高知県公文書開示審査会答申第118号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第118号

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諮問第118号


第1 審査会の結論

 教育委員会が、「平成15年度高知県公立学校教員採用候補者選考審査第1次審査の合格者・不合格者の決定について(伺)」について、非開示とした部分のうち、「平成15年度教員採用1次審査結果」の不合格者欄で、校種・教科別の不合格者の人数が11人以上の部分は、開示すべきである。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成14年8月29日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号)に基づき行った「平成15年度高知県公立学校教員採用候補者選考審査第1次審査の合格者・不合格者の決定について(伺)」(以下「本件公文書」という。)の開示請求に対し、教育委員会(以下「実施機関」という。)が、平成14年11月18日付けで行った部分開示決定について、これを取消し、非開示とされた「平成15年度教員採用1次審査結果」の不合格者欄及び不合格者の総合判定基準の開示を求めるというものである。

第3 実施機関の部分開示決定理由等

 実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している部分開示決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
1  高知県情報公開条例の一部を改正する条例(平成17年3月29日条例第14号。以下「改正条例」という。)により改正する前の高知県情報公開条例(以下「旧条例」という。)第6条第1項第2号該当性について
   「平成15年度教員採用1次審査結果」の不合格者欄(B1~B5のランク別の人数とその割合)については、特定の個人の評価が識別できる可能性がある個人に関する情報であって、かつ、ただし書のいずれにも該当しないため非開示とした。
 しかしながら、情報公開制度の趣旨を考えると、不合格者欄を一律に非開示とするのではなく、不合格者数の多少や、区分ごとの人数の状況に応じ、非開示事由に該当するかどうかを検討すべきである。
(1) 不合格者の人数が少ない場合
 不合格者欄を開示すると、他の受審者に関する情報と照合することにより、各受審者の成績を推察することが可能になる場合があり、個人のプライバシーを侵害することもあり得る。特に、不合格者が1名の場合及び不合格者全員が同じ区分に集中している場合は、この欄を開示すると、個々の不合格者の成績が分かることになり、当該不合格者のプライバシーを侵害することになる。
 また、このような場合以外であっても、不合格者数が比較的少数の場合は、他の受審者に関する情報と照合することにより、各受審者の成績を推察できる可能性があると考えられるので、非開示にすべきである。
(2) 不合格者の人数が比較的多い場合
 不合格者数がある程度の人数以上の場合(例えば50人程度の場合)においては、元々他の受審者に関する情報と照合することにも限度があるから、不合格者欄を開示しても、各受審者の成績を推察するのは不可能と考えられる。
 したがって、このような場合は、非開示にすべきでない。
(3) 開示・非開示の基準(不合格者の人数に関する基準)
 この基準を客観的根拠に基づいて設定することはできないが、社会通念上は10人程度が基準として適当と考えられるので、「不合格者が10人以下かどうか」を基準として開示・非開示を決定しても、情報公開制度の趣旨に背かない事務処理であると考えられる。
2 旧条例第6条第1項第6号ア該当性について
 不合格者の総合判定基準は、旧条例第6条第1項第6号に該当する試験に関する情報である。
 総合判定基準については、来年度も反復継続するため、当事業の円滑な執行に支障を生ずるため非開示とした。
 総合判定基準を開示することにより、現在非公開にしている選考基準等の一部、すなわち「手の内」が明らかとなる。その結果、将来も引き続き実施する採用審査の目的に沿った成果が得られなくなり、円滑な執行に支障を生じることになる。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書で主張している異議申立ての内容は、次のように要約できる。
 旧条例第6条第1項第2号及び第6号には該当せず、非開示とされた部分の全面開示を求める。
 実施機関は非開示の理由として、不合格者欄について、「特定の個人の評価が識別できる可能性がある個人の情報」に該当するとしている。不合格者は情報提供によって不合格者のランクを知ることができるが、本人以外は個人情報保護条例に基づき知ることはできない。実施機関は、単なる可能性をもって第2号に当てはまるとすることは、条文解釈を誤っており、違法である。
 また、不合格者の総合判定基準については、「来年度も反復継続するため、当該事業の円滑な執行に支障を生ずるため」としているが、「著しい」支障ではなく「単なる」支障の発生を指摘するにとどまり、具体的に生ずる支障を指摘しておらず、理由とはならず違法・不当である。

