公開日 2013年03月27日
更新日 2014年03月30日
第6回INAPシンポジウム:高知港
高知港における民間部門の活用について
高知県港湾空港局長
加藤 久晶
まず、「2004INAP会議」がセブ港のご努力により盛大に開催されますことを、ご参加の皆様とともに喜び、またこの場で発表の機会を与えていただきましたことに感謝申し上げます。
私からは、「高知港における民間部門の活用」について、高知港の取り組み事例を報告したいと思います。
まず、はじめに高知県について簡単にご紹介させていただきます。
高知県は西日本の太平洋側に面した豊かな森林と青い海のある県です。北には四国山地があり、南は太平洋に面して大きく弧を描いています。面積は約7100平方キロメートルあり、日本で18番目に広い面積を有しています。このうち、森林面積は約84%を占め、日本で一番の森林面積の占める割合が高い県です。
主要産業は農林水産業で、温暖多湿な気候を生かした園芸農業が盛んで、ナスやニラ、ミョウガなどでは日本1の生産量を誇っています。
また、713キロメーターの長い海岸線を有する高知県の沖には暖流が流れていることから漁業も盛んな県です。
2次産業については製造品出荷額は日本の中では規模が小さいものの、電池用セパレータ、高級紙製品、無振動工作機械、土砂崩落を事前に予測することができる土木関係機器、印刷インキ用の高品質炭酸カルシウム製品など特色のある製品づくりに力を入れています。
特色のある製品の最近の一例を紹介させていただきます。
1997年に開学した高知工科大との連携により、新たに圧縮空気だけで動く岩盤掘削機が高知県の企業により開発されました。従来よりも工事の際に場所をとらず、価格も3割程度安いうえに、油圧モニター利用の掘削機のような、油漏れによる環境汚染の心配がないため、井戸掘りなどには最適な掘削機となっています。高知県における産官学の連携の産物の一つです。
今回のINAP会議には経済ミッションを同行してきました。これまでのココナッツダストなどの貿易品目に加え人気の高いフィリピン家具など、新たな貿易品目の取扱が始まることを期待していますし、ただ今ご紹介した高知県の特色ある製品がINAPでの交流をきっかけとして各会員港の地域の発展に寄与することに大いに期待しています。
次に、高知県の文化についても少し紹介させていただきます。高知県はかつて「土佐」と呼ばれ、「自由は土佐の山間より」と日本で言われました。近代日本の礎を築いた偉人を輩出してきた地域であり、自由で明るい県民性を持っています。その明るさは現在も脈々と受け継がれています。
その一例として高知県で生まれた「よさこい祭り」という祭りを紹介します。この祭りは各参加グループが独自の音楽と踊りで町中を踊り歩くものです。高知で生まれたこの自由闊達な祭りが現在では日本各地に広がっています。8月上旬に毎年行われますので、機会があれば是非見て頂きたいと思います。
次に高知港の近況についてご紹介いたします。
高知港は県土の中央部に位置しています。高知県内には豊富で良質な石灰石が賦存しています。高知港臨海部にはセメント製造工場が立地しております。こうしたことから高知港では主要貨物としてセメント製造の燃料用の石炭が輸入されています。また、高知県の主要資源であり、全国需要の約70%を占める石灰石が積み出しの大きなウエイトを占めています。2003年は約900万トンの取扱量が高知港全体でありました。
また、高知港はモノだけではなく、東京・大阪とフェリーで結ばれた、高知県の重要な人員輸送の拠点の1つでもあります。近年は豊富な観光資源を生かした客船誘致にも取り組んだ結果、客船も寄港しています。
1998年から扱い始めたコンテナ貨物については、現在、韓国釜山港との定期航路を通じ世界中と取り扱いが可能となっています。まだまだ取り扱い量自体は少ないですが、2003年は対前年比で10.5%増加しました。
コンテナ貨物を取り扱っている高知新港は、まだ整備途中の港です。現在は一部供用している水深−8m岸壁と水深−12m岸壁を活用し、コンテナ貨物やバラ貨物を取り扱っています。また、東京と結ばれたフェリーを利用し、高知県の園芸品などを関東方面に輸送しています。
