、児童生徒の思考力や表現力をより高めることができる授業を実施してまいります。
また、高等学校については、義務教育段階での学習内容が十分に定着しないまま入学し、高校1年生での基礎的科目の学習内容の理解が十分でない生徒が一定数いることが課題となっております。このため、来年度は、数学に加えて、新たに国語と英語についても、義務教育段階の学習内容に立ち返りながら学習を進めるための補助教材を作成し、授業や家庭学習での活用を徹底するなど、さらなる学力の向上に向けた取り組みを推進してまいります。
引き続き、児童生徒の学力の定着状況を正確に把握するとともに、これらの調査結果を詳細に分析し、必要な対策を迅速に講じることで、児童生徒が将来社会に出た際に真に必要な能力の習得や定着につなげてまいります。
(2)県立高等学校再編振興計画の推進について
県立高校の再編振興計画に関しては、前期実施計画の中で統合を行うこととされている学校について、統合に向けた施設整備に着手いたします。また、中山間地域の小規模校においても、個々のニーズに合わせたカリキュラムを維持できるよう、ICTを活用した遠隔授業の検討を進めるなど、教育環境のより一層の充実に向けた取り組みを進めてまいります。
さらに、グローバル教育のさらなる推進に向け、推進校に指定しております高知南中・高校と高知西高校におきまして、生徒が互いに学び合う探究型学習に加え、個別のテーマに基づいた課題研究を行うグローバル教育プログラムや、高い英語力を育成するための英語教育プログラムを開発し、実践してまいります。
(3)体力のさらなる向上
体力のさらなる向上に関しては、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催を好機と捉え、新たに策定するスポーツ推進プロジェクトに基づき、子どもをはじめとする多くの県民がスポーツに慣れ親しむことができる環境を整備してまいりたいと考えております。
具体的には、まず、子どもの体力向上については、運動習慣の定着がまだ十分でないという課題を解決するため、体育の授業改善指導を行う体育・健康アドバイザーの派遣や副読本の活用などにより、体育授業のさらなる改善を図り、運動習慣の定着につなげてまいります。
また、複数の市町村や地域のスポーツクラブなどが連携して実施する、地域でのスポーツ振興の取り組みを積極的に支援することで、地域の実情に関わらず、誰もが体力の向上を目指すことができる環境づくりに取り組んでまいります。
加えて、各競技の拠点となる施設や設備の整備を順次進めますとともに、ジュニアからの一貫した選手の育成を重点的に支援するなど、競技力の強化にも取り組んでまいります。
こうした一連の取り組みを通じまして、子どもから高齢者までの誰もが、将来にわたってスポーツに親しみ、夢や志を育むことができる環境の整備に努めてまいります。
(4)厳しい環境にある子どもたちへの支援について
次に、厳しい環境にある子どもたちへの支援についてご説明申し上げます。
生活の困窮という経済的な要因のみならず、家庭の教育力や地域社会の見守り機能の低下などを背景として、県内でも一定数の子どもたちが、学力の未定着や虐待、非行、いじめといった困難な状況に直面するなど、極めて厳しい環境に置かれているところであります。
このため、県としましても、こうした子どもたちへの支援を重点的に取り組むべき重要課題と位置付けて、先ほど申し上げました虐待に対する対策の強化に加え、教育や福祉の分野を中心として、総合的な対策を抜本的に強化してまいります。
(教育面での対策)
まず、教育分野におきましては、就学前から高等学校までの各段階に応じて以下のような対策を講じてまいります。
就学前の子どもに対しては、課題の早期発見と保護者への支援を行う保育士を増員するとともに、保育所の一時預かり利用料を減免するなど、子育て支援の強化を図ってまいります。
また、生活の困窮など厳しい環境に置かれている児童、生徒であっても、十分な学習の機会が確保されるよう放課後などの学習支援の取り組みを大幅に強化してまいります。
具体的には、放課後等学習支援員を107校の小中学校に配置することとし、学校での補充学習など児童生徒に対して個別の学習支援を継続的に行いますとともに、放課後子ども教室などにおける学習支援者の加配や教材購入に対する支援を拡充するなど、子どもたちの放課後の学びの場を充実させる取り組みも強化してまいります。高等学校においても、授業や放課後の補力補習での学習指導を行う学習支援員の配置を延べ60人から90人へと大幅に拡充するなど、基礎学力の定着に課題のある生徒に対する支援を充実してまいります。
