高知県公文書開示審査会答申第161号

公開日 2010年04月28日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第161号

〈概要版へ〉

諮問第161号


第1 審査会の結論

 知事が、「上海列車事故時の県が窓口となっていた組織(対策会議)における中国と岡村勲弁護士との間の和解書及び合意書」を不存在とした決定は、妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ては、異議申立人が平成21年4月17日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「上海列車事故時の県が窓口となっていた組織(対策会議)における中国と岡村勲弁護士との間の和解書及び合意書」(以下「本件公文書」という。)の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成21年4月22日付けで行った不存在決定を不服として、当該決定の取り消しを求めるというものである。

第3 実施機関の不存在決定理由等

 実施機関が決定理由説明書及び意見陳述で主張している不存在決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
 県が当時設置した「高知学芸高校列車事故補償等対策会議(以下「対策会議」という。)」の趣旨は、当該事故が国情、補償制度の異なる海外での修学旅行中の事故であることから、学校、遺族、負傷者だけで対応することは困難であるとの認識のもと、関係機関との連絡調整や補償問題等の検討、その他の事後処理に関し、県と学校、遺族会、負傷者保護者会が連携を密にして的確な措置を講ずるためである。県は中国との補償交渉等において、外務省及び当時の文部省との橋渡しの役目をしていたに過ぎず、よって当事者でない県は和解書及び合意書を取得する立場ではなかった。また、念のため、現存する高知学芸高校列車事故にかかる4冊の綴りを確認してみたが、本件公文書は含まれておらず存在しないため、不存在決定を行ったものである。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
 高知学芸高校上海列車事故は、高知学芸高校が修学旅行先の中国にて移動中に巻き込まれた列車衝突事故であり、中国との補償交渉を行うことについて、日中の当事者(日本の遺族会・負傷者保護者会・学芸高校、中国政府・中国上海鉄路局)及びそれぞれ委任を受けた岡村勲弁護士(上海列車事故補償問題顧問団(以下「顧問団」という。)団長)ら日中双方の弁護士間の和解に至る補償交渉からすれば、確かに県は当事者ではない。しかし、外国政府との補償交渉という前例がない難題に対し、県は総務部長を会長とする対策会議を立ち上げて、また事務局を当時の文書学事課(現「私学・大学支援課」を指す。以下同じ。)に設置しており、内外に示された正式機関であって、補償交渉における事務局として当事者であり、かつ公的機関である。県は対策会議がスタートされた以上、当該機関における文書等は公文書であって、県としては当事者の一員になったものであり、第三者ではない。
 また、高知学芸高校上海列車事故後の経過をまとめた『心の補償』(著者:後藤淑子、1993年、講談社から発刊)において、当時、「遺族が県庁で保管している書類の中にある合意書を閲覧した」との記載があり、遺族が当該文書の一つである合意書を県において確認している。
 このことから、補償交渉における事務局として当事者の一員になっていた高知県(当時の文書学事課)は、紛れもない公文書である和解書や同意書を保有しているはずである。

第5 審査会の判断

1 県は昭和63年3月24日に発生した高知学芸高校上海列車事故を受け、列車事故にかかる補償等に関し、関係者が連携を密にして的確な措置を講ずるために、同年3月30日に高知県、学芸高校、遺族会、負傷者保護者会で構成する対策会議を設置している。そして対策会議において顧問団が選任され、顧問団団長に岡村勲弁護士が就任した。本件公文書は、中国と岡村勲弁護士との間の補償交渉に関する和解書及び合意書である。
2 実施機関は、対策会議が補償交渉等において、外務省及び当時の文部省との橋渡しの役目をしていたに過ぎず、よって当事者でないと主張する。
一方、異議申立人は、県は総務部長を会長とする対策会議を立ち上げ、また、事務局を当時の文書学事課に設置しており、補償交渉における事務局として当事者であり、単なる第三者ではないと主張している。
 県が対策会議を設置して庶務を当時の文書学事課におき、補償交渉においてオブザーバーとして出席するとともに、補償交渉が円滑に進行するよう側面支援を行い、合意書の調印式に知事が立ち会う等、諸般の対応を行っていたことが認められる。しかしながら、合意書の調印は顧問団団長と中国側の賠償談判代表団団長が行ったものであり、対策会議は関係機関との連絡調整や補償問題等の検討、その他の事後処理に関して支援するに過ぎなかったことが認められることから、本件公文書を取得する立場になかったとの実施機関の説明は一定整合性があるとして認めざるを得ない。また、実施機関が、現存する高知学芸高校列車事故にかかる綴りを精査して、その公文書を確認した結果、不存在決定としていることから、本件公文書が不存在であるとの判断も認めざるを得ない。

3 また、異議申立人は『心の補償』において、「遺族が県庁で保管している書類の中にある合意書を閲覧した」と記されていることを挙げ、県が本件公文書を保有しているはずであると主張している。
これに対し県は、本件公文書を保有していないと主張している。
 当審査会は、『心の補償』の中に、遺族が県庁で保管してある書類を閲覧したが、合意書だけで和解書はなかったとの趣旨の記述が存在することを確認した。そこで、一時的にであれ県が預かっていたことも考えられるため、当審査会は、条例第16条第11項に基づき、岡村勲弁護士に対して、本件公文書作成に関する事実確認並びにその書面の写しの県への提出の有無や、これに代わる合意書調印による補償交渉妥結に関する県への報告等の有無について回答を求めた。しかし、回答が得られず、県が本件公文書を保有していることについて確証が得られなかった。
以上のことから、実施機関が行った不存在決定は妥当なものであると判断する。

第6 結論

 当審査会は、本件公文書を具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成21年4月30日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成21年5月18日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成21年6月11日 ・ 審査請求人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成21年8月12日
(平成21年度第1回第二小委員会)
・ 実施機関の意見聴取、異議申立人からの意見聴取及び諮問の審議を行った。
平成21年10月27日
(平成21年度第2回第二小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成21年11月25日
(平成21年度第3回第二小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成22年2月23日
(平成21年度第2回公文書開示審査会)
・ 諮問の審議を行った。
平成22年4月23日 ・ 答申を行った。

この記事に関するお問い合わせ

高知県 総務部 法務文書課

所在地: 〒780-8570 高知県高知市丸ノ内1丁目2番20号
電話: 法令担当 088-823-9329
法人指導・行政不服審査担当 088-823-9160
訴訟担当 088-823-9619
公文書担当 088-823-9045
情報公開・個人情報担当 088-823-9156
ファックス: 法令、法人指導・行政不服審査、訴訟 088-823-9128
公文書、情報公開・個人情報 088-823-9250
メール: 110201@ken.pref.kochi.lg.jp
Topへ