公開日 2012年10月02日
更新日 2014年03月16日
高知県公文書開示審査会答申第170号
諮問第170号
第1 審査会の結論
知事が「○○○ヒヤリハット報告書(提出日 平成○年○月○日)に係る診療録及び医師が作成した処方箋(平成○年○月○日、平成○年○月○日)」について部分開示とした決定は、妥当である。
第2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成23年9月21日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「○○○ヒヤリハット報告書(提出日 平成○年○月○日)に係る診療録及び医師が作成した処方箋(平成○年○月○日、平成○年○月○日)」(以下「本件公文書」という。)の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成23年10月5日付けで行った部分開示決定を取り消し、薬品名(処方薬)の開示を求めるというものである。
第3 実施機関の部分開示決定理由等
実施機関が決定理由説明書及び意見陳述で主張している本件部分開示決定理由等の主な内容は、以下のように要約できる。
1 部分開示決定とした理由
本件公文書のうち、患者名、生年月日等の部分については、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができると認められ、患者の病状、処方薬等の部分については、特定の個人を識別できる患者の氏名等の情報を非開示としても、その他の部分を開示することにより個人の権利利益を侵害するおそれがあると認められることから、条例第6条第1項第2号の規定に基づき非開示とした。
2 別件の開示請求について
異議申立人は、別件で、高知県個人情報保護条例(平成13年高知県条例第2号)に基づき「○○○ヒヤリハット報告書(提出日 平成○年○月○日)」の開示請求(以下「別件開示請求1」という。)を、また、条例に基づき「○○○ヒヤリハット報告書(提出日 平成○年○月○日)に係る診療報酬明細書」の開示請求(以下「別件開示請求2」という。)をそれぞれ行っている。
別件開示請求1については、高知県個人情報保護条例に基づく個人情報の開示請求であったことから、処方薬に関する部分も含めて開示する決定を行った。
別件開示請求2については、実施機関は、条例第6条第1項第2号に基づき、氏名、生年月日、保険番号、傷病名等のほか、処方薬の部分についても非開示とする決定を行ったが、当該文書を交付する際に、非開示とすべき箇所を一切非開示とせずに交付してしまった。なお、誤りに気付き、異議申立人に当該文書の返却を依頼したところ、「氏名、生年月日、保険番号のみ」を非開示としたものとの交換になら応じる旨の連絡があり、異議申立人の申し出に応じて、交付した文書を傷病名、処方薬などの部分は非開示としていない文書と交換した。
第4 異議申立人の主張
異議申立人が異議申立書、意見書及び意見陳述で主張している本件異議申立ての主な内容は、以下のように要約できる。
1 本件公文書のうち、患者名、生年月日及びその他個人を識別できるID及び健康保険番号等については、特定の個人を識別できる情報であり、これを開示しないとした決定は容認できる。
2 しかし、薬品名単独の情報は、条例第6条第1項第2号に該当しない。
薬品名(処方薬)については、特定の個人を識別できる内容と付随して開示しない限り、特定の個人を識別できるおそれはない。
また、本件公文書に記載された薬品名は、別件開示請求1及び別件開示請求2で開示された薬品名と一致しているはずであり、本件開示請求において、薬品名を開示したとしても新たな付加情報は存在しないため、薬品名の開示は当該患者の権利利益を侵害するおそれはない。
第5 審査会の判断
1 本件公文書について
○○○(以下「本件○○○」という。)は、□□の□□□□□である。本件○○○では、「○○○医療安全管理指針」に基づき、本件○○○内における医療事故防止のためのシステムの改善や教育・研修の資料とすることを目的として、ヒヤリハット事例について、ヒヤリハット報告書の書式をもって報告するものとされている。
本件公文書は、本件○○○の職員が平成○年○月○日に報告したヒヤリハット報告書に係る診療録1通(以下「本件公文書1」という。)及び処方箋2通(以下「本件公文書2」という。)である。
実施機関は、本件公文書について、条例第6条第1項第2号に該当する情報が含まれているとして部分開示決定を行っているので、以下検討する。
2 条例第6条第1項第2号該当性について
(1) 条例第6条第1項第2号本文は、「個人に関する情報」であって、「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができると認められるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」については、本号ただし書に該当する場合を除き非開示とすることを定めている。
