高知県公文書開示審査会答申第103号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第103号

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諮問第103号


第1 審査会の結論

 警察本部長は、本件審査請求の対象となった部分開示決定において非開示とした部分のうち、別表1の「審査会の判断」の欄に「開示」と記載された部分は、開示すべきである。

第2 審査請求の趣旨

 本件審査請求は、審査請求人が平成14年4月1日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った別紙(開示請求書に別紙1として添付された文書を実施機関が補正したもの)に記載の各文書の開示請求に対し、警察本部長(以下「実施機関」という。)が行った次の公文書(以下「本件公文書」という。)の部分開示決定を不服として、審査請求人が実施機関の上級庁である公安委員会に対して行ったものであり、当該決定を取り消し、非開示部分の開示を求めるというものである。
1 公安委員会及び警察本部の交際費に関して
・  平成13年度の支出負担行為決議書兼支出命令書、前渡資金請求書、支出伺い、常時資金出納簿、支払明細書
2 県警本部・高知警察署・高知南警察署に関して
・  平成13年度の国費に係る、支出負担行為即支出決定決議書(特例払を含む)、債主内訳書、支給調書、鑑定報告書、実施報告書、委任状、請求書
・  平成13年度の県費に係る、支出負担行為決議書兼支出命令書、支出命令書、控除内訳書、内訳書、支出調書、支払調書、支出伺い、契約書、弁護士報酬取扱方針、見積書、署長感謝状上申書、感謝状案文、表彰伺い、申立書、駐在所等報償費支出調書、報償費支出内訳書、駐在所における援助日数報告書、(前渡資金)請求書、ほう賞金決定通知書、名簿、支出負担行為決議書、見積調書、明細書
  【注】上記文書には、各種添付文書が存する。 

