公開日 2015年03月23日
平成26年度 第1回「対話と実行座談会」
日時:平成26年10月29日(水曜日)18時00分から20時00分まで
場所:すこやかセンター伊野
出席者:県内で活躍する林業活動を行っている方6名
座談会要旨
1.知事あいさつ
2.県の取組について
3.参加者の取組状況について
4.意見交換
5.知事まとめ
添付ファイル
高知県産業振興計画の推進によって実現を目指す本県産業の姿 林業分野[PDF:1MB]
開会
(司会)
ただいまから平成26年度第1回対話と実行座談会を開催いたします。
皆様、本日は大変ご多忙の中、この対話と実行座談会においでをいただきまして、ありがとうございます。
今、地方創生という話が盛んに国全体で議論されております。人口減少と少子化問題による地方の衰退ということを三位一体としてとらえ、地方の再生を図ろうという議論がなされているわけです。地方の再生を果たしていくためには、中山間の再生ということも当然併せて図っていかなくてはなりません。中山間の再生を図っていくためには、何といっても林業の再生だと私は思っております。林業の振興は産業振興計画を通じて何とか図っていきたいという思いで一つ一つステップを踏みながら、多くの皆様にご指導、ご鞭撻をいただきながら取組を進めてきたところです。
そういう中にあって、いわゆる小規模林業の振興を図っていくことが、これからの林業振興に当たって非常に大きなポイントとなっていくのではないか、そのように考えておるところです。いわゆる小規模型林業、私いろんな中山間にお伺いして、対話と実行行脚という形で中山間の集落、例えば集落活動センターの皆さんにもお伺いをすると、ぜひ私たちが山に行って木を切って、その木が収入になるという形になれば、この集落活動センターにおいても安定的な収入が得られて、中山間での暮らしが成り立つようになる。自分たちの山に自分の木がある。あれを切ってお金に換えるという仕組みを、ぜひもっと県として振興していくべきではないかと、いろんなところでそういうお話をいただきます。おっしゃるとおりだと思っております。ぜひ、自分の山の木を自分で切って、それをお金に換えていける仕組みというのを高知県においてもしっかり構築することができれば、中山間でそれぞれの人々の暮らしを支えるということになっていくのではないのかと考えているところであります。
幸い、そういうことを本格的に展開していくための環境もできてきているのではないかと。何といっても、今日おいでになられている多くの皆様のように、この山の木を切って自伐型で林業をやっていこうとされる志がどんどん全国に広がり、また注目を浴びてきているということが第一にあろうかと思います。
またもう1つ、あとで副部長から説明いたしますが、今、高知県の林業においても、川上・川中・川下と商流がだんだん太くなってきている。特に、高知おおとよ製材の設立を機にひとつ商流が太くなった。一般的に言えば、原木の需要も拡大をしていこうという段階に来ているのではないかと思っています。そういう時だからこそ、自伐型の林業でそれぞれ1人1人が1本1本切っていった木を大きな商流に乗せていく、そういう流れもできつつあるのではないかと思っています。
他方、こと林業の側から見れば、もっともっと原木が必要になってくる。そういう意味においても、多くの皆さんにいわゆる委託型といわれるもののみならず、自伐型の皆様方にも参画をいただいて、ともに両輪として林業の担い手になっていただく形で、大きく林業生産全体を拡大していくということができないものかと考えています。
もっともっと需要も増やしたいということで、CLT技術の確立を私は政府に何度も訴えていっているところであります。川上を太らしていく、川中を太らしていく、そして最終需要も太らしていく。そうすることで林業についての木の大きな流れができれば、日本の中山間は再生します。併せて、高知県も資源大国になることができ、日本全体がそうなるだろうと思っているところであります。
そういうことで、この自伐林業、小規模林業振興策というのを27年度から本格的に展開をしていきたい。しかし、そのために果たして我々県としては何をすればいいか、何をすべきなのか、我々としての一定の仮説のようなものはありますが、それだけではまだまだ足りない。皆様方にいろんな形でご意見をいただいて、この年末から年始にかけて、県の第2期産業振興計画のver.4に新しい政策群を盛り込んでいきたい、そのように考えておるところです。
ちなみに、お手元に資料としてもお配りさせていただいていますが、県として9月の補正予算で、高知県小規模林業推進協議会というものを設置していくため予算化をしていただいたところでございます。高知県小規模林業推進協議会を設置することについて、議会にもお諮りをして同意もいただいております。
小規模林業振興策をしっかり考えていくということに明確にコミットメントしておるつもりでありまして、この小規模林業推進協議会の方でも皆様方から色々な形でお知恵をいただければと思います。2時間という限られた時間ではございますが、ぜひ皆々様方からいろいろとお知恵を賜りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
それでは今日、佐川町長もお越しいただいていますので、一言お願いします。
(佐川町長)
皆さん、こんにちは。佐川町長の堀見和道です。ちょうど1年前に佐川町長として仕事を始めましたが、佐川町の地方創生は自伐型林業でいく、林業に向かい合っていくということを決めて1年間取り組んできました。これからも進めていきたいと思っています。今日はご参加の皆さん、忌憚のない意見、素晴らしいアイデアを聞けることを楽しみに今日参加をさせていただきました。よろしくお願いします。
(司会)
続きまして、県の林業分野の取組につきまして、林業振興・環境部の高橋副部長から簡単にその内容をご説明させていただきます。
(事務局)
まず、「高知県産業振興計画の推進によって実現を目指す本県産業の姿 林業分野」(添付ファイル参照)ですが、これが先ほど知事の方から説明があった高知県産業振興計画の第2期計画の林業分野の取組をまとめたものです。産振計画につきましては平成24年から27年まで、これが第2期の計画になっていまして、平成26年度がver.3という形で取り組んでおるところです。
林業分野でまず数値目標的なことで少しお話をさせていただきますと、一番左が少し古いデータになりますが、まず原木の生産量。平成22年当時40万立方メートル、これを27年度の中間のところで72万、それから10年後の33年には、一番右の欄ですが81万立方メートルの生産量を目指していこうということです。木材や木製品の販売出荷量につきまして、平成22年に150億、それを190億、そして33年には200億円産業に育てていこうという目標を掲げて取り組んでいるところです。
こういった目標を達成するための中身としましては4つ柱がありまして、1つは原木生産、それから加工体制、流通販売、木質バイオマス、この4本柱で目標を達成していこうということです。
まず大きな柱となりますのが、一番上の原木生産です。これにつきましては、現在、台風の関係もあって少し苦戦をしているところもありますが、ここは何としても達成していきたいということで、現在25年度末で大体50万立方メートル程度、26年度60万、それを27年度には72万に持っていこうということです。これは増産プロジェクトチームというものを関係者でつくって、取組を進めているところです。
それから加工体制につきましては、高知おおとよ製材による大型製材工場ができましたので、これを核にまだまだ広げていきたい。それから、新しい需要としてのCLTで木材の需要が爆発的に増えるという期待もあり、この辺の取組を積極的に進めていきたいということです。ここの写真にありますのは、日本初のCLTで造られたおおとよ製材の社員寮です。これからはパネル工場の誘致に向けての取組なども含めまして、展開していきたいと考えています。
それからその下の流通販売ですが、これも高知おおとよ製材で大きな供給ができるようになりましたので、この辺の力を利用して首都圏等へも売り込んでいこうということです。
それから一番下、木質バイオマスは農業用のボイラーに加え、現在、高知市と宿毛市の方で建設整備が進められている木質バイオマスを使った発電施設も動き出そうとしております。こういうものが動き出しますと、今までなかなか利用されていなかったC材、いわゆる低質材の方の利用もどんどん進んでいくということです。
こういったところを踏まえまして目標の数値を掲げておるところです。この原木72万というのはなかなかハードルが高く、皆さんのご協力というか、県挙げて全体で取り組まないと達成できないと考えております。原木生産の中に自伐林業による生産の促進ということで、その辺も期待をしているところです。
