高知県公文書開示審査会答申第175号

公開日 2012年12月04日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第175号

諮問第175号


第1 審査会の結論

 知事が異議申立人のいうところの「総務省自治行政局(住民制度課)通達(一つの住宅に二つの住民基本台帳(住民票)を作成してはならない。)」について不存在とした決定は、妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成24年3月31日付けで高知県情報公開条例(平成2年条例第1号)に基づき行った「総務省自治行政局(住民制度課)通達(一つの住宅に二つの住民基本台帳(住民票)を作成してはならない。)」(以下「本件公文書」という。)の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成24年4月11日付けで行った本件公文書の不存在決定の取り消しを求めるというものである。

第3 実施機関の部分開示決定理由等

 実施機関が決定理由説明書及び意見陳述で主張している不存在決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
1 実施機関に保管する総務省自治行政局住民制度課からの文書に、一つの住宅に二つの住民基本台帳(住民票)を作成してはならない、という文書は存在しない。なお、住民基本台帳法(昭和42年法律第81号。以下「法」という。)に関する通知文書等を編纂し、事務取扱いの指針として参照する「『住民基本台帳関係実例集』市町村自治研究会編集、ぎょうせい、昭和43年刊 平成24年3月12日加除整理」(以下『実例集』という。)にも公文書開示請求に係る文書に言及するものはない。
2 異議申立人の請求の趣旨に関連する事項は、以下のような取扱いをしている。
(1) 市町村の区域内に住所を有するもの(以下「住民」という。)の住所に関する記録は、法に基づいて行われる。市町村は、住民基本台帳を備え、その住民につき、住所等を記録する。市町村長は、個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して、住民基本台帳を作成しなければならない。
(2) 数地番にまたがっている個人住宅に居住する者の住所の認定については、行政実例により「諸般の客観的事実と本人の意思とを総合して一つの町名地番をその住所と認定するのが相当である」とされている。 (『実例集』、155ページ、昭和30年10月13日民事甲第2151号 法務省民事局長から松江市長あての回答)
(3)「世帯」とは、居住と生計をともにする社会生活上の単位をいい、居住をともにしていても「事実生計を別にしていれば分離することも可能」とされている。(『窓口事務質疑応答集』市町村自治研究会編集、昭和63年刊、平成24年3月12日加除整理(以下『応答集』という。)203ページ、行政実例S49.4.18東京都行政部指導課あて電話回答)

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書及び意見書で主張している主な内容は、以下のように要約できる。
1 総務省自治行政局住民制度課は、一つの住宅に二つの住民基本台帳(住民票)を作成してはならない、という通達を高知県を通じて各市町村に通知している。
2 高知市の住民異動係は、通達により住民基本台帳を二つ作成できないと指導を受けている。十分調査してもらいたい。

第5 審査会の判断

1 本件公文書について
 異議申立人は、総務省住民制度課に問い合せた際に「一つの住宅に二つの住民基本台帳(住民票)を作成してはならない。」という通達を、高知県を通じて各市町村に通知していると回答があったので存在していると主張している。
そこで、実施機関が本件公文書についてこれを収受していないとして不存在決定を行っている点について、以下検討する。
2 本件公文書の不存在について
実施機関によれば、実施機関が保管している総務省自治行政局住民制度課からの文書に、一つの住宅に二つの住民基本台帳(住民票)を作成してはならない、という文書は存在しない。また、法に関する通知文書等を編纂し、事務取扱いの指針として参照する『実例集』にも公文書開示請求に係る文書に該当するものはないとのことである。
一方、法第6条第1項は、住民基本台帳の作成について、「市町村長は、個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して、住民基本台帳を作成しなければならない。」と規定し、住民基本台帳が、各市町村において、住民票を世帯ごとに編成して作成されることを明らかにしている。
 世帯とは、「居住と生計を同一にする社会生活上の単位」であり、世帯を構成するには、(1)同居していること、(2)生計が同一であることの二つの要素が必要である。従って、同居しているからといって、全員が同一の世帯になるとは限らず、生計が別であれば世帯も別になることは当然のことである。
 住民基本台帳は、世帯ごとに編成されているのであるから、同一の住居であっても世帯の数だけ編成されることになることは、法も当然予定していることであり、総務省自治行政局(住民制度課)が、これに反するような通達を発出することは考え難いと言うべきである。
なお、実施機関が、異議申立人に請求書の請求内容を確認するため連絡をとった際に、「総務省住民制度課から請求に係る内容の通達があるので、県に確認するよう言われた」との話があったため、実施機関が総務省住民制度課に確認したところ、「異議申立人から総務省住民制度課への問合せはなく、通達がある旨の回答を行った事実はない。また、請求に係る内容の通達も発出していない。」との回答を平成24年4月5日に得ている。
また、実施機関は、高知市についても、中央窓口センターに確認したところ「指導をした事実はない」との電話回答を平成24年4月27日に得ている。
以上のことから本件公文書が存在しないという実施機関の主張には不合理なところは認められず、本件不存在決定は妥当であると認められる。

第6 結論

 当審査会は、本件不存在決定について具体的に判断し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成24年4月24日 ・ 実施機関から諮問を受けた。

平成24年5月2日

・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。

平成24年6月22日(平成24年度第2回第二小委員会)

・ 実施機関から意見聴取を行った。諮問の審議を行った。

平成24年8月13日(平成24年度第3回第二小委員会) 

・ 諮問の審議を行った。

平成24年9月24日(平成24年度第4回公文書開示審査会全体会)

・ 諮問の審議を行った。
平成24年10月2日 ・ 答申を行った。

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