公開日 2013年03月27日
更新日 2014年03月16日
2003年10月13日
第5回INAPシンポジウム:高知港(高知県)
INAP会員間の経済交流において港湾管理者が果たす役割
~高知港の取り組み~
発表者:高知県港湾空港局長 加藤 久晶
はじめに、「2003INAP会議」が、発展著しい中国において、同じくめざましい発展を遂げている青島港のご努力により盛大に開催されますことを、ご参加の皆様とともに喜び、またこの場で発表の機会を与えていただきましたことに感謝申し上げます。
私からは、「INAP会員間の経済交流において港湾管理者が果たす役割」について、高知港の取り組み事例をご報告し、各会員・地域でのINAPを生かした産業振興の参考にしていただきたいと思います。
まず、高知県並びに高知港について少しご紹介申し上げます。高知県は、西日本の太平洋側に面した県で、県土面積は約7000k平方メートル、人口は81万人です。主要産業は農林水産業で、特に園芸農業や遠洋・近海漁業、海面養殖業が盛んであり、2次産業については製造品出荷額が約6000億円と日本の中では規模が小さいながら、電池用セパレータ、高級紙製品、無振動工作機械、印刷インキ用の高品質炭酸カルシウム製品など特色のある製品を出荷しています。
また、高知県の貿易状況ですが、こちらが2002年の状況です。輸出につきましては、第1位はアメリカで、以下シンガポール、ドイツ、中国と続きます。品目は、半導体関連の金属製品や船舶が金額が大きいのですが、紙製品や石灰関連製品、農機具や工作機械などで高知県の特色ある製品が輸出されています。
輸入につきましては、第1位が中国で、以下ニュージーランド、アメリカ、ロシアと続
きます。品目は、最も多いのは中国からの石炭であり、続いてニュージーランドからの松材の原木そして紙パルプと続いています。
高知港は、県土の中央部に位置し、太平洋に面した港です。主要貨物は、石炭、原木などの輸入と高知県の主要資源である石灰石の移出などであり、年間約1100万トンを取り扱っています。また、東京や大阪と定期フェリー航路で結ばれています。
コンテナに関しては、1998年から扱い始め、韓国釜山港との定期コンテナ航路を通じて世界中と取引が可能でありますが、まだまだ取り扱いが少ない状況です。
しかしながら、高知新港は太平洋に面した外洋港であり、日本の他港と比較して寄港に要するコストが安く、各種の規制も少ないこと、また高知港から関西方面への陸海でのアクセスも優れているなどから、将来的には西日本の窓口的な港になることを目指しています。
青島港を始めINAP会員各港は世界的にも大きな成長を遂げられており、高知港よりもずっと規模が大きいのです。高知県は会員各港との間の多様な貿易活動を盛んにし、また技術と人々の交流を拡大していくことを大きな施策のひとつと位置づけています。その結果として、コンテナ貨物量の増大と高知港の成長を期待しています。
そこで、これまで高知港が行ってきたINAP会員との交流で、成果をあげた事例を報告いたします。
【スリランカ・コロンボ港】
スリランカ・コロンボ港とは、1998年4月の姉妹港提携を契機に港湾管理者や民間企業人による相互訪問が始まりました。私たちは、コロンボ港との姉妹港提携を機会ごとに県内企業にPRし、コロンボ訪問にあたってはスリランカに関心を持つ企業による経済訪問団を組織して訪問してまいりました。
またスリランカとの豊富な人脈をお持ちの在日スリランカ人の方に顧問をお願いし、高知県とスリランカとの交流について様々なアドバイスや国家の要人や企業の紹介などをいただいています。
こういった取り組みの過程で、民間企業の方々を中心に交流の機運も高まりを見せ、新たな貿易取引も起こって参りました。
ここでは、高知県とスリランカとの間で新たにはじまった2つの取引をご紹介します。
ひとつは、環境に優しい土木資材としての椰子殻製品です。
スリランカの経済人の方は、高知県企業との新たな取引を求めてお越しになりました。一方、高知県の土木技術者は、環境に優しい土木資材を探しておりました。そこで、私どもの職員が両者をご紹介することによって、スリランカの椰子殻繊維を利用して新製品を開発しようということになったのです。
製品は、この写真のように主に河川や道路の法面保護材として利用されるもので、効果を果たした後は、腐敗して自然に土に帰るという資源循環型の商品です。これらの商品については、高知県や県内企業が製品開発・工法等について特許を出願しています。現在、高知県内の各種公共工事などで利用を進めており、今後、全国の土木工事に採択されるようPR活動を行っています。製品の輸入や全国的な販売PRについては、高知ファズ(株)が積極的に行っており、この製品の販売が伸びれば、コロンボ港から高知港への輸入貨物が大幅に増大いたします。
