高知県公文書開示審査会答申第164号

公開日 2012年09月26日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第164号

諮問第164号


第1 審査会の結論

 知事が「『建設残土等に対する港湾施設使用許可申請取扱要領』の施行後に、当該要領に基づく手続きをせずに県外の建設残土を宿毛湾港に陸揚げした業者から提出させた始末書等一式」について部分開示とした決定は、妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成22年11月29日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「『建設残土等に対する港湾施設使用許可申請取扱要領』の施行後に、高知県の湾港に陸揚げされた建設残土が、無害であることを確認するために、陸揚げをした業者に提出させた書類」(以下「本件公文書」という。)の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成22年12月6日付けで行った部分開示決定のうち、個人の印影の非開示部分を除く部分について非公開としたことを不服として、当該決定の取消しを求めるというものである。

第3 実施機関の部分開示決定理由等

 実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している部分開示決定理由の主な内容は、次のように要約できる。
1 対象公文書について
港湾に建設残土を陸揚げするため係留施設を使用する際は、高知県港湾施設管理条例第5条第2項(昭和29年条例第53号。以下「管理条例」という。)の規定に基づく使用許可申請を行うとともに、建設残土の発生から最終処分までが適正に行われ、かつ当該建設残土に有害な物質等が含まれていないことを確認するため、平成19年7月5日制定・施行した「建設残土等に対する港湾施設使用許可申請取扱要領」(以下「要領」という。)に基づく書類を提出する必要がある。
本件公文書は、平成19年8月10日宿毛湾港に上記の手続をせずに建設残土を積載した貨物船を係留施設に接岸し、建設残土を陸揚げ(以下「本件陸揚げ」という。)した法人(以下「本件法人」という。)に建設残土の運搬経路や有害物質の有無を確認するために、本件法人から提出させた、その顛末を記した始末書とこれに関する文書(要領に定めた様式等)である。
2 部分開示決定の理由
(1) 条例第6条第1項第2号該当性
本件公文書のうち、非開示とした個人の住所、氏名、電話番号、代表者又は責任者の氏名は、開示することで、特定の個人を識別することができる情報であり、かつ同号ただし書にも該当しないと認められる。
(2) 条例第6条第1項第3号該当性
本件公文書のうち、非開示とした法人の所在地、名称、電話番号、代表者又は責任者の氏名は、管理条例及び要領の規定に基づく許可を受けずに、港湾施設を使用又はこの建設残土の運搬に係わった法人のものである。
 本件陸揚げをした業者の情報を開示することは、業務運営上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報であり、かつ同号ただし書にも該当しないと認められる。また、本件陸揚げに関連して建設残土の搬送や土壌の検査を行った業者は、適法な使用許可がなされるものとの前提で建設残土の搬送又は土壌検査をしたものであり、これら業者の情報を開示することは、違法行為に係わった法人とみなされて、業務運営上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報であり、かつ同号ただし書にも該当しないと認められる。
(3) 条例第6条第1項第2号又は3号該当性
本件公文書のうち、非開示とした工事名、許認可の時期、郵便番号、工事施工場所、船舶名、船舶番号、ファクシミリ番号及び位置図に記された所在地は、前記(1)及び(2)で記したとおり、開示することで、個人の場合は特定の個人を識別することができ、法人の場合は違法行為に係わった法人とみなされて業務運営上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報であり、かつ両号のただし書にも該当しないと認められる。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が、異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
1 役所の隠蔽性は昨今マスコミで取り沙汰されているが、国民は唯一情報公開制度を利用することで真実を知ることができるものである。
高知県職員の意図的な拡大法解釈により公文書を公開しないようなことがあれば情報公開制度の根幹を揺るがすことになる。
2 本件非開示情報は、管理条例及び要領の規定に基づく許可を受けずに港湾施設を使用又は建設残土の運搬に係わった法人に関するものであることは、実施機関の決定理由説明書で明らかである。
上記の法人名を非開示とすることは、違法な行為を擁護するものである。昨今の環境問題への高まり及び土壌汚染を考えると、非開示部分である法人名の開示は、「人の生命、健康、生活または財産を保護するために必要である」(公益上の理由による義務的開示情報)と考える。
3 また、本件陸揚げは、公共埠頭で行われたものであり、当該埠頭は事実上不特定多数が出入りできる場所であることを考慮すると、本件陸揚げについて一般に見聞きしている住民も多く、「半ば公にされている情報」であり公開しないのは不適切である。
4 上記の理由により、実施機関が条例第6条第1項第2号及び3号により非開示とした部分の開示を求める。

