公開日 2015年06月09日
平成26年度 地域の皆さんの活動(地域支援企画員からの報告)
津野町の取り組み(高幡地域ブロック)
【 取り組みの経緯 】
津野町船戸地区の「せいらんの里」は、旧森林センター(昭和48年建設、林業従事者のための研修施設)の廃止を惜しみ、津野町船戸地区の地域づくり団体「堂好海せいらん」が高知県より有償貸与を受け、四万十川源流点、不入山、天狗高原、稲葉洞、追合滝などの津野町の観光名所を支える自然体験宿泊施設として、平成17年4月より運営を開始しました。
運営を開始した当初は、宿泊施設としてのノウハウがなく、宣伝も十分でないなかでの運営は苦労の連続で、開店休業の状態の日も多くありましたが、何もせずに施設にいるのは申し訳ないと、40歳代の運営責任者と施設運営ボランティアの主力であった60~70歳代の女性3名ほどが知恵を絞り、高齢者に対する移動販売を始めました。
「せいらんの里」の移動販売は、「せいらんの里」に寄せられる地元高齢者が作った野菜を調理して、食事に困っている高齢者のために安価で食べ慣れた一品惣菜(100~300円/パック)を高齢者の集まるポイント、もしくは自宅まで届けるというもので、究極の地産地消として平成17年6月にスタートしました。
現在では、高齢者が高齢者を支える仕組みとして定着し、一品惣菜等の移動販売に加えて、近隣の商店と連携し、宅配(トイレットペーパーや洗剤などの生活必需品の自宅配送)事業を行っており、買い物が困難な高齢者の生活を支えています。
平成24年9月からは移動販売等に加えて、包括支援センター、津野町社会福祉協議会などの要請を受け、週5日(月・火・金・土・日)の配食サービスを開始し、地域の高齢者の食の生命線となっています。
- 一品惣菜を作っている様子
- ¥100~¥300程度の安価な一品惣菜が完成
- 提携商店での日用品の積み込み
- 移動販売の様子~自宅での販売の様子~
【 転換期 】
宿泊施設としては、初年度258名だった宿泊者が、毎年500~600名を集客するまでになり、四万十川源流点の宿「せいらんの里」として定着しました。
しかし、活動も9年目を迎え(平成26年4月現在)、運営当初から参画してくれている有償ボランティアの平均年齢が73歳を超え、10年目に向け活動の見直しを余儀なくされていました。
津野町でも船戸地区の活性化を考えるにあたって、高知県地域づくり支援事業「集落の力をつなげる活動推進事業」を活用して、平成25年度に5回に渡ってワークショップを実施しました。
地域支援企画員もワークショップにファシリテーター役として参加し、船戸地区の方々と一緒に地域づくりを考えました。
その中で、「せいらんの里」は、船戸地区において、なくてはならない地域資源として語られました。
- 船戸地区でのワークショップの様子
- ワークショップの内容発表の様子
ワークショップを契機に、船戸地区で「せいらんの里」の活動が再認識され、平成26年4月より40~50歳代の女性3名が新たに活動に参画しました。
活動への参画は、大歓迎!しかし、有償ボランティアとはいえ、雇用には新たな仕事がどうしても必要!と地域支援企画員にランチビュッフェの相談がありました。
宿泊客は、四万十川源流点や不入山への登山を目的に「せいらんの里」に宿泊に来られますが、なにぶん高知市内から車で90分。最後は県道とはいえ行き違いも困難な道を、探し訪ねてランチビュッフェに来ていただくとなると、お料理だけでは集客は難しく、施設そのものが、「訪れてみたい!」と思わせる佇まいでなくてはなりません。
そこで、以前、地域支援企画員が提案した「せいらんの里」のスタッフ研修で橋渡しをし、施設づくりにおける演出の大切さを教えてくださった高知市はりまや橋商店街の布工房「めろでぃ~播磨屋橋」のオーナーである桑名真紀氏に地域づくりアドバイザーをご依頼することにしました。
桑名真紀氏は、着物などの古布再生をテーマとした店である布工房「めろでぃ~播磨屋橋」を経営する傍ら、数多くの舞台衣装を手がけ、実践的な空間演出、照明・インテリア・衣装・什器等をトータルに提案できる数少ない実践家です。
桑名氏の提案は、施設がここにある意味を理解すること。
施設の設立当初の姿に戻し、隠すのではなく無駄をそぎ落とすこと。
