公開日 2009年02月27日
更新日 2014年03月16日
高知県公文書開示審査会答申第92号
諮問第92号
第1 審査会の結論
知事が、「前田川(住宅促進関連)改修工事の工事交渉日誌」を平成14年7月15日付で部分開示とした当初の決定は対象公文書の特定が漏れていた。
しかしながら、平成15年に再調査を行った結果、平成15年6月23日に当初の決定を変更して当初特定が漏れていた用地交渉日誌について追加開示することを通知し、開示している。また、他には対象となる公文書の存在は確認できない。
以上のことから、異議申立ての理由が無くなっており、知事は本件異議申立てを棄却するのが相当である。
第2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ては、異議申立人が平成14年7月1日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号)に基づき行った「事業名 前田川改修工事(鏡川水系)用地交渉日誌(打合せを含む) 交渉相手 高知市水道局」の開示請求(以下「本件開示請求」という。)に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成14年7月15日付けで行った「前田川(住宅促進関連)改修工事の工事交渉日誌」の部分開示決定(以下「当初部分開示決定」という。)に対し、求めたすべての公文書の開示を求めるというものである。
また、実施機関が平成15年6月23日付けで行った追加開示後においても、求めた公文書すべてが開示されているものではないとして、異議申立ては取り下げられていない。
第3 実施機関の部分開示決定理由等
実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している部分開示決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
1 当初部分開示決定時の対象公文書の特定について
本件開示請求は高知市水道局を交渉相手とする用地交渉日誌についての請求であったが、高知市水道局との交渉日誌は用地交渉日誌の中には無く、すべて工事交渉日誌の中にあると判断し、異議申立人に工事交渉日誌にあるもので良いかと確認したうえで、対象公文書を特定し、当初部分開示決定を行った。
2 再調査による新たな開示について
平成15年5月21日に、市民オンブズマン高知から知事に、別件の開示請求に対して県が重要な情報を削除したものを開示し、情報を隠蔽している旨の申し入れ書(以下「申し入れ書」という。)が提出された。この申し入れ書を受けて、当該事案について再度調査を行った結果、申し入れ書のとおり県が不適正な開示決定を行っていたことが判明した。
このため、平成14年度中に県が受けたすべての開示請求に対する決定の内容について調査を行ったところ、本件開示請求に対する当初部分開示決定についても、用地交渉日誌1枚と打合せメモ1枚の特定が漏れていたことが確認されたため、追加開示を行った。
その後、異議申立人に対して本件異議申立ての取り下げについて問い合わせたところ、取り下げの意思の無いことを確認した。
3 異議申立人及び補佐人に対する開示した公文書の差異について
異議申立人からの本件開示請求は、「用地交渉日誌(打合せを含む)」であり、追加開示分を含めて用地交渉日誌、工事交渉日誌を開示した。補佐人からの開示請求は、「交渉協議等含むすべての関係書類の全部」であり、請求の内容が異なる。設計打合せ・協議記録簿や交渉経過をまとめたものなど、開示した公文書に差異が出るのはやむを得ない。
第4 異議申立人の主張
異議申立人及び補佐人が異議申立書、意見書及び意見陳述で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
1 その他の交渉日誌について
当初部分開示決定を受けた後、「もう一度よく探してください。」「公文書の隠匿や破棄があった場合はいかがされるのでしょうか。」という趣旨の意見書を提出したが、同様の請求をした補佐人には開示されて、異議申立人には開示されていない文書がある。また、追加で開示された文書を含めても、平成10年6月11日分以前の交渉日誌が開示されていない。補佐人に開示された文書の一部に、平成9年度以前の水道局の考え方をまとめた部分があるが、この文書を書くためには交渉日誌があるはずである。
2 異議申立人及び補佐人に対する開示した公文書の差異について
異議申立人と同じ請求をすれば、補佐人にはどう開示されるか確かめるために請求を行った。補佐人は異議申立人の請求のかなり後に請求したが、全部開示された。探したけれど見つからないのなら、補佐人にも開示されないはずである。
なお、非開示とされた個人情報については争わない。
第5 審査会の判断
1 異議申立人及び補佐人に対する開示した公文書の差異について