また、学校と地域が連携し、子どもたちの育ちを支援する取り組みをさらに県内に広げてまいりますため、学校と地域をつなぐコーディネート役を果たす教員4人を新たに配置し、コミュニティ・スクールや学校支援地域本部の立ち上げや活動の充実を支援してまいります。
さらに、厳しい環境にあるがゆえに不登校など生徒指導上の課題を抱える子どもたちへの支援を充実させるため、スクールカウンセラーの配置校を270校から299校に、また、スクールソーシャルワーカーの配置数を42人から50人に拡充いたします。加えて、特に厳しい状況にある子どもたちが多い市部においてきめ細かい支援を行いますため、スクールソーシャルワーカー15人を新たに重点配置するなど、福祉部門とも連携した支援の強化を図ってまいります。
(いじめ問題)
いじめ問題に関しては、いじめの潜在化、あるいは深刻化が課題となっていることから、「高知県いじめ防止基本方針」に基づき、学校だけでなく、家庭や地域、関係機関及び団体と連携した取り組みを進めております。また、有識者や行政、医療、福祉、教育などの関係者による「高知県いじめ問題対策連絡協議会」においては、それぞれの取り組みについて評価や見直しを行うなど、PDCAサイクルによる進捗管理を行っているところであります。
来年度は、いじめの未然防止や早期発見に向け、子どもに内在する力や可能性を引き出す生徒指導の強化を図りますとともに、スクールカウンセラーの配置を拡充するなど、教育相談体制を充実してまいります。
また、「いじめ防止子どもサミット」において採択された宣言に基づいた取り組みの普及などに努め、県民総ぐるみでいじめ防止のための対策をさらに推進してまいります。
(少年非行)
少年非行の問題に関しては、「高知家の子ども見守りプラン」に基づき、学校や家庭、地域が連携した少年非行の防止に向けた対策に全力を挙げて取り組んでおり、予防、入口、立直りの各段階での成果目標を着実に達成するなど、その効果も表れてきているところであります。
来年度からは、これまでの取り組みの成果を踏まえ、就労意欲のある少年の職場適性を見極めるための見守りしごと体験講習を、雇用主が被害を被った場合の補償などとセットで新たに実施するなど、無職の非行少年の立ち直りにつながる就労支援の取り組みを強化することとしております。
県としましても、子どもの貧困などの実態から目をそむけることなく一貫した取り組みを進めますことで、貧困などの世代間連鎖を断ち切り、子どもたちが生まれ育った家庭の経済状況などに左右されることなく、安心して学び、夢と希望を持ち続けて育つことができるよう取り組んでまいりたいと考えております。
5 インフラの充実と有効活用
次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。
社会資本の整備が全国水準から大きく立ち遅れている本県では、この整備水準を少しでも引き上げることが、県民の安全、安心の確保と地域経済の活性化につながりますことから、地域の実情を踏まえて、必要性や緊急性の高い道路をはじめとするインフラ整備に重点的に取り組んでまいりました。
これまでも、国等に対して、インフラ整備の重要性について政策提言を重ねてまいりましたほか、県の当初予算でも、南海トラフ地震対策強化の必要性なども一つの背景として、普通建設事業費について平成20年度から毎年、前年度を上回る事業費としてきており、来年度も1,000億円を超える規模を確保しているところであります。
道路については、四国8の字ネットワークの整備を最優先課題として進めており、本年度末には整備率が52パーセント、供用延長は134キロメートルにまで伸びることとなります。特に、来月22日には高知東部自動車道の高知南インターチェンジからなんこく南インターチェンジが開通することで、災害時の災害拠点病院などへのアクセスがさらに向上することとなります。来年度も、8の字ネットワークの整備を引き続き最優先で進めますとともに、中山間対策としての1.5車線的道路の整備なども着実に進めてまいります。
南海トラフ地震対策としましては、橋梁の耐震化や道路の法面対策を進めますとともに、浦戸湾内の河川や海岸堤防の耐震化、水門や排水機場の耐震及び耐水化を引き続き最優先に進めてまいります。さらには、最大クラスの津波に対して、防波堤が粘り強く機能を発揮できるよう、構造の強化に取り組んでまいります。
また、平成26年8月豪雨による災害を受け、浸水被害が発生した日下川と宇治川及びそれらの支川について、県や国、町村が一体となって治水対策案を取りまとめるとともに、国庫補助事業も活用し、河川の拡幅や排水ポンプの整備などの対策を概ね5年間で集中的に進めることとしております。
さらには、新図書館の整備など、既に着手している大規模な建築事業についても着実に進めてまいりますほか、既存インフラの有効活用と長寿命化を図るため、計画的な維持管理にも努めてまいります。