それから、この中でもう1点説明をしますと、重要なキーになるのがこの担い手の確保。これにつきましては平成20年ベースが1,645人と最近右肩上がりで増えておりましたが、25年度は1,601人と、他の公共事業の関係もあり、そちらの方へ人が流れているという傾向もあります。そういったところも踏まえまして、これから林業の担い手を確保していく。これも1つの大きな課題となっています。ちなみに、この担い手は年間60日以上林業に従事した方の数をカウントしています。これからは小規模型の林業が増えていく、この辺の数も増えていくといいかなと期待もしているところです。
次に1ページめくっていただきまして、高知県小規模林業推進協議会(仮称)です。先ほど知事の方から少し紹介をさせていただいたところで、これから進めていくイメージを書いたものです。
この下にありますように、自己で山林を所有して経営をしている方、いわゆる自営業者の方、それから自分で所有林は持たないけれども一人親方という方々、それからNPO法人、今日お越しいただいております土佐の森救援隊であるとか、ボランティア団体としてシマントモリモリ団とか、地域おこし協力隊、ここはあえて本山と佐川ということで書いていますが、これは林業専門でやっている方ということで、他のこともやりながら林業にかかわっている方がたくさんおられますので、そういった方も含まれると考えています。それから林研グループなどの団体もあるようです。
こういったメンバーがひとつ、特に難しい要件や会費は要りませんので、賛同される方に会員になっていただいてこの協議会を組織し、そこで情報の共有や技術のスキルアップ、そういったことを一緒にやっていきましょうというイメージです。
次のページをお願いいたします。次のページは、先ほど申しました一番広い部分からボランティア団体やNPO法人、それから専業で林業をやられる方、そういう形でピラミッド型になるかと思うんですが、それぞれのステップ、段階に応じた県の施策を整理したものです。下から順番にステップアップしていくパターンもあるでしょうし、意外とそれを飛び越して専業で林業をやってみようという方もおられるなど、いろんなパターンがあるかと思います。
最後のページをお願いします。こちらの方で見ていただきたいのは下の運営計画、これからのスケジュールです。まず、今年度につきましては、9月補正で予算100万円ほどの事務費を計上させていただきましたので、これから協議会を立ち上げていきたいと考えているところです。来年度いろいろ意見を聞きながら本格的な形で動かしていきたいということで、年3回ぐらいの協議会の開催を予定しているところです。そこで、皆さんのご意見・ご要望をいただきながら、県としての予算化も検討していきながら進めていきたいと考えております。
将来的にはその右にありますが、平成33年度、これは産振計画の目標年次です。その頃には全市町村にこういった協議会支部による活動団体が広がっていく、協議会も最初は県の方で事務局をやりますが、その頃には自主的に運営できる団体に移行していくというイメージで考えているところです。
(司会)
それでは、本日ご参加いただきました6名の方から、現在の取組状況につきましてお話をいただきたいと思います。それでは最初に、筒井さんからお願いいたします。
(筒井氏)
土佐町林業研究会の筒井と申します。私たち林業研究会が土佐町林業研究会になったのは昭和57年でした。その当時は50名ぐらいの林研会員がおりまして、主に林業技術の研修とかあるいは県主催の高知県下の林業研究会の発表会とか、いろいろな林業の先進地視察に県が支援してくれましたので、その研修に行きました。そういうところを見てきて、土佐町で自分たちに何ができるだろうかということを考え個々の経営に応じた林業経営を取り入れまして、自伐林家が主体で林業研究会をやっております。高齢化も進みまして現在は31名ですが、その半数以上は自伐林家です。その他の人もそれぞれ林業に携わっておりますが、夏場は農業をやっております。
現在私がやっておりますのは、平成5年から10年頃までに植えた約18年〜20年の山の間伐をしております。それは地元にありますチップ工場に持っていっておりますが、嶺北は非常に条件が揃っています。大豊に大型製材工場ができましたし、木材市場が2カ所あります。それにチップ工場が来年はもう1つできますので2カ所になります。そういう非常に恵まれた地域で私たちは林業をやっておりますが、林業に携わる人が非常に少なくなっているというのが現状ですけど、今ほんとに林業をやってみたいという人もよそから来る人もそういう声が聞こえておりますので、その仕組みづくりを各町村がどういうふうに取り上げるかというのが、これからの嶺北が発展していく1つの土台になるのではないかという気はしております。
(知事)
ありがとうございました。石原の集落活動センター「いしはらの里」にお伺いした時にお話を伺って、おっしゃるとおりだなと。集落活動センターの運営ごとに、例えば自伐、その携わっておられる方が集落活動センターとして木を切ってきて、それをお金に換えて、それを運営経費にしていくことは可能ですよね。
(筒井氏)
可能です。今は施設の方へ力を入れておりますので、来年度になって1つの受け皿の施設ができた後、どういうふうにその仕組みづくりをするかというのが集落活動センターの大きな課題にもなっています。
(知事)
そうなれば多分モデルになりますね。集落活動センターをもっと普及させていきたい。今県下で14カ所できていますから、あれを130カ所くらいはぜひ欲しい。それぐらいの密度にならないと、ほんとの意味で中山間の暮らしを支えるということにはならないのではないかと思っています。その時に、集落活動センターとして経済的に自立していくための収入源って何だろうという話になる。民泊でいけるところもありますし、加工品を作って売るってこともできるところもあるでしょう。林業ができるのは中山間がほとんどです。これが着実にできていけば、多くの中山間地域が自立していけるということになっていくのではないか、という期待感がものすごくあります。
(筒井氏)
私が思うのは集落活動センター、学校を主体にしていますので、やはりそこは宿泊施設ができて、林業をやってみたい、夏場は農業をやってみたいという人を受け入れて、短期でもいいです、20日でも1カ月でも、そういう人を受け入れた時は、まだまだ地域には農業も林業も指導できるという人がおりますので、そういう人たちとともに私たちが知っている技術などを教えることはできますので、集落活動センターには期待しています。
(知事)
研修の場としても使えるということですね。
(筒井氏)
はい、受け入れは自伐林家の人ができます。
(知事)
木を切って集落活動センターの収入源とする。加えて、教えることもこれまた収入源になる。
(筒井氏)
一応技術を身につける期間が要りますので、自分で自立したいという時には、まず市町村有林をどれだけ開放できるか。1ヘクタールずつのブロックに分けて自分で管理させる。そういう制度を取り入れたら、ほんとに移住者の人も技術も身につくし、専業林家になる道になるかなという気はします。
(知事)
例えば県有林みたいな場所。
(筒井氏)
私たちがまず研修を受け、そして研修生を受け入れて、チェーンソーの使い方とか運搬車の使い方をやりますが、実際それを自分でやるためには山林が必要になる。それを個人の山で施業をするといってもなかなかできないですが、町有林などの公的な山を1つの場として提供していただければ、より近道ではないかと。
(知事)
ありがとうございました。
(四宮氏)
土佐の森救援隊の四宮です。今、技術を身につけるという話がありました。我々は県から、副業型林業養成塾ということで、誰でもできる林業、それから個人の方々ができる林業というのを目指していきたいという声をかけていただき、我々もやりますというところで6年目に入りました。毎年、30名前後ぐらいの研修生を受け入れて、そのうち数名程度は林業にそのまま向かっていく、今年もそういったメンバーの方々と一緒に研修を行っています。
それから、高橋副部長からいろいろ説明を受けました。小規模林業の話をずっと言っていますけど、知事が先ほどのあいさつの中で、自伐型林業と小規模林業を並列しておられましたが、どうもこの資料の中には自伐型林業という言葉がないので、ぜひこの中へ自伐型林業というのをどこかに入れていただけないかと思っています。
(知事)
それは小規模林業とは自伐型林業を含むということでしょう。
(四宮氏)
それともう1つ知事の言葉に感激したのは、中山間地域の方々が裏山に行って木を切り出して、それが日頃の生活であるとか産業に結びつければいいじゃないかと。私もそういうのを考えていまして、我々の活動の原点は、裏山に行って木を切り出してそれを薪にして、自宅の薪ストーブや五右衛門風呂、薪風呂に使っているというのがやっぱり我々の森を見る目の原点になろうかなと思っています。