第3 実施機関の部分開示決定理由等

 実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している部分開示決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
1 本件文書について
 本件文書は、平成13年度の歳出証拠書類のうち、公安委員会・警察本部の交際費に関する公文書、警察本部・高知警察署・高知南警察署の食糧費に関する公文書、警察本部の国費の諸謝金に関する公文書、警察本部・高知警察署・高知南警察署の報償費に関する公文書のうち、支出伺から支出命令書までの公文書であり、添付書類を含むものである。
 なお、開示請求書に添付された別紙の記載により、公安委員会及び警察本部の交際費に関しては個別執行に係るものを含み、その余は支出伺から支出命令に至るもののみとなっており、捜査費等については前渡資金の個別執行や精算に係るものは含まれていない。
2  高知県情報公開条例の一部を改正する条例(平成17年高知県条例第14号。以下「改正条例」という。)により改正する前の高知県情報公開条例(以下「旧条例」という。)第6条第1項第2号該当性について
(1)  交際費に関する文書について、条例の解釈運用基準に従って開示・非開示を適正に判断しており、本号の個人情報に該当する部分について非開示の決定を行っている。
(2)  香典等の支出伺や支払明細書等に記載された支払先の氏名は公益上の理由により開示したが、住所は個人に関する情報であり、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しないため非開示と判断した。
 添付書類である新聞の死亡広告には、家族・親族の氏名、死亡日時、斎場、信仰宗教等に関する情報が記載されており、これらは個人に関する情報に該当し、開示することにより個人のプライバシーを侵害するおそれがある。
 なお、死亡広告は、葬儀日時等を関係者等に知らせるために一時的に掲載されるものであり、継続的に公にされる性格の情報とは認められない。
(3)  懇談会出席者の氏名、役職等の非開示部分は、個人に関する情報であり、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しないため非開示と判断した。
(4)  規約等を有して活動をし、又は県の行う事務事業に関して協議や要望等を行っている団体の三役以外の出席者氏名は、個人に関する情報であり、かつ、本号ただし書のいず れにも該当しないため非開示と判断した。
(5)  高知県警察職員健康管理審査会は、県に置かれる公的な審議会とは異なり、慣行として公にする性格のものではなく、警察内部に置かれるものである。委嘱された委員の氏名等は、個人に関する情報であり、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しないため非開示と判断した。
(6)  非開示とした印影は、本号ウの実施機関が定める公務員(高知県公安委員会が管理する公文書の開示等に関する規則(平成14年高知県公安委員会規則第3号。以下「公安 委員会規則」という。)第2条に規定する公務員)の印影であり、開示することにより、特定の個人を識別することができると認められ、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しない ため非開示と判断した。
 また、公安委員会規則第2条に規定する公務員に該当しない個人の情報は開示しており、懇親会の内容により区別するものではない。
 なお、県警察食糧費訴訟判決(平成15年4月15日)は、県警察が情報公開条例の実施機関に入る前の開示請求、すなわち、「公安委員会規則」も未制定の段階において高知県知事が被告となった訴訟である。これについて、県は附帯控訴し、平成15年12月26日高松高裁において、警部補以下の警察官の氏名を非開示とすることが相当であるとの判決がなされ、原告側が上告受理申し立てを取下げたことから同判決は確定している。
(7)  懇談会の出席者氏名は、個々のケースについて検討を行い、本号の個人に関する情報で、開示することにより特定の個人を識別することができると認められ、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しない部分を非開示と判断した。
(8)  よさこいネットワーク・セキュリティ・コミュニティセミナーの非開示とした出席者名等は、個人に関する情報であり、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しないため非開示と判断した。
(9)
 暴力排除運動推進連合会出欠簿の非開示部分のうち氏名は、本号ウの実施機関が定める公務員の氏名(公安委員会規則第2条に規定する公務員の氏名)が記載されており、特定の個人を識別することができるため非開示と判断した。
(10)  契約伺いにある警察職員の氏名の非開示部分は、本号ウの実施機関が定める公務員の氏名(公安委員会規則第2条に規定する公務員の氏名)が記載されており、特定の個人を識別することができるため非開示と判断した。
(11)  支給調書にある部外講師の住所及び氏名は、個人に関する情報であり、特定の個人を識別することができると認められ、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しないため非開示と判断した。
(12)  非開示とした被表彰者の氏名は、個人に関する情報であり、特定の個人を識別することができると認められ、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しないため非開示と判断した。
  警察の部内表彰は、表彰の内容が特定の事件を含む警察業務の特殊性による功労であることや、職員の功労を称えるとともに、士気高揚を図ることを目的として警察内部に限定して被表彰者を明らかにしていること、また、表彰の結果は人事評価に繋がるという性格を有していることなど特殊な表彰制度であり、個人の評価に関する情報である。そして、表彰数を集計すれば、受賞数の多い職員、少ない職員、受賞歴の少ない職員等が分かり、こうした情報は、通常他人に知られたくないと望むことがあり得る積極評価又は消極評価に関する情報であることから、公にすることが予定されていない情報である。
 なお、被表彰者の氏名が「職務の遂行に係る情報」に該当するかどうかについては、表彰、懲戒ともに職務の遂行に付随して、又は職務の結果などとして発生する性格のものであるが、当該職務の内容は別として、それに伴い発生した個人に対する表彰、懲戒処分などは、いずれも「職務の遂行に係る情報」には該当しないため、被表彰者の氏名は個人に関する情報として保護されなければならない。
(13)  「全日本教職員組合2001年度教育研究全国集会」警備の県外機動隊等に支出した報償費の記念品料の箇所で非開示とした印影は、本号ウの実施機関が定める公務員(公安委員会規則第2条に規定する公務員)が誤記訂正のために押印した印影であり、金額を非開示としたものではない。
(14)  解剖医師の氏名等は、個人に関する情報であり、開示することにより、特定の個人を識別することができると認められ、かつ、ただし書のいずれにも該当しないため非開示と判断した。
3 旧条例第6条第1項第3号該当性について
(1)  支払先の金融機関名、口座番号等は、法人に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であり、開示することにより、当該相手方の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害すると認められることから、本号に該当すると判断し非開示とした。
(2)  弁護士の報酬額には、実施機関の弁護士に対する評価が反映されており、これを開示すれば当該弁護士の競争上の地位その他正当な利益を害するものと認められ、かつ、ただし書のいずれにも該当しないため非開示と判断した。
4 旧条例第6条第1項第4号該当性について
(1)  「全日本教職員組合2001年度教育研究全国集会」の警備部隊の補食に係る支出負担行為決議書兼支出命令書等にある支払予定日等は、警備実施のため態勢を構築した時期が推測される情報であり、開示すれば、テロ等不法行為を敢行しようとする勢力において過去の実例等を研究・分析して不法行為を計画するなど、将来におけるテロ等の犯罪行為に資する情報を提供することとなり、今後の警備実施等業務に支障を及ぼすおそれがあり、本号に該当すると判断した。