(2)本件公文書1について、実施機関は、(1)患者の氏名、(2)当該患者の医師記入欄のページ数(これにより受診回数が判明する。)、(3)受診日、(4)体温検温結果、(5)担当医師名、印影、(6)診察時の患者の病状及び容体(生活状況)の聞き取り内容、(7)指導料の記載、(8)処方薬の内容、(9)カルテを基に診療報酬明細書システムに入力済みであることの記載、(10)診療報酬明細書を基に保険者に請求したことの表示を非開示としている。
また、本件公文書2について、実施機関は、(1)受診日、(2)病棟・母子・外来の別(これにより、病棟に入院・母子入院・外来での診察科が判明する。)、(3)診察予約システムにおいて患者ごとに付されたID番号、(4)患者の氏名、(5)男女の別、(6)生年月日、(7)処方薬の内容、(8)担当医師名、印影、(9)調剤済、調剤日、調剤薬剤師名、(10)担当看護師名を非開示としている。
(3) 本件公文書は、本件○○○において受診した患者の診療録及び処方箋であって、本件公文書で非開示とされたのは、当該患者の氏名、ID番号、男女の別及び生年月日等の明らかな個人識別情報のほか、受診日、病棟・母子・外来の別、受診回数が判明する医師記入欄のページ数、体温検温結果、聞き取った病状・容体の内容、処方薬の内容及び調剤済・調剤日等の当該患者の病状に関する情報、当該患者を担当した医師名・調剤薬剤師名及び看護師名の情報、当該患者の診療報酬請求に関する情報などであり、これらの情報は全体として当該患者の病歴に関する情報というべきものである。
患者の病歴に関する情報は、患者の人格と密接に関連する秘匿すべき必要性の極めて高い情報であって、その取り扱いには格別の慎重さが求められるべきものである。それゆえ、本件で非開示とされた情報は、個人識別情報の有無にかかわらず、公にすることにより、当該患者の権利利益を害するおそれがあるものに該当すると認められる。
(4) なお、異議申立人は、処方薬については、特定の個人を識別することができる内容と随伴して開示しない限り、特定の個人を識別することができるおそれはないため、本号本文に該当しないと主張している。
しかしながら、すでに述べたように、処方薬を含む患者の病歴に関する情報は、全体として当該患者の病歴に関する情報というべきものであって、仮に特定の個人を識別することができないとしても、公にすることにより、なお当該患者の権利利益を害するおそれがあるものに該当すると認められる。
また、異議申立人は、本件公文書で非開示とされた処方薬は、別件開示請求で開示された薬品名と一致するはずであり、これを開示しても当該患者の権利利益を侵害するおそれはないと主張している。
しかしながら、(1)別件開示請求1については、実施機関によれば、高知県個人情報保護条例に基づく個人情報の開示請求であったことから処方薬も含め開示したというのであり、条例に基づく開示請求である本件とは異なること、(2)別件開示請求2については、実施機関によれば、処方薬を含め非開示とする決定を行ったが、開示請求に係る文書を交付する際に、誤ってこれを非開示とせずに交付したというのであり、本件で開示すべき理由にはならないことから、異議申立人の主張は認められない。
(5) したがって、本件公文書で非開示とした情報は、本号本文に該当し、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しないと判断する。
第6 結論
当審査会は、本件部分開示決定について以上のとおり検討した結果、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断したので、答申する。
第7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、次のとおり。
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成23年10月12日 | ・ 実施機関から諮問を受けた。 |
平成23年10月20日 | ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。 |
平成23年12月6日 |
・ 実施機関から意見聴取を行った。諮問の審議を行った。 |
平成24年2月1日 |
・ 異議申立人から意見聴取を行った。諮問の審議を行った。 |
平成24年3月27日 |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成24年5月14日 |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成24年5月22日 | ・ 答申を行った。 |
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