高知県公文書開示審査会答申第158号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第158号

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諮問第158号


第1 審査会の結論

 知事が「平成13年度都計第2−4号都市計画道路はりまや町一宮線河川水辺環境調査委託業務成果報告書第3編 底生動物編」、「平成13年度都計第2−4号都市計画道路はりまや町一宮線河川水辺環境調査委託業務成果報告書第6編 参考資料」、「平成14年度緊道整(B)第2−3号第1回変更設計書」、「平成14年度緊道整(B)第2−3号成果報告書」、「平成19年度住促街第1―19号 報告書」、「平成20年度住促街第1―16号 業務計画書」を部分開示とした決定は、妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成20年8月26日及び平成20年8月28日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「シオマネキに関して『ア、平成14年度及び19年度浦戸湾での生息状況を調査した場所、日時、担当者(参加者)、要した費用報告書類』、『イ、19年度の移植後のモニタリングについて(日時、場所、場所毎の移植数及び生存確認数、証拠写真)』、『ウ、現在までの浦戸湾での高知市の調査結果書類(報告等)』、『エ、19年度移植事案の20年度モニタリング計画及び保護対策』」及び「シオマネキに関して平成13年度の現地調査に関する資料」の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成20年9月9日付けで行った「『平成14年度緊道整(B)第2−3号第1回変更設計書、成果報告書』、『平成19年度 住促街第1―19号 報告書』、『平成20年度 住促街第1―16号 業務計画書』」及び「平成13年度都計第2−4号都市計画道路はりまや町一宮線河川水辺環境調査委託業務、成果報告書 第3編 底生動物編、成果報告書 第6編 参考資料」(以下「本件公文書」という。)の部分開示決定を取り消し、非開示とした調査及び移植地の地名、位置図、平面図、写真等の開示を求めるというものである。

第3 実施機関の部分開示決定理由等

 実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している部分開示決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
1 本件公文書について
  本件公文書は、都市計画道路はりまや町一宮線の整備における新堀川の上部を一部覆う桟橋形式による道路構造の計画に伴い行われた新堀川のシオマネキを含む希少種の生息状況等の調査結果、シオマネキの確認によって設置された専門家からなる「都市計画道路はりまや町一宮線新堀川生態系検討委員会」(以下「生態系検討委員会」という。)の提言、シオマネキの捕獲・移植や移植先・移植方法の検討や移植後のモニタリング等に関する報告書及び業務計画書などである。
2 条例第6条第1項第2号の該当性について
  本件公文書のうち、生息状況等の調査者の住所及び生態系検討委員会委員の住所は、個人に関する情報であって、特定個人を識別することができる情報で、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しないため非開示とした。
3 条例第6条第1項第6号の該当性について
 (1) シオマネキは、平成14年1月に作成された「高知県レッドデータブック動物編」の中で絶滅危惧種IA類に指定され、また、高知県希少野生動植物保護条例(平成17年10月21日条例第78号。以下「保護条例」という。)に基づき捕獲等が原則禁止とされている県指定種に指定された希少種である。
 (2) 本件公文書の非開示とした調査結果、移植地の地名、位置図、平面図及び写真等は、シオマネキの分布状況や生息状況に関する情報であることから、開示することにより特定の者に不当な利益を与え、又は県民全体の利益を損なう等、希少動植物の保護行政の円滑な執行に著しい支障を生ずる。
 (3) 希少種の具体的な生息範囲に係る情報については、開示することにより、乱獲その他生息・生育地の攪乱を誘発するおそれがあるため、その保全上の観点から慎重な対応が必要と考えられる。
 (4) 情報公開制度は、何人に対してもその請求の目的の如何を問わず開示請求を認める制度であり、その開示された公文書の使用に制限がないことを鑑みれば、開示することにより、「希少種の保全」という県民全体の利益を損なうものであると認められる。
 以上のことから非開示としたものである。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書及び意見陳述で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
1 条例第6条第1項第6号の該当性について
 (1) 条例第6条第1項第6号は事務事業に関する情報である。本件公文書の処分は都市計画課・高知駅周辺都市整備事務所が行っており、ここでいう事務事業とは、高知駅周辺都市整備事務所による道路整備を指している。しかしながら、シオマネキを移植した業務についての公文書を公開することで、道路整備事業に直接の支障を生じることはなく、事務事業の支障の有無は、保護条例に基づく事務事業に支障を生じるか否かで判断すべきもので、道路整備担当課の独自の見識や土木部出先事務所だけで判断してよいものではない。
 (2) 対象公文書を開示すれば県民の乱獲で絶滅すると受け取られているが、これは、多くの県民を敵視するもので、条例の原理原則と相容れない。新堀川にシオマネキが生息することは、市民多数が知るところだが、今まで不法に捕獲した県民はいない。本件決定は、事実の検証無しに行われており客観性・合理性がない。
 (3) 高知県希少野生動植物保護基本方針によると「希少野生動植物の保護施策の実効性を高めるには、事業者や県民の保護への適切な配慮や協力・参加が不可欠ですので、希少野生動植物の現状やその保護の重要性に関する環境学習の機会を充実させ事業者や県民等の理解を促進し、意識を高めるための普及啓発活動を積極的に推進します。」と方向付けられているため、本件決定は、県民の協力・参加を求める見地で行われるべきである。
 (4) 条例第10条第4項で「非開示決定において第6条第1項各号の規程を適用した根拠を具体的に示したものでなければならない」とあるが、「特定の者に不当な不利益をあたえる」、「県民全体の利益を損なう」といった部分開示の決定理由は、抽象的で客観的根拠が何も示されていない。
 (5) 平成13年度事業に関する情報も平成19年度事業情報も全く同じ扱いにされているが、5年前の調査状況や移植状況当時の写真など全て秘匿する理由はない。
 (6) 本件決定は、条例の趣旨に反し、県民の知る権利を侵害するだけでなく、希少野生動植物保護行政に歪みを生じさせる。各種資料の公開により、専門家や自然保護団体及び県民のチェックにより、公正な野生動物の保護行政を確立するためにも条例の適正な運用が必要である。