もうひとつは、中古建設機械のスリランカへの輸出事業です。
先に触れました高知県の顧問の方の紹介で、スリランカの住宅・建設関係の大臣が来高し、橋本知事と会談されました際、「今後スリランカ国情の安定と発展につれて公共工事が大幅に伸びるが、建設機械が不足している。」というお話がありました。
そこで、顧問の方とともに高知県内の中堅建設業の企業と協議を重ねました結果、将来性があるとの判断から輸出が始まりました。取引の開始に当たりましては、高知県政府も積極的に関わり支援をして参りました。現在では、順調に輸出が伸びていますし、中古自動車や中古農機具の輸出にも広がりを見せており、相互にメリットが出てきています。
【中国・青島港】
青島港との交流は、最も頻繁に行われています。交流にあたっては、青島港はもちろん地元青島市政府の積極的なご支援もあり、高知県からは毎年高知県経済訪問団を組織して訪問していますし、青島市からも頻繁に企業や農業関係者が来高しています。
また、青島市との交流においても、中国の方々と豊富な人脈をお持ちの方に顧問をお願いし、様々なアドバイスやご支援をいただいています。
高知県は園芸農業の盛んな県であり、特に生姜生産は日本全体の1/2を占める日本一の産地です。外国産生姜を取り扱っている企業も多く、この青島市周辺から大量の生鮮生姜を輸入しています。また、日本有数の絹糸生産企業や健康茶メーカーが高知県にありますことから、繭やお茶も大量に輸入されています。一時期は、高知港と青島港を結ぶ定期コンテナ航路がありましたが、船社間の厳しい競争により休止状態となり、現在は釜山航路や他港を利用して輸入されています。貿易貨物を拡大することにより、何とか青島との直行航路を再開したいと考えています。
特に、今力を入れて取り組んでおります商品をご紹介します。
会場の皆様のお手元にも500mlのペットボトルをお配りしています。これは、海洋深層水といい、水深300m以深の海水をくみ上げたものから塩分などを取り除き飲料水としたものです。海洋深層水は、深海を何百年も流れているもので清浄性が高く、人体に不可欠な微量元素を含むミネラル分が豊富であり、人体の免疫機能を高めるなどの研究成果がでています。この飲料水は、日本で初めて高知県企業が製品化したもので、健康志向の高まりとともに日本では爆発的に売れていますし、韓国や台湾でも徐々に人気が出ています。是非この中国でも販売したいと考えており、本日PRのためにお配りしました。このほかにも青島市政府のご協力を得て、各種国際イベントでPRしていただいています。
交流が非常に盛んなのはこの2地域ですが、他のINAP会員地域とも様々な交流を模索しており、特徴的なものをご報告いたします。
【フィリピン・スービック湾港、セブ港】
現在、検討が進んでいますのは、スービックにあります熱帯雨林へのエコツアーです。エコツアーに対する関心は日本でも高まっており、すでにマングローブの植林などで実績のあるフィリピンのNPO団体と高知県企業が協力し、高知県からチャーター便の飛行機をとばすことを検討しています。
また、中古自動車の輸出など貨物に直結する事業も検討しています。
【インドネシア・タンジュンペラ港】
スラバヤ市からはシュガーケイントップやバガスなど品質のよい園芸農業用の飼肥料が多く輸入されていますし、家具や雑貨品など年々取引は広がっています。
また高知市とスラバヤ市は姉妹都市を締結しており、毎年相互に訪問団を派遣しています。本年も高知県特有で日本で最も有名な踊りの祭典「よさこい祭り」の踊り子隊を派遣いたしました。
以上、簡単ですが、高知港がINAP会員地域との間で経済交流を促進するために行っている取り組みをご紹介しました。
INAP会員間で交流を進めていくためには、港湾運営や海運情勢に関する情報交換ももちろん重要ですが、その他にも特に経済交流について国際物流の主役を担う港湾が核になって、その地域の経済発展を牽引していくことが重要だと考えます。
高知港の港湾管理者は私たち高知県政府であり、行政庁であることから、産業振興の部署やスタッフも同じ組織内に有しています。したがって、単に港湾の管理運営のみでなく、各種産業部門や商工団体、県内企業との連携をスムースにとることができます。高知県に関する様々なお問い合わせなどは、私たち高知県政府や高知ファズ(株)で対応することが可能です。
INAPの会員はそれぞれ国情や地域の特徴によって体制が異なりますが、是非、港湾管理者が経済発展の牽引車となり、INAPのネットワークのもとで関係機関の連携を図り、会員各地域の経済発展に寄与していくことを願っています。
