公開日 2009年02月27日
更新日 2014年03月16日
高知県公文書開示審査会答申第113号
諮問第113号
第1 審査会の結論
教育委員会は、「平成15年度高知県公立学校教員採用候補者選考審査における『採用審査システム研究委員』の委嘱について(伺)」について、開示しないこととした部分のうち、採用審査システム研究委員名簿の表題の「採用審査システム研究委員」右の括弧内に記載された研究内容、「『採用審査システム研究委員』の任命について」と題する通知文書及び「任命文書の取り扱いについて」と題する連絡文書の左上にある宛先、「口座番号等照会票」及び「承諾書」の「氏名」の上に記載された、どのような機関に属する者を委員に任命しているかがわかる箇所は、開示すべきである。
第2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ては、異議申立人が平成14年8月29日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号)に基づき行った「平成15年度高知県公立学校教員採用候補者選考審査における採用審査システム研究に関する文書(研究要項や内容・日程などがわかる文書)」の開示請求に対し、教育委員会(以下「実施機関」という。)が、平成14年11月14日付けで行った「平成15年度高知県公立学校教員採用候補者選考審査における『採用審査システム研究委員』の委嘱について(伺)」(以下「本件公文書」という。)の部分開示決定を取消し、非開示とした部分の開示を求めるものである。
第3 実施機関の部分開示決定理由等
実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している部分開示決定の理由等の主な内容は、次のように要約できる。
1 本件公文書について
本件公文書には、実施機関が行う平成15年度高知県公立学校教員採用候補者選考審査に関する情報が記載されている。
2 高知県情報公開条例の一部を改正する条例(平成17年3月29日条例第14号)により改正する前の高知県情報公開条例(以下「旧条例」という。)第6条第1項第2号該当性について
委員名簿中の氏名右側の非開示とした情報は、個人の評価に関する情報であって、かつ、ただし書のいずれにも該当しないため、非開示とした。
3 旧条例第6条第1項第6号ア該当性について
研究委員のうち、事務局職員は一定の役職で選出され、また、その他については来年度も委嘱することを予定している。そのため、研究内容、氏名、一部の所属を開示することにより、所属が明らかとなる。また、研究会の日程、場所を開示することにより他の情報と合わせて委員が明らかとなり、様々な働きかけがなされ、当該審査の円滑な執行に著しい支障を生ずることが明らかであり、かつ、毎年同様の日程で実施することから、委員会の進行を妨害される可能性もあり、問題作成に支障をきたすおそれがある。
第4 異議申立人の主張
異議申立人が異議申立書で主張している異議申立ての内容は、次のように要約できる。
1 公文書の特定について
「平成15年度高知県公立学校教員採用候補者選考審査における採用審査システム研究に関する文書」(研究要項や内容・日程などがわかる文書)の開示請求を行ったが、実施機関は、「研究要項や内容・日程などがわかる文書」については「内容」が書かれている文書を特定しないで、他の文書の部分開示理由の中で非開示の理由を述べている。本来条例に基づき文書を特定して、開示・非開示を決定すべきで、条例の趣旨・運用を誤っているといわざるを得ない。文書がないのであれば「不存在」とすべきである。
2 旧条例第6条第1項第2号及び第6条第1項第6号ア該当性について
実施機関は、非開示理由を「研究内容、職名、氏名、場所を開示することにより、これらのことが明らかとなれば、様々な働きかけがなされることとなり、当該審査の円滑な執行に著しい支障を生ずることが明らかであるため。」としている。しかし、委員は「事務局員」や「その他の者」であり、事務局員は職務として業務を行っているのであるから、「教員採用審査」のみに限って、氏名等を非開示とする理由はない。「その他の者」についても、教員採用選考審査が県民の付託を受けて行っているものである以上、公の性質を持つものであり、その研究委員名が非開示とされる理由はない。
また、「著しい支障を生ずる」としているが、具体的・客観的に支障を指摘しておらず、理由とはならず違法・不当である。
よって、旧条例第6条第1項第2号及び第6条第1項第6号アには該当しない。
第5 審査会の判断
平成17年4月1日に改正条例が施行されたが、本件は旧条例に基づきなされた処分に対する異議申立てであるため、当審査会は、旧条例に基づき本件異議申立てを審議することとする。
1 本件公文書について
本件公文書は、平成15年度高知県公立学校教員採用候補者選考審査における採用審査システム研究委員の任命に関する文書であり、委員の委嘱についての起案文書(回議書)、採用審査システム研究委員名簿、委員の任命についての所属長及び本人宛の通知文書、委員の口座番号等照会票、就任承諾書、委員の任命文書の取り扱いについての連絡文書、委員の任命文書で構成されている。
その中には、任命する者の所属、氏名、任命に至った理由、根拠、研究内容及び研究会の日時、開催場所等が記載されている。
本件公文書のうち、実施機関が非開示とした部分は以下の部分である。
(1) 採用審査システム研究委員名簿の表題の「採用審査システム研究委員」右の括弧内に記載された研究内容
(2) 事務局を除く「採用審査システム研究委員」の所属名
(3) 「採用審査システム研究委員」の氏名
(4) 「採用審査システム研究委員」の氏名の右側に記載された個人の評価に関する情報
(5) 採用審査システム研究会の日時及び開催場所
(6) 「『採用審査システム研究委員』の任命について」と題する通知文書及び「任命文書の取り扱いについて」と題する連絡文書の左上にある宛先、「口座番号等照会票」及び「承諾書」の「氏名」の上に記載された、どのような機関に属する者を委員に任命しているかがわかる箇所
2 旧条例第6条第1項第2号該当性について