 警備実施は、過去の事象とそれへの対処により培われてきた経験によるところが多く、基本的には過去の同様の警備実施を参考にしながら警備計画が策定されている。
 したがって、既に実施済みの過去の資料であっても、公にすれば、今後実施される同様の警備について、部隊等が態勢を取り始めた時期、警備を強化する時期等がおおむね判明することとなるので、非開示と判断した。
(2)  [NTTグループ・警察連絡協議会の開催について(ご案内)」の会議次第、出席者等の非開示部分には、電話捜査に関する具体的な情報が記載されており、これを開示すれば犯罪を企図する者等に捜査手法が明らかとなり、更に、これら電話捜査に関する具体的捜査手法等を熟知する出席者に対する働きかけ等により捜査手法を研究されること等によって、今後の犯罪の予防と捜査活動に著しい支障を生ずるおそれがある情報であり、本号に該当すると判断した。
(3)  留置人に弁当を納入している業者は、留置人用に弁当を納入していることを積極的に明らかにして営業しているものではなく、そのことを知る者は留置関係者など一部の者に限られている。このため、当該業者名が明らかになれば当該業者が、警察に敵対する人物、団体等から警察に協力的な人物として嫌がらせを受けるなどのおそれがあり、警察と業者との信頼関係が崩れ、その後、受注を拒否される事態に至ることも十分に予想される。
 さらに、業者名が特定されることにより、事件関係者が当該業者に潜入して警察業務の混乱を図るため、弁当に異物等を混入したり、通謀等を目的として物品等を密かに留置場内に持ち込もうとする事案が発生するおそれがあることから、本号に該当すると判断した。
(4)  解剖医は、死因等を究明する死体解剖を行うことにより、死者及び関係者の個人に関する秘密にわたる部分をはじめ、犯罪事実又は内容に関する情報などの事案の核心部分までを知りうる立場にあるが、その特殊性から同一の医師に依頼しているのが現状であることから、開示すれば、事案の発覚、捜査の進展等をおそれる利害関係者等から脅迫、嫌がらせ等を受けるなど人の生命、身体、財産等への不法な侵害を受けるおそれがあり、その後の犯罪捜査、公判維持に支障を生ずるおそれがある。更には、これらのことにより警察との信頼関係が崩れるなどして、その後の捜査への協力を拒否される事態に至ることも予想されることから、本号に該当すると判断した。
(5)  強制採尿は、覚せい剤使用等の薬物犯罪を立証する上で欠くことのできない捜査手法であって、時間的制約のもと医師による医学的に相当と認められる方法でなされる捜査手続きであり、その特殊性から常に特定の医師に依頼していることから、病院名を開示すれば、犯罪を企図する者や事案の発覚、捜査の進展をおそれる者等から脅迫、嫌がらせ等を受けるおそれがあるなど、人の生命、身体、財産等への不法な侵害を受けたり、特定の建造物等への不法な侵入、破壊を招くおそれがある。
 さらに、これらのことから警察との信頼関係が崩れるなどして、その後の捜査活動への協力を拒否される事態に至ることも予想され、将来における同種事案捜査への影響も認められることから、本号に該当すると判断した。
(6)  捜査費は、犯罪捜査等に従事する職員の活動のための諸経費及び捜査等に関する情報提供者、協力者等に対する諸経費として使用されているものであり、犯罪捜査の進展状況を勘案して毎月の所属の支出額を決定している。
 したがって、月別・所属別の支出額及び支出命令額は、現実の捜査活動等の実態を反映したものとなっており、支出額の変動状況と発生した犯罪の内容や犯罪が伏在している可能性のある事案に関する報道内容等を比較・分析することにより、捜査等の推進状況や予定を推察することが可能となり、被疑者等の関係者に逃亡、罪証隠滅等の対抗措置を講じられるおそれがあることから、本号に該当すると判断した。
(7)  報償費の支出負担行為決議書兼支出命令書にある予算残額を開示することにより、非開示とした捜査費の月別・所属別の支出金額が計算上容易に明らかになることから、該当する文書について非開示とした。
(8)  高知県警察協力医会懇談会出席者は、変死事案等における死体検案について協力を得ている医師であって、検案医として事件容疑現場等への臨場、死体検案を行うなどして死者及び関係者の個人の秘密にわたる部分をはじめ、犯罪事実又は内容に関する情報などの事案の核心部分までを知りうる立場にあるが、その特殊性から同会出席者を中心と する特定の医師に協力を得ているのが現状であり、開示すれば事案の発覚、捜査の進展等をおそれる利害関係者等から脅迫、嫌がらせ等を受けるおそれがある。更には、これら のことにより警察との信頼関係が崩れるなどして、その後の捜査への協力を拒否される事態に至ることも予想されることから、本号に該当すると判断した。
(9)  遊技機不正改造に係る鑑定報告書等の非開示部分には、不正改造形態が明らかになり、又はこれを推認することが可能な情報が記載されており、これが開示された場合、組織的かつ計画的に敢行されることの多い遊技機不正改造事犯の特殊性に鑑み、不正改造に関与した者らによる証拠隠滅等のおそれがあるほか、これを企図する者及びゴト師による違法行為を誘発するおそれがあることから、本号に該当すると判断した。
(10)  変死者の発見状況、鑑定の必要性、事案の概要の非開示部分は、犯罪事実や捜査の内容に関する情報が具体的に記載されており、明らかにすることにより、今後の捜査活動に支障を生ずるおそれがあることから、本号に該当すると判断した。
(11)  表彰伺いの非開示とした所属名を開示すると、各所属ごとの情報収集能力又は情報収集動向等を始めとする警備警察活動の動向が明らかとなり、テロ行為等の警備犯罪を敢行しようとする勢力において、防衛措置を強化するなど各種活動を潜在化、巧妙化させることなどにより、今後の警察活動に支障を及ぼすおそれがあることから、本号に該当すると判断した。
(12)  表彰伺いの非開示とした功労の概要等は、犯罪事実及び捜査内容に関する情報が記載されており、明らかにすることにより、今後の捜査活動に支障を生ずるおそれがあることから、本号に該当すると判断した。
(13)  功労事件一覧表の確認指紋の利用状況・余罪等参考意見の非開示部分には、犯罪捜査の手法、技術等に関する情報が記載されており、明らかにすることにより、今後の捜査活動に支障を及ぼすおそれがあることから、本号に該当すると判断した。
(14)  非開示とした応援派遣部隊名は警備実施の具体的手法名に係る部隊名であるため、これを開示すれば、テロ等の犯罪行為に資する情報を提供することとなり、今後の警備実施業務に支障を及ぼすおそれがあることから、本号に該当すると判断した。
(15)  非開示とした古物商等は、犯罪捜査協力活動が優秀であることからほう賞金を受けているものであり、これを公にすると当該古物商等の協力に基づく犯罪捜査に支障が及ぶおそれがあることから、本号に該当すると判断した。
(16)  署長表彰者名簿に記載された功労の概要の非開示部分には、情報の入手先が推測される情報が含まれており、これを開示すれば、その後の警察活動に支障を及ぼすおそれがあることから、本号に該当すると判断した。
5 旧条例第6条第1項第6号ア該当性について
 弁護士の報酬額には、実施機関の弁護士に対する評価が反映されており、これを開示すると、他の弁護士の報酬額と自分の報酬額を比較することなどにより、自己の弁護活動が正当に評価されていないなどとして実施機関に不信感を持つ場合もあり得る。その結果、実施機関の行う争訟事務の公正円滑な執行に著しい支障を生ずるため非開示と判断した。
6 その他
 開示請求の対象となった公文書については、平成14年4月1日付けの公文書開示請求書の別紙「警察関連情報開示請求文書(資料)件名」及び平成14年4月12日付け決定期間 延長通知書の別紙「公文書の件名」に件名が詳細に記載されている。さらに平成14年4月24日には、前記決定期間延長通知書に記載した公文書を特定したことについて審査請求人に確認し、請求人も了解している。
 なお、開示(非開示を含む。)した文書以外には、開示対象となる公文書はなく、非開示部分は条例の解釈運用基準に従って開示・非開示を適正に判断している。

