公開日 2009年02月27日
更新日 2014年03月16日
高知県公文書開示審査会答申第107号
諮問第107号
第1 審査会の結論
知事が、事業認定申請書(10用第910号)の事業計画書「1事業計画の概要(2)起業地計画イ本体事業」の「計画諸元」のうち、工事量の作成に関する資料を不存在とした決定は、妥当である。
第2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ては、異議申立人が平成14年10月23日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号)に基づき行った「事業認定申請書(10用第910号)の事業計画書『1事業計画の概要(2)起業地計画イ本体事業』の『計画諸元』のうち、工事量の作成に関する資料」(以下「本件公文書」という。)の開示請求(以下「本件開示請求」という。)に対し、知事(以下「実施機関」という。)が、平成14年11月5日付けで行った当該文書の不存在決定の取消しを求めるというものである。
第3 実施機関の不存在決定理由等
実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している不存在決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
1 本件公文書の保有について
本件開示請求に対し調査を行ったが、県は事業認定計画設計を業者に委託し、発注者である県は成果品のみを業者から受け取っており、請求にあった計画諸元の工事量作成のための参考資料については保有していないことを確認した。
2 受託業者からの聴き取り結果について
事業認定計画設計作成業者から聴き取りをした結果、当初、基礎データを収集し、保有していたが、成果品を県に提出し、検査が完了した後は破棄処分しており、現在は保有していないことを確認した。
以上2点の結果を受け、平成14年11月5日付け14高用管第548−2号で不存在決定をしたものである。
第4 異議申立人の主張
異議申立人が異議申立書で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
前田川の河川改修工事に伴い、高知市水道局の上水道管をどのように処理するかが、平成8年度住小規模改第1−11号前田川小規模河川(住宅促進関連)改修護岸設計委託業務(平成8年12月)で検討された。上水道管を移設するか、あるいは河床を上げて川幅を広げることが検討されたが、結論は出せなかった。
事業認定申請前の平成10年1月12日に行われた困難箇所に関する所内協議(前田川)では、張り出しやボックスといった工法も考えられていた。
国、県、市合わせて6億円近い費用がかかり、高知市水道料金の値上げの一因となった上水道管の工事を、この時点でどのように考えていたのか。
この疑問に答えるには、本件開示請求で請求した、平成10年度住基幹第1−10号前田川広域基幹(住宅促進関連)改修工事事業認定計画設計委託業務において、業者が「計画諸元」の作成に当たって、どの工法を選び、なぜ、その工法を選んだのかを記載した資料が必要である。「県は成果品のみを業者から受け取っている」、「計画諸元の工事量作成のための参考資料については保有していない」では理由にならない。県は、県民に対し説明責任を果たす義務がある。
第5 審査会の判断
実施機関は、事業認定計画設計を業者に委託し、その成果品のみを業者から受け取っており、計画諸元の工事量作成のための参考資料は保有していない。
また、委託を受けた業者は、当初、基礎データを収集し、保有していたが、成果品を県に提出し、検査が完了した後で破棄したということを確認したと主張している。
これに対し異議申立人は、委託された業者が「計画諸元」作成に当たって、どの工法を選び、なぜ、その工法を選んだのかという疑問に答えるには、作成のための参考資料が必要である。「成果品のみを業者から受け取っている」、「計画諸元の工事量作成のための参考資料は保有していない」では理由にならない。県は、県民に対し説明責任を果たす義務があると主張している。
以下、両者の主張を検討する。
実施機関からの意見聴取によると、前田川河川改修工事に伴う上水道管の処理については、当初、高知市の都市計画道路の完成を前提に、ボックスや張り出しといった工法が考えられていたが、都市計画道路の工事の実施時期が相当遅くなることが判明したため、これらの工法を検討対象から除外した3つの案に絞り、経済的、公益的な観点から検討した結果、その中の1案を採用し、国へ事業申請したものであるとのことである。このときに使用した起業地選定比較表は、事業認定申請書類の中に含まれており、既に異議申立人に開示しているという。
また、上水道管の移設など具体的な工法については、事業認定を受けた後、年度ごとに行う国との認可協議で決定されるものであり、老朽化した水道管を守りながら工事を行うためには多額の費用がかかること、東西の都市計画道路の用地交渉が済んだことにより上水道管を移設するスペースが確保できたこと、水を止めながら工事を進める新しい工法が開発されたことなどにより、最終的に国、県、市の協議で上水道管の移設を決めたとのことである。
これらのことから考えて、事業認定申請の段階では、水道管の移設について具体的な工法は検討されておらず、実施機関が主張するとおり、異議申立人の主張している工法に関する資料について、この段階で実施機関は保有していないと推察される。
なお、実施機関が受託業者から聴き取り調査をした結果、工事量作成のための参考資料は、検査が完了した後に破棄処分したとのことである。
以上のとおり、当該公文書が不存在であるという実施機関の説明には不合理なものはなく、実施機関が行った不存在決定は、妥当であると認められる。
なお、実施機関の説明によれば、具体的な工法選定の資料は、事業認定申請ではなく認可申請の中に添付されているとのことである。今回のケースはこのようなことを実施機関が説明しさえすれば異議申立てには至らなかったとも考えられる。このように開示請求者との意思疎通を欠いたことにより異議申立てに発展する事例が増えていることから、今後、このようなことのないよう、適切な対応を要望する。
第6 結論
当審査会は、本件不存在決定について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。
なお、当審査会の岡村会長、稲田委員、溝渕委員及び山下委員は、現在の高知県収用委員会委員又は当該案件に関する事業が実施されていた当時の高知県収用委員会委員であったことから、本件の審査に加わっていない。
第7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、次のとおり。
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成15年1月21日 | ・ 実施機関から諮問を受けた。 |
平成15年4月9日 | ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。 |
平成17年5月6日 (平成17年度第3回第三小委員会) |
・ 実施機関からの意見聴取及び諮問の審議を行った。 |
平成17年6月21日 (平成17年度第5回第三小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成17年7月29日 (平成17年度第7回第三小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成17年8月30日 (平成17年度第10回第三小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成17年11月1日 (平成17年度第4回公文書開示審査会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成18年1月6日 | ・ 答申を行った。 |
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