高知県公文書開示審査会答申第105号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第105号

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諮問第105号


第1 審査会の結論

 知事が、「事業認定申請書(10用第910号)に記載されている円満に協議が成立した10名の用地交渉日誌の中で、用地交渉開始日が確認できた4名分。」を部分開示とし、「事業認定申請書(10用第910号)に記載されている円満に協議が成立した10名の用地交渉日誌の中で、用地交渉開始日が分かるもの6件分。」を不存在とした決定は妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ては、異議申立人が平成14年10月16日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った下記の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成14年10月28日付けで行った部分開示決定及び不存在決定の取消しを求めるというものである。
 開示請求の内容は、以下のとおりである。
 「平成11年1月28日、高知県が事業認定申請(10用第910号)を行った。申請書の4.事業の認定を申請する理由の中で、『これらの事業に必要な土地の面積は、収用の部分及び使用の部分併せて5,124平方メートルであり土地所有者及び関係人は20名であり、平成6年から用地取得の協議を開始し、平成10年11月現在で事業に必要な面積のうち4,134平方メートル(80.6%)、土地所有者及び関係人のうち10名(50.0%)については円満に協議が成立しているものである』と記載されている。円満に協議が成立した10名の用地交渉日誌の中で、用地交渉開始日が分かるもの10件分。(地権者を特定するためのものではありません)」

第3 実施機関の不存在決定理由等

 実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している不存在決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
1 公文書の特定について
   調査、確認を行った結果、用地交渉において、円満に協議が成立した10名の用地交渉日誌の中で、用地交渉開始日が確認できた4名分の用地交渉日誌を特定し、部分開示決定を行った。
 また、残りの6名のうち、5名については用地交渉日誌が存在しておらず、1名については用地交渉日誌は存在するが、用地交渉開始日が確認できなかったため、不存在決定を行った。
2 条例第6条第1項第2号該当性について
 用地交渉日誌のうち、用地交渉の相手方の発言内容、住所、氏名、配偶者及び職場については、個人に関する情報であって、特定の個人を識別できると認められ、かつ、ただし書のいずれにも該当しないため非開示とした。
3 公文書の追加開示について
 当初部分開示を行った4名のうち1名については、用地買収に関する交渉と事業損失に関する交渉を行っており、当初部分開示を行ったのは事業損失に関する交渉開始日が分かる交渉日誌のみであったことが判明した。
 このため、用地買収に関する交渉開始日が分かる交渉日誌を新たに特定し、平成15年1月9日に部分開示決定を行い、通知した。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
 本件決定は、次の点において違法不当である。
 用地交渉開始日が確認できた4名の開始日は、
【1】平成7年5月17日
【2】平成7年5月22日
【3】平成7年8月21日
【4】平成9年12月24日
である。
 円満に協議が成立した10名(前田川改修第2工区下流の10名)の、土地売買(権利消滅)に関する契約書の契約日を、用地調査図及び売買、権利消滅契約書を参考に特定すると、以下の点がおかしい。
(1)  最後に契約した地権者の契約日は平成9年6月4日である。上記4名のうち、最後の用地交渉日【4】平成9年12月24日の前になる。
(2)  上流から2人目の地権者は、平成6年11月29日に契約した。下流の地権者は、この地権者より早く、若しくは同時に用地交渉を開始しているはずである。上記【1】【2】【3】【4】の用地交渉開始日は、この地権者の契約日の後になる。また、最上流の地権者の契約日は平成7年4月19日であり、【1】【2】【3】【4】の用地交渉開始日の前である。
(3)  事業認定申請調整原案によれば、用地交渉は平成4年11月から始められたことになっている。円満に協議が成立した10名の中の6名は、用地交渉開始日が不明である。平成4年から用地交渉を開始したといえるのか。(第2工区上流側の10名の用地交渉開始日は平成7年以降である。)
 【4】の交渉開始日は、土木部本庁事業認定調整会議(平成10年2月24日)の直前である。土地収用法を用いる直前に用地交渉を開始したのか。
 土地収用法を用いて事業を進めたのに、交渉開始日が不明とはどういうことか。
 契約日が交渉開始日より前であるのはどういうことか。
 用地交渉開始日の開示を求める。また、正しい用地交渉開始日の開示を求める。

第5 審査会の判断

 実施機関は、開示請求のあった10名の用地交渉日誌について調査確認を行い、このうち用地交渉開始日が確認できた4名分の用地交渉日誌を部分開示したと主張している。一方、異議申立人は、用地交渉開始日が不明なのはおかしい。また、開示された日誌の用地交渉開始日は間違っているので、正しい用地交渉開始日の用地交渉日誌の開示を求めると主張しているので、以下検討する。
1 用地交渉日誌について
 実施機関によると、用地交渉については、用地の事務取扱要領により、用地事務担当職員は、協議の経過等を明らかにするため用地交渉日誌を記載し、記録を整理し、その都度上司の決裁を受けなければならないと定められている。しかしながら、口頭で報告できるぐらいの交渉内容であればその作成を省略する場合もあるので、用地交渉すべてについて交渉日誌を作成しているわけではないとのことである。
 当審査会は、開示請求にかかる10名のうち、用地交渉日誌が存在する5名の用地交渉日誌すべてについて調査を行ったところ、実施機関が主張するとおり、用地交渉日誌が存在する5名のうち1名については、用地交渉開始日を確認できなかった。
2 用地交渉開始日について
(1)  実施機関は、第3の3のとおり、当初用地交渉日誌を部分開示した4名のうち、用地交渉開始日が平成9年12月24日の1名分については、当初部分開示した交渉日誌は事業損失に関する交渉分であり、新たに用地買収に関する交渉日誌の存在が判明したとして、平成7年6月29日の用地交渉日誌を平成15年1月9日に追加して部分開示を行っている。
(2)  実施機関の説明では、河川事業の施工にあたっては、一般的には、工事施工は通常下流から行っていくが、用地買収については工事の効率的な施工の観点から、一定のまとまった区間を対象に用地交渉を行うため、必ずしも下流の地権者であるからといって上流の地権者より用地交渉が早く開始されるというものではないとのことである。
(3)  事業認定申請調整原案において交渉開始日を平成4年11月としたことについては、実施機関は、前田川の河川工事に関して、あらかじめ内部整理のために経過報告書を作成しており、その中に、地権者1名について「平成4年11月2日交渉開始」という記述があったため、当該原案には平成4年11月から交渉開始としたと記載したとのことであり、当審査会はその経過報告書の記述を確認した。
 以上の実施機関の説明、調査の結果から判断すれば、実施機関の公文書の特定及び不存在に関する説明には不合理なものはなく、実施機関の行った公文書部分開示及び不存在の決定は妥当なものと認められる。

第6 結論

 当審査会は、本件不存在決定について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。
 なお、当審査会の岡村会長、稲田委員、溝渕委員及び山下委員は、現在の高知県収用委員会委員又は当該案件に関する事業が実施されていた当時の高知県収用委員会委員であったことから、本件の審査に加わっていない。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成15年1月15日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成15年3月28日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成17年1月11日
(平成16年度第14回第三小委員会)
・ 実施機関からの意見聴取及び諮問の審議を行った。
平成17年2月17日
(平成16年度第16回第三小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成17年4月18日
(平成17年度第2回第三小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成17年6月7日
(平成17年度第2回公文書開示審査会)
・ 諮問の審議を行った。
平成17年11月10日 ・ 答申を行った。

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