高知県公文書開示審査会答申第152号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第152号

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諮問第152号


第1 審査会の結論

 知事は、「最近における(株)横浜水産への対応経過等の説明」と題する文書について、本件開示請求に係る対象公文書として特定した上で、改めて高知県情報公開条例第10条第1項の決定を行うべきである。

第2 異議申立ての趣旨

本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成15年11月25日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「佐賀町よこはま水産に関する県支援及びその経過並びに県議会への報告資料(平成10年度~平成13年度分)の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成15年12月17日付けで行った開示決定及び部分開示決定(以下「本件開示決定」という。)について、その対象公文書に「最近における(株)横浜水産への対応経過等の説明」と題する文書(平成11年5月17日に知事室で行われた知事と県職員3名による協議の内容を記録したもの。以下「本件文書」という。)を含めることを求めるというものである。

第3 実施機関の本件開示決定理由等

 実施機関が決定理由説明書及び意見陳述で主張している本件開示決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
1  本件文書を本件開示決定の対象としなかった理由について
(1)  本件文書は、平成18年6月22日に県議会からの要請を受けて海洋局(現「海洋部」を指す。以下同じ。)内の書庫を探した際に、よこはま水産とは関係のない書類とともにあった背表紙にタイトルの記載がないファイル(以下「当該ファイル」という。)の中に綴じられていたものであり、同日の時点では、本件文書は当該ファイル以外には、海洋局内のその他の書類に含まれていなかった。
(2)  本件文書は、平成11年当時の関係者(海洋局の局長、次長、水産振興課長、同課長補佐)に確認したところ、「いつ、誰が作成し、どのように使用されたか」不明であった。なお、当時の水産振興課課長補佐は本件文書を、「課長からもらったものではないかと思う」との記憶があるが、知事との協議に出席した当時の局長・次長及び水産振興課長は本件文書について記憶がないとのことである。
 また、平成18年6月22日まで、現在の海洋局の職員は誰も当該ファイルの存在を知らず、いつから当該ファイルが書庫にあったものかも不明であった。当該ファイルは、平成11年から13年当時の関係者に確認したものの、誰が保管していたファイルかは不明であり、平成15年に開示請求を受けた当時の担当職員にも確認したが、当該ファイル及び本件文書は当時誰も引き継ぎを受けておらず、当該ファイルは組織的に引き継がれていなかったものである。
 さらに、当該ファイルには、決裁文書の原本など明らかに公文書に当たるようなものもなく、本件文書以外には、当該ファイルの所持人が手持ち資料として収集したと思われる各種資料(議事録、新聞、予算書、職員録、他機関の記録等のコピー等)が綴じられているだけである。
(3)  以上のように、平成18年6月22日時点では、本件文書は当該ファイル以外に海洋局内のその他の書類には含まれておらず、しかも、作成者、作成時期、用途等が不明であること、当該ファイルは平成11年度以降の担当者に引き継がれていないこと、及び職員が手持ち資料として保管していたものと思われることなどから、本件文書は、当該ファイルを所持していた職員の手持ち資料の一つであり、本件開示請求当時には、条例第2条第2項にいう公文書ではなかったと判断する。