第5 審査会の判断

 本件の実施機関は高知駅周辺の都市整備を所掌する都市計画課・高知駅周辺都市整備事務所であるが、当審査会は、答申を行うにあたり、希少野生動植物の保護に関する業務を所掌し、保護条例の所管機関である環境共生課から意見を聴取のうえ、審査を行った。

1 本件公文書について
 本件公文書において非開示とした箇所は、別紙一覧表のとおりである。なお、非開示とした情報は、調査者並びに生態系検討委員会委員の住所、シオマネキ保護対策現地調査会議における発言者の氏名及びシオマネキの生息地並びに移植地に関する地名、位置図、平面図、写真であり、住所及び氏名は個人に関する情報で特定の個人が識別されるものであり、地名、位置図、平面図、写真はシオマネキの生息地並びに移植地が特定されるものである。

2 条例第6条第1項第2号の該当性について
 本号は条例第3条後段の個人に関する情報が十分に保護されるように最大限の配慮をしなければならないとの規定を受け、特定の個人を識別することができると認められる情報は非開示とすることを定めている。個人のプライバシーの観点から、基本的人権を最大限保護するため、プライバシーであるか否か不明確な個人に関する情報も含めて、個人を識別できる情報は、本号ただし書のア、イ及びウに該当する情報を除き、非開示とするものである。
 本件公文書のうち、生息状況等の調査者の住所及び生態系検討委員会委員の住所は、個人の情報であって、特定個人を識別することができる情報であり、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しないため非開示とした実施機関の判断は妥当である。

3 条例第6条第1項第6号の該当性について
 本号は、県又は国等が行う事務事業のうち、開示することにより、実施の目的が失われ、又は公正若しくは円滑な遂行に著しい支障を生じることが客観的に明白である情報は、非開示とすることを定めたものである。
 本件公文書において対象となるシオマネキは、高知県レッドデータブックで絶滅危惧種として指定され、保護条例に基づいて捕獲が原則禁止とされている県指定種に指定された希少種であり、高知県レッドデータブックにおいて、その生息地については、四万十川間崎の舟溜まり、竹島川の河口、須崎湾の奥地といった記載はあるが、具体的な生息地・生息範囲は明らかにされていない。  
 また、公文書の開示請求目的の如何を問わず、広く県民に対して情報を公開するという情報公開制度の趣旨からすれば、仮に、捕獲を目的とした請求理由であってもその請求を排除できず、捕獲された場合には、シオマネキの保護に著しい支障を生ずるおそれがある。これらのことから、当該情報の開示によって、シオマネキの乱獲または生息地の攪乱を引き起こし、県又は国等が行う希少動植物の保護行政の円滑な執行に著しい支障を生ずることは明らかであり、非開示とした実施機関の判断は妥当である。

第6 結論

 当審査会は、本件部分開示決定について具体的に検討した結果、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成20年9月29日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成20年10月8日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成20年12月24日
(平成20年度第1回第三小委員会)

・   実施機関及び異議申立人並びに参考人からの意見聴取及びの諮問の審議を行った。
・ 諮問の審議を行った。

平成21年2月20日
(平成20年度第2回第三小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成21年3月19日
(平成20年度第3回第三小委員会)

・ 実施機関及び関係機関(環境共生課)から意見聴取を行った。

平成21年5月15日
(平成21年度第1回第三小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成21年9月8日
(平成21年度第1回公文書審査会全体会)
・ 答申案の検討を行った。
平成21年11月18日 ・ 答申を行った。

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