高知県公文書開示審査会答申第67号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第67号

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諮問第67号


第1 審査会の結論

  「イントラネット書き込みボードに書き込まれている内容の文」(以下「本件書き込みボードの内容」という。)に係る公文書開示請求に対して、知事(以下「実施機関」という。)が行った不受理決定は、妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ては、異議申立人が平成12年9月13日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」とい う。)に基づき行った本件書き込みボードの内容の開示請求に対して、実施機関が不受理とした決定を取り消し、開示を求めるというものである。

第3 実施機関の不受理決定理由等

  
  実施機関が、決定理由説明書及び審査会からの質問に対する説明等の中で主張している不受理決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。

(1) 本件書き込みボードの内容について

  イントラネットは、県職員が、各課室からの連絡事項や事務処理の手引きなどの情報を共有するとともに、行事予定の連絡や会議室の予約など各種の業務システムを利用するために設けられた、県の機関内部におけるコンピュータのネットワークである。
イントラネット書き込みボード(以下「書き込みボード」という。)は、職員のコンピュータ及びネットワーク環境利用の促進を図ることを目的として、平成11年1月の県庁イントラネットシステム運用開始と同時に、職員間での自由な意見交換の場として開設された。
書き込みボードは、「cc:mail」、「Netscape Messenger」、「パソコン操作」、「その他」、「自治基本条例書き込みボード」、「森林局イントラの書き込みボード」、「ホームページ知恵の輪」などのテーマに分かれ、それぞれ、所属部署や役職にとらわれず、個々の県職員として自由な意見や情報の交換が行われている。

(2) 本件書き込みボードの内容の公文書該当性について

高知県情報公開条例の一部を改正する条例(平成13年3月27日高知県条例第11号)により改正される以前の条例(以下「旧条  例」という。)第2条第2項では、「公文書」を、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真(これらを撮影したマイクロフィルムを含む。)その他実施機関が定めるものであって、組織的に用いるものとして実施機関において管理しているものをいう。」と定義している。
 文書とは、文字又はこれに変わるべき符号を用い、ある程度永続すべき状態において、紙のうえに記録されたものである。本件書き込みボードの内容は、ネットワークに接続された職員のパソコン上で見られる状態にあるものにすぎず、本件書き込みボードの内容を印刷することは可能であるが、本件書き込みボードの内容をそのまま印刷したものはない。
 また、磁気テープやフロッピーディスク等の媒体に記録されている情報は、非開示情報の分離など技術的な問題もあることから、条文上明記せずに規則に委ねることにより、対応可能なものから順次情報公開の対象にすることとされているが、請求のあった時点では、これらの媒体に記録された情報の開示について規定した規則はない。
 以上により、本件書き込みボードの内容は、旧条例第2条第2項の公文書に該当しないため、不受理としたものである。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書及び意見陳述で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。

(1) 本件書き込みボードの内容の公文書該当性について

 本件書き込みボードの内容は、県有のパソコンを使って県職員が勤務時間内に作成した公文書であり、決して私文書ではない。本件書き込みボードの内容は、必要に応じて文書にする前のパソコンに保存されている状態に過ぎず、パソコンの印刷のキーを押せばすぐに印刷され、条例第2条第2項の公文書になる。
  また、書き込みボードに記載されている内容が、その目的に反してふさわしくない内容であれば、情報企画課が削除することは可能なことから、組織的に管理しているものである。
  もし、県民に公開したくない内容のものであれば、文書にせず、パソコンからパソコンに送って処理すれば、公文書でないとして不受理にすることができる。これを認めることになると、条例は死文化して非公開条例になる。

 (2) 非開示情報について

 本件書き込みボードの内容を印刷した文書の中に、旧条例第6条第2号の個人のプライバシーがあれば、その部分を非開示とすればよい。その場合は、不受理ではなく、部分開示が妥当である。
  書き込みボードに記載されている内容は、県政に対する提案や建設的なアイディアなどであり、みんなに見てもらいたいと思って書いたものであろうから、県民に秘密にしなければならないような内容ではない。

 (3) 不受理決定の理由について

  開示請求に先立ち、本件書き込みボードの内容について情報企画課に情報提供を求めた際には、開示することで職員からの自由な発言が少なくなったり、形式的な意見になることが懸念される、として情報提供をしなかった。その後の開示請求に対しては、本件書き込みボードの内容が公文書に該当しないという、後からつけたような理由で請求不受理の決定があった。
  同一の請求に対して二つの異なる理由が示されたことは、県のご都合主義であり、どちらが本当の理由なのかはっきりさせるべきである。

 (4) その他

  知り得たところでは、本件書き込みボードの内容には、これからの県政のあり方等いろいろな提案がなされており、組織的に用いることによって、県政がよりよくなることが期待される内容が記載されている。
  県職員の自由な意見交換、情報交換、意見提言を、県民と情報を共有することによって、県政の発展と県職員の福利厚生に役立つ書き込みボードになることを期待する。

第5 審査会の判断

 (1) 本件書き込みボードの内容について

 書き込みボードは、実施機関のイントラネットの中に、職員が意見交換や情報交換を自由に行える場を提供することにより、職員のコンピュータ及びネットワーク環境利用の促進を図ることを目的として開設されたものである。
 書き込みボードでは、職員自らが「題名」、「投稿者」、「投稿日」、「コメント」を書き込めるとともに、他の職員が書き込んだ同様の項目を見ることができるようになっている。また、テーマを設定したものとテーマを定めずに全く自由に書き込めるものとがあり、コメントの内容は、意見、提言、質問及び質問に対する返事など多岐にわたっている。

