公開日 2023年05月15日
更新日 2024年04月04日
■ 不当労働行為とは
労働者と使用者が対等の立場で話し合って労働条件を決めるということが労使関係の基本です。しかし、労使間には交渉力の格差があることから、労働者は団結して労働組合をつくり、使用者と交渉することになります。
労働者が団結する権利や団体交渉その他の団体行動をする権利は憲法で保障されています。
使用者がこれらの権利を認めて、労働者と話合いでお互いの関係を正しく築いていくことが労使関係の基本的なルールです。
労働組合法はこのルールを乱す次のような使用者の行為を「不当労働行為」として禁止しています。
不当労働行為の類型(労働組合法第7条)
号別 |
種 別 |
禁止されている使用者の行為 |
1号 |
|
労働者が |
労働者が |
||
2号 |
団体交渉の拒否 |
労働組合が団体交渉の申入れをしたにもかかわらず正当な理由なしに拒否すること |
3号 |
支配介入 |
労働者が |
経費援助 |
労働組合の運営に要する費用を援助すること |
|
4号 |
労働委員会に |
労働者が |
■ 不当労働行為の救済手続
1 救済の申立て
使用者から不当労働行為を受けたときは、次のような手続で労働委員会に救済を申し立てることができます。
申立てができるのは、労働組合又は労働者個人です。
申立ては、不当労働行為と思われる具体的な事実と、どういう救済を求めているかを書いた「不当労働行為救済申立書」を提出して行いますが、口頭で行うこともできます。
申立書の提出先は、不当労働行為の当事者である労働者の住所地、労働組合の主たる事務所の所在地、使用者の住所地・主たる事務所の所在地又は不当労働行為が行われた地を管轄する都道府県労働委員会であれば、いずれの労働委員会でもかまいません。
申立てができる期間は、不当労働行為があった日から1年以内です。ただし、地方公営企業等の労働関係に関する法律第12条による解雇については、2か月以内です。
労働組合が申立てをする場合は、申立書とともに「労働組合資格審査申請書」の提出が必要です。
2 審査
申立てがあると審査が始まります。審査とは調査と審問の総称で、会長又は会長の指名する公益委員(審査委員)が指揮して進めます。主にこの過程で当事者はその主張を立証するための十分な機会が与えられることになります。
労働者委員・使用者委員は参与委員として審査に参加し、当事者に対して質問したり、証人を尋問したりすることができます。
審査は、当事者双方の出席を原則としていますが、当事者の一方が出席を拒否した場合などには、他の一方だけの出席で行う場合があります。
当事者は、審査の手続を代理人に代理させることや、補佐人を伴って出席することができます。この場合は、あらかじめ代理人・補佐人申請書を提出して審査委員の許可を受ける必要があります。代理人の申請に当たっては、委任状も必要です。
なお、労働委員会は、調査や審問の途中でも、審査の実効性を確保するため、証人の出頭を妨害する行為を禁止するなどの勧告をすることがあります。
(1) 調査
使用者から答弁書の提出があると、両当事者に出席を求めて調査に入ります。
調査では、審問を円滑に進めるための準備をします。当事者双方の主張を聴き、その相違点を明らかにするとともに、その主張を立証するのに必要な証人や証拠書類の整理を行います。
そして、審査委員は当事者双方の意見を聴いて審査の計画を定めます。その内容は、調査手続で整理された争点と証拠、審問の期間と回数及び調べる証人の数、命令交付の予定時期です。
(2) 審問
証人の尋問は、通常その証人を申請した側による主尋問、その相手側による反対尋問、そして証人を申請した側による再尋問の順に行われることになります。
書証は、文書だけでなく、図面や写真も含みます。提出された書証について相手方の認否が行われます。
証拠調べは、当事者が申請した証人、提出した書証によるほか、必要がある場合には当事者の申立て又は職権で証人等出頭命令、物件提出命令により行うことがあります。
証人の尋問などの証拠調べが終わりますと、当事者から審問全体の総括的な陳述又は陳述書の提出が行われて審問は終結します。