林業振興という言葉を皆さんはおっしゃいますが、我々は振興ではなくて復興という言葉を使っています。今ある林業が良いというのではなくて、かつては自分で、それができなければチームで地域の山を整備していた。言い換えれば、昔よき頃の林業をもう一度復活させる。そういった林業を復興していこうというのが我々土佐の森救援隊の到達点であり、最終的な目的をそこに置いております。
それと同時に、知事もおっしゃっていましたように、それが中山間地域の活性化、再生につながっていけばいいということで、我々はそこに介して地域経済と連携するために、地域通貨券の発行であるとか様々なところの仕組みをそこに入れていき、森林整備が地域産業あるいは地域経済、地域の再生につながるような仕組みをもっていろんな活動をしていっております。
そうする中で、うちの理事長が大きく声を高らかにしているのが、その担い手であるの自伐型林業。これをこれから進めていくことが林業の復興にもつながるし、中山間地域の再生にもつながっていくのではないかと思っています。小規模林業イコール自伐型林業ということで進めていっていただければと思っております。
また意見をお聞きしますと、我々の活動というのは森林整備はもちろんのこと、先ほどの我々の環境活動と福祉活動を横串を刺したような形で、中山間のおじいちゃんやおばあちゃんの家に我々が切り出した林地残材を薪にして提供する、そういった活動もしながら自伐型林業の全国展開をする。それから東北の沿岸、特に三陸沿岸域の方では、就労というところを1つの切り口にし、就労を目指した自伐型林業のあり方の取組を始めてもう3年目になります。
そういったことで通常の森林整備もしながら、中間ドナーの運営もしたり、東北支援をしたりという活動を我々土佐の森救援隊は行っております。
(知事)
ありがとうございます。自伐型としての就労の支援をされていますが、その就労される人の形態は専業の場合もあれば副業の場合も、いろいろなパターンがあるのでしょうか。
(四宮氏)
自伐型林業の特徴というのは、関わる人のライフワークに応じた、どのような形でも入っていけるというのが一番の特徴です。専業でなくてももちろん構いません。まずはアルバイト、それからボラバイト、それから副業型、そして最後は生業というふうにピラミッド型で構成される林業にかかわる形態というのが理想ではないかと。どこのスタンスでも関わってくる、どんな人のライフワークにも応じた林業ができるというのが自伐型林業であり、小規模な林業であるというふうに我々は考えております。
(知事)
中山間へ行って高齢者の方の昔の話を伺うわけですが、お姉ちゃんがお嫁さんに行く時、親父が木を切ってきて、そのお金でいわゆる嫁入り道具を揃えたと。ほんとに裏山にある木を切って、それが金になって、人々の暮らしの足しになれば。資源が溢れているわけですから、そのようにぜひ持っていきたいものだなと思っています。
さっき筒井さんの言われた、嶺北はいろいろ売り先がいろんな形で多様にあって恵まれているとおっしゃっておられましたが、多分、売り先の商流が少しずつ太くなってきているのではないか。高知おおとよ製材はその1つの成果だと思っているのですが、やはりCLTなど売り先を増やしたいということも思っていますし、少し増えてきつつある。だから、今こそ、この自伐型林業に従事しようとする人の数をもっと増やしていくいいチャンスかなと思っていますが、いかがでしょうか。
(四宮氏)
そうですね、あとエネルギーもあります。それも含めて、この誰もが参画できるような林業というのが出てくれば、もっと大きく林業が動いてくるのではないかと思います。日本国60%以上が森林、高知県だと84%です。これは非常に大きな開発領域であるというふうに当組織の代表は言っております。この開発領域である84%を使わない手はないのではないか、これからの林業の大きな道じゃないかなと思っております。
(知事)
自伐型林業で新たに取り組もうとされる方で、自分で山を持っていない人もいますが、そういう人の場合はどうされるのでしょうか。
(四宮氏)
個人で別にチームを作ってすることもできますし、誰かの山と森林協定を結んですることもできます。
先ほど筒井さんがおっしゃったように、例えば町有林や県有林、国有林を開放していただいたり、施業をすることができない個人の山主さんから提供していただいたりすることによって、今まで山を持ってない、林業に全く関わってない方々も林業という世界へ飛び込むことができる。そういうことが可能ではないかと思います。
(知事)
移住の受け皿となり得るのではないかと思いますが。
(四宮氏)
そうです。
(知事)
ありがとうございます。
(片岡氏)
片岡です。僕は始めて8年目になり、完全な自伐型林業をやっています。40歳まで市内の方で工務店に勤めていまして、40歳を機に実家へ帰って、隠居をした親父が自伐型林業を始めました。1年間見習いで入って、何とか林業で飯が食べれないかと。本格的に取り組み始めて、1年目で何とか工務店にいた頃の給料は取れるようになった。その後、どうすればもっと収入が得られるかということで、年輩の方、木を植えられた方の考え方を全て根本的に見直してみよう、完全にやり方を変えようと。親父とかおじさんとか、他にも自伐林家は上名野川には今3軒ある。林業に携わっている人が7〜8人ぐらいだと思いますが、実際には皆さんは山林所有者です。おじいさんなどにも相談し、施工そのもののやり方を根本から見直すことによって、約2倍の搬出ができるようになった。
3年目には、緊急間伐の補助金を受けていたのを、県の方は緊急間伐の補助金はもうなくなるということで、森の工場に移行することがいいのではないかという指導を受けて、取り組んでみようかと。その時に調べるとなかなか問題が多くて、それじゃ会社にしようと。法人にしたらそのいろんなハードルが全部越えられるのではないかということで、3年目に会社に変えて、森の工場ができ始めたのが去年から。その時で収入が大体1人でやっていた時の3倍ぐらいに増えてきた。
だから、自伐という形で林業をすれば、収入そのものは安定してくる。なぜ安定するのかというと、まず自分の山、それと自分の山を手入れする時に、その隣の山主さんにも声をかけて一緒にやらないかと。それによって従来であれば山の手入れにお金がかかっていたところを、僕たちは山の手入れをすることによって、その山主さんに必ずお金を還元する。そういう形で徐々に仕事も増えていき、また、若い人から自伐林家をやりたいと最近問い合わせも来ます。この前も静岡の方からIターンで移住してきて、林業を教えてくれないかという話があるが、その受け入れ態勢も今一歩進んで、仁淀川町の町有林を間伐することにオッケーが出た。今その話し合いを進めており、それが整えば若い者を育てていこうと思っています。
また地元の者で、木材市場を地元企業の皆さんで力を合わせて立ち上げて、自伐林家が自分たちで切って自分たちで売るところまでつくることができました。今ちょうど高知おおとよ製材や(木質バイオマス)発電などで完全に風向きはいいですよね。これからもっと僕は伸びると思って、力を入れていきたいと思っています。
(知事)
どうもありがとうございました。自伐型林業でやられ始めて、1年でその工務店の時の同じ給料が得られるようになった事はすごいことですね。なぜできたのでしょうか。
(片岡氏)
簡単に分かりやすく言うと、要するに自分の山です。切っただけそのまま収入になります。木を植えて育てて草刈りをして、これだけコストがかかっていたら、こんな安い値段で木なんか売れないという考え方だと木は切れない。だから、先祖が残してくれた木があるから、切って売ったというだけ。そうすると、間違いなく切った分だけ収入になる。
(知事)
造林とかはしないのですか。
(片岡氏)
植林には1ヘクタール当たり100万円かかります。100万円あれば50年生の山が1ヘクタールちょっと買える。どう考えても植えるよりは買った方がいい。
(知事)
なるほど。常識を変える、変えたいとおっしゃっていましたが、どういうところを変えられたのですか。
(片岡氏)
切り方もいろいろあります。当然安全が第一でないといけないのと、切るにしても基本は木を傷めないために山側に切る。しかし、上りよりは下りに切った方が効率は単純に上がります。下りで切ると、当然木は傷めます。だから、傷めないように上手に切る技術も必要。
高密路網を目指して道をものすごく入れます。(幅員)3メーター、4メーターの道を高密で抜いてしまうと当然山は大変なことになります。私は2メーターでぎりぎりの道しか抜かない。だから、道を抜いたからといって支障木は大して出ない。高密路で道を入れるので集材作業が全くない。その場で玉木になります。だから集材1つカットすることによって、作業効率は単純に倍になった。普通プロセッサーを使おうがタワーヤーダを使おうが倍にはならない。ところが高密路でやることによって、作業効率は倍になる。
それと機械をものすごく小さくしているので経費が要らない。20リッターの軽油で3日はもつ。大型機械は1日で200リッター必要。とにかくそのコストをいかに落とすかを最重要課題として取り組んでいます。