 (2) 本件書き込みボードの内容の公文書該当性について

  本件書き込みボードの内容は、平成11年1月から請求があった平成12年9月までの間に作成されたものであり、公文書の定義については旧条例第2条第2項が適用される。
  条例は、地方自治の本旨に基づく県民の知る権利にのっとり、公文書の開示に関し必要な事項を定めたものである。実施機関は、本件書き込みボードの内容を公文書に該当せず開示請求を不受理とし、異議申立人は、本件書き込みボードの内容を公文書とみなし開示を求めている。したがって、本件異議申立ては、本件書き込みボードの内容が公文書に該当するか否かが争点となる。
 公文書については、旧条例第2条第2項において、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真(これらを撮影したマイクロフィルムを含む。)その他実施機関が定めるものであって、組織的に用いるものとして実施機関において管理しているものをいう。」と規定されているので、以下この条件について検討する。

ア 「文書、図画、写真(これらを撮影したマイクロフィルムを含む。)その他実施機関が定めるもの」について

  「文書」とは、文字又はこれに代わるべき符号を用いて、ある程度永続すべき状態において、紙のうえに記載されたものをいう。また、「図画」とは、紙の上に記号又は線等の象形を用いて表現されたものであり、「写真」とは、印画紙に焼き付けられたもの等である。
 本件書き込みボードの内容は、磁気的方式によってサーバーというコンピュータに記録された電磁的記録であり、文書、図画、写真には当たらない。
  「その他実施機関が定めるもの」については、文書、図画、写真の他に磁気テープやフロッピーディスク等の媒体に記録されている電磁的記録を、非開示情報の分離方法など技術的な問題があることから、条文上明記せず、規則に委ねることによって、対応可能なものから順次対象にすることとしているものであるが、請求時の「知事が管理する公文書の開示等に関する規則」には、電磁的記録に関する規定はなく、ほかに電磁的記録を公文書として取り扱う旨を定めた規則も存在しない。
 したがって、請求時において、電磁的記録である本件書き込みボードの内容が、「文書、図画、写真その他実施機関が定めるもの」に該当しないことは明らかである。
 なお、電磁的記録は、高知県情報公開条例の一部を改正する条例(平成13年3月27日高知県条例第11号)により、平成13年10月1日から、第2条第2項において文書、図画、写真の次に明記されたことから、下記イの条件を満たせば、条例の対象となる公文書として取り扱うことになる。
 しかしながら、10月1日前に作成された電磁的記録については、磁気テープに記録されたものなどの例外を除いて、それを用紙に出力した文書等が原本として文書規程に基づき取り扱われていることから、開示の請求があった場合に、原本である文書等が存在しているときには、その閲覧や写しの交付で対応することが妥当である。
  異議申立人は、本件書き込みボードの内容を紙に印刷するよう主張しているが、開示請求があった時点で印刷されている文書等はなく、また、請求に合わせて新たに文書等を作成することは公文書開示請求の趣旨に合致しない。

イ 「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した」及び「組織的に用いるものとして実施機関で管理しているもの」について

  異議申立人は、県有のパソコンを使って県職員が勤務時間内に作成していることや、書き込みボードの内容は実施機関が組織的に管理しているものであることから、本件書き込みボードの内容は公文書であると主張しているが、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した」及び「組織的に用いるものとして実施機関で管理しているもの」の条件に合致しているかどうかは、具体的な目的、内容及び取扱い等によって個別に判断を行うべきものである。
  しかしながら、本件書き込みボードの内容については、アの条件に該当しないことから、公文書でないことが既に明らかであり、そのような判断は行わない。
    
 以上のことから、本件書き込みボードの内容は、公文書に該当しない。

 (3) 非開示情報の該当性について

  異議申立人は、本件書き込みボードの内容の中に非開示とすべき情報があれば、部分開示を行うことが妥当であると主張しているが、(2)で述べたように、本件書き込みボードの内容については公文書性を認めないので、非開示情報の該当性についての判断は行わない。

 (4) 不受理決定の理由について

 異議申立人は、本件書き込みボードの内容の開示という一つの請求に対して実施機関から二つの異なる決定理由が示されたことから、どちらの理由が本当なのかはっきりさせるべきであると主張しているが、理由が付された決定は、一方は開示請求に対する実施機関の決定であり、他方は情報提供依頼に対する担当者の事務連絡にすぎない。
  当審査会の役割は、開示請求に対する実施機関の決定についてその妥当性を判断するものである。したがって、まず実施機関の決定理由の審査を行ったところ、(2)で述べたとおり本件書き込みボードの内容が公文書に該当しないことが明らかであり、このことは実施機関の決定理由としては十分であることから、その他の理由との比較検討は行わない。

第6 結論

 当審査会は、本件公文書を具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成12年11月8日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成12年11月29日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成12年12月26日 ・ 異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成13年10月9日
(平成13年度第5回第二小委員会)
・ 実施機関においてイントラネットを実地見分   した。
・ 異議申立人の意見陳述を聴取した。
・ 諮問の審議を行った。
平成13年11月5日
(平成13年度第6回第二小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成13年11月13日
(平成13年度第3回公文書開示審査会)
・   諮問の審議を行った。
平成14年2月1日 ・ 答申を行った。

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