第5 審査会の判断

1 本件公文書について
(1) 管理条例は、港湾施設を使用する者に対し知事の許可を受けるものと定め (第5条第2項)、宿毛湾港の使用許可に関する知事の権限に属する事務は、当時、宿毛市が処理することとされていた(管理条例旧第13条の2第4号)。
また、平成19年7月5日に施行された要領は、県外で発生した建設残土等を陸揚げするために港湾施設を使用するときは、1か月前に管理条例第5条第2項に基づく使用許可申請を行うとともに、建設残土の発生から最終処分までが適正に行われ、かつ当該建設残土に有害な物質等が含まれていないことを確認するため、許可申請時に要領に定める書類を提出することを求めていた。
(2) 平成19年8月10日に本件法人は、宿毛湾港の係留施設の使用許可申請書  等を宿毛市に提出したが、書類の不備でこれが受理されなかったにもかかわらず、宿毛湾港に建設残土を積載した貨物船を接岸させ、荷役を開始した。そこで、平成19年10月17日にこの係留施設を無断使用した本件法人に対し提出させたのが、本件公文書である。
本件公文書は、宿毛市長宛の始末書及び関係書類から構成される。関係書類には、(1)高知県への建設残土等の搬入に関する計画書2通、(2)建設発生土に係わる処理形態、(3)発生元から搬出までの一連の流れ、(4)注文書、(5)注文請書、(6)土砂等発生元証明書、(7)検査試料採取調書、(8)地質分析(濃度)結果証明書、(9)現場案内図、(10)試料採取位置図、(11)土砂分析試料採取状況の写真2通、(12)注文書[控]、(13)注文明細書[控]2通、(14)請求書、(15)注文請書、(16)注文明細書2通、(17)残土処分契約書、(18)注文請書、(19)建設発生土運搬契約書、(20)船舶国籍証書、(21)所有船舶明細書、(22)船舶検査証書、(23)土砂受入承諾書、(24)工事用残土(埋立工事用)受入承諾書が含まれている(各文書を以下「公文書(1)」のように表記する)。
なお、異議申立人は、個人の印影の非開示部分については開示を求めていないことから、当審査会では条例第6条第1項第5号の該当性は判断しない。
2 条例第6条第1項第2号の該当性について
(1) 条例第6条第1項第2号本文は、個人に関する情報であって、「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により、特定の個人を識別することができると認められるもの」又は「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」については、非開示とすることを定めている。
本件公文書(1)、公文書(6)及び公文書(7)に記載されている情報のうち「責任者」、「電話番号」、「現場責任者」、「職氏名」及び「連絡先電話」について、実施機関は、条例第6条第1項第2号に該当するとして非開示としているので、以下検討する。
(2) 公文書(1)中の「責任者」、「電話番号」、「連絡先」、公文書(6)中の「現場責任者」、「電話番号」、公文書(7)中の「職氏名」、「連絡先電話」の欄の情報については、明らかに特定の個人を識別することができる情報であり、本号本文に該当し、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しないと認められる。
3 条例第6条第1項第3号の該当性について
(1) 条例第6条第1項第3号本文は、法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、「開示することにより、当該法人等又は事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」については、非開示とすることを定めたものである。また、本号ただし書は、本号本文に該当する情報であっても、人の生命、身体等を保護するため開示することが必要であると認められる情報又はこれに準じる情報で公益上必要と認められる情報は、開示することとしたものである。
実施機関は、本件公文書のうち、始末書の提出法人名及び提出法人代表者名並びに公文書(1)から公文書○24中の別紙非開示箇所一覧表に記載された情報(非開示箇所一覧表のうち非開示理由条例第6条第1項第3号該当部分)については、条例第6条第1項第3号に該当するとして非開示としているので、以下検討する。
(2) 始末書の「提出法人名」、「提出法人代表者名」及び「印影」、公文書(1)中の「作成者所属・職名・氏名」及び「連絡先」、公文書(2)中の「宿毛港荷受」、公文書(23)中の「契約者住所」、「契約者代表者名」及び「契約者印影」については、本件陸揚げをした本件法人の情報である。
本件公文書の提出に至るまでの経緯は、別表のとおりであって、本件陸揚げをした本件法人は、管理条例及び要領に基づく申請書に、建設残土が無害であることを確認した土質検査結果を添付し、港湾施設使用前に港湾管理者に提出していたが、申請者名の記入の不備等で同申請書が不受理になったにもかかわらず、既に出港してしまっていたため、宿毛湾港に接岸したものである。
本件陸揚げは、結果としては、1か月前に使用許可申請を行うという要領に基づく手続が踏まれていなかったものである。しかしながら、同要領は、全国的にも例がない上、制定と同日に施行されたもので、施行から1か月後の本件陸揚げ時点では未だ周知が十分とは言い難かった。そして、本件陸揚げについては、上記のとおり、建設残土が無害であることの確認書類は事前に提出されていたが、出港後に軽微な書類上の不備が明らかになったという経緯があるもので、かかる経緯から、実施機関としても、本件陸揚げに係る違法を重大なものとは捉えていなかったものである。
これらの事情を考慮すると、本件陸揚げをした本件法人の情報を開示することは、本件法人の業務運営上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められる。したがって、本件法人の情報は本号本文に該当すると判断する。
なお,異議申立人は、非開示とした法人名は「人の生命、健康、生活又は財産を保護するために必要である」とし、公益上の理由による義務的開示情報である旨主張する。この主張は条例第6条第1項第3号ただし書、あるいは、公益上の理由による開示を定めた条例第6条第2項の該当性と理解されるが、上記のとおり、本件陸揚げ業者は、申請者に、建設残土が無害であることを確認した土質検査結果を添付しているのであって、本件陸揚げに先立ち、建設残土が無害であること自体は確認されていたものであるから、人の生命、健康等を保護するために必要であるとまではいえず、異議申立人の主張は認められない。
(3) 公文書(1)から公文書(24)中の、上記(2)の本件法人の情報以外の情報は、本件法人と関連する法人の情報である(以下「関連法人の情報」という。)。
関連する法人とは、工事の発注者、元請業者、土工事一式下請負業者、環境計量証明事業者、掘削・運搬再下請負業者、荷受船積み業者、船舶所有者、海上輸送業者、荷受業者、運搬業者及び埋め立て処分業者等である。
公文書(1)から公文書(24)の中で、「法人名」、「住所」及び「電話番号」は、直接関連法人を特定する情報である。また、それ以外の情報も、たとえば、「発生地」、「工事名」については、開示することにより工事の発注者がわかり、さらに「船舶名」及び「船舶番号」については、開示することにより、海上輸送業者及び船舶所有者がわかり、関連法人名が特定できるなど、いずれの情報も間接的に、関連法人を特定できる情報である。
これらの、関連法人の情報が開示されれば、本件法人と関連する法人の契約内容に関する情報を開示することになり、本件法人及び関連法人の業務運営上地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められる。したがって当該情報は、本号本文に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当せず、異議申立人の主張は認められない。
なお「船舶名」、「船舶番号」について、異議申立人は事実上不特定多数が出入り出来る公共埠頭で行われたものであることから「半ば公にされている情報」と主張しているが、しかしながら、不特定多数の者が公共埠頭に停泊している船舶は確認できるとしても、その船舶が不許可で停泊していることは確認できないため、異議申立人が主張する「半ば公にされている情報」とは言い難く、異議申立人の主張は認められない。
  

