公開日 2023年08月18日
1 ウバメガシ林の再生に関する研究
- 薪炭林におけるウバメガシ造林技術の開発 -
【黒岩宣仁、藤本浩平、渡辺直史、黒岩準彦】
高知県では土佐備長炭の生産量を増大させる取り組みを展開しているが、原木のウバメガシの確保に不安を抱えている。そこで、原木を産出している薪炭林に試験地を設け、皆伐地への植栽と直播種、樹下植栽、択伐など、ウバメガシの現存量を増大させる試みを行った。
ウバメガシ優占林に近い斜面上部と、コジイ優占林に近い斜面中腹で植栽木の成長量や競合植生の発達度を比較した。また、早期樹林形成による省力化を目的として、高密度植栽区( 30,000 本/ha)を設けて標準区(10,000 本/ha)と比較した。さらに、切株の萌芽再生が植栽木の成長を阻害することが推察されるため薬剤の樹幹注入による切株の枯殺を試みた。直播種では、ノネズミによる堅果の食害対策として筒を用いた試験を行った。樹下植栽では、高木を薬剤で枯殺することにより林内照度を調整して植栽し、植栽木の成長量や競合植生の発達度を調査した。択伐では、択伐の有無や択伐の強度の違いによる残存木や萌芽枝の成長量を比較し、実生の発生などを調査した。
試験の結果、薪炭林への植栽や直播種は、適地の選択が重要であり、高木種の切株の枯殺が有効であること、立地の違いが競合植生の発達度に影響すること、競合植生と植栽密度が植栽木の成長や樹形に影響することなどが分かった。また、樹林下植栽は長期の観察が必要となるが低コスト、小労力で小面積を対象にはじめることができる利点があること、択伐は残存木(幹)の材積や萌芽枝数を増加させ、原木伐採周期を早め持続的な原木生産に有効であることなどが確かめられた。
2 サカキ・シキミの栽培技術向上に関する研究(Ⅰ)
- サカキの栽培と光環境について -
【藤本浩平、黒岩宣仁】
野外環境および庇陰環境下でサカキの葉の形状と成長について調査、試験を行った。人工林内での開空率と相対照度の間に正の比例関係がみられ、開空率および相対照度が低いほど葉長が長く、葉厚が薄い傾向がみられた。相対照度4 % 前後の人工庇陰下では葉長、葉幅とも長くなる傾向がみられた。相対照度0 . 8 % の庇陰下では生育に必要な光量が得られず、成長が著しく悪化し枯死するものもみられた。
3 サカキ・シキミの栽培技術向上に関する研究(Ⅱ)
- サカキの害虫サカキブチヒメヨコバイの防除 -
【藤本浩平、黒岩宣仁】
白い斑点状の吸汁痕によってサカキの葉の品質を低下させることが問題になっているサカキブチヒメヨコバイの防除方法を確立するため、薬剤防除試験と発生消長調査を行った。サカキブチヒメヨコバイに対する浸透移行粒剤の薬効が確認された。同剤によるサカキへの薬害はみられなかった。サカキブチヒメヨコバイは年間を通して葉上での生息が確認された。
4 食用きのこ栽培技術確立に関する研究(Ⅰ)
- フクロタケ栽培技術の検討 -
【和食敦子、黒岩宣仁、渡辺直史】
高知県の温暖な気候を活かしたきのこ栽培技術を確立するために、簡易ビニールハウスを利用したフクロタケ栽培試験を行った。稲わら堆肥を設置したビニールハウス内の水を入れた溝に、水中ヒーターを投入してサーモスタッドで菌床内部温度が常時30℃以上になるように制御することで、制御を行わなかった条件と比較してフクロタケ子実体が多く発生した。さらに、牛糞堆肥を栽培床に添加することで子実体サイズが大きくなる傾向を確認した。
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