高知県公文書開示審査会答申第121号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第121号

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諮問第121号


第1 審査会の結論

 知事が、「秘書課代表中澤彰穂からの寄付金の受納に関する書類・寄付金の受納について(伺)・収入調定書・収納状況一覧表」を、部分開示とした決定は妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ては、異議申立人が平成15年1月17日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号)に基づき行った「秘書課代表中澤彰穂の四国銀行の口座の金員が高知県に納入された経過を示す書類の全部」の開示請求(以下「本件開示請求」という。)に対し、知事(以下「実施機関」という。)が、平成15年1月29日付けで行った「秘書課代表中澤彰穂からの寄付金の受納に関する書類・寄付金の受納について(伺)・収入調定書・収納状況一覧表」(以下「本件開示文書」という。)の部分開示決定に対し、求めた公文書のすべての開示を求めるというものである。

第3 実施機関の部分開示決定理由等

 実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している部分開示決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
1  高知県情報公開条例の一部を改正する条例(平成17年3月29日条例第14号。以下「改正条例」という。)により改正する前の高知県情報公開条例(以下「旧条例」という。)第6条第1項第2号該当性について
(1)  本件公文書のうち、「寄付金の受納について(伺)」に添付されている寄附者一覧(以下「寄附者一覧」という。)の中の寄附者の氏名及び住所は、特定の個人を識別できると認められる情報であり、かつ、同号ただし書のいずれにも該当しない。
 なお、ただし書には、個人に関する情報であっても例外的に開示する情報の一つとして、公務員の職務の遂行に係る情報に含まれる当該者の職名及び氏名を掲げているが、寄附者にとって今回の行為は、私的な金をそれぞれの自発的な意思に基づいて寄附したものであり、公務員の職務の遂行に当たらないことは明らかである。
(2)  知事から職員にあてたメールの内容は、「心ある職員には、勤勉手当を自主的に返還するくらいの、自己改革の意識と見識を持ってもらいたい」というものであって、返還を強要するようなものではない。そのため、寄附をした者は、スト参加者2,469名のうち71名(2.7%)にとどまり、寄附された金額も個人個人の思いに基づいて私的な金から持ち出したため、71名の一人当たりの金額は635円から421,050円までとまちまちになっている。このことからも今回の寄附が、職員の私的な行為であることは明らかである。
(3)  また、勤勉手当の支払いは、適正な手続によって行われており、適正にいったん職員に支給されたものは、もはや公金ではない。支給の後、職員の判断でそれぞれの思いの金額を県に寄附したものを、戻入ではなく個人からの寄附として受け入れたことは適切な処理である。
2 寄附者一覧に記載された住所について
 寄附者一覧は、寄附の申込者である中澤彰穂が作成したものである。
 異議申立人は、寄附者一覧の各個人の住所に関する情報は、人事企画課から開示を受けなければ記載できないものであり、請求者に開示されないのは不公平であると主張する。
 しかしながら、寄附者一覧の住所に関する情報は、以下のように取得されたものである。すなわち、寄附の手続に関する秘書課長からの職員向けメールでは、振込用紙に氏名と所属を明記するよう求めている。書店などで市販されている職員録には、平成12年度までは職員の住所が記載されており、振り込みのあった通帳に打ち出された氏名とこの職員録を見比べて住所を記載したものである。
 さらに秘書課代表は、振り込みのあった68名の職員全員(匿名の3名を除く。)に順次電話で連絡をとり、振り込みを受領したことや速やかに県に寄附することを改めて告げ、住所を確認のうえ、寄附者一覧を作成したものである。
 秘書課長としては、寄附の申し込みを受けた後、職務としての受納の決裁の過程で寄附者一覧を見たものであり、そのような特別の事情のない異議申立人が見ることができないのは当然である。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書、意見書及び意見陳述で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
1 旧条例第6条第1項第2号該当性について
(1) 寄附者一覧に記載された氏名について
 本件公文書のうち、非開示とされた寄附者一覧に記載されている氏名は、すべて高知県の職員である。
 職員が寄附をしたのは、秘書課長中澤彰穂より勤勉手当の返還を強要されたことによるものであり、私的な金を寄附したものではない。
 本来ならば勤勉手当を返還する際には、公金として高知県会計規則に基づき戻入すべきものを、寄附金という形に変えて、規則に基づかない違法な方法で処理をしたものである。秘書課長中澤彰穂が総務部長の決裁を経て、勤務時間内に行った返還行為は職務の遂行にかかる情報である。
 よって、旧条例第6条第1項第2号ただし書ウ(ア)の地方公務員に該当し、非開示とすべきではない。
(2) 寄附者一覧に記載された住所について
 寄附者一覧に記載されている各個人の住所に関する情報は、人事企画課から当該情報の開示を受けなければ記載できないものである。
 資料の作成者である秘書課の職員に開示された情報が、請求者に開示されないのは不公平である。条例は職員にも県民にも平等に適用されるべきである。
2 審査会の審査について
 異議申立てをしてから意見陳述まで約1年半の時間を要している。もっと迅速に審査をしなければ制度の趣旨を活かすことができない。是正するよう要望する。

