第5回INAP報告書(青島港)

公開日 2013年03月27日

更新日 2014年03月30日

2003年10月13日

第5回INAPシンポジウム:青島港(青島港務局)

港湾開発の波にのった国際船舶の中核づくりに向けて

皆さん
この素晴らしい10月のよき日に、当地にご参集くださったINAP会員港諸兄を心から歓迎申し上げるとともに、INAP2003を開催させていただきますことをこの上ない喜びに存じます。私どもは、皆様と再会させていただくこの日を、一日千秋のごとく楽しみに思っておりました。10月は、華北部では収穫の月であります。私たちもまた、長い間の交流と協力関係で培われてきました友情という収穫を行おうとしているのであります。この喜ばしい日に、青島港のスタッフ一同を代表しまして、諸兄に対し歓迎の意を表するとともに、こころからのご挨拶を申し上げます。「平和、発展、相互利益方策」と銘うった本日のシンポジウムは、さまざまな交流と情報交換の場所であります。本日は、私ども青島港がどのような発展の姿をめざしているのかについて、世界の海上運送の情勢をつぶさに観察した私見を述べさせていただきます。

■第一部 国際港湾開発の流れ
世界の港湾開発は大きく3つの世代に分けることができます。第一世代の港とは、貨物の流通や積み下ろしについて、簡単な機能を持っていた港であります。第二世代になりますと、港湾には付加価値がつき、工業や商業活動を統合するようになり、荷役業務や関連のサービスが行われる中心地となりました。1980年代以降、世界経済のグローバル化とコンテナ輸送革命により、国際幹線航路に位置する港湾のなかから、国際貿易流通センターのみならず包括的なサービスを提供する港が出現しました。これらは第三世代の港湾であり、情報交換、総合ロジスティックサービスなどの付加価値サービスを提供する能力があります。
歴史を振り返れば、ひとつの港湾がいつも同じ国際的な機能を持っていたわけではありません。時代を異にして、異なる種類の国際海上輸送の中心地が存在していました。国際海上輸送センターは常に変化し、国内外の経済や港湾の機能の変化とともに変遷していったのであります。初期の国際海上輸送センター、たとえば、ロンドン港は大規模な貿易およびシッピングサービスに主眼を置いていました。いわゆる貿易型ということができます。この種類の海上輸送センターは徐々にその周辺の後背地の業務を中心とするようになっていきました。たとえば、ロッテルダム港やニューヨーク港もその仲間です。これらの後背地中心の海上輸送センターは、後背地へ輸送する貨物の取扱をその中心業務としてきました。世界経済の統合とアジア経済の進展にともない、これら第三世代の港湾は、香港やシンガポールのように、コンテナの国際積み替え基地として脚光を浴びています。このように新しい世代の港湾が形成されると、労働の分化が進み、世界のビジネス港の配置に新しい変化が訪れました。それに伴い、これらの港湾センターは、大規模なコンテナ積み替え港を基盤とするようになり、周囲のフィーダー港の荷物を捌くようになりました。

中国本土の国際港湾センターは現在、発展段階にあります。2002年には、上海港で取り扱われたコンテナは861万TEUであり、世界第4位となりました。一方、深圳港での取扱量は761万TEUで世界第6位でした。また、青島港は341万TEUで世界第14位でした。これらの港は、それぞれ、中国中央部、南部、北部における中心的な港湾であります。青島港は北東アジアで最大のコンテナハブ港の1つであり、釜山港に次いで大きな規模を持っています。世界貿易機関(WTO)への加入が認められてからは、中国は世界で最大かつ最も潜在性のある市場のみならず世界最大の工場への道を歩んでいます。わが国の2002年のGDPは1億2,000万米ドルを超え、世界第6位となっています。8月末までの輸出入価格は5222億7,200万ドルで36%の伸びを示しています。わが国経済の急速な発展は、間違いなく中国本土の国際港湾センターの形成および展開に大きな影響を与えることでしょう。

第二部 港湾センターとしての必要条件
世界の海上運送の傾向を見ますと、港湾センターは次の6つの条件を満たすことが必要であることがわかります。
第一に、質の高い建物およびインフラを備えること。第4世代のコンテナ船以上の船舶を収容することができる水深14m以上のバースおよびアクセス経路を含む。
第二に、戦略的な立地条件に恵まれていること。港湾は国際幹線航路に位置し、質の高い流通施設を有することが必要。
第三に、特にコンテナ貨物について、十分な量の貨物の流入を生み出す、発展した後背地を有すること。
第四に、十分な量の貨物取扱量(スループット)を有すること。コンテナ数量としては500万TEU以上でなければならない。
第五に、ある程度の規模の比較的頻繁な定期船の寄港があること。
第六に、健全な経営と効率的なサービス、特に迅速かつ効率的な顧客サービスを提供すること