本号は、旧条例第3条後段の個人に関する情報が十分保護されるように最大限の配慮をしなければならないとの規定を受け、原則公開の情報公開制度の下にあっても、特定の個人を識別することができる情報は、非開示とすることを定めている。
これは、個人のプライバシーを最大限保護するため、プライバシーであるか否か不明確な個人に関する情報も含めて、特定の個人を識別することができると認められる情報は、本号ただし書ア、イ、ウに該当する情報を除き非開示とするものである。
実施機関は、「委員名簿中の氏名右側の非開示とした情報は、個人の評価に関する情報であって、かつ、ただし書のいずれにも該当しないため、非開示である」と主張している。審査会で確認したところ、「採用審査システム研究委員」の氏名右側には、委員選任の基となる、委員個人の評価に関する情報が記載されている。したがって、氏名右側の欄にある内容は、個人に関する情報であり、かつ、ただし書のいずれにも該当しないことから、本号本文に該当すると認められる。
3 旧条例第6条第1項第6号ア該当性について
本号は、県又は国等が行う事務事業のうち、開示することにより当該事務事業の目的を失い、又は公正、円滑な執行ができなくなり、ひいては県民全体の利益を損なうことになる情報は、非開示とすることを定めたものである。
実施機関は、研究内容、職名、氏名、一部の所属を開示することにより所属が明らかとなり、また、日程及び場所を開示することにより他の情報と合わせて委員が明らかとなることから、様々な働きかけがなされ、当該審査の円滑な執行に著しい支障を生ずることが明らかであると主張しているので、以下、個々に本号該当性について検討する。
(1) 採用審査システム研究委員名簿の表題の「採用審査システム研究委員」右に記載された研究内容について
研究内容については、開示しても所属や氏名が明らかになるとは言えず、また、採用審査システム研究委員の名称は、平成16年度から、本件で非開示とした研究内容とほぼ一致する名称に変更されており、その名称は公表されている。このことから、研究内容を開示することにより業務の円滑な執行に著しい支障が生ずることが客観的に明白であるとは認められない。
(2) 事務局を除く「採用審査システム研究委員」の所属名及び「採用審査システム研究委員」の氏名について
実施機関の主張するとおり、委員の氏名が特定されると、多くの委員は来年度以降も続けて任命する可能性が高いことから、委員に対する様々な嫌がらせや働きかけがなされることとなり、また、事務局以外の委員は本来の業務外で採用審査システム研究にかかる業務を行っており、個人が特定されれば、その精神的・物理的負担が大きい委員に対し、さらに重い負担を強いることになるため、当該審査の円滑な執行に著しい支障を生ずることが明らかである。
(3) 研究会の開催日時及び開催場所について
研究会は毎年同じ時期に同じ場所で行われていることから、これらの情報を開示すると他の情報と合わせて委員が明らかとなり、また、多くの委員については、翌年度以降も続けて任命する可能性が高いことから、上記(2)と同様、当該審査の円滑な執行に著しい支障を生ずることとなると認められる。
(4) 「『採用審査システム研究委員』の任命について」と題する通知文書及び「任命文書の取り扱いについて」と題する連絡文書の左上にある宛先、「口座番号等照会票」及び「承諾書」の「氏名」の上に記載された、どのような機関に属する者を委員に任命しているかがわかる箇所について
これらの情報は委員の所属名ではなく、どのような機関に属する者を委員に任命しているかといったことしかわからない情報であり、開示することにより、個人が特定されるとは考えられないことから、実施機関が主張するように、様々な働きかけがなされ、当該審査の円滑な執行に著しい支障を生ずることが明らかであるとは認められない。
以上のことから上記(2)及び(3)の情報は本号アに該当し、上記(1)及び(4)の情報は、本号に該当しない。
4 その他
(1) 異議申立人は、請求した「研究要項や内容・日程などがわかる文書」については「内容」が書かれている文書を特定されていない。文書がないのであれば「不存在」とすべきであると主張している。しかしながら、本件公文書には職務の内容、日程に関する内容が書かれており、他に研究要項等の内容がわかる公文書は存在しないことから、実施機関はこの伺を開示請求内容に該当する文書と判断して部分開示をしたものであって、本件公文書の特定に問題はない。
(2) なお、公立学校教員採用候補者選考審査がどのような仕組みで行われているかについては、県民の関心のあるところであり、実施機関が何らかの形で公表するよう配慮することが望まれる。
第6 結論
当審査会は、本件公文書を具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。
第7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、次のとおり。
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成15年1月24日 | ・ 実施機関から諮問を受けた。 |
平成15年4月30日 | ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。 |
平成16年11月17日 (平成16年度第6回第一小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成16年12月24日 (平成16年度第7回第一小委員会) |
・ 実施機関の意見陳述を聴取した。 ・ 諮問の審議を行った。 |
平成17年1月19日 (平成16年度第8回第一小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成17年3月25日 (平成16年度第9回第一小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成17年8月3日 (平成17年度第3回公文書開示審査会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成17年12月6日 | ・ 答申を行った。 |
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