 したがって、本件開示請求の対象文書については、本件開示決定によりすべて開示している。
(4)  なお、平成18年6月22日夕方に当該ファイルの存在を確認し、翌日午前中には本件文書を県議会に提出したほか、複数の職員で本件文書の内容を確認し、その後、海洋局で管理していることから、平成18年6月23日以降は公文書であると判断しており、異議申立人からの別件の開示請求に対して、本件文書を含む当該ファイルに入っていたすべての書類を平成18年7月14日付けの部分開示決定により開示している。
2 本件諮問に至る経緯について
(1)  本件開示請求に対し、平成15年12月17日付けで本件開示決定を行った。その後、平成18年6月22日に本件公文書が発見されたことから、異議申立人はまず、本件文書は公文書であり開示対象であるにもかかわらず、これに対する処分がなされていないとして、平成18年6月30日付けで本件開示請求に対する不作為に係る異議申立てを行い、それに対し、実施機関は、平成18年7月20日付けで本件文書が本件開示請求当時は条例第2条第2項にいう公文書ではなかったことを理由に当該異議申立てを却下した(以下「当該却下決定」という。)。異議申立人はさらに、平成18年7月27日付けで当該却下決定に対する異議申立てを行った。これが、本件諮問に至った異議申立てである。
(2)  本件異議申立ては、当該却下決定に対するものとなっているが、【1】本件異議申立ての趣旨は、本件開示決定を不服とするものであること、【2】実施機関の説明が不十分であったため、異議申立人が当該却下決定に対してもう一度異議申立てができると理解していたこと、【3】実施機関としても平成18年6月22日まで本件文書の存在を知らなかったわけであり、本件異議申立ては不服申立期間内になされたものと解されることから、本件異議申立てを本件開示決定に対するものと判断して当審査会に諮問した。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書、決定理由説明書に対する意見書及び意見陳述で主張している主な内容は、次のように要約できる。
1  本件文書は、知事室で知事に経過説明をした出席者あるいは当該出席者の指示を受けた者のいずれかである県職員が職務上作成したことが明らかな文書である。高知新聞の取材に対する知事のコメントも、本件文書に残っている「知事発言」の内容とほぼ一致しており、県職員が職務上作成したことは明らかである。本件文書の作成者は当時の水産振興課長と推認されるが、作成者本人がその確認を拒むことで作成者不明のため公文書と確認できない状態を認めてしまえば、多くの公文書が公文書でなくなる危険性が生じる。
2  本件文書は、海洋局の各課が使用する公用の書庫の棚に保管されていたのだから、組織的に管理されていたと言える。当該ファイルは、よこはま水産への融資を担当した海洋局水産経営指導課金融班の公文書が並ぶ棚にあったとのことであり、本件開示請求当時にその棚を探索していなかったのであれば、本件開示請求に対する応接としては相当の落ち度である。当該ファイルには、薄い文字ではあったが、背表紙の2カ所によこはま水産を示す「y」の文字が、さらに表紙の2カ所に「横」の漢字が記されており、当該ファイルは、外形的に全く無関係で判別不能のファイルではなかった。
3  平成11年当時、水産振興課長は本件文書を同課の課長補佐に渡し、課長補佐と職務上必要な書類として共有を図っていたこと、及び平成11年から平成13年まで同課の課長・課長補佐は同じ顔ぶれであり、その3年間本件文書が県としての「共通認識」を確認する書類として共有されていたことから、本件文書は組織的に管理、共有されていたことになる。さらに、平成14年度以降の海洋局の担当者が引継ぎを受けていなかった、その存在を知らなかった、あるいは、それを発見できなかったなどをもって公文書としての性格が否定されるのであれば、どのような公文書も公文書でなくなってしまう状況を認めてしまうことになるため、このような方便、運用は許されるものではない。

