公開日 2009年02月27日
更新日 2014年03月16日
高知県公文書開示審査会答申第98号
諮問第98号
第1 審査会の結論
知事が、「平成11年1月28日、高知県知事が建設大臣に事業認定申請(10用第910号)を行った。事業申請書の4.事業の認定を申請する理由及び事業計画書4.事業の施行を必要とする公益上の理由(1)本体事業に、『近年においても、特に当該地域の上流部においては、ごく最近の98年高知豪雨をはじめとして、小規模ながらも同様の被害が相次いでいる』と述べられている。上記理由を記載するため、前田川を責任として(個々の家屋の溝の排水不良を除く)発生した災害のデータ。」(以下「災害のデータ」という。)を、不存在とした決定は妥当である。
第2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ては、異議申立人が平成13年11月5日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。)に基づき行った「災害のデータ」の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成14年6月26日付けで行った不存在決定の取消しを求めるというものである。
第3 実施機関の不存在決定理由等
実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している不存在決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
1 諮問に至った経緯
(1) 平成13年11月5日 開示請求 「災害のデータ」
(2) 平成13年11月19日 開示決定 「台風17号災害の記録」及び「前田川流域の浸水状況」
(3) 平成13年12月22日 開示請求 「前田川流域の浸水状況の表の作成年月日、作成者が分かるもの」
(4) 平成14年1月21日 不存在決定 (同上)
(5) 平成14年4月5日 異議申立て (平成14年1月21日の不存在決定に対するもの)
(6) 平成14年5月29日 開示決定した「台風17号災害の記録」及び「前田川流域の浸水状況」の表は、誤った公文書の特定により、開示決定されていたものであることが判明
(7) 平成14年6月26日 (1)の開示決定に対する「台風17号災害の記録」及び「前田川流域の浸水状況」の表の開示決定を取り消し、不存在決定
(8) 平成14年8月29日 異議申立て ((7)の不存在決定)
(9) 平成14年9月6日 審査会に諮問 ((8)の異議申立て)
当初、異議申立人から(1)の開示請求がなされ、(2)のとおり開示決定を行った。
その後、異議申立人は、 (2)で開示決定された表の作成年月日、作成者が分かるものについて、(3)のとおり開示請求を行った。異議申立人からの(3)の請求に対して、(4)のとおり不存在決定を行い、(4)の不存在決定に対して、異議申立人から(5)のとおり「『前田川流域の浸水状況』の表は事業認定申請時のものではない」という旨の異議申立てがなされた。
(5)の異議申立てがなされた後、あらためて調査した結果、 (1)の開示請求について開示決定した(2)の公文書は、(6)のとおり誤った公文書を特定したものであることが判明した。
また、「前田川流域の浸水状況」の表は、事業認定申請書作成のための基礎資料として作成されたものではなく、他に作成されたものは存在しないことが判明したため、(2)の開示決定を取り消し、(7)のとおり不存在決定を行った。
本件異議申立ては、(7)の不存在決定に対して、(8)のとおり異議申立てがなされたものであり、(9)のとおり審査会に諮問した。
2 「前田川流域の浸水状況」の表について
調査の結果、「前田川流域の浸水状況」の表は、平成12年11月17日付けで異議申立人から高知河川事務所長あてに提出された質問状に回答するための参考資料として作成されたものであることが判明した。また、「前田川流域の浸水状況」の表の他に、前田川の災害状況について取りまとめられた文書は、高知河川事務所に保存されていない。
3 請負業者への確認について
事業認定申請書作成のための「前田川広域基幹(住宅促進関連)改修工事事業認定計画設計」及び「前田川小規模河川(住宅促進関連)改修事業認定申請図書作成委託業務」のそれぞれを受託したコンサルタント業者2社に対する聞き取り調査を実施した結果、いずれも成果品作成のために使用した基礎資料は保存されていないことを確認した。
第4 異議申立人の主張
異議申立人が異議申立書で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
本件決定を取り消し、開示することを求める。
