公開日 2022年03月22日
春野を香りで呼べる地へ…春野地区の農産物付加価値向上への取り組み(高知市/高知市ブロック)
1.これまでの取り組み
有限会社スタジオオカムラ(以下、「スタジオオカムラ」と表記)は、平成22年から高知市地域アクションプラン「春野地区の農産物の付加価値向上」の実施主体として、春野地区で栽培されている農産物を、飲料や調味料等へ加工し、主に県外の百貨店や高質系量販店へ販売する取り組みを行っています。
スタジオオカムラはその名のとおり、元々は写真館として創業し、平成12年に事務所を移転した際に、写真館にベーカリーカフェを併設した複合施設「はるのテラス」を開業しました。その駐車場の一角に良心市を設置し、地元の生産者の作った農産物の販売を始めたことがきっかけで、生産者の声をダイレクトに聞く機会が増え、生産者の現状を知り、地元の農産物の有効活用や生産者の所得向上のためには、素材の良さを引き出した他の産地と差別化した加工品を作り、付加価値をつけて戦略的に販売していくことが必要であると考えるようになりました。
そのため、平成23年に産業振興総合支援事業費補助金を活用し、農産物加工場「野菜工房」を整備し、地元の生産者、野菜ソムリエ(スタジオオカムラの小林社長自身も日本野菜ソムリエ協会の「野菜ソムリエ上級プロ」の有資格者)、研究機関などと協力しながら、地元の農産物を原材料とした加工品を続々と開発し、販売を始めました。
2.地元生産者との連携から始まった「土佐ベルガモット」プロジェクト
スタジオオカムラの製造する加工品の中でも、「土佐ベルガモットシリーズ」は近年、県内外のメディアでも取り上げられ、都市圏の百貨店や高質系量販店からも引き合いがある注目の商品となっています。
この原材料である、イタリア・カラブリア地方が原産の柑橘類「ベルガモット」は紅茶のアールグレイの香りで知られていますが、国内での栽培例は少なく、栽培計画がスタートした平成21年ごろには、広島のシトラスパークなど瀬戸内のごく一部で栽培されていただけでした。
高知市春野町で柑橘類を生産する株式会社にしごみでは、温州みかんをメインに栽培する中で、輸入果実の増加による価格と需要の低迷に加え、温暖化により、近い将来、質の高い温州みかんをこの地で栽培することが難しくなるのではないかという懸念を抱いていました。
そこで、代替品種の候補の1つとして「ベルガモット」の試験栽培を始め、原産地に近い石灰質の土壌と日照時間の長さを活かし、接ぎ木となる台木を改良するなど栽培方法を工夫して本格栽培を始め、平成26年には約200kgのベルガモットの収穫に成功しました。
このベルガモットは、「土佐ベルガモット」と名付けられ、国内トップクラスのティーブレンダーや有名パティシエなどからも注目を集め、紅茶やスイーツ、国産のクラフトジンやクラフトビール等の原材料として採用されています。
スタジオオカムラでは、スパークリング飲料『土佐ベルガモットスパークリング』をはじめとする飲料や、県内の茶農家と連携して紅茶『土佐アールグレイ』、コンフィチュールなどへ加工し、販売しています。
3.地元の生産者の所得向上のための販売戦略
スタジオオカムラでは、戦略的に「新しい良いものへの感度が高い客層」をターゲットに設定し、“高単価であっても、質の良いものを購入するシーン”に販路を絞って販売しています。その1つであるお中元・お歳暮市場には早くから着目し、有名百貨店のギフトカタログへの掲載を目指し営業活動を行い、複数の百貨店で毎年採用されています。また、高単価の飲食業界へもアプローチし、『土佐ベルガモットスパークリング』はハイクラスホテルや有名ブランドのレストランのドリンクメニューにも採用され、高質系量販店などの店頭にも並んでいます。
新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要の増加を受け、ECサイトからの注文も増えていることから、スタジオオカムラでは令和3年2月にホームページをリニューアルし、生産者を紹介するコーナーを設けました。写真関連事業も行っている強みを活かし、生産者の思いや、こだわりの栽培方法などを伝える写真や動画の撮影・編集もスタジオオカムラが行っています。これは、販売する商品、ひいてはその原材料となる農産物の生産ストーリーこそが付加価値であり、そこに焦点をあてて消費者に伝え、商品を手にしてもらうための1つの取り組みです。
4.今後の展望
『土佐ベルガモットスパークリング』は、令和3年12月に『高知家のうまいもの大賞2022』において飲料部門では最高賞である優秀賞を受賞しました。受賞のポイントとして「香りが素晴らしく、パッケージも高級感があり贈答用としても使用できる」「ベルガモットは高知の次の特産品になる可能性を秘めている」といった評価を受けています。
スタジオオカムラでは、今後も引き続き高知市春野町の生産者の所得向上と産地の継続を目指し、ベルガモットをはじめ、春野町を“香りで呼べる地”にしようという構想を抱いており、生産者と協力しながら、“香り”を生み出す新たな作物の栽培と、その加工品への展開について検討を進めています。
5.地域支援企画員の活動内容
こちらの取り組みは高知市地域アクションプラン「春野地区の農産物の付加価値向上」に位置づけられており、地域支援企画員は事業実施主体であるスタジオオカムラを定期的に訪問し、現状についてのお話を聞かせていただいたり、支援事業についての情報提供や活用提案を行っています。
その中で、令和3年度にスタジオオカムラから「事業展開の一環で、春野町外にあった資材倉庫兼事務スペースを春野町内へ移転することが決まったため、本社の近くで倉庫物件を探しているが、市街化調整区域ということもあり、なかなか物件が見つからない」とのご相談を受けました。
高知市地域本部では、JA高知県春野支所が春野町内に空き倉庫を保有していることを把握していたため、双方の調整役を行いました。
また、スタジオオカムラの商品の良さをより多くの県民の皆さまに知っていただきたいと考え、令和3年度には高知県のテレビ広報番組「おはようこうち」の「さんしんGO!」のコーナーで、このアクションプランの取り組みを放送しました。地域支援企画員は番組内容の構成や取材先の選定・調整を行い、野菜工房(加工場)での製造場面のほか、土佐ベルガモットの生産者である株式会社にしごみの西込社長のご協力で、収穫期を迎えたベルガモットの果樹園も取材をさせていただきました。時折吹く強い風で、果実や枝葉がこすれ合い、ほのかに香るベルガモットの香りの中で、西込社長とスタジオオカムラの小林社長が「春野を“香り”で呼べる地にしたいね」と語り合う姿は、まさにこのアクションプランを体現したシーンであったと思います。地域支援企画員として今後も引き続き、事業者に寄り添った支援をしていきたいと考えています。
この記事に関するお問い合わせ
高知市地域支援企画員 TEL:088-872-5885
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