(知事)
出せる木は最初少量だったでしょう。その少量の木1本1本で、それをお金に換えるためにどこに持っていかれましたか。
(片岡氏)
最初は愛媛県の久万市場。だから佐川へ市場をつくった。それなら高知県に入る。
(知事)
そういう意味では、今商流ができてきているから拡大していくチャンスという感じがしますが。
(片岡氏)
もちろんそうです。今日は佐川町長さんも来ていますが、佐川の方でも間伐を請け負うと、ますます輪が広がっていきます。
(知事)
もう1点、移住の受け入れ先になるといいなぁと。「WOOD JOB!」という映画も出たりして、だんだん林業への理解が全国的に広がってきているという話もありますが、受け入れ態勢がなくて受け入れられなかったけれど、町有林などを移住の人のために提供できるようになれば受け入れられそう、そういうことですか。
(片岡氏)
そうです。ただ、そのハードルがある。要は集約化したい。集約化するのに、県とか町の所有の山は制約があるので、その制約をクリアしないといけない。今、皆で話し合いをしている。クリアすれば町有林の560ヘクタールが作業できる。だから、若者を入れてどんどんやっていく。
(知事)
そこには移住者専用の森として使ってください、そういうイメージか。その森というのはどういう使い方をしますか。研修用、それともその人たちがとりあえずご飯を食べられる、どっち、両方か。
(片岡氏)
いや、ちょっと僕には分かりにくいのですが、要は自分が雇って育てていく。
(知事)
そうか、雇用する人が増える分施業地が必要で、その分を町有林でやる。
先ほど筒井さんや四宮さんも言われていましたが、そのあたりが大事なのですね。こういうのをオープンにしていくことが。ちなみに、なぜ静岡から電話がかかってきたのですか。
(片岡氏)
テレビを見たと。高知でだけ放送されなかったんですけど、全国放送で、土佐の森救援隊からのお声がけで、読売テレビさんが取材に来てそこで話をしたら、自伐林家になりたいと(話があった)。
(知事)
なるほど、何歳ぐらいの人でした。
(片岡氏)
40歳。Iターンで、移住でということでした。
(知事)
ありがとうございます。
(秋山氏)
シマントモリモリ団の秋山と申します。私たちシマントモリモリ団が林業を始めてから2年目になります。モリモリ団は冬の間しか林業をやってないので、正確に言うと2シーズン目ということになり、全くの素人が集まって林業をやろうとしましたが、技術の方は全部土佐の森救援隊の自伐林家養成塾に行って、団長も私もそこで勉強しました。
なぜ移住して、私が山の作業ができているのかというところですが、団長が地元出身で地元での昔からのつながりがあったので、団長と私とで作業ができているという状況であり、私だけが土佐の森救援隊の講習に行って山をやりたいと思っても難しかったと思います。地域の皆さんはよくしてくれますが、やっぱりまだ信頼もないし、自分が林業をやりたいと思っても、これだけちゃんとできますからというのも言えないですし、いきなり山やらせてくださいなんてとてもじゃないけど言えない。やっぱりその地元の人とのつながりがあったからこそ今できている。先ほどからも話が出ていますが、移住者の人がどうやって山を確保するかというのは一番大事なところで、そこさえ解決できれば。私も1年目には日当が5,000円ないぐらいですね。ほんのちょっとですけど赤字にはならなくて、まだユンボ(の使い方)もおぼつかない時、木も上手に切れない時に日当が4~5,000円ぐらいだったというのは自分でも驚いた。これならできると思って今2年目、まだまだですがやろうとしているところです。
山を確保するということ、誰に聞いても、土佐の森の人に聞いても、どうやって山を見つけたらいいですかと聞いても教えてくれない。というよりも、明確にはこうしたらいいですよというのが誰も分からないので、そこは県とか市町村の人に頼るしかないです。今やっているのは7ヘクタールのヒノキの山で、あと2〜3年で作業が一旦終わる。この周りをどんどん広げていきたいんですが、私はあまりその地域の人を知らないし、どこの所有者が誰かというのもどのように調べたらいいかも分からないので、そういうことを相談できるような県の人や市の人がいて、中間に入ってもらって、全部お任せするわけではなく、相談できるような人だったらいいなと思います。
(知事)
ありがとうございます。秋山さんは東京都ご出身ですか。
(秋山氏)
そうです。
(知事)
ようこそ、高知へおいでいただきましてありがとうございます。何で四万十市に来ようと思ったのですか。
(秋山氏)
それは四万十楽舎というところで「田舎で働き隊!」という募集がありまして、それで楽舎とつながりができ、またそのようなバイトがあったら声をかけてもらい、それで半年いたらもうやみつきになってしまって。
(知事)
なるほど。最初は林業が動機だったわけじゃないんですね。
(秋山氏)
そうですね、その住んだ時がちょうど冬だったもので、土佐の森救援隊の講座とか講演とか団長の話とか、近所のおんちゃんが自分の山を切っているところとか、そういうのを聞かせてもらったりして、林業ってすごく面白そうだなと思った。土佐の森救援隊さんに少し聞いてみると、女性でもできる、そんなやり方を教えてもらった。
(知事)
秋山さんのような仲間は周りにいますか。女性に限らず若い人で。
(秋山氏)
若い人でやりたい人はいっぱいいますね。いますが、山がないからどうせできないと、他人事になっているところもある。それと、夏はカヌーの仕事をしていますが、林業だけじゃ生きていけないというのはほんとにそうかもしれないと思う。やっぱり筒井さんのように、夏は農業、冬は林業という、田舎はそういう暮らし方が一番いいのだろうなと。
(知事)
夏は農業だけしかなかったりすると大変になってくるけど、冬は林業があると随分中山間でも豊かに暮らせるようになるということだと思うんですよね。林業の再生は全体を底上げ、下支えしてくれると思うので、またそのような林業にしていかなきゃいけないとも思うんですけどね。
最後に、相談できるところがあったらいいなと思いますか。
(秋山氏)
そうですね、前に新聞で見ましたが、農地だったら中間管理機構のような。
(知事)
中間管理機構、まだ苦戦していますが、随分周辺は整いつつある。昔に比べると随分よくなっています。
(秋山氏)
山は持っているが東京などにいて、もう何も分かんないという人もいる。そこにそんな山があるのに、私はやりたいのにというもどかしいところで、中間管理機構のような仕組みがあれば。
(知事)
ありがとうございました。ぜひ仲間をたくさん連れてきてくださいね。
(窪田氏)
土佐林業クラブで副会長をしております窪田と申します。よろしくお願いいたします。
土佐林業クラブは発足して50数年、毎年偶数月には必ず勉強会を実施して、かれこれ台風とか災害以外は休みを取ったことがなく、県内外の会員の山を見に行くなどして、山づくりの勉強、それに対して施業をどうするべきかを勉強している任意の団体です。
会員としては、個人・法人を含めまして約60名、高知大学の先生からはじまって山の好きな人、林業が好きな方でどのようにしていい山をつくりたいかを勉強する会として続けております。先日も上穴内ですごくいい山を見て感激して帰ってまいりました。あんな山にするためにはどういう施業をどの時期にどうすればいいかということを勉強してきました。
会員の中には、山を持っているけれども林業はもう任せてある方もおりますが、山が好きで木のきれいな山にしたいという方もたくさんおります。面積の大小は別にして、自分の山を自分でいい山にしたい、そういう集まりなので、ある意味では自伐林家、けど小規模林家でもない方も何割かはおられるという感じでやっております。
個人的には会社を経営しており、私も40歳の時にこの業界に飛び込みました。それまで農業関係の仕事をしており、全く知らない世界へ飛び込んでいって、林業をこの14年間見て勉強させてもらっているところです。会社としましては、約400ヘクタールぐらいの会長の山がありましたので、それに隣接する山、諸々の方の山を一緒に作業道を入れて手入れする。基本的にはその隣接している地域だけでやっていますので、作業道を密に入れて、メイン道路、サブそれから作業路を入れて、ヘクタールあたり平均200メーターぐらいの道を入れて取り組んでいるところです。徐々に機械化も進み、去年は4,000立方メートルほど搬出しています。作業員は4人で、1人約1,000立方ぐらいなので十分頑張っていると思う。
そのようなことをやりながら、会社の経営としては収支がどうしても大事ですので収支を見ながら、林業クラブの方としてはいい山をつくりたいと、その狭間の中で日々仕事をしているというのが今の私の立場です。
それで、今の林業についてお願いをしたいのは、山の合理化は機械も入れ、私どものレベルではかなり進んでおります。あとは末端の消費、県内産材の販路の拡大、市場の拡大、知事も言われたように、それがこれからの一番の課題ではないかと思っており、やはりパイプを太らしていくということが大事ではないかと思っています。