6 中山間対策の充実・強化
次に、中山間対策についてご説明申し上げます。
これまで中山間地域に対しては、市町村と協働しながら、「産業をつくる」、「生活を守る」の2つを柱に、総合的な施策を推進してまいりました。
その結果、産業づくりをはじめ、移動手段の確保や野生鳥獣の被害対策など、一定の効果は見えてきておりますものの、中山間地域全体を見てみますと、人口減少や高齢化の進行に加え、地域や産業の担い手不足や集落活動の衰退など、依然として厳しい状況となっております。
こうした実情を踏まえまして、県としましても、課題の解決に向けて全力で取り組んでまいりましたし、国に対しても中山間地域の抜本的な対策について政策提言を重ねてまいりました。
こうしたこれまでの積み重ねにより、本県が進めてまいりました集落活動センターのような「小さな拠点」の取り組みが、今回、国の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の主要施策に位置付けられたところであります。
このような国の動きも追い風にしながら、これまでの取り組みをもう一段、力強いものとするとともに、県内各地への広がりを加速させていきたいと考えているところであります。中でも、地域の維持や活性化、支え合いの仕組みづくりの拠点となる集落活動センターの取り組みについては、中山間対策の核として、さらなる普及、拡大を目指していく必要があると考えており、来年度は、大きく2つの点に着目した取り組みを進めていくこととしております。
1点目は、「外部から人財を誘致し新たに地域の力となっていただく」という点であります。集落に活力をもっていただくためには、担い手の育成と確保が重要となります。このため、地域内の人材の育成や確保に加え、高知ふるさと応援隊をはじめとした地域外の多くの人財を積極的に誘致する移住促進対策ともしっかり連動させながら、より一層、取り組みを強化してまいります。
2点目は、「地域地域でその実情に合ったビジネスプランを作っていく」という点であります。地域資源を活用した加工品づくりなどの取り組みが着実に進み、地域の方々の生きがいとやりがいにつながっているほか、新たな地域アクションプランにステップアップする動きも出てきております。こうしたことから、地域の実情に合った地産外商につながるビジネスプランづくりを、全庁を挙げて支援してまいりたいと考えております。
特に、開設して3年が経過し、取り組みの基盤づくりが完了する集落活動センターについては、その経済活動の拡充を図る取り組みを新たに支援することにより、センターの運営の安定と継続発展を目指してまいります。
今後は、国の地方創生の動きもしっかりと捉えながら、地域地域の暮らしを支えるだけにとどまらず、地域における起業や新たな事業展開につながり人々が地域で自立して生活していける、本当の意味での地方創生の取り組みとなるよう全力で支援してまいります。
7 少子化対策・女性の活躍促進
(1)少子化対策の抜本強化
少子化対策については、これまで、全国知事会の次世代育成支援対策プロジェクトチームのリーダーとして、抜本的な対策の強化を国に対して強く訴えてまいりました。
その結果、新たな税制上の措置が創設されますとともに、本年4月からスタートをいたします子ども・子育て支援新制度に必要となる財源が当初の予定どおり確保され、また、地方独自の取り組みを後押しする財源として、国の補正予算に地域少子化対策強化交付金が引き続き盛り込まれましたほか、少子化対策が地方創生先行型の交付金などの対象とされたところでもあります。
本県としましても、こうした一連の財源を活用し、ライフステージの各段階に応じた切れ目のない施策を展開してまいります。
昨年開設しました出会い・結婚・子育て応援コーナーには、既に半年間で305件の出会いや結婚に関する相談が寄せられております。来年度は、よりきめ細かな支援を行っていくため、新たに保健師などの専門員を配置し、地域の子育て支援センターにおいて、子育て相談などを実施していきたいと考えております。
また、「子ども・子育て支援新制度」に基づき、就学前の保育や教育、地域子育て支援などの取り組みについて、量的拡充や質の向上を図ってまいります。
さらには、本年3月に策定する「次世代育成支援行動計画」に基づき、未婚化・晩婚化対策をはじめとした一連の少子化対策の抜本強化に向けた取り組みを加速化してまいります。
(2)女性の活躍の場の拡大
次に、女性の活躍の場の拡大についてご説明申し上げます。
