公開日 2021年03月12日
■ 労働争議の調整とは
労働委員会が行う調整とは、労働組合と使用者の労働関係に関するそれぞれの主張が当事者間の話合いでまとまらず、自主的解決が望めない場合に相互の主張を調整し、紛争の解決を援助することです。
調整に当たって、労働委員会は公正な第三者機関として、当事者の自主的調整の原則を基本として紛争解決への助力をしていきます。
したがって、労・使は、相互の話合いでの解決が困難な状況にあるとはいえ、自らの問題であることに相違はないのですから、労働委員会にその解決をすべて委ねてしまうのではなく、自らもその解決への努力を重ねることが必要です。
また、労働委員会としては単に労働争議を解決すればよいという考えでなく、将来の労・使安定のため、労・使双方にとってよい助言者であるよう、納得の得られる合理的な解決を図ることに努めます。
■ 調整の方法及び調整事項
1 調整の方法
労働委員会が行う調整の方法は、あっせん、調停及び仲裁の三つに分かれており、当事者はこれらのうちいずれの方法でも選ぶことができます。
2 調整事項
調整対象となる主な事項は、次のとおりです。
・ 賃金等に関する事項
賃上げ、一時金、退職金、賃金体系など
・ 賃金以外の労働条件に関する事項
労働時間、休日休暇、定年制など
・ 人事等に関する事項
配転、解雇、人員整理など
・ 協約締結及び改定
労働協約の締結や改定など
・ 団交促進
団体交渉に相手方が応じない場合など
■ あっせん
あっせんは、あっせん員が当事者の主張を確かめて争点を明らかにし、これに働きかけ、歩み寄りを促すことで争議の当事者による自主的な解決を支援しようとする調整方法です。 あっせん員はあっせん員候補者の中から会長が指名します。
あっせん員候補者は、学識経験者であって労働争議の解決に援助を与えることのできる人を労働委員会が委嘱しています。
1 あっせんの開始
あっせんは、当事者の一方又は双方からの「労働争議あっせん申請書」の提出によって開始されます。
2 あっせん員の指名と事前調査
あっせん申請がありますと、会長は、あっせん員と担当職員を指名します。あっせん員は、通常、公・労・使各側からそれぞれ1名指名されます。
担当職員による事前調査では、申請書の記載事項の確認と当事者の主張を聴取しますが、この際、必要な資料の提出を求めることがあります。
3 あっせんの進め方
あっせん員は、当事者に出席を求めてあっせんに入ります。 まず、あっせん員は、当事者から事情を聴き、主張の要点を確かめ、対立点を明らかにして労働争議の争点がどこにあるかを調べます。
事情聴取が終わると、あっせん員は、労使間の主張をとりなし、解決への糸口を見出し、歩み寄りを図ります。 解決策を示した方がよいと判断した場合は、口頭又は文書によりあっせん案を示すことがあります。
当事者は、あっせん案を受諾する義務はありませんから、一方が受諾しても他方が受諾しない限り、あっせんはまとまらないことになりますが、十分に検討して、なるべくこれを受諾し、争議を早く解決することが望まれます。
また、当事者の主張に隔たりがあって歩み寄りが見られない場合、あっせんは打ち切られることになります。
4 職権によるあっせん
病院や私鉄の労働争議のように、人命や県民の日常生活及び経済活動に重大な影響を与えるおそれがある場合には、当事者から申請がなくても労働委員会が職権によりあっせんをすることがあります。
職権あっせんの進め方は、申請によるあっせんと同様です。
■ 調停
調停は、調停委員会が当事者双方の意見を聴いた上で、文書で解決案を示し、その受諾を勧めることによって労働争議を解決する調整方法です。あっせんと異なる点は、調停委員会は必ず公・労・使委員の三者で構成することと調停案を提示することです。
1 調停の開始
調停は、当事者双方からの「労働争議調停申請書」の提出によって開始されます。労働協約の定めに基づく場合又は公益事業の場合は、当事者の一方からの申請により開始されます。
2 調停委員会
調停委員会は、会長の指名による公・労・使の委員により構成されます。
3 調停の進め方
調停委員会は、当事者に出席を求め、その主張を聴いた上で 15日以内に調停案を作成し、10日以内の期限を付けてその受諾を勧告します。 当事者は、調停案を受諾する義務はありませんが、十分に検討して、なるべくこれを受諾し、争議を早く解決することが望まれます。
調停案が当事者双方により受諾された後、調停案の解釈又は履行について意見の不一致が生じたときは、調停委員会にその見解を明らかにするよう申請しなければなりません。
また、当事者の自主交渉が不十分であると調停委員会が判断した場合は、交渉を続行するよう勧告することもあります。
更に、調停作業が難航してやむをえない事情によって調停を進めることができなくなったときには、理由を示して調停を打ち切ることもあります。
4 職権等による調停
公益事業、地方公営企業又は現業職の地方公務員の労働争議について、労働委員会が調停を行う必要があると認めたとき、又は知事から請求があったときは、当事者からの申請がなくても調停を開始します。
また、公益に著しい障害を及ぼす労働争議について、知事から請求があったときにも同様の取扱いをします。
職権等による調停の進め方は申請による場合と同様です。
■ 仲裁
仲裁は、当事者双方が労働争議の解決をすべて仲裁委員会に任せ、必ずその判断(仲裁裁定)に従って労働争議を解決する調整方法です。
1 仲裁の開始
仲裁は、当事者双方からの「労働争議仲裁申請書」の提出によって開始されます。労働協約に仲裁の申請をしなければならない旨の定めがある場合には、当事者の一方からの仲裁申請により開始されます。
2 仲裁委員会
仲裁委員会は、会長の指名による3名の委員により構成されます。仲裁委員は、公益委員の中から当事者が合意により選定した者を会長が指名します。ただし、合意による選定がなされなかったときは、会長が当事者の意見を聴いて指名します。
3 仲裁の進め方
仲裁委員会は、当事者双方の出席を求め、その主張や意見を聴き、また、当事者の指名した労・使委員の意見を聴いた上で仲裁裁定書を作成して、これを当事者に交付します。
仲裁裁定は、効力発生の日から労働協約と同一の効力をもって当事者を拘束することになります。
当事者は、その内容に不服や異議を申し出ることはできないので、労働争議は仲裁裁定によって解決することになります。
4 職権による仲裁
地方公営企業及び現業職の地方公務員の労働争議については、職権や知事の請求によって仲裁が開始されることがあります。
■ 関係書式のダウンロード
労働争議あっせん・調停・仲裁申請書 | 様式[DOC:42KB] | 記載例[PDF:144KB] |
この記事に関するお問い合わせ
所在地: | 〒780-0850 高知県高知市丸ノ内2丁目4番1号(高知県庁北庁舎4階) |
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