特に、CLTについてはすごく面白い内容になっておりますので、1つ知事にお願いがあります。高知おおとよ製材のCLTの社員寮ですが、壁は木材が一切見えない。看板で構いませんので、こんなのでやっているよというのを見えるようにして欲しい。何人か僕も県内外の方を連れて視察に行ったのですが、外からCLTというのが全く分からない。中へ入っていくわけにもいかなので、看板でいいので、その木の格子が見えるようなものをそこにポンと2メーター角ぐらいのものを建てていただいたら、非常に勉強になる場になるのではないかと思います。よろしくお願いしたいと思います。
(知事)
ありがとうございます。ご存じと思いますが、高知おおとよ製材の社員寮、CLTでつくった日本最初の建物、あれは将来の産業遺産になると僕は思っているんです、CLT発祥の地として。しかし、建築許可の関係上、外を覆わないといけないということで覆ってしまっている。CLTに見えない。しかし、れっきとした日本ナンバーワンでありますから、少し工夫して何か外に看板とか出しておけば、それだけで見に来た人に対して違うということですよね。
需要を何とか太らしていきたい。CLTは需要を劇的に拡大してくれることになるのではないかということで大変期待していまして、前回の東京オリンピックの時は、オリンピックに合わせて今のような鉄とコンクリートの街をつくるという文明ができてきた。次の東京オリンピックではそういう鉄とコンクリートと木、これがしっかり共存していけるような街をつくりましょうということで、東京都の舛添知事のところにも訴えて、東京オリンピックでぜひCLTでトリノオリンピックのようにつくってくださいと訴えているところです。これからいろんな方向性があると思うのですが、CLTが本格化していけば、都市と地方の対立みたいなものが消えると思うんですよ。都市が栄えれば栄えるほど中山間で木の需要が大きくなり、中山間の山が栄えると。ほんとの意味で都市と地方の共生というのができるようになると思っていまして、何とかこれを実現していきたいと思います。
(窪田氏)
ぜひお願いいたします。特にそのオリンピックの1回建てて壊す建物、それが木材では廃棄、循環・再生の面でもすごくいいのでCLTをぜひ勧めていただいて、高知を発信していただきたいと思います。
(知事)
CLTの建物だったら分解して小学校に配ってもいいですしね。1点だけ、さっきお話になっておられたところですが、やっぱり山は持っているが施業はされない。例えば高齢化しておられて、そのご本人がやられるパターンではなくて、例えばこれから林業をしようとする人にあてがっていくようなシステム、さっき秋山さんが言われた中間管理型のシステムはやはり必要でしょうか。
(窪田氏)
施業の大きい小さい、事業体の大小は別にして、仕事をする場所の確保というのは事業体として生きていくための山しかない。それをどう集めるかというのは、私どもの何年もやっているメンバーでもなかなか任せてもらえないのが事実です。私の場合は隣接している方と一緒にやっていますが、私どもが特に四万十辺りへ行って(施業を)やらせてくださいと言っても、事業ができるような環境ではないのが林業と思うんです。山主さんを集約化して集めて、そういう施業を事業体に下ろしていくような、農業の機構のようなものが公共の団体であれば、山主さんも安心して任せられるのではないかと思います。ただ、その施業するレベルは山主さんの目に適わんと無理なので、認定事業体とか一定のレベルがなければ難しいのではないかと。私どもはぜひお願いして、仕事ができる場所は増やしていきたいし、あれば利用したいと思います。
(知事)
例えば窪田さんのところが四万十市に行って施業させてもらいたいと言った時、山主さんはいいよというふうには言ってくれないものですか。
(窪田氏)
地域に根ざしてないと難しいでしょうね。ですから、大体そういう時は地域の山をやらしてもらうのではなくてもう買った方が早い。一定の面積がないと買っても仕事にならない。1ヘクタール単位ぐらい買っても動きようがないので、せめて20〜30ヘクタールとか、大きい場合は100とか200余りであれば、買ってその地域へ入った方が、借りてその地域の人をまとめるよりは簡単というのが今の現状ではないかと思います。
(知事)
ありがとうございました。ちなみに年6回の勉強会では県外とかもよく行かれるのですか。ここの山がいいなとかないですか。
(窪田氏)
通常よく言われるのは、三重県の速水、それから吉田の山です。それには必ず道も入っていますし、きれいな間伐も進んで下層植生も良くて、山へ入ると空気が違うというような山、最終的にそのような山をつくりたい。
(佐瀬氏)
佐川町地域おこし協力隊の佐瀬と申します。
皆さんの議題に上がっている森林の所有、個人で入っていって山を持ちたい人はどう所有するかというのが、私の中でも一番解決したい問題の中心だと思います。それを簡単に言うと、地域おこしということで5月から働いているんですが、先ほど皆さん方がおっしゃられたように、地域に根ざしていると手放してもいいと考えている方たちがいらっしゃる。個人で動くならば、おまえだったら任せてもいいよということもあり得るでしょうけれども、それをバックアップするような自治体の仕組みが必要だと私は半年やってみて思いました。
私は岩手大学の農学部の森林専修を出ているんですけれど、それがもう15年以上前になる。その頃ほんとに思いを持って大学に行ったわけです、林業をやりたくて。いろんな大学の先生が言っていることは、題材がTPPだとか話をするもっと以前の問題ですけど、もう外材がどんどん入ってきて、日本の林業は衰退している、斜陽産業だよと。そしてそれを打破するためには、木を皆伐して、大規模に林業をするやり方しかないんだと。いろんな人や先生に問いかけてもなかなか他の答えを返していただけなかった。その当時はそれ以外の方法があるんじゃないかなと自分で思いながらも、具体的なことは分からず、林業以外のいろいろな経験をしてきました。
それで時間を経て、今はインターネットが発達していますので、前職をやっていた頃に、高知県で土佐の森方式という林業があることを見つけまして、あっと思った。その時にとりあえず行ってみようと思いボストンバッグ1つで高知に来ました。林業の現場の技術はさらさらなかったわけで、素人で入って右も左も分からない。土佐の森の皆さんにお世話になり、とりあえず車に乗せてもらい山に連れていってもらい、現場で色々な作業があるんだと1つ1つ教えていただいて、最初は始めました。
そうしているうちに高知に移り住むことになりました。佐川町で自伐型の林業のチームを地域おこし協力隊として募集している、そういう話を聞きまして、これは応募してみようと行き、5月より今の立場があります。今現在10月で4名、来月から5名になります。
目標は自ら山を整備して自ら収入を得る自立型の経営を林業でしたいと思っています。ですが、1年目に当たる現在は主に3つの活動をしていて、1つ目は作業をするための資格、チェーンソーや刈払機、バックホウ、架線などの習得をしています。2つ目は、30ヘクタールぐらいまとまっている町有林で、伐倒搬出や作業道づくりなど、現場の技術習得をしております。そして3つ目は、地域おこし協力隊ということなので、佐川町民の皆さん、地域の人と知り合うという意味でも、それから巻き込むという意味でもチェーンソーや伐倒搬出、作業道づくりの講習会を土佐の森救援隊の皆さんにバックアップしていただいて、そのお手伝いをさせていただいています。
そして私たちの中で一番大事にしているのは、林内の作業では安全朝礼から始めておりまして、その日の作業の確認。作業で事故がないように、安全が第一、無事故で当然、それを目指して林業をしております。そして、自伐型林業それから請負型の林業でなく、自分自身で自伐型林業とは何だろうかと考えながら、まだ駆け出しですが、役場のスタッフの皆さん、それから自伐型林業チームのメンバー、そして住民の皆さんと一緒に考えて行動しています。
自伐型林業とは一言で、地域の人たちが地域の山林を地域で持続可能な形で循環させる林業かなと捉えております。そういった意味での自伐型林業を実践できるようなプロになりたいなと日々努力しております。
(知事)
ありがとうございました。佐瀬さんは、前は東京都からおいでていただいたんですね。
(佐瀬氏)
生まれは静岡の浜松ですけれども。
(知事)
高知においでいただいてありがとうございました。土佐の森方式で高知と思われたんですか。
(佐瀬氏)
そうです。もうこの1点のみです。
(知事)
4名でチーム組んでやっていく。4名はもともと林業の体験はないんでしょう。チェーンソーの技術など学んだりするのは大変じゃなかったですか。
(佐瀬氏)
現場の中では厳しく指導してくださる方もいらっしゃるし、いろいろな指導をしている方がいらっしゃるので、その中で自分がいい方式をとって安全に作業できるかどうか考えてやっています。