第5 審査会の判断

1 本件文書について
(1)  本件文書は、「最近における(株)横浜水産への対応経過等の説明」と題する文書である。それには、よこはま水産への融資に関する県の対応について平成11年5月17日に知事室で行われた知事と当時の海洋局の局長・次長及び水産振興課長の3名による協議(以下「本件協議」という。)の内容が記録されており、本件協議の日時・場所・出席者及び内容(海洋局長の説明内容とそれに対する知事の発言内容)に関する記載がある。
(2)  実施機関によれば、本件開示請求当時、本件文書の存在を知らなかったため、本件文書を対象公文書に含めずに平成15年12月17日付けで本件開示決定を行った。しかしながら、平成18年6月22日に県議会から本件文書があるはずだから提出せよという要請があり、改めて海洋局の書庫を探したところ、当該ファイルの中から本件文書が見つかったため、平成18年6月23日に議会へ提出した。同日以降は、本件文書を公文書として海洋局で保管しており、平成18年7月14日付けで別件の開示請求により異議申立人にも部分開示しているとのことである。なお、実施機関は本件文書の作成者、当該ファイルの当時の保管者とも確認できなかったと主張しているが、平成19年1月23日の県議会の100条委員会で当時の水産振興課長が本件文書を作成したと証言している。
2 条例第10条第1項の決定について
(1)  当審査会の任務は、公文書の開示請求に対する条例第10条第1項の決定について行政不服審査法に基づく不服申立てがあった場合に、実施機関からの諮問に応じ、当該決定の当否について審査することである。そして、行政不服審査法上の異議申立ての制度が、行政処分の違法性を争う裁判手続とは異なり、処分庁に対し異議申立てに係る処分の見直しを求めるものであり、当審査会の任務はその見直しを意見具申することであるから、当審査会は、本件のように、開示請求に対する決定後に事情の変化が生じている事案の審査においては、その後の事情の変化も考慮に入れて当該決定の当否を判断することが相当であると考える。
(2)  本件について見るに、実施機関は、本件開示決定から2年半後、県議会からの提出要請を受けて、改めて調査した結果、本件文書を発見し、それを県議会に提出している。
 実施機関が県議会にどのような文書を提出するかについては、当審査会が判断すべき事項ではないが、実施機関は、県議会に提出した期日以降は本件文書を公文書として保管しており、別件の開示請求により異議申立人にも本件文書を部分開示したというのであるから、少なくとも別件の開示請求において部分開示した範囲での本件文書の開示には支障がないものと考えられる。
 したがって、実施機関は、本件開示決定を変更し、本件文書について、本件開示請求に係る対象公文書として特定した上で、改めて条例第10条第1項の決定を行うべきである。
(3)  なお、実施機関においては、今後、非開示を伴う決定に対して異議申立てがなされている場合にあって、時の経過とともに非開示とする理由の全部又は一部がなくなった場合は、速やかに決定の変更又は取消しを行い、異議申立人に対して公文書の開示を実施すべきである。
3 その他
 異議申立人は、本件開示請求時における本件文書の「公文書」該当性を主張しているが、この主張は、本来、本件文書の存在を前提に成り立つものであるため、異議申立人は、結局のところ、実施機関が本件文書を発見できなかったことの不当性を指摘するものと解される。
 一方、実施機関は、本件文書を対象公文書としなかった理由として、【1】平成18年6月22日まで当該ファイルの存在を知らなかった、【2】同日の時点では、本件文書は、当該ファイル以外には海洋局内のその他の書類に含まれていなかったと主張している。
 そこで、念のため、当該ファイルの調査に関する実施機関の対応及び本件文書の不保管に関する実施機関の事務処理の不当性について、以下検討する。
(1) 当該ファイル調査の不当性
ア  実施機関によれば、当該ファイルが発見された書庫は、海洋局内に2カ所ある局内5課の共用の書庫の1つであり、海洋局水産経営指導課(現「漁業経営課」)の金融班の書類を保管している棚に他の書類とともに立てて置かれていた。よこはま水産に関しては、海洋局では局長、水産振興課長及び同課長補佐(主として課長補佐)が当時主体的に関わっていたことから、本件開示請求に関しては、水産振興課の職員が対応した。
 金融班は平成14年度まで水産振興課にあり、平成15年度に水産経営指導課に移管されたが、特に金融班がよこはま水産を担当していたということはなく、よこはま水産を主として担当していた水産振興課課長補佐の職が平成15年度になくなったことから、よこはま水産の関係書類は、水産振興課構造改善班が引き継いでおり、共用の書庫ではなく、水産振興課内のキャビネットに保管されていたとのことである。そして実施機関は、当該ファイルがよこはま水産の関係書類を保管している水産振興課内のキャビネットではなく、課外の書庫、しかも他課の棚にあったため、本件開示請求に対応した水産振興課の職員も、そこまで思いが及ばなかったというのが実態であったと主張している。
