公開日 2009年02月27日
更新日 2014年03月16日
高知県公文書開示審査会答申第157号
諮問第157号
第1 審査会の結論
知事は、「起案文書に於ける、土地改良法第52条の2第2項第1号に該当する理由となる行政手続法第5条の規定する農業基盤課の定めた審査基準のある公文書」について不存在とした決定を取り消し、本件開示請求に係る公文書を特定した上で、改めて高知県情報公開条例第10条に基づく決定を行うべきである。
第2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成20年3月22日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「起案文書に於ける、土地改良法第52条の2第2項第1号に該当する理由となる行政手続法第5条の規定する農業基盤課の定めた審査基準のある公文書」(以下「本件公文書」という。)の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成20年4月7日付けで行った公文書不存在決定の取り消しを求めるというものである。
第3 実施機関の不存在決定理由等
実施機関が決定理由説明書及び意見陳述で主張している不存在決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
本件異議申立ては、本件公文書の不存在決定を行ったことに対し提起されたものであるが、申請により求められた換地計画の認可をするかどうかの判断は、土地改良法令の定める判断基準及び「換地計画実施要領(昭和49年7月12日付け49構改B第1232号構造改善局長通達)」(以下「換地計画実施要領」という。)に示された判断基準をもって審査しており、実施機関が独自に定めた他の審査基準は存在しない。
また、異議申立人が本件公文書であると特定して主張している「平成15年以降使用共同施行営工事法手続様式 換地法手続様式」(以下「換地法手続様式」という。)は、表題のとおり法手続様式を示す目的で作成されたものであり、したがって、審査基準ではない。
以上により、実施機関が独自に定めた審査基準のある公文書は作成していないため、公文書不存在決定とした。
第4 異議申立人の主張
異議申立人が異議申立書及び意見陳述で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
実施機関は、換地計画認可手続の申請について、換地法手続様式を作成し、審査基準として公表している。
したがって、本件公文書は存在する。
第5 審査会の判断
1 本件公文書について
本件公文書は、土地改良法第96条(同法第52条第1項等を準用。)に基づき共同施行等が行う土地改良事業の換地計画(以下「本件換地計画」という。)の認可に係る審査基準を記載した文書である。
実施機関は、長岡郡大豊町津家土地改良共同施行が行った大豊町津家地区の換地計画の認可申請に対し、平成19年9月20日付けで認可しない旨の行政処分(以下「本件行政処分」という。)を行った。本件開示請求は、本件行政処分に関連して行われたものである。
実施機関によれば、本件換地計画の認可に係る審査基準は、1土地改良法令の定める判断基準及び2国(農林水産省構造改善局長)の通達である「換地計画実施要領」で示された判断基準であるとのことである。
なお、異議申立人は、実施機関が作成した換地法手続様式を本件公文書に該当すると主張しているが、実施機関によれば、これは、法手続の様式を示す目的で作成されたものであり、当該審査基準ではないとのことである。
2 本件公文書の不存在について
(1) 実施機関は、異議申立人は「農業基盤課の定めた審査基準」の開示を請求しているが、実施機関において独自に定めた審査基準は存在しないため、不存在決定を行ったと主張しているので、以下検討する。
(2) まず、土地改良法に基づく本件換地計画の認可は、行政手続法にいう「申請に対する処分」に該当し、同法第5条第1項により、行政庁は、当該認可に係る審査基準を定めるものとされている。
本件換地計画の認可に係る審査基準の設定について、実施機関は、高知県独自の審査基準は設けていないと主張する一方で、国が定めた「行政手続法の施行に伴う土地改良法に基づく処分に係る審査基準の設定について(平成6年9月13日付け6−9構造改善局総務課施設管理室長・構造改善局農政部管理課長通達)」(以下「本件通達」という。)に基づき「換地計画実施要領」で示された判断基準を当該審査基準として設定運用していると主張している。そして、実施機関は、国が平成8年度に実施した行政手続法の施行状況調査において、当該審査基準について「設定済」で、その根拠は「法令所官省庁からの通達等に基づき設定」と回答している(総務庁行政管理局行政手続室及び自治省行政体制整備室平成9年6月16日付け「行政手続法の施行状況に関する調査」)。
実施機関が自ら作成したものでないにしても、本件通達に基づき「換地計画実施要領」で示された判断基準を当該審査基準として設定しているというのであるから、この「換地計画実施要領」で示された判断基準は、異議申立人が請求する実施機関の定めた審査基準に該当すると考えられる。
(3) また、本件開示請求は本件行政処分に関連して行われたものであり、異議申立人は、実施機関が定めたものかどうかはともかく、本件換地計画の認可に係る審査基準が何かを知りたいがために本件開示請求を行ったとも考えられる。もしそうであれば、土地改良法令の定める判断基準も本件公文書に該当する。
(4) したがって、本件換地計画の認可に係る審査基準が土地改良法令の定める判断基準及び「換地計画実施要領」で示された判断基準である旨を伝え、これらの両方を請求したのかあるいは後者のみを請求したのかを異議申立人に確認し、本件開示請求に係る公文書を特定した上で、改めて条例第10条に基づく決定を行うべきである。
第6 結論
当委員会は、本件不存在決定について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。
第7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、次のとおり。
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成20年7月3日 | ・ 実施機関から諮問を受けた。 |
平成20年7月14日 | ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。 |
平成20年8月7日 | ・ 実施機関から意見陳述書を受理した。 |
平成20年8月18日 (平成20年度第1回第一小委員会) |
・ 実施機関及び異議申立人からの意見聴取及びの諮問の審議を行った。 |
平成20年10月15日 (平成20年度第2回第一小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成20年11月26日 (平成20年度第3回第一小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成21年1月14日 (平成20年度第4回第一小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成21年4月30日 | ・ 答申を行った。 |
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