公開日 2009年02月27日
更新日 2014年03月16日
高知県公文書開示審査会答申第109号
諮問第109号
第1 審査会の結論
知事が、事業認定申請書(10用第910号)の事業計画書「4事業の施行を必要とする公益上の理由(1)本体事業 表2注1の『被害予想区域図』の作成に関する資料」を不存在とした決定は、妥当である。
第2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ては、異議申立人が平成14年10月23日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号)に基づき行った「事業認定申請書(10用第910号)の事業計画書『4事業の施行を必要とする公益上の理由(1)本体事業 表2注1の『被害予想区域図』』の作成に関する資料」(以下「本件公文書」という。)の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が、平成14年11月5日付けで行った当該文書の不存在決定の取消しを求めるというものである。
第3 実施機関の不存在決定理由等
実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している不存在決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
1 本件公文書の保有について
本件開示請求に対し調査を行ったが、県は事業認定計画設計を業者に委託し、発注者である県は成果品のみを業者から受け取っており、請求にあった被害予想区域図作成のための参考資料については保有していないことを確認した。
2 受託業者からの聴き取り結果について
事業認定計画設計作成業者から聞き取りをした結果、当初、基礎データを収集し、保有していたが、成果品を県に提出し、検査が完了した後は破棄処分しており、現在は保有していないことを確認した。
以上2点の結果を受け、平成14年11月5日付け14高用管第548−4号で不存在決定をしたものである。
第4 異議申立人の主張
異議申立人が異議申立書で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
1 平成12年11月17日に、「前田川改修第1工区と第2工区の境、市道朝倉242号線第1号橋をP点として、P点より上流の前田川に流れ込む雨水の領域を地図で具体的に教えて欲しい」との質問に対し、平成13年5月11日に高知河川事務所から回答として受け取った被害予想区域図では、前田川改修第1工区にまで雨水が流れ込む領域に入っているが、これはなぜか。
2 高知市朝倉南町4−25付近は、前田川改修以前に水害を受けていない。その後、神田川が改修され、さらに前田川第1工区が改修され、98豪雨の際にも被害がなかったにも関わらず、なぜ、朝倉南町4−25付近が被害予想区域となり、被害額に計上されているのか。
3 これらの疑問に答えるには、本件開示請求で請求した「被害予想区域図」の作成に関する資料が必要である。県は県民に対し説明責任を果たす義務がある。
第5 審査会の判断
実施機関は、事業認定計画設計を業者に委託し、その成果品のみを業者から受け取っており、被害予想区域図作成のための参考資料は保有していない。
また、委託を受けた業者は、当初、基礎データを収集し、保有していたが、成果品を県に提出し、検査が完了した後で破棄したということを確認したと主張している。
これに対し異議申立人は、市道朝倉242号線第1号橋をP点とした、上流の前田川に流れ込む雨水の領域が被害予想区域図では、雨水が前田川改修第1工区に流れ込む領域まで入っているが、これはなぜか。
また、高知市朝倉南町4−25付近は、これまで水害の被害を受けていないが、なぜ、被害予想区域に入っているのか。これらの疑問に答えるには、作成のための参考資料が必要である。「成果品のみを業者から受け取っている」、「被害予想区域図作成のための参考資料については保有していない」ということでは理由にならない。県は、県民に対し説明責任を果たす義務があると主張している。
以下、両者の主張を検討する。
実施機関の意見聴取によると、被害予想区域図の最も簡単な作成方法は、現況の川に計画洪水を流し、現況河川から越流する水深を算出した後、この高さより低い区域を地図上で等高線として描く方法があり、前田川に関しては、上流であろうと下流であろうと、越流する水深より低い地域はすべて含まれることになるとのことである。さらに前田川の事業認定申請書の被害予想区域図は、これに昭和50年や51年の災害等の被害実績も考慮されていると思われるとのことである。
なお、実施機関が受託業者から聴き取り調査をした結果、被害予想区域図作成のための参考資料は、検査が完了した後に処分したとのことである。
以上のとおり、本件開示請求に係る被害予想区域図の具体的な作成方法についての実施機関からの明確な説明はなかったが、実施機関が被害予想区域図作成の参考資料を保有しているということも確認できなかった。しかし、実施機関が被害予想区域図作成のための参考資料を保有していないとの説明には不合理なものはなく、実施機関が行った不存在決定は、妥当であると認められる。
なお、開示請求に係る公文書が不存在の場合には、被害予想区域図の作成方法を説明するなど、適切な情報提供を要望する。
第6 結論
当審査会は、本件不存在決定について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。
なお、当審査会の岡村会長、稲田委員、溝渕委員及び山下委員は、現在の高知県収用委員会委員又は当該案件に関する事業が実施されていた当時の高知県収用委員会委員であったことから、本件の審査に加わっていない。
第7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、次のとおり。
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成15年1月21日 | ・ 実施機関から諮問を受けた。 |
平成15年4月9日 | ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。 |
平成17年5月6日 (平成17年度第3回第三小委員会) |
・ 実施機関からの意見聴取及び諮問の審議を行った。 |
平成17年6月21日 (平成17年度第5回第三小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成17年7月29日 (平成17年度第7回第三小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成17年8月30日 (平成17年度第10回第三小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成17年11月1日 (平成17年度第4回公文書開示審査会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成18年1月6日 | ・ 答申を行った。 |
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