第4 審査請求人の主張

 審査請求人が審査請求書、意見書及び意見陳述で主張している審査請求の主な内容は、次のように要約できる。
1 本件公文書の開示の意義について
 本件部分開示処分は、処分庁が条例の目的を正しく認識できていないか、曲解により旧条例第6条第1項第2号、第3号及び第4号を誤って適用した恣意的判断であり、「県民の県政に対する理解と信頼を深め、もって県民参加による公正で開かれた県政を一層推進する」との目的に違反しており、県民の知る権利の重大な侵害である。
 警察機構は国と県の二重構造(国家公務員が管理し、地方公務員がその指示のもとに働き、絶対的服従を強いられる)の中で、極端な秘密主義に偏り、主権者(議会や監査委員も含め)のコントロールの枠外にあることに何の反省もない。このような密室体制そのものが、情報公開でも特異な見解を県民に押しつけるのが今回の非開示処分である。
 従前、高知県では紆余曲折はありながらも条例の活用により税金の使途や公務員の不正行為について県民が発言し、行財政の歪みを糺して、大きな成果を挙げ県庁が名実ともに改革されてきたのに比して、条例の適用で公開が当然とされてきた文書についても、非開示処分を行うなど県民が獲得してきた権利を無視している。
 また、旧条例第10条にある「非開示適用の根拠を具体的に示したものでなければならない」との規定を無視して抽象的な見解が繰り返されているだけである。
 さらに、旧条例第10条に規定された、今は開示できなくても時期が来れば開示できる可能性について何の言及もないままである。
 課別や文書別に同じ記録が開示されたり、非開示されたりして一貫がない。
2 旧条例第6条第1項第2号該当性について
(1)  高知県では、知事以下部局長等の交際費は、現在、香典や献花も含め自由に閲覧でき、ホームページでも公開している。なぜ県警だけが、県民が費用を負担しなければ公開で きないのか説明されていない。警察本部だけが例外を主張するのは不合理極まりない。
(2)  支出伺い、支出明細書等での香典等の支出先の氏名は開示しても、住所や死亡広告等が非開示であるが、公に広告された情報がなぜ個人のプライバシーの侵害に当たるのか、県民の常識では理解できない。
(3)  懇親会出席者の氏名・役職を非開示としたことは高知県での開示の前例に反する。公務で協議懇談に関してプライバシー侵害の適用は許されない。懇親会の出席者も、知事部局等他の県機関の開示度と同じでない場合は、なぜ県警だけ特別扱いをするのか説明すべきである。
(4)  警友会会長名は開示して、それに付随して出席した者を非開示としているが、身分による非開示に何の根拠があるのか説明すべきである。
(5)  健康管理審査委員名も非開示であるが、審議会・審査会名簿は県庁では開示である。なぜ違った処分であるか理解できない。
(6)  決裁書類に押された印影は、公務執行の事務的記録にすぎず、身分の差により印影の開示に差をつける根拠はない。支出命令等では係まで印影は開示しているのに、懇親会の検認印でも開示と非開示の2種類がある。懇親会という性格であるのに秘密を要することが不可解である。個人情報の保護以外の目的があるのではないか。
 公安委員会規則を理由とした警部補以下の氏名、印影その他の情報の非開示にこだわるのは条例の運用として誤っている。条例の該当部分では、「不当に個人の権利利益を侵害するおそれがある」ことが前提とされているが、この部分は県警食糧費訴訟判決(平成15年4月15日)で非開示処分は取り消されており、実施機関は控訴していない。
 広島高裁判決(平成15年3月14日)でも、鳥取地裁の「警部補以下でも開示すべき」との判決を支持している(鳥取県は上告せず)。
 仮に、公安委員会規則であっても個々の文書の個別的判断をせずに、一律に職階で全てを非開示にすることは、条例より下位の規則を連発すれば条例に空洞化を生じさせることとなる。そのような規則そのものが条例の精神に反しており、公文書開示審査会でも規則の見直しなど是正措置を提言すべきである。
 実際に照らしても、警察署では職務中は名札、識別証を付けており、その他スポーツ大会の入賞者等は報道等もされている。また、2?3年前までは、人事異動に際して氏名、勤務場所は定期的に報道されていた。このため個人の権利・利益が侵された事例が多数あれば具体的に示す必要があるが示されていない。実施機関の理由には全く合理性がない。
(7)  各種懇談会の出席者名の非開示も、非開示範囲が妥当かどうか審査請求人が理解できる事情が説明されなければならない。
(8)  暴力排除運動推進連合会出席者名簿では、県警係長クラス以下の者の氏名は非開示であるが、一方で、地区の町民会議会長等は民間人でも氏名は開示している。なぜ警察職員の氏名を隠す必要があるか根拠が不明である。
(9)  契約伺いにある警察職員の氏名も、身分上の理由だけで非開示としており、条例上の根拠はない。
(10)  支給調書にある部外講師に関しても公務員に属する者は開示すべきである。本号ただし書が適用されるべきである。
(11)  功労者(表彰者)は開示されても個々人の権利の侵害とはなり得ない。(表彰月報の審査請求理由と同様。)
(12)  県外から「全日本教職員組合2001年度教育研究全国集会」の警備に来た他県の機動隊等に支出した報償費の記念品料が非開示である。事由が明確なら公費額を隠す根拠 はない。
3 旧条例第6条第1項第3号該当性について
 金融機関コード、口座番号などを法人情報として非開示に固執しているが、これらの情報は、一般に不特定多数に配付される請求書等に記録されたものであり、本号の法人の権利を侵害するものとして取り扱うべきでない。
 最近の最高裁でも、これらの情報の非開示処分取消判決が全員一致でなされ、法的には決着済のものである(奈良県での同様事例)。鳥取県警の同様事例でも、広島高裁で非開示の理由はないと判断され、鳥取県警は上告を断念している。同判決を参照しての判断を求める。
4 旧条例第6条第1項第4号該当性について
(1)  支出負担行為決議書等の支払予定日、支払済年月日等が非開示とされ、その理由として本号(犯罪予防等)が適用されているが、この文書に記載された事項は、既に実施済 みの過去の資料であり、単に公費の支出日等の記録である。これがテロ等の犯罪行為に資するとは何事か。支払日等が今後の警備実施に何の支障を生ずるか具体的に説明すべきである。予算執行の日時等が分かれば警察業務に支障が生ずるなど被害妄想的発想で、条例の判断のレベル以下の詭弁にすぎない
(2)  NTTグループとの懇談会も、会議次第のすべてが捜査手法を明かすものかどうかを一方的に判断している。
(3)  よさこいネットワーク・セキュリティ・コミュニティセミナーの参加団体等の個人氏名は非開示としても、参加団体は何ら4号対象となる根拠は理解できない。
(4)  弁当納入業者は、留置関係者やその家族・友人等地域住民の多数に公知の事実であり、隠す必要はない。
 弁当業者を犯罪に利用するおそれ等は警察本来の業務として防止すべきものであり情報公開とは別の次元のものである。
 警察に対抗する犯罪集団が弁当業者を知らないとは考えられず、彼らは条例を利用しなくてもその程度の情報は得ていると考えるのが常識である。
 弁当業者についての資料も、平成7年度食糧費支出文書の開示請求に対して、出納室は業者名や日時を開示している。警察署でも被疑者の関係者に尋ねられたら弁当の差し入れ業者を隠していない。
(5)  検視その他の捜査に関して、医療機関等の公的な名称、公務員は開示すべきである。
 解剖医等警察業務関係者に関する資料でも、仙台地裁判決(平成15年1月16日)では、「死体解剖医の所属及び氏名」「警察犬審査会の氏名及び印影」は開示が妥当と判決されている。実施機関の非開示理由は客観的根拠に欠ける。
(6)  予算残高が非開示であるが、非開示の根拠は条例上あり得ない。公費支出の実際を隠そうとする非常識なものであり、県庁では開示である。また、文書によっては予算残額が消されていないものもあるなど不可解である。
 また、決裁日等は開示されているが、支払予定日が非開示のものがある。支出根拠そのものに整合性がないので隠そうとしているのではないか。
(7)  警察本部は、毎月捜査費として報償費を各課に資金前渡しているが、7課の課名と責任者(警視)は分かるが、課ごとの配分額が非開示である。これは、予算執行の個別文書でなく、単なる配分金の総額を示しているものである。
 支出命令額、予算残額がすべて非開示である。本部だけで4千万円を超える公費の課ごとの予算配分額を隠すことは、税金の使途を明らかにできない理由があるはずだが(県庁等ではすべて開示)、条例のどの号にも当てはまらない不当極まりないものであり、実施機関の過度の秘密主義が露呈している。
 高知署及び高知南署に対する報償費の配分(資金前渡)額は金額、残額とも非開示である。これでは警察の報償費の実態を知られたくない事情があるものと言わざるを得ない。他県の例では、架空の報償費の文書で裏金作りが行われたとの指摘がある(赤坂署事件等)。この開示状況では高知でも不正支出の存在を疑わざるを得ない。
 高知県警において、捜査費支出文書等が虚偽作成された事実に関する内部告発や報道は県民に大きな衝撃を与え、警察行政への疑惑を深めている。個々の対象被疑者や協力者の氏名等はともかく、予算支出の経過資料に非開示とする根拠はない。また、予算配分(各課や各署への資金前渡)資料の開示が犯罪者を利する等の理由も荒唐無稽の類 のもので全く非開示理由とはならない
5 旧条例第6条第2項該当性について
 条例適用に当たって、旧条例第6条第2項の「開示しないことにより保護される利益に明らかに優越する公益上の理由があるときは開示する」とした公益との比較衡量が全くされていない。
6 その他
 報償費に関する個別文書は開示されたが、全体の予算執行が不明では、開示された資料の支出金額の総計と前渡された予算が合致しているかどうかが不明である。隠された支出があると言わざるを得ず、条例運用の根幹を揺るがす重大な誤りであり、これを故意に行うことは許されない。
 また、前渡資金の精算報告書も開示していない。報償費は、他にも個別に前渡し、又はされたもの(表彰等の場合)もあり、全体として闇運用されていると推定されるので、運用実態を明らかにするためにも全面開示されるべきである。