(知事)
施業地というのはどのような形で確保しておられますか。
(佐瀬氏)
現在は町有林の30ヘクタールというまとまった場所があります。
(知事)
そこは初めから町があてがっていただいた。
(佐瀬氏)
そこをまず1年は研修の場所として利用しなさいと、伐倒搬出、作業道づくりに使いましょうという話になっています。
(知事)
今4名の方が仕事されるに当たって、誰か先生がついてやっておられるのですか。
(佐瀬氏)
実際に片岡さんは佐川に来ていただいて間伐の作業をされているということだったので、とりあえずお願いいたしますという感じで。現状をいうと、自分たちのスキルアップということで、誰か指導者の人がいる状態ではないです。なので、そこに関しては心配だという意見もメンバーの中には出てきています。心配というよりも、技術を上げるためにはこのぐらいのことをやらなきゃいけないんだというようなことを言ってくれる人とか、安全をすごく重視してくれる人だとか、いろいろな形があると思うんですけど、必要としております。
(知事)
大学を卒業してからもずっと林業でと思いましたか。
(佐瀬氏)
思っています。
(知事)
なんで思いましたか。
(佐瀬氏)
小さい頃の経験値だと思います。人生で2つやりたいことがあり、林業で飯を食いたいということと、海外の国際協力の支援をしたいということで、そちらはまだ形はなっていませんが青年海外協力隊の経験を経てるので、この自伐型林業のノウハウというのが、要は大きな機械を使わないので、まだ開発途上国の支援にもつなげられるのかなと思っております。
(知事)
どうも大変貴重なご意見を伺わせていただきありがとうございました。いわゆる施業する場所とか研修の場所というのを最初から何らかの形で公的に構えていければという話と、その森林所有している方と自伐など小規模で事業をやろうとされる方との間をお見合いするような仕組みをつくるということが大事だろうという話をずっと伺っていて、なるほどと思ったところです。
ぜひそのようなものをつくるように検討していきたいと思いますが、その2点についての補足でも構いませんし、その他こういったこともぜひ考えるべきじゃないかという話があれば、教えていただければと思います。
(四宮氏)
先ほど皆さんがおっしゃったように、その仲人をしてくれる方、支援する方、それから金銭面での援助を考えていただきたいと思います。いくら自伐型林業で通してできるといいながらも、初期投資に、作業道をつくるのにユンボが要るとか、実際の搬出する時に林内作業車が要るとか、チェーンソーを買うにしても10万円かかるであるなど、低投資ながらいくらかお金が要る。お金がない方々も林業に参画できるといった時に、無利子とはいいませんけれども、例えば県が直接するわけではなくても、新しい組織をつくりそこから金銭的な助成ができる仕組み、私はいつもそれを考えております。
例えば、農協さんの林業版が欲しい。森林組合さんが本来は担うべきでしょうが、今の森林組合さんは頑張っていらっしゃるんですが、そこまで手が回ってないというところがあります。生産者を増やすというところと経済的な支援というのが農協の柱になっていますので、それの林業版というのがあれば、新しく新規就農する方がハウスをつくりたいとなればハウスに対する補助金を出すと、同じように、林業を始める方に対して何らかの補助が付いてくるなど、そういったところを入れていただきたいなと思います。
例えば森林環境税を上手に使っていただいて、森林環境税からそれを出すであるとか、ファンドを使う、公益信託の形にするなど、そんなやり方も検討していただければいいのではないかと、そんなふうに思っております。
(知事)
1人の方が自伐林業をスタートしようとする時の初期投資って概ね幾らくらいかかるのか。
(A)
新品を買えば400〜500万円。中古を買えば200万円程度。最初、小さい投資で運搬車だけから入るという手もあります。
(知事)
それはチームで入っていけば、最初はより低投資ですむ。
(四宮氏)
そうです。
(知事)
農業で初めてハウスを始めようとされる方にはレンタルハウス事業がある。それ使っていただいて、研修施設でも腕を磨き、実績も付けて、その信用でお金が借りられるようになる仕組みを設けています。その林業版を考えられないものかということですね。
(四宮氏)
例えば山林協会さんが林内作業車とかバックホウとか購入して、それをシマントモリモリ団などへリースやレンタルをしている。ただ、台数が非常に少ない。1、2台しかないということがあります。極端な話ですが10台や20台構えてもらい、この地域で林業をやりたい、この地区で林業チームができたというところに、短期間だけでもバックホウや林内作業車のリースなどを増やしていただければと思います。
(知事)
小型だったらどこでも大体使えるということですね。
(四宮氏)
そうです。
(知事)
スタートの時は秋山さんの場合はチームだから、団長さんとともにやっていったので、初期に投資することはあまりなかったと。
(秋山氏)
でも、2人とも一緒に同時期に始めたので、ユンボはレンタルしたが結構高い。チェーンソーと軽トラは中古で買いました。今はそれで十分です。
(知事)
団長さんと一緒に立ち上げたのですか。団長が前から始められていたところに来られたのではなくて、モリモリ団として3期目。
(秋山氏)
3期目、2人とも一緒です。
(知事)
佐瀬さんの場合はどうですか。
(佐瀬氏)
現状はレンタルで3トンのユンボが1台あります。現在は研修期間なので、作業道と支障木を切るためにそれぞれ1台ずつチェーンソーを構えていただいてやっております。
(佐川町長)
補足しますと、地域おこし協力隊の制度を活用していますので、200万円までは年間人件費に充てられて、200万円はその活動経費として使います。それを使って、5人分の活動経費の中でバックホウのレンタルやチェーンソーを用意しておりますので、地域おこし協力隊員が設備投資で自己負担というのはない。
(窪田氏)
そのレンタルの話は今の県の事業でもレンタル事業2分の1補助というのがあります。それが林業機械に限定されています。
(知事)
ユンボは使えない。
(窪田氏)
ユンボはまだ入ってないですよね。バケットとしてはレンタル事業の中に入ってないでしょう。それを林業の作業道開設のための分について該当させれば、半分は補助で賄ってくれることになると思いますが、そのハードルがちょっと分からない。
(知事)
分かりました。その他、技術面とか筒井さんから他に何かございますか。
(筒井氏)
県の支援というのも要望しなくてはいけないんですけど、平成2年に県の「らくらく作業道」という事業名でメーター当たり500円の補助がありました。今から24年も前に僕ら林研が自伐になったのはそういう事業をうまく活用したおかげです。それで業者を雇う費用が出ましたので、2メーター以内の道でしたから、地形にもよりますが、私の山では100メーターほどの道を抜いた。
(知事)
何年頃にあった制度なのですか。
(筒井氏)
平成2年。当時は運搬車がまだ普及してなかったので、運搬車はどれだけの能力があるかというのを、県が2年ほど前から1週間ここに来て調査をしました。
(知事)
片岡さんや秋山さんは。
(片岡氏)
山主さんに仕事をもらうために上名野川で話をすると、先代の木を植えた方が草の手入れをし、枝打ちをし、育てていって、今の山林が生まれたと。その方々は山を大切にしようと思うが、大半の世代交代した人たちはいわば親父の遺産だ、宝物だと、山を持っている。だから木の1本も切りたくない。そういう人や県外に出ていった人が上名野川の50%、それで山に手がつけられない。僕たちが頑張らなきゃいけないけど、まず山林所有者の人の意識改革をしないと現状は多分変わらない。
(知事)
お子さんは、親から引き継いだものだから大事にしないといけないと。
(片岡氏)
山を大切にしなさいという遺言です。
(知事)
だから一切切るなと受け取っている。
(片岡氏)
その放棄された山は林業家の手が行き届かず山の手入れができないのではない。林業家は山の手入れをしたいが、やらせてもらえないのが現状。これを重点的にしないと、この先はないと思います。
(知事)
なるほど、所有者の意識改革。
(筒井氏)
それは公有地も一緒です。土佐町の町有林も協働の森でやっているところもあるが、私が子どもの時分から見た山はまだ手をつけてない。個人の山もそうですが、公有地もしっかりと。
(知事)
単に放置しているだけの場合もあるのでしょうが、そういう意識的に一切手を触れたくないというのがあるんですかね。大事にするというのは一切手をつけないということとは違うような感じがしますが。
(片岡氏)
手入れしなきゃいけないということが分かってない。要するに興味が全くないです。宝の山だからつつきたくない、触りたくない。100年後には宝の山になるんだと思っている。ところがあと50年も放置すれば多分枯れます。僕たちがいくら説明しても全然聞いてもらえないので、知事から山は手入れしなきゃいけないとテレビで言ってもらえば違うのではないか。