実施機関は、公文書が不存在である理由を、「事業認定申請書作成のための基礎資料として作成されたものはない」としている。事業認定申請書の中に、申請する理由として「近年においても、特に当該地域の上流部においては、ごく最近の98年高知豪雨をはじめとして、小規模ながらも同様の被害が相次いでいる」と述べられている。
しかしながら、高知気象台始まって以来、112年間で最高の雨量を記録した98年高知豪雨では、前田川を原因とする災害は発生していない。虚偽を申請理由としている。申請理由は作文である。
強制収用まで行い、現に争いが生じているのに、事業認定申請書を書くための基礎資料がないということでは理由にならない。実施機関は、「虚偽」や「作文」を否定するために、公文書の開示をすべきである。
第5 審査会の判断
1 本件異議申立てについて
本件異議申立ては、前田川改良工事全体計画に基づき事業を進める上で、土地収用法の適用の必要性から、同法第16条の規定に基づき、建設省に申請した、事業認定申請書の中の申請理由に述べられている「近年においても、特に当該地域の上流部においては、ごく最近の98年高知豪雨をはじめとして、小規模ながらも同様の被害が相次いでいる。」との記載をした根拠となる災害に関するデータを示す公文書の開示請求に対し、当初の第3の1の(2)の開示決定を、第3の1の(7)のとおり取り消して、不存在決定をしたことに伴い、異議申立てがなされたものである。
2 公文書不存在決定の妥当性について
(1)当審査会は、高知河川事務所に出向き、開示請求内容である、災害のデータの有無について、実施機関の意見聴取及び関連する公文書の審査を行った。
異議申立人は、高知気象台始まって以来、112年間で最高の雨量を記録した98年高知豪雨では、前田川を原因とする災害は発生していない。虚偽を申請理由としている。申請理由は作文である。実施機関は、「虚偽」や「作文」を否定するために、公文書の開示をすべきである。また、強制収用まで行い、現に争いが生じているのに事業認定申請書を書くための基礎資料がないということでは理由にならないと主張しているので、以下検討する。
(2)(1)のとおり高知河川事務所において調査を行い、二級河川鏡川水系前田川改修工事に関係して、高知河川事務所において保存されている公文書を精査した結果、災害のデータであることが明らかである公文書は存在しなかった。
(3)なお、実施機関に再度意見聴取したところ、「平成10年度 県河改第3号 紅水川外2河川洪水痕跡調査委託業務」(平成10年10月、構営技術コンサルタント株式会社に委託して作成)の提出を受け、その36、37ページ「前田川調査表」、附属図面9「前田川湛水区域及び湛水状況」及び図面10「前田川現地状況写真位置図」に、平成10年9月24日の高知豪雨の日に、高知市若草町及び朝倉本町地区で床下浸水があったことが記載されていることを確認した。
また、「『‘98高知豪雨』 国分川(舟入川)河川激甚災害対策特別緊急事業 平成10年9月24~25日 集中豪雨」と表紙に記載されたパンフレット(高知県土木部河川課作成)の提出も受け、浸水状況の記述があるページには、前田川流域で浸水があったことが図示されていることが確認された。
ただし、上のデータを使用して事業認定申請書の理由を記載したのかどうかは確認できなかった。
したがって、実施機関が行った不存在決定は、妥当であると認められる。
第6 結論
当審査会は、本件不存在決定について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「1 審査会の結論」のとおり判断した。
なお、当審査会の岡村会長、稲田委員、溝渕委員及び山下委員は、現在の高知県収用委員会委員又は当該案件に関する事業が実施されていた当時の高知県収用委員会委員であったことから、本件の審査には加わっていない。
第7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、次のとおり。
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成14年9月6日 | ・ 実施機関から諮問を受けた。 |
平成14年10月3日 | ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。 |
平成15年 9月11日 (平成15年度第4回第三小委員会) |
・ 実施機関からの意見陳述及び諮問の審議を行った。 |
平成15年10月14日 (平成15年度第5回第三小委員会) |
・ 高知河川事務所において関係者の意見聴取及び書類調査を行った。 ・ 諮問の審議を行った。 |
平成15年11月26日 (平成15年度第7回第三小委員会) |
・ 諮問の審議を行った。 |
平成15年12月15日 (平成15年度第7回公文書開示審査会)
|
・ 諮問の審議を行った。 |
平成16年2月25日 | ・ 答申を行った。 |
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