第5 審査会の判断

平成17年4月1日に改正条例が施行されたが、本件は旧条例に基づきなされた処分に対する審査請求であるため、当審査会は旧条例に基づき、本件審査請求を審議することとする。
1 本件公文書について
(1) 本件公文書は、実施機関が部分開示決定を行った公文書中、非開示部分のない「警察本部の国費の捜査費に関する公文書」26枚を除いた平成13年度の歳出証拠書類のうち、「公安委員会・警察本部の交際費に関する公文書」、「警察本部・高知警察署・高知南警察署の食糧費に関する公文書」、「警察本部の国費の諸謝金に関する公文書」、「警察本部・高知警察署・高知南警察署の報償費に関する公文書」2369枚である。
また、本件公文書は、警察本部、高知警察署及び高知南警察署において月別又は科目別に編綴された歳出証拠書類のうち、請求人の開示請求する文書を特定し、抜き出したものであり、財務会計システムにより出力された支出負担行為決議書、支出負担行為決議書兼支出命令書等に、支出の根拠を示すための会議の開催案内文書などが添付され、高知県会計規則等の規定に従って作成されている。
(2) 本件公文書にはページ番号が付されていないが、当審査会において便宜的にページ番号を付し、別表1の中で「ページ」として示した。ただし、1001ページについては、ページ番号を付す際に欠落したため欠番となっている。
(3) 実施機関は、平成18年4月14日付けで警察本部、高知警察署及び高知南警察署の捜査費に係る非開示部分(捜査費の月額部分)について、従前の決定を取消し、改めて開示決定を行い、同月21日に審査請求人に対して開示した。
   これに伴い、実施機関の上級庁である公安委員会から当審査会に対し、平成18年4月21日付けで諮問内容の変更がされたことから、当審査会では捜査費の月額に係る部分(実施機関の主張4(6)(7))の判断は行わない。
2 旧条例第6条第1項第2号該当性について
本号は、旧条例第3条後段の個人に関する情報が十分に保護されるように最大限の配慮をしなければならないとの規定を受け、原則公開の情報公開制度の下にあっても、特定の個人を識別することができると認められる情報は、非開示とすることを定めている。
これは、個人のプライバシーを最大限保護するため、プライバシーであるか否か不明確な個人に関する情報も含めて、特定の個人を識別することができる情報は、本号ただし書ア、イ及びウに該当する情報を除き非開示とするものである。
(1) 交際費の支出に係る支出伺及び支出明細書等に記載された香典等の支出先の住所並びに死亡広告等について(別表1の番号欄の1、2、3、5、6)
当該交際費の支出証拠書類に添付された新聞の死亡広告に掲載された住所と、当該交際費の支払先として記載された住所とは必ずしも同一の情報とは限らず、また、新聞の死亡広告ではないものが添付されていることもあることから、交際費の支払先の住所は、公にされた情報であるか否かは定かでないため、本号ただし書に該当しないと認められる。
新聞の死亡広告は、喪主等が一般に知らせるために自ら掲載を希望したものであり、公にされるとプライバシーを侵害するおそれがあるとは考えられないことから、本号ただし書イに該当する情報であると認められる。
新聞の死亡広告に代わるものとして、支出証拠書類に添付された「職員の死亡について」は、実施機関内における部内職員への通知用に所属長が作成した文書であり、外部に対するものではない。よって、死亡広告とは異なり、自ら公表したものではなく、本号ただし書には該当しない。
(2) 懇親会、研修会等の出席者・講師の氏名、役職等、健康管理審査会委員について(別表1の番号欄4、5、16、22、23、24、26、27、28、29、30、33、34、50、51、52、53、54、55、57)
懇親会等の出席者名簿等に記載された、団体等の三役に相当する者の氏名及び役職名等は、個人に関する情報ではあるが、対外的に役員名を名乗って活動している者であることから、本号ただし書イに該当する情報であると認められる。しかし、三役相当に該当しない者の場合、氏名、住所、生年月日等については、本号に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められるが、役職名については個人情報には該当しないため開示とすべきである。
よさこいネットワーク・セキュリティ・コミュニティセミナーの出席者名簿に記載された氏名、団体名、住所等については、同セミナーの開催がインターネット等の媒体を使って広く広報された一般公募によるものであり、参加者も不特定多数の者が私人の立場で出席しているものと認められることから、氏名、個人が所属する団体名等は本号に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。
なお、この点について、審査請求人は、4号対象となる根拠は理解できないと主張しているが、実施機関は2号該当性を主張しているに過ぎない。
健康管理審査会委員一覧には、同委員の役職、氏名、委嘱年、生年月日、年齢、出身校が記載されている。同審査会は、高知県警察職員健康管理規程により、警察職員の健康管理の適正な運営を図るために置かれ、同委員は警察本部長が委嘱するものである。たとえ警察内部に置かれる組織であっても、業務の内容からすれば役職、委員名、委嘱年は公にすることが予定されていると考えられるので、ただし書きイに該当し開示すべき情報である。しかし、委員の生年月日、年齢及び出身校は、個人に関する情報であり、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。
慣行として公にされ、又は公にすることが予定されており、公表しても社会通念上、個人の権利利益を侵害するおそれがないと認められる講師等の氏名については、本号ただし書イに該当する。
(3) 契約伺等にある警察職員の氏名、決裁書類の印影等(警部補以下の警察職員)について(別表1の番号欄7、13、17、21、22、23、24、25、26、27、28、32、36、38、42、45、52、53、56、90、101、108、114、118、119、129、144、148、160、163、172、186、192、200、204)
本号ただし書ウの規定は非開示とする公務員の範囲の決定を実施機関に委ねることを相当とする趣旨であると解される。
したがって、本件公文書で非開示とした警察職員の氏名、決裁書類の印影等について、別表1の非開示理由欄に「警部補以下の警察職員」と記した情報は、実施機関に適用される公安委員会規則により、本号ただし書ウの実施機関が定める公務員の氏名等に該当し、非開示が妥当であると認められる。
なお、844ページの表彰伺の非開示部分のうち、記念品料の金額欄が遮蔽されているのは、いずれも誤記金額上へ押された訂正印の印影を非開示としたものであり、金額を非開示としたものではないことを確認した。
(4) 報償費、諸謝金を支出した部外講師等の氏名等について(別表1の番号欄59、62、64、65、78、79、89、91、94、97、98、99、100、104、105、109、111、
112、113、115、116、117、120、121、122、123、124、133、138、142、146、149、152、155、156、158、159、161、164、167、168、169、176、179、180、182、184、185、187、189、191、195、196、197、203、205)
実施機関は、退職記念品料を支払った非常勤職員、「ほっとルーム」に係る人形創作活動における講師、倫理教養の一環としての座禅教養の講師、事件被害者のためのカウンセリングアドバイザー、警備員指導教育責任者講習の講師、賞じゅつ金を支払った殉職警察官、遺族給付年金の受給者、歯牙鑑定を依頼した歯科医師、通訳者等の住所、氏名等を非開示としているが、講師等に支払った報償費の金額を本件部分開示決定により開示しており、氏名も開示すると、これら個人の講師料等の金額が明らかになってしまうため、個人に係る振込先の金融機関名、口座番号等も個人に関する情報であり、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。
警備員指導教育責任者講習の講師の所属会社名は、特定の個人が識別されることはないので本号に該当しない。
「高知の交通マナーをよくする運動」の高知県大会基調講演の講師に係る報償費の金額等は、講師名を開示していることから、報償費等の金額を開示すると、個人の講師料の金額が明らかになるため、本号に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。
1130から1139ページに記載された、「ほっとルーム」に係る人形創作活動における講師及び第2回思春期問題講演会講師については、2名分の報償費を併せて1件の会計書類で処理している。人形創作活動における講師の氏名は本号に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。また、実施機関は、思春期問題講演会の講師名を開示し、2名分の報償費の総額を開示している。このことから、氏名を非開示とした人形創作活動における講師の報償費の金額等は、開示すると、既に開示された2名分の報償費の総額から差し引きすることにより、思春期問題講演会講師の報償費の金額が計算上判明し、同人の講師料の金額が明らかになるため、本号に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。
1138ページの「ほっとルーム」第2回思春期問題講演会講師に係る支出伺中に記載された予算残額についても、開示すると思春期問題講演会講師の報償費の金額が計算上明らかになることから、本号に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。
(5) 功労者の氏名等について(別表1の番号欄129、136、145、150、151、152、174、202)
実施機関の部内表彰は、警備警察部門を除いて部内機関誌に特定の表彰以上を掲載する運用がなされているものの、一般に公表しているという事実は認められないから、本号ただし書イにいう公表を目的として作成し、又は取得した情報に該当しない。
また、表彰の原因となった行為が職務に関係するか否かにかかわらず、表彰を受けたこと自体は、個人の評価に関する情報であって、被表彰者個人の固有の情報というべきものであると認められ、職務の遂行に係る情報であるとは言えない。したがって、被表彰者の職が警部以上であるか否かにかかわらず、氏名は本号ただし書ウに該当しない。
「功労の概要」に記載された特殊な事件名については、一般的に、社会的反響の大きい特別な事件を除き、事件の被害者を知り得る者は事件関係者や事件発生現場近隣者など限られた者であり、その他の者は、仮に事件が特定されても被害者を特定することは困難である。しかしながら、狭い範囲の者にでも被害者が識別される可能性があるのであれば、被害者に関する非開示部分のうち、通常他人に知られたくない犯罪被害事件名については、個人のプライバシーを侵害するおそれがあると認められる情報であるから、個人に関する情報に最大限配慮し、本号本文に該当する情報として非開示とすることが妥当と認められる。
(6) 解剖医師個人に係る債主コード、金融機関名、口座番号、氏名等について(別表1の番号欄60、62、67、72、)
実施機関は、旧条例第6条第1項第4号と併せて本号を主張している。解剖医師に支払った謝金の額が、本件部分開示決定により既に開示されており、氏名を開示すれば特定の個人の所得に関する情報が判明することから、解剖医師の氏名等は、本号に該当する情報であると認められる。
なお、当該解剖医は当時、国家公務員であったが、司法解剖は私人の立場で受託しており、同人の職務の遂行に係る情報ではないことから、本号ただし書ウには該当しないと認められる。
また、債主コード、金融機関名、口座番号は、当該医師を識別することができ、又は他の情報と結びつけることにより個人を識別することができる情報であることから、本号に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。
(7) 強制採尿担当医師並びに強制採尿実施病院に係る氏名、住所、債主コード等及び強制採尿の実施場所について(別表1の番号欄68、76、80)
実施機関は、旧条例第6条第1項第4号と併せて本号を主張しているが、医師個人の情報については、旧条例第6条第1項第4号該当性はないが、本号には該当する情報であると認められる。ただし、医師が所属する病院名については、明らかにしても医師個人を特定できないと認められるので本号には該当しない。
(8) 変死者の発見状況、鑑定の必要性、事案の概要について(別表1の番号欄
110)
実施機関は、本号を主張せず、旧条例第6条第1項第4号を主張しているが、本審査会で審査した結果、歯牙鑑定に係る変死者の発見状況のうち、1072、1117、1120、1121、1165ページには身元不明であるが発見場所や状況等と結びつけることにより、また、鑑定の必要性に関する記載部分のうち、1072ページについては、変死者の氏名や生前の生活状況に関する情報が記載されているため、いずれも特定の個人を識別することができることとなり、本号に該当する情報であると認められる。
歯牙鑑定に係る鑑定の必要性について、1209ページには変死者の個人に関する情報も記載されていることから、本号にも該当する情報であると認められる。
警察犬出動要請に係る事案の概要に記載されている情報は、行方不明になった者の個人に関する情報であり、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。
(9) 表彰伺いに記載された事案の概要、功労の概要等について(別表1の番号欄130、132)
679、680、693、702、782、811及び812ページに記載された地区名、場所等については、個人が特定されるとまでは言えず本号に該当しない。また、786ページに記載された被表彰者の学校名、氏名は公にされることが前提となっており、本号ただし書きイに該当する。
770ページの功労の概要については、実施機関は本号を主張せず、旧条例第6条第1項第4号を主張しているが、被疑者の個人名が記載された部分は、本号に該当する情報であると認められる。
その他、実施機関が本号に該当するとして非開示とした部分については、いずれも個人に関する情報であり、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。
(10) その他(別表1の番号欄20、58、66、71、78、79、100、109、120、126、
134、142、166、193、194)
通訳実施報告書等に記載された被疑者の国籍、性別は、特定の個人が識別されることもなく、本号には該当しない。
1174ページの支出伺いの本文1行目に記載された事件名は、その事件名により個人が特定されるとまでは認められない。
1033ページの申請書に記載された相手方の言動は、その言動内容から個人が特定されることもなく、思想、信条等にも該当しないと認められる。
感謝状案文、署長感謝状上申書に記載された事案の発生場所は、個人が特定されない範囲で開示すべきである。
その他、実施機関が本号に該当するとして非開示とした「見積調書に記載された相手方の担当者名」、鑑定報告書に記載された「変死人の住所、氏名等」等については、いずれも個人に関する情報であり、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。

