公開日 2024年02月13日
高知県立図書館刊行の史料集『南路志』全10巻と『憲章簿』全7巻を、県立図書館がデジタル化しインターネット公開した件について、部落解放同盟高知県連合会及び部落解放同盟高知市連絡協議会から、2021年6月23日付けで、インターネット公開に至った経緯について説明を求める申し入れがあり、経緯の説明をおこないました。
経緯の説明とその後の意見交換の概要については、次のとおりです。
1 日時、場所
令和3年7月21日(水)10時から12時 オーテピア 4階ホール
2 出席者
部落解放同盟高知県連合会及び部落解放同盟高知市連絡協議会関係者:9名
高知県:県立図書館長ほか 6名
高知市:高知市民図書館長ほか 2名
3 会の概要
(1)資料のデジタル化及びインターネット公開の経緯説明(県立図書館)
・県立図書館では、高知県関係の貴重資料のデジタル化を進めている。
・新型コロナウィルス感染拡大のため、昨年は約1か月休館し、多くの県民・市民の皆さまに大変ご迷惑を掛けた。
・昨年9月の県補正予算で国の新型コロナ対策交付金を活用し、ウィズコロナ時代における利用者の利便性の向上を図ることとした。
【『南路志』『憲章簿』を選んだ理由等】
・『南路志』と『憲章簿』は、本県の歴史研究のための基本資料であるだけでなく、県産品などの商品開発のストーリー作りなどにも活用できる豊富な内容を含んでおり、レファレンスでも頻繁に利用しているが、両資料とも索引がないため、調べもの等に多くの時間を要していた。
・全文検索が可能になることで、資料活用の利便性が向上し、また来館せずとも利用者自身で調べる際にも大いに役立つことが期待された。
【資料中の賤称語の扱いについて】
・両資料が人権問題の解決への一助として刊行された経緯なども踏まえ、人権啓発に役立つ資料としてどのように公開できるかを検討するとともに、貴重資料のデジタル化に取り組んでいる国や県外の図書館などに対して賤称語などへの対応について聞き取り調査をおこない、県の関係部署とも協議した。
・公共図書館は、紙媒体資料に限らず、公に発行されている電子的媒体(デジタル媒体)も含め、広く提供することを任務としている。したがって公に発行されている紙媒体の図書などをデジタル化した資料、情報も公開するのが原則ではあるが、聞き取り調査や関係各課などとの協議をもとに以下の3点を決定し、県立図書館としてデジタル化した高知資料の一部公開制限についての方針を定め、その方針に基づきデジタル画像の公開、一部非公開をおこなった。
○ 地名・居住地域名と結びついた形で賤称語が使用されているページは、ネット上で不当な差別的取り扱いを助長・誘発するなどの実態があることなども踏まえ、プライバシーの侵害につながる可能性が考えられることから、現時点では非公開とする。
○ 賤称語全てを非公開として検索語から外すことは、近世身分制度の下での厳しい差別の実態を見えにくくすることにもつながるため、おこなわない。
○ ただし、この措置は永久的なものではなく、今後も慎重に議論を進める中で図書館としての資料提供の最善の方法を検討する。
【市民図書館との情報共有】
・なお、オーテピア高知図書館は県市共同運営であることから、この件については公開前に高知市とも情報共有した。
(2)意見交換
(団体)関係各課・機関から具体的にどのようなアドバイスを受けたか、議論をどのように重ねたか、最終的に誰がどのような形で決定したのか。
(団体)先進的な取り組みであればこそ、公開前に専門家や当事者団体、関係機関を交えてもっと議論を重ねてほしかった。今もなお差別はなくなっていないという状況がある。そういった当事者の思いも聞いていただきたかったし、慎重な議論をしていただきたかった。
(団体)インターネット公開するにあたって、インターネット上での差別の現状や悪意を持って利用する人たちがいることをどう考えているのか。
(団体)全文検索の意義は認めるが、悪意がある人はそれをうまく利用できる。賤称語で検索できることについて慎重に検討してほしい。
(団体)今回のことは最終的にはオーテピアの人権感覚だけで基準を決めたということか。
(県)歴史的事実である賤称語そのものを隠すことはすべきでない。ただし、インターネット上で差別事象が拡散されている実態を踏まえ、地域・地名が合わせて出ている部分については配慮してはどうかとのアドバイスをいただいた。また、国会図書館等に問い合わせをしたが、国会図書館を除き、地域名などが載る資料はデジタル公開していないというところが大半であった。最終的には、これらのことを踏まえ、県立図書館としての方針を決定した。永久的にこの対応をしていくというのではなく、今後有識者や関係する方々のご意見も踏まえながら、より良い形で資料提供するようにと考えている。
(団体)地名というのは村名を指すのか、部落名ではないのか。部落名ではなく村名を対象としたのはおかしい。専門家の意見を聞いていないために地名の確認抜かりも出てくる。また人名については考慮していないのか。プライバシーの観点からすれば、むしろ人名の方が重要ではないか。
(県)居住村名がわかるものを対象とした。また人名については、部落差別に直接結ぶようなケースがあれば当然配慮すべきだが、今回確認する中ではそのようなケースはないと判断した。
(団体)高知市の立場としての考えを聞かせてほしい。
(高知市)県立図書館からコロナ対策交付金を活用して『南路志』『憲章簿』のデジタル化をおこないたいという話があり、9月の補正予算に上げるとの説明を受けた。貴重資料のデジタル化や非来館型サービスの拡充については、進めるべき事業であると認識している。次に、3月末に、4月から公開すること、賤称語については関係課とも十分協議の上、地名とリンクして差別を助長する恐れがある部分は非公開にするとの報告があり、実際に検索画面を確認した。市民図書館としては、スケジュール的にタイトであったことは十分認識しているが、何らかの形で公以外の関係者の方の意見を聞く機会があればよかったと思っている。
(団体)「図書館の自由に関する宣言」を見ても、図書館はある一定の独立した判断ができる機関だという考え方だと思う。だからこそ間違いがあってはならないし、責任も重大である。今後、公開のルールを考えていくにしても、専門家や当事者団体の方たちの意見を聞きながら考えるべきだと思う。
(県)今回の公開については永久的にこのままいくという事でなく、様々な意見をいただきながら、より良いものにしていきたいと思っている。
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