(3) 命令
審問が終結すると、公益委員会議において労・使の参与委員の意見を聴いた上で合議を行います。
その結果、不当労働行為があったことが明らかとなれば、労働委員会は救済命令を出します。反対に、不当労働行為と認められないときは、申立てを棄却するという命令を出します。
救済命令は不当労働行為をなくし、正常な労使関係に戻すためのものです。内容は事件によって違いますが、例えば解雇された労働者を元の職場に戻し、それまでの間の賃金に相当する金額を支払うこと、組合の申し入れた団体交渉に応じて話合いをすること、労働組合の運営を妨害するような行為をやめること、今後そのような行為をしないという誓約をすることなどを使用者に命令します。
命令の効力は、命令書の写しを交付した日から発生します。
(4) 和解と取下げ
命令まで行かず、当事者の話合いにより事件を解決することを和解といいます。
和解は、当事者間で自主的に行われるもののほか、審査委員が将来にわたる労使関係を考慮し、和解による解決を図ることが適切と判断した場合に、当事者の自主的な話合いを勧めたり、和解を勧告したりすることで行われます。和解が成立したときは、その内容を文書にして、お互いにそれを守らなければなりません。
なお、当事者双方の申立てにより労働委員会が和解調書を作成した場合、この和解調書は強制執行に関しては債務名義とみなされます。
労働組合(労働者)は命令書の写しが交付されるまでは、いつでも申立ての全部又は一部を取り下げることができます(争いとなった問題が当事者間の自主的な話合いにより解決した場合や、救済申立てをした理由が消滅した場合など)。
(5) 審査の期間の目標
労働委員会は迅速な審査を行うため審査の期間の目標を定めることとなっています。高知県労働委員会では、救済申立てから事件の終結までの期間の目標を1年以内としています。
(6) 再審査及び行政訴訟
当事者は、命令に不服がある場合、命令書の写しが交付された日から15日以内に中央労働委員会に再審査の申立てを行うことができます。
また、命令の取消しの訴えを労働組合(労働者)は6か月以内に、使用者は30日以内に高知地方裁判所に提起することができます。
(7) 命令の確定
再審査の申立ても行政訴訟の提起も行われなかった場合や裁判所の確定判決により支持された場合には、命令は確定します。
確定した命令に使用者が違反すると、罰金など処罰の対象になります。
労働委員会は使用者に対して命令の履行について報告を求めることがあります。
■ 過去の命令
過去の命令については、中央労働委員会「労働委員会関係 命令・裁判例データベース」にて、ご検索ください。
■ 関係書式のダウンロード
不当労働行為審査関係書類の作成要領 | ― | 要領[PDF:109KB] |
様式1 申立書 | 様式 [DOC:11KB] | 記載例 [PDF:74KB] |
様式2 答弁書 | 様式 [DOC:11KB] | 記載例 [PDF:52KB] |
様式3 代理人・補佐人申請書 | 様式 [DOC:11KB] | 記載例 [PDF:37KB] |
様式4 委任状 | 様式 [DOC:10KB] | 記載例 [PDF:31KB] |
様式5 証拠説明書 | 様式 [DOC:15KB] | 記載例 [PDF:52KB] |
様式6 証人尋問申請書 | 様式 [DOC:14KB] | 記載例 [PDF:49KB] |
様式7 陳述書 | 様式 [DOC:11KB] | 記載例 [PDF:40KB] |
様式8 取下書 | 様式 [DOC:11KB] | 記載例 [PDF:38KB] |
この記事に関するお問い合わせ
所在地: | 〒780-0850 高知県高知市丸ノ内2丁目4番1号(高知県庁北庁舎4階) |
電話: | 088-821-4645 |
ファックス: | 088-821-4589 |
メール: | 240101@ken.pref.kochi.lg.jp (労働相談はコチラ) |
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