したがって、別表1の「実施機関が非開示とした部分」の情報のうち、「審査会の判断」欄に「非開示」と記載され、「旧条例第6条第1項該当性」欄に「2号」と記載された情報は、個人に関する情報であり、本号に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。

3 旧条例第6条第1項第3号該当性について
本号は、法人等又は事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害すると認められる情報は、非開示とすることを定めたものである。
また、本号ただし書は、人の生命、身体等を保護するため必要がある情報は開示することとしたものである。
(1) 法人等又は事業を営む個人に係る金融機関名、預金種別、口座番号等について(別表1の番号欄9、10、11、12、40、43、63、83、92、96、103、139、
143、157、171、181、183、199)
実施機関は、当時これらの情報を「事業者の内部管理情報であり開示することにより相手方の事務事業の正当な利益を害する」と判断し、非開示としたものであるが、平成14年9月12日奈良県食糧費情報公開請求事件最高裁判決後は、原則開示として対応している。
同判例で明示されたとおり、不特定多数の者を相手に取引を行っている事業者は、代金の請求書に口座番号等を記載して顧客に交付し、口座番号等を内部限りにおいて管理することよりも、決済の便宜に資することを優先させているものと考えられ、請求書に記載して顧客に交付することにより、口座番号等が多数の顧客に広く知れ渡ることを容認していることから、原則として本号には該当しないと判断した。
ただし、実施機関の顧問弁護士、高知警察署並びに高知南警察署の食堂を営む個人及び警察犬訓練所に係る金融機関名、口座番号等は、他の事業者等の金融機関名等とは異なり、請求書等に記載して広く一般に周知されているものではないと認められることから、経理等内部管理に属する情報であって本号本文に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。
(2) 弁護士の報酬額等について(別表1の番号欄85、86、88、95、102、107、125、127、128、141、147)
弁護士報酬算定調書等は、訴額や訴訟継続期間、出廷回数、訴訟技術上の客観的難易度等を点数化し、事件の内容により報酬額を算定しているものであり、個々の弁護士個人に対する評価には該当しないので、当該事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害するとは認められず、本号には該当しないと認められる。
(3) 留置人弁当納入業者に係る郵便番号、債権者コード、住所、氏名及び金融機関コード、口座番号等について(別表1の番号欄37、39、41、44、46、47、48、49)
実施機関は、郵便番号、債権者コード、住所、氏名については、本号を主張せず、旧条例第6条第1項第4号を主張しているが、業者は留置人用に弁当を納入していることを積極的に明らかにして営業しているものでなく、また警察に協力的な人物として嫌がらせを受けるなどのおそれがあるとの主張の中には、このことが公になると、事業者としての正当な利益が害されるとの主張が含まれるとも考えられる。留置人関係者の中には暴力団組織等に属する者もおり、これらの者が出入りすることによって、店舗の営業に支障が生じ、事業運営上の不利益を被ると認められるので、本号に該当する情報であると認められる。
また、金融機関コード、口座番号等についても、それらから業者名が分かるので同様の理由により、本号に該当する情報であると認められる。

したがって、別表1の「実施機関が非開示とした部分」の情報のうち、「審査会の判断」欄に「非開示」と記載され、「旧条例第6条第1項該当性」欄に「3号」と記載された情報は、法人等又は事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害すると認められる情報であり、本号に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。