本日の報告が、このシンポジウムのメインテーマである「PEACE DEVELOPMENT AND WIN-WIN POLICY」(平和、発展、相互利益方策)に向けて、INAP会員間の経済交流の促進にお役に立てば幸いです。
ご静聴ありがとうございました。
私からは、「INAP会員間の経済交流において港湾管理者が果たす役割」について、高知港の取り組み事例をご報告し、各会員・地域でのINAPを生かした産業振興の参考にしていただきたいと思います。
まず、高知県並びに高知港について少しご紹介申し上げます。高知県は、西日本の太平洋側に面した県で、県土面積は約7000k平方メートル、人口は81万人です。主要産業は農林水産業で、特に園芸農業や遠洋・近海漁業、海面養殖業が盛んであり、2次産業については製造品出荷額が約6000億円と日本の中では規模が小さいながら、電池用セパレータ、高級紙製品、無振動工作機械、印刷インキ用の高品質炭酸カルシウム製品など特色のある製品を出荷しています。
また、高知県の貿易状況ですが、こちらが2002年の状況です。輸出につきましては、第1位はアメリカで、以下シンガポール、ドイツ、中国と続きます。品目は、半導体関連の金属製品や船舶が金額が大きいのですが、紙製品や石灰関連製品、農機具や工作機械などで高知県の特色ある製品が輸出されています。
輸入につきましては、第1位が中国で、以下ニュージーランド、アメリカ、ロシアと続
きます。品目は、最も多いのは中国からの石炭であり、続いてニュージーランドからの松材の原木そして紙パルプと続いています。
高知港は、県土の中央部に位置し、太平洋に面した港です。主要貨物は、石炭、原木などの輸入と高知県の主要資源である石灰石の移出などであり、年間約1100万トンを取り扱っています。また、東京や大阪と定期フェリー航路で結ばれています。
コンテナに関しては、1998年から扱い始め、韓国釜山港との定期コンテナ航路を通じて世界中と取引が可能でありますが、まだまだ取り扱いが少ない状況です。
しかしながら、高知新港は太平洋に面した外洋港であり、日本の他港と比較して寄港に要するコストが安く、各種の規制も少ないこと、また高知港から関西方面への陸海でのアクセスも優れているなどから、将来的には西日本の窓口的な港になることを目指しています。
青島港を始めINAP会員各港は世界的にも大きな成長を遂げられており、高知港よりもずっと規模が大きいのです。高知県は会員各港との間の多様な貿易活動を盛んにし、また技術と人々の交流を拡大していくことを大きな施策のひとつと位置づけています。その結果として、コンテナ貨物量の増大と高知港の成長を期待しています。
そこで、これまで高知港が行ってきたINAP会員との交流で、成果をあげた事例を報告いたします。
【スリランカ・コロンボ港】
スリランカ・コロンボ港とは、1998年4月の姉妹港提携を契機に港湾管理者や民間企業人による相互訪問が始まりました。私たちは、コロンボ港との姉妹港提携を機会ごとに県内企業にPRし、コロンボ訪問にあたってはスリランカに関心を持つ企業による経済訪問団を組織して訪問してまいりました。
またスリランカとの豊富な人脈をお持ちの在日スリランカ人の方に顧問をお願いし、高知県とスリランカとの交流について様々なアドバイスや国家の要人や企業の紹介などをいただいています。
こういった取り組みの過程で、民間企業の方々を中心に交流の機運も高まりを見せ、新たな貿易取引も起こって参りました。
ここでは、高知県とスリランカとの間で新たにはじまった2つの取引をご紹介します。
ひとつは、環境に優しい土木資材としての椰子殻製品です。
スリランカの経済人の方は、高知県企業との新たな取引を求めてお越しになりました。一方、高知県の土木技術者は、環境に優しい土木資材を探しておりました。そこで、私どもの職員が両者をご紹介することによって、スリランカの椰子殻繊維を利用して新製品を開発しようということになったのです。
製品は、この写真のように主に河川や道路の法面保護材として利用されるもので、効果を果たした後は、腐敗して自然に土に帰るという資源循環型の商品です。これらの商品については、高知県や県内企業が製品開発・工法等について特許を出願しています。現在、高知県内の各種公共工事などで利用を進めており、今後、全国の土木工事に採択されるようPR活動を行っています。製品の輸入や全国的な販売PRについては、高知ファズ(株)が積極的に行っており、この製品の販売が伸びれば、コロンボ港から高知港への輸入貨物が大幅に増大いたします。
もうひとつは、中古建設機械のスリランカへの輸出事業です。
先に触れました高知県の顧問の方の紹介で、スリランカの住宅・建設関係の大臣が来高し、橋本知事と会談されました際、「今後スリランカ国情の安定と発展につれて公共工事が大幅に伸びるが、建設機械が不足している。」というお話がありました。