第三部 青島の国際港湾センター建設における位置的優位性
コンテナ取扱量は、港湾の国際港湾センターとしての要素を満たすかどうかを測る一般的な標準です。過去数十年、私たちは国際港湾センターの建設を加速化し、世界の港湾のトレンドにしたがい、8つの優位性を確保しようと活動してきました。
1戦略的位置:青島港は渤海経済ベルト地帯という、中国本土にある3大経済ベルト地帯の1つに位置し、その後背地は非常に発展しています。青島港はアジア―ヨーロッパ、アジア―アメリカ、アジア―オーストラリアの幹線航路という、海上輸送の要に位置しています。黄河流域における最大のゲートウエイであり、環太平洋の西側における最重要港の1つであります。
2第一級の港湾施設:青島は世界でも希少な自然港です。先進の港湾技術を用いた施設では、コンテナ、石炭、原油、銑鉄、穀物の5種類の貨物を取り扱っています。洗練された建物やインフラストラクチャーにより、青湾港エリアは世界で最も進んだコンテナターミナルになりました。また、水深14.5mから17.5mの深い8基のバースが作られました。これらのバースは225万m2のコンテナヤードを持ち、24基のクレーンで貨物の積み下ろしを行うことができます。このクレーンは世界最大級であり、70tまでの貨物を持ち上げる能力があり、ビームの長さは70mで、10,000TEUのSX級船舶を収容することができます。青湾開発プロジェクトの第三期では、最長の長さの埠頭(2,400m)、最深のバース(17.5m)、最新の積み下ろし用クレーン(70トン、70m)、最大のバックアップエリア(幅1,500m)が含まれています。
3頻繁な定期船の寄港:2002年に実施された「西方移動」運動は、荷主、船舶所有者、船会社の理解と支持を得ることができました。231日の日程で、4段階にわけてすべての船舶機構を旧港エリアから新港エリアに移設しました。移設対象範囲は、50を超える国際幹線航路の定期船、40を越えるオペレーター、数十のコンテナデポ、さまざまな荷主や乙仲業者が含まれています。移動中も、港湾を退去する船会社はなく、サービスも中止されずに行われていました。その逆に、新規に30件のサービスが立ち上がり、今では、世界の上位20位までの船会社すべてが青湾新港で業務を行っています。これまで、新港には、80の国際コンテナ航路がしかれており、船舶の寄港数も月間350回を超えています。有名な船会社のZIM、COSCO、APLなどが青島を国際積み替え拠点としています。新港における1日の取扱量は10,000TEUを十分に超えており、先月を見ますと、15,000TEUの貨物を取り扱った日が4日ありました。9月30日には、16,630TEUの貨物が取り扱われるという記録的な数字を残しました。
4世界一級の貨物取扱業務:国際的な慣例では、400TEU級の船舶は、バースに着岸してから積み下ろしを完了するまでの時間は、24時間から36時間となっています。今年は私どもでは、新しいサービスの提供を始めました。「10時間サービス」です。これは、積載貨物の数量に関わらず、バースに着岸してから積み下ろしを10時間で完了させるというサービスです。2003年4月27日には、記録的なスピードでコンテナ業務が行われました。1つの船舶あたり1時間に339個のコンテナを捌き、1つのクレーンで1時間に70.3個のコンテナの積み下ろし、1つの船舶あたりのコンテナ取り扱い数量が2,117個というものです。9月30日、MSCアレシアという6,750TEUのコンテナ船で、2,733個のコンテナを7時間10分で積み下ろしを完了させました。これは、1時間あたり381個のコンテナを捌いたことになります。世界記録を破る数字であります。
5国際港湾センターとしてのスケールメリット:青島港における総スループット量は15%のペースで増加しており、過去2年間を見ますと、毎年200万トンずつ伸びています。昨年の取扱量は1億2,200万トンに達しました。コンテナは、対前年比30%のペースで増加しており、現在の取扱数量は341万TEUに達しております。青島港における貿易取扱量は中国本土で第二位であり、銑鉄と原油については中国最大の取扱港であります。本年9月20日までの数字では、本港において取り扱われた貨物は1億トン、コンテナについては300万TEUとなっており、それぞれ14%、26%増でした。本年末までの見込みでは、1億4,000万トンの貨物、420万TEUのコンテナが取り扱われるものと思われます。
6整備された交通網:青島港には鉄道、高速道路、水道、パイプラインなどの輸送施設が備わっております。世界130カ国の450以上の港とも貿易関係を持っております。鉄道による協同一貫輸送が青島と数十の内陸都市を結び、内国通関も実現させました。毎月、68の鉄道協同一貫輸送が行われております。青島港ターミナルと華北部の高速道路網を結ぶ高速道路は3本あります。
7先進のIT技術:現代的な情報網は国際港湾センターには不可欠であります。青島港情報センターは、本土の港湾施設のなかでは最大かつ最も進歩した施設であります。EDIセンターは主要船会社すべて、国内外の港湾、税関、乙仲業者、船主を結んでおり、毎日、膨大な数の電子メールがこれらの構成員の間で送受信されております。コンテナ業務管理システムおよびビデオ監視システムで、進入、スタッキング、保管、積み込みのプロセス全体を監視しています。貨物の状態をリアルタイムで捕捉できるのです。ITネットワークは国際港湾センターの建設にとって強固な基盤なのであります。
8頼もしい協力会社:青島港は、20以上の船会社や船主様との協力関係を構築しております。7月21日には、世界最大の海上運送会社であるマースク、世界第二位のP&O、世界第7位で中国最大の船会社のCOSCOと、青湾コンテナターミナルの運営に関する合弁契約書に署名しました。署名式は北京の人民大会堂で、わが国の温家宝首相、英国のトニー・ブレア首相の臨席のもとに行われました。この協力関係は、資金面、技術面、港湾管理サポートの提供だけではなく、国際港湾センターの建設にも寄与するものです。