4 旧条例第6条第1項第4号該当性について
本号は、開示することにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を生ずるおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報は、非開示とすることを定めたものである。
本号の審査については、その性質上、開示又は非開示の判断に当たっては、犯罪等に関する将来予測としての専門的、技術的判断を要するなどの特殊性が認められることから、相当な理由があるとする実施機関の判断が合理性を持つものとして許容される限度内のものであるか否かについて判断するものである。
なお、当該判断については、実施機関の裁量を無制限に認めるものではなく、合理性を持つものとして許容される限度内のものでなければならないのは当然である。
(1) 「全日本教職員組合2001年度教育研究全国集会」に伴う警備実施に係る補食の支払予定日、検認済年月日、支出負担行為年月日、起案年月日等及び同集会に伴い県外から派遣された部隊に対する感謝状の記念品料の支払予定日等について(別表1の番号欄8、14、15、19、93)
前記集会は一過性のものではなく各都道府県で開催されていること、今後も本県において同程度の規模の集会が開催される可能性があること等からすれば、警備実施は前例に基づいて計画を策定することが多く、警備実施態勢を構築した日が分かると、今後の同様の集会等において警備態勢の間隙を縫ってテロ等が敢行されるおそれが認められるという実施機関の説明には相当な理由があることから、補食の支払予定日、検認済年月日、支出負担行為年月日、起案年月日等については実施機関の判断には合理性があり、本号に該当する相当な理由があると認められる。
しかし、感謝状記念品料の支払予定日は、資金前渡職員への支払日であり、県外から派遣された部隊への交付は任務終了後である。したがって、当該記念品料の支払予定日等が本号に該当する相当な理由があるとの実施機関の判断には十分な合理性は認められない。
(2) NTTグループ・警察連絡協議会の開催に係る会議次第等、出席者(NTT側の者)の氏名、役職等について(別表1の番号欄18、35)
非開示とした部分には、捜査手法について一般的に知られている事項のほか、専門的な内容にわたると認められるものについても記載されており、NTTグループの協力を得る具体的な事件名が記載されている。また、NTT側の出席者については氏名のほか詳細な役職名が記載されている。
したがって、「会議次第には、電話捜査に関する具体的な情報が記載されており、開示すれば犯罪を企図する者等に捜査手法が明らかとなり、更に、これら電話捜査に関する具体的手法等を熟知する出席者に対する働きかけ等により捜査手法を研究されること等によって、今後の犯罪の予防と捜査活動に著しい支障を生ずるおそれがある」と主張する実施機関の判断には合理性があり、本号に該当する相当な理由があると認められる。
(3) 留置人弁当納入業者に係る郵便番号、債権者コード、住所、氏名等について(別表第1の番号欄37、41、44、46、47、48、49)
実施機関は、「業者名が特定されることにより、事件関係者が当該業者に潜入して警察業務の混乱を図るため、弁当に異物等を混入したり、通謀等を目的として物品等を密かに留置場内に持ち込もうとする事案が発生するおそれがある」と主張するが、留置人弁当納入業者名については、被留置人の家族等近親者から問い合わせがあった場合に、警察署によっては業者の同意を得て教示している現状からすれば、本号に該当する相当な理由があるとの実施機関の判断には十分な合理性は認められない。
(4) 解剖医師個人に係る債主コード、金融機関名、口座番号、氏名等について(別表第1の番号欄60、67、72)
解剖医は、解剖を通じて捜査の端緒を知り得る立場にあり、その氏名等が開示され、特定されると事件関係者が事件の端緒となる解剖所見を警察に伝えないように、又は真実と異なる所見を伝えるように当該解剖医に対して懐柔、脅迫、嫌がらせ等を加えるなど公共の安全と秩序の維持に支障を生ずるおそれがあると認められることから、実施機関の判断には合理性があり、本号に該当する相当な理由があると認められる。
(5) 強制採尿担当医師並びに強制採尿実施病院に係る氏名、住所、債主コード等及び強制採尿の実施場所について(別表第1の番号欄61、68、69、75、76、80、82)
強制採尿実施病院に係る債主コード、氏名、住所は、実施機関が強制採尿を実施する都度、各病院に依頼して実施していること、また、被採尿者はどの病院で採尿を実施したかを当然承知していることなどからすれば、本号に該当する相当な理由があるとの実施機関の判断には十分な合理性は認められない。
また、医師個人及び医師が所属する病院名についても、本号に該当する相当な理由があるとの実施機関の判断には十分な合理性は認められない。
(6) 高知県警察協力医会懇談会出席者名簿中の検案医師に係る氏名、医療機関名について(別表第1の番号欄31)
氏名等を非開示とした検案医師は、県内各警察署の管轄ごとに指定された捜査協力者であると認められる。
したがって、「懇談会に出席した医師は、死者及び関係者の個人の秘密にわたる部分や犯罪事実又は事案の核心部分まで知り得る立場にあり、医療機関名及び医師の氏名を開示すると、利害関係者等から脅迫等を受けるおそれがあり、その後の犯罪捜査、公訴の維持に支障が生じ、また、信頼関係を損ない、その後の捜査協力を拒否される事態に至ることも予想される」と主張する実施機関の判断には合理性があり、本号に該当する相当な理由があると認められる。
(7) 国費の諸謝金の支出負担行為即支出決定決議書に添付された鑑定報告書等に記載の鑑定物件名、遊技機の種別、型式名、鑑定事項等(遊技機不正改造に係るもの)について(別表第1の番号欄70、73、74)
記載された鑑定事項は、一般的な事項以外は特に記載されていないことから、本号に該当する相当な理由があるとの実施機関の判断には十分な合理性は認められない。
実施機関が非開示とした、その他の情報は、遊技機の不正改造を誘発するおそれが認められることから、実施機関の判断には合理性があり、本号に該当する相当な理由があると認められる。
(8) 変死者の発見状況、鑑定の必要性、事案の概要について(別表第1の番号欄110)
歯牙鑑定に係る変死者の発見状況及び歯牙鑑定に係る鑑定の必要性で、具体的な犯罪事実等が記載されている箇所(1201、1205(鑑定の必要性は1、2行目のみ)、1209ページ)は、明らかにすることにより、今後の捜査活動に支障を生ずるおそれがあるとする実施機関の判断には合理性があり、本号に該当する相当な理由があると認められる。
しかしながら、上で述べたページ以外のページでは、変死者の発見状況には具体的な犯罪事実等は記載されておらず、本号に該当する相当な理由があるとの実施機関の判断には十分な合理性は認められない。
警察犬出動要請に係る事案の概要に記載されている情報は、行方不明になった者の個人に関する情報ではあるが、本号に該当する相当な理由があるとの実施機関の判断には十分な合理性は認められない。
記載されているその他の情報は、本号に該当する相当な理由があるとの実施機関の判断には十分な合理性は認められない。
(9) 表彰伺いに記載された所属名について(別表第1の番号欄131)
功労の概要欄に記載された表彰事由には、「警備情報活動成績優秀」等の抽象的な表現が記載され、実施機関は開示している。
これに該当する被表彰者の所属名を開示すれば、当該所属における情報収集能力が高いということが推測され、これらの情報を基に、犯罪を企図する者や団体が警察の捜査に対する警戒心を高め、捜査の網をかいくぐってテロ行為等を起こしたり、自らに対する捜査を察知すれば、逃走や証拠を隠滅することも考えられるとする実施機関の判断には合理性があり、本号に該当する相当な理由があると認められる。
(10) 表彰伺いに記載された功労の概要等について(別表第1の番号欄132)
具体的な捜査手法の名称や内容が記載されている部分は、明らかにすることにより、今後の捜査活動に支障を生ずるおそれがあるとする実施機関の判断には合理性があり、本号に該当する相当な理由があると認められる。
しかし、その他の部分は、一般的な地域名等であり、本号に該当する相当な理由があるとの実施機関の判断には十分な合理性は認められない。
(11) 功労事件一覧表に記載された確認指紋の利用状況・余罪等参考意見について(別表第1の番号欄135)
非開示とした部分には、具体的な捜査手法が記載されているとは認められず、本号に該当する相当な理由があるとの実施機関の判断には十分な合理性は認められない。
(12) 表彰伺いに添付された応援派遣部隊名について(別表第1の番号欄137)
非開示とした応援派遣部隊名は、具体的任務に係る部隊名であり、公文書開示請求を重ねて行うことで、どの程度の警備実施の際にはどの程度の警備態勢を構築するのが類型的に判明し、テロ等の犯罪行為に資する情報を提供することとなるという実施機関の判断には合理性があり、本号に該当する相当な理由があると認められる。
(13) ほう賞金決定通知書に記載された古物商、質屋の住所、氏名について(別表第1の番号欄173、201)
古物営業、質屋営業を営む者に対するほう賞金は、窃盗犯人等の検挙に積極的に協力した場合に支払われるものであり、ほう賞金決定通知書に記載された古物商等の住所、氏名を開示すると、警察に対する積極的な捜査協力者であることが明らかになり、当該古物商等の協力に基づく犯罪捜査に支障を生ずるおそれがあると認められ、実施機関の判断には合理性があり、本号に該当する相当な理由があると認められる。
(14) 署長表彰者名簿に記載された功労の概要について(別表第1の番号欄175)
実施機関が非開示とした部分には、特定の警察活動に関する功労の概要が記載されており、これを開示すると当該警察署において特定の警察活動が活発に行われていることが明らかになり、犯罪の予防、捜査、公共の安全と秩序の維持に支障を生ずるおそれがあると認められ、実施機関の判断には合理性があり、本号に該当する相当な理由があると認められる。