そこで、顧問の方とともに高知県内の中堅建設業の企業と協議を重ねました結果、将来性があるとの判断から輸出が始まりました。取引の開始に当たりましては、高知県政府も積極的に関わり支援をして参りました。現在では、順調に輸出が伸びていますし、中古自動車や中古農機具の輸出にも広がりを見せており、相互にメリットが出てきています。
【中国・青島港】
青島港との交流は、最も頻繁に行われています。交流にあたっては、青島港はもちろん地元青島市政府の積極的なご支援もあり、高知県からは毎年高知県経済訪問団を組織して訪問していますし、青島市からも頻繁に企業や農業関係者が来高しています。
また、青島市との交流においても、中国の方々と豊富な人脈をお持ちの方に顧問をお願いし、様々なアドバイスやご支援をいただいています。
高知県は園芸農業の盛んな県であり、特に生姜生産は日本全体の1/2を占める日本一の産地です。外国産生姜を取り扱っている企業も多く、この青島市周辺から大量の生鮮生姜を輸入しています。また、日本有数の絹糸生産企業や健康茶メーカーが高知県にありますことから、繭やお茶も大量に輸入されています。一時期は、高知港と青島港を結ぶ定期コンテナ航路がありましたが、船社間の厳しい競争により休止状態となり、現在は釜山航路や他港を利用して輸入されています。貿易貨物を拡大することにより、何とか青島との直行航路を再開したいと考えています。
特に、今力を入れて取り組んでおります商品をご紹介します。
会場の皆様のお手元にも500mlのペットボトルをお配りしています。これは、海洋深層水といい、水深300m以深の海水をくみ上げたものから塩分などを取り除き飲料水としたものです。海洋深層水は、深海を何百年も流れているもので清浄性が高く、人体に不可欠な微量元素を含むミネラル分が豊富であり、人体の免疫機能を高めるなどの研究成果がでています。この飲料水は、日本で初めて高知県企業が製品化したもので、健康志向の高まりとともに日本では爆発的に売れていますし、韓国や台湾でも徐々に人気が出ています。是非この中国でも販売したいと考えており、本日PRのためにお配りしました。このほかにも青島市政府のご協力を得て、各種国際イベントでPRしていただいています。
交流が非常に盛んなのはこの2地域ですが、他のINAP会員地域とも様々な交流を模索しており、特徴的なものをご報告いたします。
【フィリピン・スービック湾港、セブ港】
現在、検討が進んでいますのは、スービックにあります熱帯雨林へのエコツアーです。エコツアーに対する関心は日本でも高まっており、すでにマングローブの植林などで実績のあるフィリピンのNPO団体と高知県企業が協力し、高知県からチャーター便の飛行機をとばすことを検討しています。
また、中古自動車の輸出など貨物に直結する事業も検討しています。
【インドネシア・タンジュンペラ港】
スラバヤ市からはシュガーケイントップやバガスなど品質のよい園芸農業用の飼肥料が多く輸入されていますし、家具や雑貨品など年々取引は広がっています。
また高知市とスラバヤ市は姉妹都市を締結しており、毎年相互に訪問団を派遣しています。本年も高知県特有で日本で最も有名な踊りの祭典「よさこい祭り」の踊り子隊を派遣いたしました。
以上、簡単ですが、高知港がINAP会員地域との間で経済交流を促進するために行っている取り組みをご紹介しました。
INAP会員間で交流を進めていくためには、港湾運営や海運情勢に関する情報交換ももちろん重要ですが、その他にも特に経済交流について国際物流の主役を担う港湾が核になって、その地域の経済発展を牽引していくことが重要だと考えます。
高知港の港湾管理者は私たち高知県政府であり、行政庁であることから、産業振興の部署やスタッフも同じ組織内に有しています。したがって、単に港湾の管理運営のみでなく、各種産業部門や商工団体、県内企業との連携をスムースにとることができます。高知県に関する様々なお問い合わせなどは、私たち高知県政府や高知ファズ(株)で対応することが可能です。
INAPの会員はそれぞれ国情や地域の特徴によって体制が異なりますが、是非、港湾管理者が経済発展の牽引車となり、INAPのネットワークのもとで関係機関の連携を図り、会員各地域の経済発展に寄与していくことを願っています。
本日の報告が、このシンポジウムのメインテーマである「PEACE DEVELOPMENT AND WIN-WIN POLICY」(平和、発展、相互利益方策)に向けて、INAP会員間の経済交流の促進にお役に立てば幸いです。
ご静聴ありがとうございました。
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