今後の整備計画では西側にフェリー埠頭を整備し、高知県発着のフェリーを全てこの地区に集約していきます。また、南側に水深−14m岸壁を整備することで、更に大型船の利用が可能になります。我々は高知新港が高知県経済を支える国際物流・経済拠点となることを目標として整備を進めています。
この目標を実現するためには、整備の際に、利用者の意見を最大限尊重することがまず大切です。整備の際にはこれまでにも関係者からのヒアリングを行ったうえで整備を行ってきましたし、今後も十分に行っていきたいと考えています。
次に、整備が完成した後には、利用者の顧客満足度を高めるための1つの手法として運営・管理に民間の活力を生かしたフレキシブルな運営・管理が必要であると考えています。今回のINAPシンポジウムのテーマである「港湾民営化または港湾事業における民間部門の役割」と関連しますが、現在の高知港における民間部門の活用と今後の在り方についてご紹介させていただきます。
まず、高知港における現在の民間部門に担ってもらっている部分は大きく2つ挙げられます。
1つ目は港に必要な倉庫等の整備運営に関する民間部門の力の活用があります。
高知新港においては、高知ファズ株式会社に県が土地を貸し付け、その土地の上に、高知ファズ株式会社が冷蔵倉庫や普通倉庫、上屋棟を整備し、倉庫業者や運輸会社に貸し付けています。他の地域では県が倉庫などの上屋なども整備し、貸付を行っています。
高知新港の事例は、県にとっては倉庫等整備の投資額の抑制ができるというメリットがありまし、民間部門にとっては、新たな事業チャンスの獲得につながる方法であると考えています。さらに利用者にとっては民間の創意工夫によるサービスを受けることができる方法であるとも考えています。
日本の他の港ではこういった手法を一歩進め、岸壁、埋立等の基礎構造物は従来どおり、公共が整備し、ガントリークレーン、ヤード内荷役機械等の荷さばき施設は、民間部門の力により整備し、運営するというPFI方式(Private Finance Initiative)を導入している港もあります。
2つ目は港湾管理者である県業務の外部委託による民間部門の活用です。
現在の委託している業務の内容は
・ 岸壁、荷役施設やガントリークレーンなどの機械の日常点検業務
・ 清掃業務
・ 埠頭への人の出入管理業務
・ 給水業務
・ 各施設の使用料、電気水道料金などの収納事務
などです。
港を利用する方々の利便性の向上を図るために、最も現場に近く専門的な知識を持った民間部門の力を借りることで、一体的でスピーディなサービスの提供が実現できますし、行政側にとってもコスト削減にもつながるものと考えています。
以上が、これまでの民間部門の活用の内容と目的です。
次に今後の民間部門の力の活用についてご紹介します。
日本では昨年、公の施設の運営・管理に関する法律の改正が行われ、次のような見直しがされました。
・ 県が所有する施設について、使用許可についても民間部門の力を活用できるようにする。
・ また、その際には、料金収入を民間の収入とし、料金についても民間側で一定条件のもとに弾力的に設定できることを可能とする。
日本における港湾の運営・管理の分野においても、今後、民間部門が大幅に参入してくることになると想定しています。
今回の見直は、民間部門の努力により、利用者が増加した場合には、民間部門の利益の増加につながることから、利用者のニーズに合ったサービスの質の向上が一層図られることが期待できます。
現在の高知新港は先程も紹介しましたように、整備途中であること、また、法改正の内容で一定の制約があることから、直ちにこの分野への民間部門の力を導入することにはなりませんが、今後の高知新港の完成に合わせて、安くて質の高いサービスの提供ができるよう民間部門の力を導入していくことを検討しています。
以上で、私からの本日の発表を終わります。本日ご紹介いたしました高知県の取り組みが、各INAP会員港の参考になれば幸いです。
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