実施機関は、異議申立人と補佐人では請求内容が異なるので、開示した公文書に差異が生じるのはやむを得ないと主張する。一方、異議申立人は、同じ内容の請求なのに異議申立人と補佐人で開示された公文書に差異が生じるのはおかしいと主張するので、以下検討する。
実施機関は、本件開示請求を受けて、異議申立人と一定の調整を図り、異議申立人の了承を得たうえで工事交渉日誌を特定している。
このため、工事交渉日誌を特定して開示された異議申立人と、交渉日誌以外も含めて関係書類すべてを特定して開示された補佐人とで、開示した公文書に差異が生じたものであり、実施機関の主張は妥当であると認められる。
2 実施機関の追加開示について
実施機関は、申し入れ書を受けて再調査した結果、当初部分開示決定時に特定が漏れていた用地交渉日誌を、平成15年6月23日に追加して開示している。
なお、実施機関は、用地交渉日誌と同日に、打ち合せメモ1枚をあわせて追加開示している。このメモについては、第3の2に記載しているとおり、県が不適正な開示を行ったことを受けて全庁調査を行っている中で、当初、異議申立人と調整して交渉日誌を特定しているにもかかわらず、打ち合せメモまで対象を広げて特定し、追加開示したものと認められる。
3 平成9年度以前の交渉日誌について
平成9年度以前の交渉日誌については、当審査会が高知河川事務所(現高知土木事務所)で調査した結果、その存在は確認できなかった。また、当時の担当者にも確認することを求めたが、交渉日誌を作成したことは確認できなかった。
以上のことから、異議申立ての理由が無くなっており、実施機関は本件異議申立てを棄却するのが相当である。
4 その他
一般的に、県民は県がどのような事業を行っていて、それに関連してどのような名称の公文書を所有しているかは、把握していない。また、行政内部で使用されている専門用語についても、その意味を正しく理解することは困難である。
したがって、開示請求があった場合には、開示請求書に記載された文言のみで画一的に判断するのではなく、請求者の意図するものを汲み取って、必要に応じ請求者と公文書の特定について調整を図ることが必要である。
また、当初部分開示決定時に用地交渉日誌の特定が漏れた原因は、公文書が適正に管理されていなかったことによるものである。公文書の適正管理は、情報公開制度を適正に運用するために欠かせないものである。
今後は、公文書の適正な管理に努めるとともに、公文書の特定に当たっては請求者と十分に調整を図り、情報公開制度の適正な運用に努めるべきである。
第6 結論
当審査会は、当初部分開示決定及び新たに行った追加開示について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。
なお、当審査会の岡村会長、稲田委員、溝渕委員及び山下委員は、現在の高知県収用委員会委員又は当該案件に関する事業が実施されていた当時の高知県収用委員会委員であったことから、本件の審査には加わっていない。
第7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、次のとおり。
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成14年8月1日 |
・ 実施機関から諮問を受けた。 |
平成14年8月14日 |
・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。 |
平成14年9月2日 |
・ 異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。 |
平成14年9月10日 |
・ 異議申立人から決定理由説明書に対する追加の意見書を受理した。 |
平成16年1月19日 |
・ 実施機関からの意見聴取及び諮問の審議を行った。 |
平成16年2月20日 |
・ 高知河川事務所において異議申立人、補佐人及び実施機関からの意見聴取並びに書類調査を行った。 ・ 諮問の審議を行った。 |
平成16年4月13日 |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成16年5月11日 |
・ 諮実施機関からの意見聴取及び問の審議を行った。 |
平成16年6月8日 (平成16年度第4回第三小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成16年8月12日 (平成16年度第6回第三小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成16年9月14日 |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成17年3月23日 |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成17年9月12日 |
・ 答申を行った。 |
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