(知事)
なるほど。ちなみに農地中間管理機構ちょっと苦戦しておると申し上げましたが、農地の場合はなかなか手放したくない理由の1つに、息子、娘が帰ってくるかもしれないというのが結構ある。それから信用できないのもあったりするでしょうけど、まだ帰ってくるかもしれないというのが結構あったりする。森の場合、私の息子が施業するかもしれないから取っておかないといけないと、そんな感じはあまりないんでしょう。
(片岡氏)
それは僕たちの年代になってくるので、呼びかけはしています。戻ってきている人もいます。僕が呼び戻した人もいる。戻ってこない人の場合は、遺産として持っているんだから置いておかなきゃいけないとしか返事がない。全く興味を示さない。だから説明ができない。
(知事)
その人はどこにいますか、高知それとも東京とか。
(片岡氏)
県外。市内の人もいる。
(四宮氏)
農業も一緒ですね、空き家も一緒ですよね、家主の考えが。
(知事)
空き家も一緒です。空き家にして空き家にあらずというわけです。空き家なんですけど年に1回だけは使う。お墓参りに来られると、そういう方がいらっしゃいますよね。移住促進の時に空き家活用でそこが課題となっている。
(窪田氏)
林地の集約の関係で、今、山の農協と言われた森林組合ですが、自分のところで作業班を持たずに、地域の事業体をグループ化というか1つの協議会を設置して、春先に、今年1年これだけの山を施業する、どこがどこやりますかという話し合いをしている森林組合も宮崎あたりにはあります。
(知事)
そうですか。森林組合さんも今生産量をどんどん拡大していただいて、大いに森林組合の皆さんにも頑張っていただかなくてはならない。ただ、自伐型林業もほんとに並列型でともに大きな両輪として、これから高知県の森を担っていただけるようにしたいと思っているのですが、そういう形でいわゆる並列していく協力関係はあるということですね。
(窪田氏)
自伐型林業も、請負で規模拡大してやっていくのも、素材生産だけで素生協(素材生産流通協同組合)さんのように国有林を受けるのも林業の1つの形。すべてが高知の山を守り育てるという仕事をしていくんだから、全体の生産量が上がる格好をとっていくためには、どうしても地域の事業体やNPO的にやっている方などにも仕事が回っていくような構造をつくらないと。1ヘクタールを3年や2年で終わりあとは仕事がない、では地域のニーズは来ないし、活性にもならないので、それがずっと回っていく仕組みづくりが必要です。
(知事)
宮崎ですか、ちょっと勉強してみます。宮崎のどこか分かりますか。
(窪田氏)
南の方で、椎原とかあの辺の地域の森林組合で活性化をすごくやっているところがあります。ただ、森林組合自体が事業体として作業班を持っているところは、どうしても自分ところの職員を食わすのが優先になりますので、そこは別会社化して、同じ土俵で競争しながらやっていくという構図をとっている森林組合もあります。やり方としてはいろいろです。
(知事)
秋山さん、移住とのリンクもすごく大きなテーマですよね。林業の担い手を確保したい、都会からも呼んできたいと思っているのですが。移住地として、高知の売りは林業とリンクさせるのは非常にいいかと、強みがあるのかと思っている。自伐型林業をやられる方という形で山に移住者を呼んでくるとした時に、こんなところもあったらいいのになということはありますか。
(秋山氏)
移住対策は山が一番だと思います。移住した人には山1ヘクタールをプレゼントするなど、極端な話ですが。移住した人は林業には興味なくても薪ストーブを使いたい、薪でエネルギーをつくりたいなど、そんなことを夢見てこっちへ来ているわけですから、木を切って薪にしたい。その作業は絶対にやりたい。山と触れあえるような環境、県でそういうのがあればいいと思います。
(筒井氏)
片岡さんが言ったのに少し付け加えますが、土地は子孫から預かっているものだというインディオの言葉を常に考えています。だから、自分の財産という考えを持つとCさんが言ったように守ろうという気持ちになる。だけど、子孫から預かっているのであれば、より良くして返さないといけない。間伐もして立派な木に育てないといけない。それと業者さんに聞きますと、もう山ごと、土地ごと買ってくれというのがだんだん多くなって来つつあるそうです。町有林も県有林もまだ十分手入れが届いてない面があるのに、なおかつ町が公有地に買い上げろというのも少し矛盾があるかもしれないが、将来的に考えると、どうしても小規模な2ヘクタール以下、1ヘクタール以下という小口の山でも町が1回買い上げて、それをまとめたのを移住者の人に管理させるという方法も将来的には考えておくべきじゃないかと思う。山を非常に重荷に感じているお年寄りもいる。子どもさんがいい仕事に就いて県外などで家を建てると、「もうお父さん、山も土地も処分しておいて」という人も中にはいる。そういうところへ公有地として買い上げて、それをまた意欲がある人に管理をさせるという仕組みづくり。
(知事)
その売り上げの一部で廉価で賃料を取る仕組みにするという感じでしょうか。
(筒井氏)
それともう1つ、間伐すれば、10年したらもとの材積に戻るというのを私達は若い時に年老いた人に聞いています。繰り返し間伐しても、ヘクタール当たりで400~500という材積が育つのであれば、切ってもまた10年あるいは15年したらもとへ戻る。
(知事)
佐瀬さん、秋山さん、同じこと何回も聞いて恐縮ですけど、東京から高知の山奥に林業をしにやってこようなんて不安ではなかったですか。不安ではなかったのは土佐の森救援隊があったからか。
(秋山氏)
いきなり林業をやるといっても、0からではなく徐々に、チェーンソーのエンジンがかけられるんだ、木切れるんだ、ユンボを使えるんだ、と。
(知事)
最初になぜチェーンソーを握ろうと思ったのですか。
(秋山氏)
それは近所のおんちゃんが「やってみろ」と。それから面白くなり、土佐の森救援隊に行って切らせてもらう機会があった。
(知事)
佐瀬さんはもともと林業に志があったんですよね。
(佐瀬氏)
そうですね。
(知事)
四宮さん、若い人を林業の道に誘い込んでくるためにこんな工夫があるといいのではないか、ということが何かありますか。移住の売りにする時に、やっぱり教えてあげますか。
(四宮氏)
副業型林業を県の方から委託事業でいただいてもう6年目になっている。実は我々も非常にジレンマを抱えております。毎年30人前後の人が卒業して、林業をやりたいと四万十など地元に戻る。戻ったはいいが、林業をやるための経済的な支援は何かないかなど、いろんな相談を受けます。それから、先ほどからよく言われている山がないことや、研修をもっと充実させたい。実際に林業をする中で経営相談なんかもよく持ちかけられて、この5年間でも数多くの相談事を持ちかけられている。しかし、我々もそれほどプロフェッショナルではなくて、それぞれ広い見識を持っているわけではないので、そこに非常にジレンマを持っている。もしかしたら多くの林業をやりたい方々の芽をたきつけてはいるが、実はその後摘んでいっているのかなという思いがある。
そのようなバックアップ体制を、例えば林業事務所などが担ってもらえれば、もっともっと地域に戻った自伐型林業をやりたいという若者たちが施業できるところに持っていけるのではないかなと。
(知事)
火をたきつけていること自体素晴らしいことだと思います。ただ、確かに山がないことから全員が全員その志を達成できなかったりしているから、その山のことやそれを行き渡らせるための斡旋、中間管理機構のような仕組み、それから初期投資の問題に対する解決策など、一連のものとして大いに考えてみたいと思います。
もう1つ、先ほど言われた経営のこと。研修の充実やステップアップしていくに従って、より高度な話になった時に学んだり、経営のことを教えたりする場があった方がいいのではないか、そんなことでしょうか。
(四宮氏)
そうですね。我々も経営のプロじゃありませんので、県外のプロフェッショナルな自伐林家の経営をされている方々をお呼びして、相談を受けています。
(知事)
高知県庁の林業振興・環境部の職員の皆さんは大変先進的で、今度林業関係の学校をつくります。農業大学校というのが高知県はあるので、林業学校か林業大学校をつくりたいと思っていて、県が超高度なこともやれるようにしたいと。例えばCLTもオーストリアの工科大学などと協定を結んで、世界最先端の技術を学ぶ体制をつくってきている。そういうものを活かせるような学校にしたいという、超超超高度なこともやりたい。反面、初めて林業に入ってこようとする人を少しでも応援できる仕組みであればいいなと思っていますが、そういうのは有意義でしょうか。
(四宮氏)
そうですね。
(知事)
経営のことを教えることが大事かもしれませんね。農業もそうですね。農業経営を勉強することが大事。
