公開日 2021年03月28日
令和2年度 地域の皆さんの活動(地域支援企画員からの報告)
高知市の取り組み(高知市ブロック)
<JA高知市女性部鏡支部加工部のこれまでの取り組み>
高知市鏡地域(旧鏡村)では、40年ほど前から旧鏡村農協婦人部が特産の梅を使い、梅干しやジュース、梅の加工品等を製造していました。昭和58年には高知県主催の「郷土の味コンクール」において、梅の加工品(ホケキョ漬け)が最優秀賞(知事賞)を受賞しています。これらの加工品の主な販売先は高知県内の直販所や学校給食ですが、近年は外商にも取り組んでおり、平成29年にはシンガポール事務所経由で現地の商社に連絡を取り、シンガポールで「梅干し」等の梅の加工品の試食販売を実現、鏡の「梅」が海を渡りました。
令和2年現在、JA高知市女性部鏡支部加工部の主な構成員は約10名、平均年齢は約75歳となっており、鏡の魅力を県内外へ知ってもらうとともに、鏡の味や梅加工の技術・文化を次の世代へ伝承すべく、加工品の製造・販売から商談会・イベントへの出展まで積極的に取り組んでいます。
<鏡地域のもうひとつの特産品イタドリ>
高知のソウルフードである春の山菜「イタドリ」。全国ネットのテレビ番組でその存在が紹介されたことから、県内だけでなく県外からも引き合いのある食材となりました。
高知市地域アクションプランに位置づけられている「イタドリの外商推進による中山間地域の振興」では、県内で食されているイタドリを県外に販売拡大していくため、栽培イタドリの県内産地を拡大するとともに、新商品の開発等を行うことにより高知県産イタドリのブランドを確立し、中山間地域における新たな雇用の創出を目指しています。
このイタドリの一大産地が鏡地域です。JA高知市鏡支部イタドリ部会では、皮が剥ぎやすく、収量が多く、食味が良いなどの特長を持つ系統を選抜して育成しており、外商に応えられるよう産地を拡大するため、この優良系統(通称「鏡1号」)の苗を県内の生産者に販売しています。
JA高知市女性部鏡支部加工部では、イタドリを1年中食べられるように、イタドリの皮を剥いだものを塩漬け・真空パック詰めして冷凍した一次加工品「イタドリ塩漬(冷凍)」を製造しており、これが高知県内の学校給食の食材としてだけでなく、イタドリ生産普及販売促進協議会を通じて県内外の飲食店等へ食材として販売されています(令和2年6月にはJAL国内線ファーストクラスで提供される機内食の食材にも採用されました)。
また、しょうゆ味・しお味・ピクルス味の3種類の味付けをした「イタドリ漬け」も製造し、梅に続く目玉商品として外商にも取り組んでいます。
(イタドリ加工品の製造風景)(イタドリ塩漬(冷凍))
<“コロナ禍でもできることをしよう”から始まった、HACCPへの取り組み>
令和2年度の幕開けは新型コロナウイルス感染症との戦いから始まりました。イタドリと梅の繁忙期前の3月や、繁忙期後の7月頃からは、イベントや商談会へ出展し、鏡の特産品を広くPRする計画を立てていましたが、中止・変更を余儀なくされました。さらに、休校に伴う学校給食の休止や営業自粛要請を受けた外食産業の落ち込みにより、「梅干し」や「イタドリ塩漬(冷凍)」の出荷量が大幅に減るなど、大きな影響を受けました。
コロナ禍の中、令和2年6月1日の食品衛生法改正により、全ての食品事業者にHACCPへの取り組みが義務化されたことを受け、JA高知市女性部鏡支部加工部でも毎月HACCPチーム会を開催することとなりました。最初のチーム会で、「外出自粛を求められる今こそ、しっかりと地固めをしよう」ということでメンバーの思いが一致し、今年度の目標を『まずは、まるごと高知へ出荷している「ホケキョ漬け」の県版HACCP第2ステージの認証取得を目指すこと』に決め、取り組みを始めました。
(HACCPチーム会の様子)
<まるごと高知でのテストマーケティングで得た、たくさんの学び>
緊急事態宣言が解除され、感染者数もひとまず落ち着きが見られた11月3日に、前年度から計画していた「イタドリ漬け(しょうゆ味)」「ホケキョ漬け」のまるごと高知でのテストマーケティングが実現しました。通常は小皿等に入れたものをその場で試食していただいてアンケートに回答していただきますが、今回は小袋に入れたサンプルを配布する形にし、感染拡大防止に努めました。
JA高知市女性部鏡支部加工部からは2名が参加し、高知市農林水産課の職員、高知市鏡地域振興課の職員とともに地域支援企画員も同行し、声掛けやアンケート回収などの支援を行いました。
結果、アンケートにご協力いただいた方の約7割がイタドリを知らない方で、「味の想像ができなかったけど食べておいしかった」「サクサクした食感が楽しかった」などといった好意的なご意見が多数寄せられました。一方で、「ごはんのおともなのかおつまみなのか分かりにくい」「量が多い、半分くらいの量だとトライしやすい」「もう少し安いと買いやすい」といったお声もありました。
翌日11月4日には「しそジュース」、「イタドリ漬け(しょうゆ味)」で取引のある大手食品卸会社を訪問し、貴重なアドバイスをたくさん得ることができました。
東京のお客さんの「おいしい」という声が多かったことで商品への自信が高まり、改善が必要な点も明確になったため、帰高して早速、意見やアドバイスのあった内容量の変更や他商品とシリーズ化したパッケージの改良について意欲的に検討を始めました。
(まるごと高知でのテストマーケティングの様子) (内容量とパッケージ変更の検討風景)
<今年度の取り組みのまとめ>
HACCPへ取り組むと決めたものの、専門用語は難解で、作成する書類の量も多い・・・。皆で話し合って作成した書類を専門家へ提出しては修正の繰り返しでしたが、1月に「ホケキョ漬け」で高知県版HACCP第2ステージ認証申請へ漕ぎつけ、2月にはついに認証を取得することが出来ました。これはJA高知市女性部では最初の認証取得になります。
地域支援企画員は、高知農業改良普及所の普及指導員と連携しながら自らもHACCPについて学びつつ、難解な専門用語を分かりやすく説明したり、申請に必要な書類作成の支援や食品衛生協会への問い合わせの窓口となって行うなど、JA高知市女性部鏡支部加工部に寄り添った支援を行いました。
今回の第2ステージの認証取得により、「ホケキョ漬け」よりも製造工程が少なく鏡地域の「顔」でもある「イタドリ塩漬(冷凍)」であれば、さらに上位の認証の取得も可能ではとの熱意のある声も挙がっており、「イタドリ塩漬(冷凍)」での第3ステージ認証取得に向けた取り組みも始まっています。今後も中央西農業振興センター高知農業改良普及所普及指導員と連携しながらしっかり支援を行っていきます。
コロナ禍をネガティブにとらえるのではなく、“こんなときでも立ち止まらず、逆に今だからこそできることをしよう!”というJA高知市女性部鏡支部加工部の方々の前向きな姿勢と行動力に、私たち地域支援企画員も大きな力をいただきました。今後も引き続き、鏡地域の産品の地産地消そして地産外商に一緒に取り組んでいきたいと思います。
【この記事に関するお問い合わせ】
高知市地域支援企画員 電話:088-872-5885
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