第5 審査会の判断

 平成17年4月1日に改正条例が施行されたが、本件は旧条例に基づきなされた処分に対する異議申立てであるため、当審査会は、旧条例に基づき本件異議申立てを審議することとする。
1 本件公文書について
 本件公文書は、平成15年度高知県公立学校教員採用候補者選考審査の第1次審査における総合判定結果を示す「平成15年度教員採用1次審査結果」と題する一覧表(以下「公文書1」という。)、不合格者の総合判定基準(以下「公文書2」という。)、及び、受審者に対する合格・不合格の通知の文案から構成されている。
 公文書1には、小学校・中学校・高校等の校種別に、さらに中学校・高校については各教科別に、合格者及び不合格者の欄が設けられている。合格者欄には、合格者の人数とその割合が示されている。不合格者欄については、不合格者をB1からB5までの5つのランクに区分し、各ランク別の人数とその割合が示されている。B1は合格ラインに近い、B2は合格ラインにやや遠い、B3は遠い、B4はかなり遠い、B5は極めて遠いといったことを意味している。このランク付けは、平成15年度の選考審査の受審者に対し、審査結果を情報提供するために実施機関が行ったものである。
 なお、平成17年度からはこのランク付けを止めて、得点を情報提供するようになっている。
 また、公文書2には、第1次審査結果の得点分布とB1~B5までの不合格者のランク付けとの関係を説明する記述が記載されている。
 本件異議申立ては、実施機関が、本件公文書のうち、公文書1中の不合格者欄及び公文書2を非開示とする部分開示決定を行ったため、全面開示を求めるものである。
2 非開示情報該当性について
(1) 公文書1中の不合格者欄について
 旧条例第6条第1項第2号は、旧条例第3条後段の個人に関する情報が十分保護されるように最大限の配慮をしなければならないとの規定を受け、原則公開の情報公開制度の下にあっても、特定の個人を識別することができる情報は、非開示とすることを定めている。
 これは、個人のプライバシーを最大限保護するため、プライバシーであるか否か不明確な個人に関する情報も含めて、特定の個人を識別することができると認められる情報は、本号ただし書に該当する情報を除き非開示とするものである。
 実施機関は、B1からB5のランク別の人数とその割合を示した不合格者欄は、成績に関する情報を含むため、個人に関する情報に該当するとして、非開示とした。その後、実施機関は、当審査会に提出した意見陳述書において、不合格者欄の一律非開示が不適当であったことを認め、不合格者の人数が少ない場合は非開示とするものの、不合格者の人数が比較的多い場合は開示すべきであるとし、そして、校種・教科別の「不合格者が10人以下かどうか」を基準として開示・非開示を決定すべきであると主張している。
 教員選考審査の第1次審査においてどのランクで不合格となったかという受審者に関する情報が、最大限に配慮されるべき個人に関する情報に該当することは明らかである。
 もっとも、不合格者欄には氏名の記載はなく、不合格者の人数とその割合が示されているにすぎないから、不合格者欄自体は、特定の個人を識別することができる情報とは言えない。
 しかしながら、教員選考審査の第1次審査を受審し不合格となった者を知っている一定範囲の者は、不合格者の人数が少ない校種・教科については、不合格者欄から当該不合格者を特定し、その者の不合格のランクを推察できる可能性がある。
 したがって、不合格者欄を原則開示とし、不合格者の人数が10人以下である校種・教科の不合格者欄については、旧条例第6条第1項第2号の定める非開示情報に該当するため非開示とするという、実施機関の主張は、不合理なものとは認められない。
(2) 公文書2の不合格者の総合判定基準について
 旧条例第6条第1項第6号アは、県又は国等が行う事務事業のうち、開示することにより当該事務事業の目的を失い、又は公正、円滑な執行ができなくなり、ひいては県民全体の利益を損なうことになる情報は、非開示とすることを定めたものである。
 実施機関は、不合格者の総合判定基準は試験に関する情報であって、事務事業に関する情報に該当すると主張しているので、その点について、以下検討する。
 不合格者の総合判定基準は、第1次審査の選考基準そのものではないが、そこに記載された第1次審査結果の得点分布と不合格者のランク付けとの関係を説明する記述から第1次審査の選考基準が推測される可能性があると認められる。
 また、第1次審査の方法はその後変更されていないとのことである。それゆえ、不合格者の総合判定基準が開示されることにより、第1次審査の選考基準が推測されることになれば、今後の選考審査において、受審者は、その推測された選考基準を意識した、偏った受審対策をとり、その結果、真に教員に相応しい人物かどうかを判定することになり、将来の選考審査事務の公正かつ円滑な執行に著しい支障を生じる事が考えられる。
 したがって、不合格者の総合判定基準は、旧条例第6条第1項第6号の非開示情報に該当すると認められる。

第6 結論

 当審査会は、本件公文書を具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成15年1月24日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成15年4月30日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成17年10月19日
(平成17年度第5回第一小委員会)
・ 実施機関からの意見聴取及び諮問の審議を行った。
平成17年11月30日
(平成17年度第6回第一小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成18年1月17日
(平成17年度第7回第三小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成18年3月31日
(平成17年度第6回公文書開示審査会)
・ 諮問の審議を行った。
平成18年5月24日 ・ 答申を行った。

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