したがって、別表1の「実施機関が非開示とした部分」の情報のうち、「審査会の判断」欄に「非開示」と記載され、「旧条例第6条第1項該当性」欄に「4号」と記載された情報は、開示することにより、犯罪の予防や捜査活動に支障を生ずるおそれがあるという実施機関の判断には合理性があり、本号に該当する相当な理由があると認められる。

5 旧条例第6条第1項第6号ア該当性について
本号は、県又は国等が行う事務事業のうち、開示することにより、実施の目的が失われ、又は公正若しくは円滑な遂行に著しい支障を生じることが客観的に明白である情報は、非開示とすることを定めたものである。
(1) 弁護士の報酬額等について(別表第1の番号欄85、86、88、95、102、107、125、127、128、141、147) 
本審査会で審査したところ、弁護士報酬額は、訴額や訴訟継続期間、出廷回数、訴訟技術上の客観的難易度等を点数化し、事件の内容により算定される情報であった。
したがって、弁護士報酬額及び予算残額等を開示することによって、他の弁護士の報酬額と自分の報酬額を比較することにより、自己の弁護活動が正当に評価されていないとして実施機関に不信感を持ち、実施機関の行う争訟事務の公正円滑な執行に著しい支障を生じる情報であるとは認められず、本号には該当しないと認められる。

6 旧条例第6条第2項該当性について
公益上の理由による開示については、非開示情報であっても、開示しないことにより保護される利益に明らかに優越する公益上の理由があると認められるときに開示することが定められている。
審査請求人は、「条例適用に当たって、旧条例第6条第2項の『開示しないことにより保護される利益に明らかに優越する公益上の理由があるときは開示する』とした公益との比較衡量が全くされていない。」と主張している。
しかしながら、審査請求人は本件公文書のどの非開示情報について、公益上の理由により開示すべきものかを個別、具体的に示していない。
これらの点について審査すると、審査請求人は「高知県警察において組織的に不正経理が行われており、その不正を解明する公益上の理由がある」旨主張しているものと意見聴取の際の発言等から推察されるが、それに関連すると思われる捜査費の個別執行に関する支払証拠書や前渡資金精算書は本件審査対象公文書には含まれていない。
したがって、本件公文書の非開示情報については、旧条例第6条第2項に該当し、開示しないことにより保護される利益に明らかに優越する公益上の理由があるとは認められなかった。

7 旧条例第10条について
審査請求人は、「旧条例第10条にある『非開示適用の根拠を具体的に示したものでなければならない』との規定を無視して抽象的な見解が繰り返されているだけである。さらに、旧条例第10条に規定された、今は開示できなくても時期が来れば開示できる可能性について何の言及もないままである。」と主張している。
これに対し、実施機関は公文書部分開示決定に際し請求人に公文書の一部を開示しない理由を項目毎に整理し、公文書の件名、非開示部分及び該当条項とともに詳細に列挙し、明示している。
また、公共の安全と秩序の維持に関する旧条例第6条第4号該当部分についても、可能な範囲で開示しない理由が示されており、抽象的な見解が繰り返されているとまでは言えない。
なお、本件公文書中の非開示情報には、当該非開示決定の理由がなくなる時期をあらかじめ示すことができるものは含まれておらず、実施機関が非開示決定の理由がなくなる時期に言及していないことは妥当と認められる。

第6 結論

 当審査会は、本件公文書を具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、別表のとおり。

年月日 処理内容
平成14年11月13日 ・ 諮問庁から諮問を受けた。
平成15年4月18日 ・ 諮問庁から決定理由説明書を受理した。
平成15年9月24日 ・ 審査請求人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成17年3月18日
(平成16年度第4回第二小委員会)
・ 審査請求人の意見聴取及び諮問の審議を行った。
平成17年4月6日
(平成17年度第1回第二小委員会)
・ 実施機関から意見聴取及び諮問の審議を行った。
平成17年4月27日
(平成17年度第2回第二小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成17年5月25日
(平成17年度第3回第二小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成17年6月22日
(平成17年度第4回第二小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
 平成17年7月15日
(平成17年度第5回第二小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成17年8月8日
(平成17年度第6回第二小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
 平成17年9月1日
(平成17年度第7回第二小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成17年9月22日
(平成17年度第8回第二小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成17年10月26日
(平成17年度第9回第二小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成17年11月17日
(平成17年度第10回第二小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成17年12月16日
(平成17年度第11回第二小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
 平成18年1月25日
(平成17年度第12回第二小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
 平成18年3月28日
(平成17年度第13回第二小委員会)
・  答申案の検討及び審議を行った。
平成18年5月8日
(平成18年度第1回第二小委員会)
・  答申案の検討及び審議を行った。
平成18年5月24日
(平成18年度第2回第二小委員会)
・  答申案の検討及び審議を行った。
平成18年6月12日
(平成18年度第3回第二小委員会)
・  答申案の検討及び審議を行った。
 平成18年7月11日
(平成18年度第4回第二小委員会)
・  答申案の検討及び審議を行った。
平成18年8月1日
(平成18年度第5回第二小委員会)
・  答申案の検討及び審議を行った。
平成18年8月18日
(平成18年度第6回第二小委員会)
・  答申案の検討及び審議を行った。
平成18年10月16日
(平成18年度第2回公文書審査会全体会)
・  答申案の検討及び審議を行った。
平成18年12月18日 ・ 答申を行った。

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