公開日 2024年02月01日
1 本格架線集材システムに対応した機械開発に向けての研究
- 次世代高知型集材機仕様の提示 -
【山﨑敏彦、山﨑真】
機械式集材機の新規製造で大きな課題であった新品ディーゼルエンジンについては、海外製のエンジンの入手が可能となった。これまでの集材機操作でオペレーターの負担が大きかったブレーキレバー等の操作について油圧アシスト式にすることで軽操作化を図った。正逆転ギヤ切替やドラムクラッチの入り切りについてアクチュエーターを用いることでスイッチ操作が可能となり、操作のコンパクト化を図ることができた。また、エンジンカバーに防音材を用いることで運転席の音圧を低減することができ、運転環境の改善に繋がった。
トルクコンバータ変速機仕様の試作機は、既存機と遜色ない性能があり、運転途中でも任意の変速が可能であることやエンストを起こさないなど運転の容易性が確認できた。
これらの取組を踏まえ、入手が困難な部品から脱却した2軸四胴1モーター式次世代高知型集材機の仕様を提案した。
2 カシ備長炭の収率および品質向上に関する研究
【溝口泰彬、市原孝志、山中秀直】
現在、高知県は全国一の備長炭生産地となっているが、原料であるウバメガシの資源量が減少している。持続的な備長炭の生産には今後、ウバメガシ以外のカシ類(主にアラカシ、以下「カシ類」という)の利用を増やす必要がある。しかし、カシ類を原料とした場合、収率と品質の高い炭の割合が低下することが確認されており、カシ類の利用は敬遠されている。そこで本研究では、カシ類を原料とした備長炭(以下、「カシ備長炭」という)の収率や品質を向上させるための製造方法について検討した。
収率(乾重量比)は、カシ類を原料とした場合、製造方法を改良しても17%程度でウバメガシと比較すると2~3%程度低かった。品質は、ウバメガシがA区分(高規格品)割合69.7%と最も高かった。一方、カシ類は乾燥工程初期の時間を延長してしっかり乾燥することで、「通常」の54.8%から66.7%にA区分割合が増加したが、木くべ時の原木含水率が低いとA区分割合が低下する傾向が見られた。そのため、カシ類を利用する場合は伐採後、原木の含水率が低下する前にできるだけ早く窯に入れる、あるいは、カバーをかけたり、木口を水に浸けておくなど、乾燥を抑制した含水率の高い原木を窯に入れ、その後、乾燥工程で十分に乾燥することが望ましいと考えられる。
[資料]
1 高知県の民有林収穫表の補正
【渡辺直史、深田英久(鳥獣対策課)、宮田弘明(退職)、山﨑敏彦、澤田浩幸(退職)、徳久潔(退職)】
密度管理図から得られた林分材積(m3/ha)や材積間伐率、間伐材積(m3/ha)は実際の数値に対して過小となる場合が多い。「南近畿・四国地方ヒノキ林分密度管理図」から得られた①林分材積(m3/ha)、②材積間伐率(%)、③間伐材積(m3/ha)の補正を試みた結果、スギ、ヒノキ共に有意な近似式が得られ、補正が可能となった。これを用いて、2006年に作成された民有林収穫表の補正を行った。
得られた近似式は、
ヒノキ林分材積:y=0.5861x1.123(R2=0.889,p<0.0001)
ヒノキ材積間伐率、間伐材積:y=0.0005x3-0.07x2+3.554x(R2=0.971,p<0.0001)
スギ林分材積:y=0.2451x1.2266(R2=0.87,p<0.0001)
スギ材積間伐率:y=-0.011x2+2.002x+5.744(R2=0.96,p<0.0001)
2 ヒノキ人工林の間伐強度に応じた下層植生の種組成と種多様性
【黒岩宣仁、渡辺直史】
これまで継続的に調査してきた標高が異なるヒノキ人工林の試験地で、下層植生を調査し、間伐強度と下層植生の関係を、種組成とその多様度や自然度に着目して比較した。出現したすべての植物を本来の生育地を推考して3つに区分し、解析項目毎にその割合を調べた。本数間伐率(以下、「間伐率」という。)が高いと植生高は高くなり階層構造が発達して各階層の植被率も上がった。75%の間伐は、施業後に多くの遷移前期種が侵入し13~15年を経てもその優占が続いていたが、巻き枯らしによる75%の間伐では遷移前期種の侵入をある程度抑えていた。25%、50%の間伐では、低木層に優占度の高い種が存在し、標高が上がるにともなってその種類が変化した。今回の試験地の調査結果では、生物多様性保全機能の高い遷移後期種の豊富な下層植生を維持するための間伐率は、25~50%の間に適正値があると推測され、自然植生の構成種の特性から見ると、その値の中で常緑樹林域では低く、夏緑広葉樹林域では高い間伐率が望ましいことが示唆された。
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