(別表)

年 月 日       経 過

平成19年7月5日    

・建設残土等に対する港湾施設使用許可申請取扱要領が
 施行される。

平成19年8月10日

・宿毛市に、建設残土等の受入を行う法人から宿毛湾港
 の係留施設の使用許可申請書と計画書書類を建設残土
 が無害であることを確認した土質検査結果を添付し提出
 する。これらの提出と同時に宿毛湾港に向け建設残土等
 を積載した貨物船が仕出地を出港する。
・洋上で、接岸許可の不受理の知らせを受ける。

平成19年8月12日

・宿毛湾港の係留施設に建設残土等を積載した貨物船が
 接岸し、荷役を開始。降ろした建設残土を積み、仕出地
 に帰港するよう命令したが従わず出港する。

平成19年8月16日

・土砂の受入法人に建設残土等の撤去を命令する。

平成19年9月6日

・建設残土等の土質試験表を提出する(有害物質は確認
 されない)。

平成19年9月7日

・関係法人から事情聴取を行う。

平成19年10月17日

・宿毛市長に本件公文書を提出。

平成20年2月8日

・本件陸揚げを行った法人に対して県有港湾施設使用料
 相当額を損害金として請求。 

平成20年2月25日

・損害金を県に支払う

第6 結論

 当審査会は、本件部分開示決定について以上のとおり検討した結果、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断したので、答申する。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成22年12月17日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成22年12月27日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。

平成23年2月17日
(平成22年度第1回第三小委員会)

・ 実施機関から意見聴取を行った。諮問の審議を行った。
平成23年7月1日
(平成23年度第1回第三小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成23年9月13日
(平成23年度第2回第三小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成23年12月12日
(平成23年度第2回公文書開示審査会全体会)
・ 諮問の審議を行った。

平成24年1月20日
(平成23年度第4回第三小委員会)

・ 諮問の審議を行った。
平成24年2月6日
(平成23年度第3回公文書開示審査会全体会)
・ 答申案の検討を行った。
平成24年2月28日 ・ 答申を行った。

別添非開示資料[PDFファイル/267KB]

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