イ  当審査会が当該ファイル及び海洋局内の書庫を見分したところ、以下の事実が確認された。
 まず、当該ファイルの背表紙には、通常、高知県公文書規程(昭和39年高知県訓令第64号。以下「公文書規程」という。)に基づいて公文書を保管するファイル(以下「公文書保存ファイル」という。)に記載される正式のタイトルはなかったが、背表紙の上下にはそれぞれ鉛筆で書かれた小さな「y」の文字が、また、表紙には黒のボールペンで書かれた小さな「横」の文字とオレンジの蛍光ペンで書かれたやや大きい「横」の文字があった。
 当該ファイルには、本件文書の回議書等はなく、本件文書とともに、平成2年頃から平成13年4月までの議事録・新聞・予算書・職員録・他の機関の記録等の各種資料のコピーが綴じられており、これらの多くはよこはま水産関係の資料であった。
 また、当該ファイルの置かれた書庫の棚にあった書類は、主として遠洋・近海カツオマグロ関係の書類(減船関係補助金、経営分析、金融懇談会等の関係書類)であり、よこはま水産の関係書類は見当たらなかった。
ウ  これらの事実を考慮すると、当該ファイルについて、よこはま水産を示すと思われる「y」及び「横」の文字が記載されたファイルに主としてその関係資料が綴じられており、海洋局内の書庫で発見されたことから、よこはま水産に関わっていた当時の同局職員が職務の便宜上取得した資料を綴じたものであり、当該職員又は当該職員からそれを引き継いだ他の職員が、平成13年4月以降に、今後も引き続き局内の職員が職務上必要な場合がありうると判断し、書庫の棚に置いたものであると推測される。
 もっとも、背表紙と表紙に「y」と「横」の文字が手書きで書かれ、本件文書の回議書等も含まない雑多なコピーが綴じられているだけで、しかも、よこはま水産と無関係な書類とともに置かれていたことから、当該ファイルは明らかに公文書保存ファイルではなく、それゆえ、その後、本件開示請求時の同局職員に引き継がれることがなかったとしても、そのことはあながち不合理なことでもないし、不当でもないと考えられる。
 また、実施機関は、本件開示請求に係る対象公文書として50件の文書を開示又は部分開示しており、異議申立人も、本件文書を除いて他の対象公文書の存在を主張していない。
 したがって、当該ファイルの存在を知らず、本件文書を発見できなかったという本件開示請求に対する実施機関の対応について、不当であったとまで言うことはできない。
(2) 本件文書の不保管の不当性について
ア  実施機関は、本件文書が当該ファイル以外に保管されていなかったことについて、【1】この種の協議内容の記録は保管することが多いように思うが、必ずしも保管するということにはなっていない、【2】正式の議事録は、参加者や責任者が内容を確認した上で保管するが、正式の議事録を作成せず、参加者が自分の覚えとして記録するだけの場合もあると主張している。
イ  知事との本件協議について、正式の議事録を保管していなかったことに疑問がないでもない。公文書規程第7条第5号は、公文書の一つとして「部内関係公文書」を規定しており、部内協議の議事録が起案されれば、この部内関係公文書に該当する。
 しかしながら、実施機関においては日常的に数多くの協議が行われているはずであり、また、公文書規程においてどのような部内協議について議事録を残すべきかに関する定めもないことから、本件協議の議事録を保管しなかったという実施機関の事務処理が異例であったと考えがたく、それについて不当であったとまで言うことはできない。

第6 結論

 当審査会は、本件開示決定について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成18年8月4日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成18年8月18日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成18年9月26日 ・ 異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成19年2月13日
(平成18年度第8回第一小委員会)
・ 実施機関及び異議申立人からの意見聴取を行った。
平成19年3月26日
(平成18年度第9回第一小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成19年5月1日
(平成19年度第1回第一小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成19年6月12日
(平成19年度第2回第一小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成19年7月2日
(平成19年度第3回第一小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成19年7月30日
(平成19年度第1回公文書開示審査会)
・ 諮問の審議を行った。
平成19年8月29日 ・ 答申を行った。

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