今日は皆さんにおいでいただいております。あと時間が10分ほどありますが、Aさんありますでしょうか。
(A)
経営相談などをしながら、どうすれば(自伐型林業が)展開できるか。だから今佐川町と組んでいます。佐川町長に言って、行政がそういういろんなものを担えるのではないかと。そこをカバーすることによって、上名野川は集落営林型のような感じになっています。集落の山を集落で集めて集落のできる人がやる。それで11人雇用をつくっている。これはすごいことで、だからいろんな問題点が見えてくる。秋山さんのように移住して、また、佐川町で高校卒業していきなり林業をやり始めて、2年目でビシッと成り立っている人もいる。林業は若くして経験なくても、山さえきちっと確保できればできるという証明です。Iターン・Uターンもいけます。実際、上名野川は4人もI・Uターンが戻っています。
それから片岡さんがテレビで出たと言った、あれ読売テレビですかね、そこへ石破大臣が出ていまして、大規模でなくてもこうやって小規模でいけるのなら国が支援します、とはっきり言いました。
(知事)
テレビはいつのテレビですか。
(A)
10月7日です。
それと気仙沼では漁業やりながら自伐型林業を始めた、要するに漁業ともきちっとできると。自伐型林業はいろんなパターンの林業が展開できる。しかし、コーディネーターが少ない。これを行政、最終自治体が担っていくとか、あるいは土佐の森救援隊みたいなNPO法人がやっていく。こういう展開ができれば一気に10倍にできると思う。実際に上名野川、仁淀川町で以前展開した時には彼らのような人がどんどん戻ってくる。あれをもっと続けていたら、もっといけてたのにという感じがあるわけですね。自伐型林業というのは、中山間地で9割あるような山をかなり活かすことができる。
これを我々は国会議員にも訴えていまして、地方創生の中山間地域の再生のカギはここにあると。今、県がやり始めたのを国がもっと支援してくれて、これを自伐モデル県にと。先立ちは自伐推進市町村のモデルにと、そうやって一気にモデルをつくって横展開をと、どんどん訴えていきたいと思っています。我々は民間の立場で本気になってやりますので、本気になって県庁もやっていただきたい。多分、国も高知県を見ていると思います。面白い仕組みづくりを頑張りましょう。
(知事)
今、県内で木が大体年間300万立方メートル成長している。切って活かしているのが40万、これを72万にするという目標を掲げて、10年後には81万にしようとしているが、それでも220万は使ってない。もっと拡大できるはずなので、ぜひいろんな人が入っていただければ。
(A)
上名野川の集落営林だけで、多分3,000から4,000立方メートル出している。自伐型林業が集まってくると素材生産は担える。
(佐川町長)
佐川町は林業のイメージは多分なかったと思いますが、やはり中山間地として林業で地方創生と、もうそれ以外考えられないと思い始めました。11月からまた地域おこし協力隊が1人来ますが、5人の方に来ていただいている責任をものすごく感じています。しっかりと林業で食べていけるように、行政としてサポートしたいと思っています。
林地の集約に関しては、これは行政が全面に出て佐川町はやろうと思っています。27年度スタートの時に、林地集約の担当者を決めて行政として動きます。やはり行政の信用というのがすごく大事です。ここ一番は私も山主さんところへ行ってお願いします。お願いに回りたいなと思っています。
(知事)
林地の集約というのは、県より市町村の皆さんの方がいいでしょうか。
(佐川町長)
県と市町村どちらかという選択肢になると、市町村がいいと思います。
(知事)
県は市町村のバックアップをしていくような感じか。例えば金銭的だったり、より広域の調整などそういう形だったり。ちなみに、自分の周辺の土地だけというわけじゃないですよね。窪田さんが例えば四万十町でやることだってあり得るぐらいの仕組みにした方がいいんでしょうか。
(窪田氏)
それはいいと思う。ただ、事業体として収支が合うかどうか。1つの山でも林齢の問題、面積の問題、地形の問題といろいろありますので。
(知事)
市町村バージョンと県域バージョンのようなものが多層的にあった方がいい感じでしょうか、調整するのは。
(佐川町長)
そうですね。あと、企業さんが結構大きな面積を持っている山がある。先日、山を持っている企業の社員の方と会って話をしました。その山を佐川町で教育している自伐チームでぜひ管理させてくださいという話をしました。そういう企業さんが持っている土地に関しては、県の方で思いっ切り動いていただいて。
(知事)
県と市町村の役割分担のところも出てくると思うので、またお知恵を貸していただいて、お願いいたします。じゃあ大トリで、他に誰かおっしゃりたい方は。
(四宮氏)
3年ほど前までまちづくりファンドがあって、県がそれを出すと条件、縛りがあるので、四国銀行に一旦3,000万円を出えんして、四国銀行が運用しながら市民や県民の活動団体が自由に使えるお金を出した。それが10年間続いて3年前に終わった。同じように、例えば森づくりファンドのような形で3,000万なり5,000万なりを四銀さんや信金さんなどに出えんして、公益信託のような形にして、いろんなライフスタイルの自伐型林業の方々が出てきますので、そういう方々が20万でも30万でも、チェーンソー1つ2つでも買える、林内作業車のリースができるなど、そういう使い方ができるような仕組みというのも、今いろんな話を聞いてアイデアとして思い浮かびました。
(知事)
まちづくりファンドのようなものは、産振計画の補助制度などがなかった頃にやっていたもので、結局そういうのが出てきてあまり使われなくなったので止めている。使途自由という意味においては、それからゆるいという点においてはそうですね。
(四宮氏)
ゆるいので、信託という形がいいのでは。
(知事)
自伐型林業はいろんなタイプがあるからか。そこは考えておかないと。団長さん、お願いします。
(B)
モリモリ団長のBです。よろしくお願いします。林業を始めて3年目ですが、山で木を切ったら確実に安定収入になるというのは感じました。秋山が移住した時に、林業なら食べていかせられると思い、必死で山を探しました。行政などが間に入って探してもらうとすごい信頼感があっていいと思います。西土佐でも「やまもりーず」というボランティア団体が発足して、林業をやるという女子のチームがある。
最初は山をどうしたらいいかとみんな言いますが、本気になって探したらちゃんと見つけました。他にも同世代がたくさんいて、秋山がうまくいっているので、山をやろうかなというのをみんな見ています。さらに支援があればいいのではないかと思います。
あと、今日の林業の話は全部人工林の話でしたが、今大月町の備長炭生産組合のウバメガシの搬出を頼まれています。山師さんがいない、出してくれる人がいないと。産業振興計画にも載っていますが、炭の生産と出荷と販売はうまくいくと思います。100%メーカーが足らないからどんどん出してくれと言っているので。
(知事)
日本最高品質。
(B)
これを売っている人も佐川の人がいて、話も聞きに来てウバメガシを頼まれて、ウバメガシの山の状況を知ったんです。ここも自伐がキーワードで、焼く人が木を出すようにした方が絶対いいと思いました。
(知事)
なるほど、焼く人が切るようにした方がいいということですね。
(B)
人工林の場合は有り余るほどあるのですが、ウバメガシは今の確保では多分5年で止まります。保安林などありますが、生産がすごく行き過ぎていて、いつも事務局長に自伐で行こうよと勧めていますが、2〜3年かけてそっちの方向に自分は変えていきたいなと思っている。県の方からもそういう備長炭の方も山の確保を自伐でやるのがいいのではということを言ってほしいと思っています。
(知事)
室戸市と大月町でウバメガシを使って備長炭つくること、ほんとに若い人が増えてきていますね。
(B)
半分でいいです。資源が今5年でなくなるところが、とりあえず10年伸びる。ウバメガシが生えるのに20年かかる。
(知事)
団長さん、ありがとうございました。
(知事)
皆さん、ほんとに今日はありがとうございました。大変勉強になりました。今日お伺いさせていただきましたご意見を活かさしていただいて、小規模林業、自伐林業の振興策というのを練り上げていきたいと考えております。我々として一生懸命知恵を練っていきたいと思いますが、そういう中において、また皆さんからも継続的にいろいろご指導ご鞭撻いただければと思いますので、またどうぞよろしくお願いいたします。
何とか中山間の再生を、林業再生とともに、林業の復興ということかもしれませんがともに成し遂げてまいりたいと考えておりますので、皆さん今後ともどうぞよろしくお願いを申し上げます。今日は本当にありがとうございました。
閉会
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