まず、女性の就労支援については、昨年6月に設置した「高知家の女性しごと応援室」において、キャリアコンサルティングやパソコンによる職業適性検査など、一人ひとりの適性や経歴に応じたきめ細かな支援を行っており、先月末までの相談件数は延べで365件、このうち33件が就職に結びついているところであります。来年度は、独自に求人開拓員を配置することによりまして、直接、相談者と求人企業とを結びつける職業紹介の取り組みをスタートさせてまいりたいと考えており、従来のように相談者をハローワークにつなぐだけでなく、相談者と県内企業とのマッチング機会を設けるなど、就職支援機能をさらにパワーアップしてまいります。
また、女性の登用促進に向け、経済団体などとタイアップして行っております意識啓発の取り組みについても、県内企業の経営者などに加え、新たに中間管理職層の方々を対象として、女性が働きやすい職場づくりをテーマに研修を実施するなど、より一層、効果的な働きかけに取り組んでまいります。
第3 その他
1 持続可能な公共交通の構築について
県民に最も身近な交通手段である路線バスは、年間に533万人もの多くの方々に利用されるなど、県民の皆様の日常生活や社会活動を支える社会インフラとして重要な役割を担っております。
路線バスは、現在、12の民間事業者により、およそ430の系統で運行されておりますが、年々利用者の減少が続いていることから、これらのバス路線を適正なサービス水準で将来にわたり維持していくためには、事業者はもちろん、行政や住民自らが主体的な関わりを持ち、維持と活性化に向けた真剣な議論を踏まえた取り組みを進めていくことが重要であります。
そのため、県といたしましては、各地域ごとに取り組む広域的路線の利用促進に向けた取り組みを支援するとともに、国の地方創生先行型の交付金を活用して、公共交通ICカードである「ですか」などの県内全域での普及を支援するなど、広域的路線などの維持と活性化に向けた取り組みを強化してまいりたいと考えております。
昨年10月に設立されましたとさでん交通については、経営改善に向けた具体的なデータ収集や分析の手法などについて鋭意社内で検討が進められていると伺っております。また、事業者に行政や利用者も加わった中央地域公共交通改善協議会では、先月末までに、県民の皆様から寄せられた1,000件を超える意見やアイデアについて具体的な検討作業に着手するなど、中央地域の交通事業改善に向けた取り組みを進めているところであります。
今後とも、利用者目線に立った多様な公共交通サービスが提供され、多くの方々に利用されるがゆえに、将来にわたって持続可能な公共交通が構築されるよう、協議会においてしっかり議論を進めていきたいと考えております。
2 イベントの開催について
(1)高知龍馬マラソン
今月15日、「高知龍馬マラソン2015」が開催され、前回大会の4,853人を大幅に上回る、6,543人のランナーの皆様に全国各地からご参加をいただきました。
3回目となる今回は、新たに、日本一の透明度を誇る「清流仁淀川」を渡るコースを加えたほか、公務員ランナーとして有名な川内優輝さんにご参加いただきました。日本を代表する現役のトップ選手が力強く土佐路を駆け抜ける姿は、県民の皆様がスポーツに対する関心を高めることにも大いにつながったものと感じております。
大会の開催にあたり、沿道での声援や長時間の交通規制にご理解、ご協力いただきました多くの県民の皆様に心より感謝申し上げます。
本大会が、全国に誇れる市民マラソン大会となるよう、1万人規模の大会開催に向けて、今後とも関係団体と共に取り組んでまいります。
(2)全国漫画家大会議
また、今月21日から2日間「全国漫画家大会議inまんが王国・土佐」を開催いたしました。
このイベントには、まんが甲子園などの取り組みによるご縁から、多くの著名な漫画家の皆様や出版社の方々に参画をいただきました。イベントの開催を通じて、まんがと本県の自然や食とをからめた多彩なプログラムを実施するなど、「まんが王国・土佐」を大いにアピールすることができたものと考えております。
こうした取り組みを通じて、まんが文化のさらなる振興に貢献するよう努めるとともに、参加していただいた皆様とのつながりを深め、多くの高知ファンを生み出していくことにより、まんがを通じた高知の情報発信力を高めてまいります。
第4 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、平成27年度高知県一般会計予算など38件です。
このうち一般会計予算は、先ほど申し上げました5つの基本政策を推進するための経費などを中心に、4,584億円余りの歳入歳出予算などを計上しております。
条例議案は、高知県税条例の一部を改正する条例議案など41件であります。
その他の議案は、包括外部監査契約の締結に関する議案など8件であります。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。