公開日 2023年03月27日
【相談内容】 (徳島県労働委員会)
パートの歯科衛生士として勤務していましたが、職場に退職を申し出たところ、「退職時機密事項誓約書」の提出を求められました。内容を確認すると、「機密保持」「競業禁止」「損害賠償」の3項目があり、「競業禁止」の項目には「現に競業関係にある会社等に5年間就職しないこと」と記載されていました。競業関係にある会社に5年間も就職できない誓約書にサインしないといけないのでしょうか。
【お答え】
退職時に、従業員と競業避止義務契約を結ぶため、使用者が誓約書の提出を求める場合があります。従業員は職業選択の自由を有するため、直ちにこれに応じなければならない義務はありません。雇用契約や就業規則における定めの有無や、下記の判断基準に照らし誓約書に合理性があるかどうか検討してください。もっとも、使用者から従業員に対し、誓約書について丁寧な説明がなされるべきであると考えます。
<競業避止義務が有効とされる一般的な判断基準>
(1)守るべき企業の利益があるか
営業秘密やノウハウが情報流出した場合に損なわれる利益
(2)従業員の地位
形式的な地位ではなく、守るべき利益を保護するために義務を課すことが必要な従業員であったか否か
(3)地域的な限定があるか
業務の性質、事業内容、事業展開地域等に照らし、地域について合理的な絞り込みがなされているか否か
(4)競業避止義務の存続期間
形式的な期間ではなく、労働者の不利益の程度を考慮した上で、守るべき利益を保護する手段として合理的な期間といえるか否か
(5)禁止される競業行為の範囲について必要な制限があるか
一般的、抽象的な禁止でなく、一定の具体性を有し、範囲が限定されていること。
(6)代償措置が講じられているか
義務を課すことの対価として明確に定義されたもので、例えば退職後の独立支援制度や厚遇措置などが挙げられる
競業避止義務の存続する期間について、形式的に何年以内であれば認められるという訳ではなく、労働者の不利益の程度を考慮した上で、業種の特徴や企業の守るべき利益を保護する手段としての合理性等が判断されているものと考えられます。概して、1年以内の期間については、肯定的に捉えられていますが、2年の競業避止義務期間については、否定的な判断がなされる例が見られます。
ご相談者様のケースの場合、そもそも営業秘密やノウハウに接し、それを保護すべき立場にあったのか、競業避止期間が5年と長すぎるのではないかといった点で疑問が生じるところです。詳しくは、法テラスや弁護士などを通じて、法律の専門家に相談されることをお勧めします。
また、労働委員会には、個々の労働者と使用者とのトラブル解決のための「あっせん」制度もございますので、ご相談ください。
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