第四部 将来の開発の青写真
今後は、私たちは、「3つのセンター」の開発、「8つのプロジェクト」の開始、自由貿易港の建設、国際港湾センターの構築を行ってまいります。
まず、「3つのセンター」を開発することにより、港湾サービス機能を抜本的に改善します。先進の情報ネットワーク、整備されたロジスティックシステム、外国資本の流入は、国際港湾センターにとって重要な特徴であります。青島港は、既存の優位性を余すところなく利用し、世界第一級のITセンター、ロジスティックセンター、ファイナンスセンターを開発してゆきます。これらは第三世代の港湾にはなくてはならないものであります。
世界第一級のITセンターの建設により、デジタル港湾を構築することを目的とします。国際港湾センターと呼ばれる港湾にはすべて先進の情報技術が備わっています。将来の開発においては、ネットワーク化とデータベース化を加速し、世界級の情報交換のプラットフォームを設置して、さらに多くの荷主、乙仲業者、船会社、世界の港湾を接続します。情報技術による港湾開発の促進とデジタル港湾の建設であります。
現代のロジスティックの動向を見据えた世界級のロジスティックセンターの建設でありますが、青島港は中国政府から、現代ロジスティクス開発の主要窓口企業に指名されました。最高の立地条件、競争力、交通ネットワークを十分に生かし、さらに便利で整備された流通のネットワーク、情報サービス、顧客サービス、総合サービスを提供するとともに、北東アジアにおける最も効率的なロジスティックセンターを建設してまいります。
次は、世界第一級のファイナンスセンターの開発と港湾国家の建設でありますが、中国が世界貿易機関(WTO)への加入を実現して以降、港湾は外国の投資資本の中心地となりました。私たちは、大手船会社や荷主すべてと協力関係を構築し、さらに港湾国家の解放および建設を拡大してゆきます。
第二には、「8つのプロジェクト」の構築と10の港湾関連産業の展開による競争力の強化であります。
将来を直視し、私たちは、8つの新規プロジェクトを開始することにより、5種類の主要貨物取り扱いを強化していきます。たとえば、10,000TEUの船舶用にコンテナターミナルを延長すること、300,000トン級の原油施設などがあります。この8つのプロジェクトにより、現在の1億トンに加えさらに1億トンの取扱能力が追加されることになります。同時に、港湾機械製造、産業観光、乙仲、船舶総代理業など、10の港湾関連産業の促進を行い、港湾の開発を促進します。
第三には、自由貿易港の構築と国際港湾センターの建設環境の改善であります。
これまでの国際港開発の歴史を見ますと、国際港湾センターを建設するには、良好なアクセスチャンネルや水深だけではなく、優遇政策や法整備など周辺条件が必要であることがわかります。その周辺条件のなかでも、自由貿易政策は、国際港湾センターにあまねく採用されている政策であります。現在、中国はすでに世界貿易機関(WTO)の構成員であり、中国アセアン自由貿易ゾーンが構築されているところであります。青島保税区は黄河流域では唯一の保税区であり、国際的な自由貿易地域にしたがい、設置された特別貿易区であります。この保税区の有利さを利用し、自由貿易港への変革、国際的な積み替え港としての機能拡大、国際港湾センター建設の加速化を図ります。来年は1億5,000万トン、500万TEUのスループット、2005年には1億6,000万トン、700万トンの取扱を見積もっています。2010年までには、総スループットとして2億トン、コンテナ取扱1,000万TEUを目指します。

皆さん、本シンポジウムのテーマは「平和、発展、相互利益方策」であります。青島港はさらにINAP会員諸兄と協力関係を深め、互恵の関係を構築していきたいと考えています。

INAPの発展をお祈りするとともに、各地を代表してお越しになりましたINAP会員諸兄には青島で快適な滞在をされますよう祈念いたします。

ご静聴まことにありがとうございました。

この記事に関するお問い合わせ

高知県 土木部 港湾振興課

所在地: 〒780-8570 高知県高知市丸ノ内1丁目2番20号
電話: 総務担当 088-823-9882
ポートセールス第一担当(貨物・高知新港振興プラン) 088-823-9888
ポートセールス第二担当(客船対応・企業誘致) 088-823-9890
ファックス: 088-823-9657
メール: 175201@ken.pref.kochi.lg.jp
Topへ