公開日 2012年09月20日
更新日 2014年03月16日
高知県公文書開示審査会答申第162号
諮問第162号
第1 審査会の結論
知事が「「高知県指令19高農基第576号」に係る行政手続法第12条に規定する高知県知事の定めた処分基準」について不存在とした決定は、妥当である。
第2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成22年5月24日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「高知県指令19高農基第576号に係る行政手続法第12条に規定する高知県知事の定めた処分基準」(以下「本件公文書」という。)の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成22年6月7日付けで行った公文書不存在決定を取り消し、本件公文書の開示を求めるというものである。
第3 実施機関の不存在決定理由等
実施機関が決定理由説明書及び意見陳述で主張している不存在決定理由の主な内容は、次のように要約できる。
1 平成19年9月20日付けの「高知県指令19高農基第 576号」は、長岡郡大豊町津家土地改良共同施行の施 行委員長から申請のあった換地計画書の認可申請に ついて、認可できないと拒否した処分(以下「本件 行政処分」という。)である。
2 本件行政処分は、行政手続法(平成5年法律第88 号)第2条第4号ロにおいて定義する不利益処分の除外規定である「申請により求められた許認可等を拒否する処分」に該当する。
このため、「高知県指令19高農基第576号」に係る同法第12条に基づく処分基準は定めていないことから、本件開示請求に対し不存在決定を行ったものである。
第4 異議申立人の主張
異議申立人が異議申立書、意見書及び意見陳述で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
1 本件公文書の不存在について
「高知県指令19高農基第576号」は「何らかの利益を付与する処分を求める行為」に対して「認可できない」と命じるものであるから、不利益処分に該当する。
又、昭和24年の土地改良法の制定以来、土地改良法の主務官庁である高知県知事の分掌事務を行う農業基盤課には、60年以上にわたって蓄積してきた数々の不利益処分の事例・前例が存在することは県民周知の事実であり、この実例・前例が本件公文書にあたるものである。
したがって、本件公文書が存在しないとする合理的理由は無く、これを開示すべきである。
2 忌避の申立てについて
高知県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)会長及び委員全員について、本件行政処分に係る他の異議申立ての審議を行っていることから、忌避を申し立てる。
又、異議申立人が別件で告訴している審査会事務局の職員及びそれらの職員の職務上の命令を受ける立場にある審査会事務局のその他の職員についても忌避を申し立てる。
第5 審査会の判断
1 本件公文書について
実施機関は、長岡郡大豊町津家土地改良共同施行が行った大豊町津家地区の換地計画の認可申請について、土地改良法(昭和24年法律第195号)第96条において準用する同法第52条の2に基づき、平成19年9月20日付けの「高知県指令19高農基第576号」において、これを認可できないとする本件行政処分を行った。
本件公文書は、本件行政処分に係る行政手続法第12条に規定する処分基準である。
2 本件公文書の不存在について
(1)実施機関は、本件公文書について、本件行政処分は行政手続法第2条第4号にいう不利益処分に該当せず、それゆえ処分基準を定めていないとして不存在決定を行っている。
これに対し、異議申立人は、本件行政処分は不利益処分に該当するとして本件不存在決定を争っているので、以下検討する。
(2)行政手続法は、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資するために、処分等を行う場合の事前手続に関する基本的ル−ルを定めている。
まず、同法第5条第1項は、処分のうち申請に対する処分について、「審査基準を定めるものとする。」と規定している。ここにいう「申請」とは、「法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否をすべきこととされているものをいう。」と規定されている(同法第2条第3号)。それゆえ、申請に対する処分とは、許認可等を求める申請に応答して下される処分のことであり、これには、申請により求められた許認可等を認容する処分、申請に求められた許認可等を拒否する処分(以下「申請拒否処分」という。)の両方が含まれる。
なお、申請拒否処分に際しては、当該処分の理由の提示が義務付けられている(同法第8条)。
一方、同法第12条は、処分のうち不利益処分について、「処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。」と規定している。
又、不利益処分に際しては、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、意見陳述のための手続を執ることが義務付けられている(同法第13条)。ここにいう「不利益処分」とは、「行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。」と規定されている(同法第2条第4号)。ただし、申請拒否処分については、この不利益処分から除かれている(同法第2条第4号ロ)。
許認可等を申請して拒否されるという申請拒否処分については、希望した許認可等を受けられないので、申請者がその限りで不利益を受けることは確かであるが、行政手続法は、これを不利益処分に含めず(同法第2条第4号ロ)、あくまで申請に対する処分の一種として取り扱うこととしている。
(3)本件行政処分は、換地計画の認可申請に対して認可できないとしたものであるから申請拒否処分であって、これは申請に対する処分には該当するが、不利益処分には該当しないと認められる。
したがって、行政手続法は、そもそも本件行政処分に係る処分基準の設定を義務づけていないので、これを定めていないとする実施機関の主張には合理性があり、本件公文書について不存在とした決定は妥当であると判断する。
3 忌避の申立てについて
(1)本件の審理において、異議申立人から、当審査会に対して、過去に本件行政処分に係る他の不服申立ての審議を行っていることから、審査会の会長及び委員全員について、又、別件で告訴している審査会事務局の職員及びその他の職員について、それぞれ忌避の申立てがあった。
(2)審査会の会長及び委員全員の忌避の申立てについて
条例第15条は、実施機関は、第10条第1項の決定について行政不服審査法(昭和37年法律第160号)の規定に基づく不服申立てがあった場合は、当該不服申立てを却下するときを除き、速やかに、審査会に諮問し、同審査会から答申があったときは、これを尊重して、当該不服申立てに対する裁決又は決定をしなければならないと規定している。
審査会の審議において過去の諮問案件を審議した委員がその後の諮問案件を審議することは、条例の定める審査会の制度上当然予定されていることであり、そのことをもって審査会の審議の独立性及び中立性が損なわれるおそれがあるものとすることはできず、したがって、審査会の会長及び委員全員の忌避の申立ては認められない。
(3)事務局職員の忌避の申立てについて
審査会の事務局は、審査会の庶務を処理するにとどまり、審査会の審議は審査会の委員のみで行い、審査会の議事は委員の過半数をもって決しているので(高知県公文書開示審査会規則(平成2年規則第20号)第4条・第5条)、事務局職員に関する事情により、審査会の審議の独立性及び中立性が損なわれることはない。
しかしながら、異議申立人からの忌避の申立てを受けて、審査会の事務局から、当審査会に対して、告訴対象者である事務局職員は本件の審議のすべてに出席しないことにし、告訴対象者以外の事務局職員に事務局の運営を行わせるようにしたいとの申し出があった。そこで、当審査会としては、外観的にも審査会の審議の独立性及び中立性に疑義を受けることのないようにとの事務局からの申し出の趣旨を尊重し、これを認めることにした。したがって、本件の審議においては、告訴対象者以外の事務局職員に事務局の運営を行わせることにした。
第6 結論
当審査会は、本件不存在決定について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。
第7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、次のとおり。
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成22年6月18日 | ・ 実施機関から諮問を受けた。 |
平成22年7月2日 | ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。 |
平成22年9月3日 |
・ 実施機関から意見聴取を行った。 |
平成22年10月13日 (平成22年度第2回第二小委員会) |
・ 異議申立人からの意見聴取及び諮問の審議を行った。 |
平成22年12月16日 (平成22年度第3回第二小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成23年3月29日 (平成22年度第1回公文書開示審査会全体会) |
・ 答申案の検討を行った。 |
平成23年4月7日 | ・ 答申を行った。 |
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