第5 審査会の判断

 平成17年4月1日に改正条例が施行されたが、本件は旧条例に基づきなされた処分に対する異議申立てであるため、当審査会は、旧条例に基づき本件異議申立てを審議することとする。
1 本件公文書について
 本件公文書は、平成14年11月27日に県職員労働組合が実施した1時間のストライキの参加者に対し、知事から支給した勤勉手当の自主的な返還を希望する旨のメールが出され、これに応じた職員からの寄附を秘書課代表中澤彰穂が取りまとめ、県に寄附の申し込みを行ったことを受けて、実施機関が作成した寄附金の受納についての伺文書、寄附金を受け入れるための収入調定書、寄附金の収納状況が打ち出された一覧表及び秘書課代表中澤彰穂から提出された寄附申込である。
 なお、寄附申込には、寄附を行った71名(うち3名は匿名)の氏名、住所、それぞれの寄附者がまとめられた一覧表が添付されている。
2 旧条例第6条第1項第2号該当性について
 本号は、個人のプライバシーを最大限に保護するため、特定の個人を識別できると認められる情報は、原則として開示してはならないとするものである。
 ただし、本号ただし書ウ(ア)に規定する、公務員の職務の遂行にかかる情報に含まれる当該者の職名及び氏名については、県民に対する説明責任を果たすため、開示することとされている。
 本件公文書のうち、非開示とされた寄附者一覧に記載された寄附者の氏名と住所は、特定の個人を識別できると認められる情報である。
 ただし、記載されている氏名は、すべて県の職員であることから、本号ただし書ウ(ア)に規定する公務員の職務遂行に係る情報に含まれる氏名であるかを検討する。
 この点、実施機関は、職員からの寄附は、私的な金をそれぞれの自発的な意思に基づいて寄附したものであり、職務の遂行には当たらないと主張している。
 一方、異議申立人は、職員からの寄附は、勤勉手当の返還を強要されたものであって、振り込まれた金額は、高知県会計規則に基づき公金として戻入しなければならないものを、寄附金にすり替え、違法な手段で処理したものであり、私的な行為ではないと主張している。
 勤勉手当の正当な返還方法については、当審査会の判断するところではないが、本件事案の場合、返還を希望する職員からの寄附を秘書課代表中澤彰穂が取りまとめて、県に寄附を申し込み、県がこの寄附を受け入れる形をとっている。
 ここで行われた職員からの寄附という行為は、私的な行為であり、職務遂行に係るものではない。
 また、知事は職員に対し、期末手当の返還を呼びかけるメールを出しているが、寄附をした人数は、スト参加者2,469名のうち、71名(2.7%)にとどまっており、寄附された金額も635円から421,050円までとまちまちである。
 少数の職員が寄附に応じたに過ぎないことから見ても、実施機関の主張するとおり、返還を強要されたのではなく、メールを見た職員が、自発的な意思で、個人の思いに基づいて寄附したものであって、職務遂行に係る行為とは認められない。
 以上のことから、本件公文書中に記載されている氏名、住所は個人に関する情報であると認められ、かつ、ただし書ウ(ア)にも該当しないと判断する。
 したがって、実施機関が行った本件開示請求に対する部分開示決定は、妥当であると認められる。

第6 結論

 当審査会は、本件開示決定について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成15年2月7日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成15年4月4日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成15年4月30日 ・ 異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成16年11月15日
(平成16年度第11回第三小委員会)
・ 実施機関及び異議申立人から意見聴取を行った。
・ 諮問の審議を行った。
平成16年12月21日
(平成16年度第13第三小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成17年8月3日
(平成17年度第3回公文書開示審査会)
・ 諮問の審議を行った。
平成17年10月27日 ・ 答申を行った。

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