空間の余情を大切にすること。
船戸にしかない四万十川源流点の風景・自然を「見せて」・「魅せる」ことでした。
最初は戸惑っていた「せいらんの里」の運営メンバーもその場で徐々に変わっていく新たな「せいらんの里」の姿に触発され、自ら動き出しました。
そして、「せいらんの里」は、みるみる間に生まれ変わって行きました。
地域づくりアドバイザーによる施設改善
- 地域づくりアドバイザーとの話し合い
- 不要物の見極め
- 徹底したものの除去
- 廊下の掲示物の除去
- 火鉢・自在の設置
- 食堂入口への暖簾の取り付け
Before After(ビフォーアフター)
- Before玄関~物があふれ雑然とした施設の入口
- After玄関~物を排除しすっきりとした印象
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Before 食堂~ものにあふれた食堂
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After食堂~火鉢・自在を中心に源流を臨む~
- Before 廊下~壁いっぱいの掲示物
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After廊下~掲示物を排除し統一感を持たせる
【 ランチビュッフェのスタート! 】
平成26年3月19日のお試しビュッフェを経て、4月6日に「せいらんの里」の「船戸おかあちゃんのランチビュッフェ」が本格的にスタートしました。
賑わうランチビュッフェの様子
- 地域食材満載のお料理
- 「せいらんの里」の運営メンバー
当初は、毎日曜日、3日前に5名様以上予約があった場合に実施していましたが、お客様のニーズに応え、前日お昼までに予約があれば毎日2名様(少ない場合は御膳形式になる場合があります)からでもご利用になれます。
ランチビュッフェのメニューは徹底して地域食材にこだわり、毎日仕入れる新鮮な地域食材とにらめっこしながら、おばちゃんたちがランチビュッフェのお料理へと変えていきます。
名物料理がある一方で、何回も訪れてくださるリピーターの方をがっかりさせてはいけないと、次々と新しいメニューも登場させています。
責任者である谷脇良枝さんは、「わざわざ山道を訪ねて、遠くから来てくださるお客様はもちろん有り難く大歓迎です。でも、それと同じくらい、津野町内の方が、ビュッフェをきっかけに、「せいらんの里」を何回も訪れてくださることが、何より励みになり、喜びにもなります。」と語られています。
4月から9月の利用者は、今夏の記録的な豪雨、長雨にも関わらず1,000名近くになり、四万十川源流点の新たな食のスポットとしてすっかり定着しました。
運営メンバーは、地域づくりアドバイザーとしてご縁のできた桑名氏の指導も引き続き受けながら、四季を感じる施設づくりに尽力しています。
- 暖簾を掛け替えて秋・冬バージョンへ
- 広い廊下をサロンに
【 更なる飛躍へ 】
「せいらんの里」の運営メンバーは、「せいらんの里」を単なる宿泊施設、食事場所に止めるつもりはありません。
毎年、地元の中学生をはじめとして、県内外から児童生徒を受け入れるたびに、お釜でのご飯炊きやアメゴの串打ちを教えたり、一緒にこんにゃくを作ったりと、船戸の里山の生活を子ども達に体験させることで先達の知恵、今では失われかけているおじちゃん(おじいちゃん)、おばちゃん(おばあちゃん)の知恵を次世代に伝承することにも尽力しています。
「手間がかかって不便で大変だけど、手から手へと引き継がれる本当の豊かさ、ぬくもりを継承していく場としての役割も担っていきたい。」と谷脇さんは語られます。
ビュッフェに来られる60~70歳代のお客様も、竈(くど・かまど)で炊かれるご飯のおこげを味わいながら、昔談義に花が咲きます。
地域支援企画員としても、今後も「せいらんの里」の夢を形にし、船戸地区の地域づくりに向けた支援を続けていきたいと思います。
- 薪とお釜でご飯炊き
- カレー作りも薪で
津野町駐在地域支援企画員
電話 0889-55-2126
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