公開日 2009年03月18日
更新日 2014年03月16日
農業・農村は、我が国の国民生活に不可欠な食料を安定的に供給するとともに、国土保全や自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の継承などの多面的機能を有しています。
本県において農業は、地域経済の活性化や雇用を支える基幹的な産業として重要な位置を占めていますが、過疎化や高齢化の進行に伴う担い手の減少により、生産構造のぜい弱化が進むとともに、国内外の産地間競争の激化や消費・流通構造の変化などによって、農産物価格が低迷していますし、国においては認定農業者等の担い手に施策を集中化・重点化するなど、農業農村を取り巻く環境も大きく変化しています。
一方、地方分権改革の進展や三位一体の改革の影響で、県や市町村の行財政のスリム化が求められており、農業農村整備においても限られた予算規模のもと、ハードとソフトを効果的に組み合わせ、こうした変化へ柔軟に対応していくことが何より重要です。
このため農業農村整備においては、施設園芸や有望品目の導入、規模拡大などにより農家所得の向上や産地の形成が見込まれる地区へ事業を重点化していくことが求められています。
また、これまでかんがい用水の安定供給や農地の汎用化に大きな役割を果たしてきた排水機場など、老朽化が進行している基幹的水利施設の延命化を図っていくことが喫緊の課題となっています。
さらに、農業者の高齢化や担い手が減少するなか、地域ぐるみで農地や農業用用排水施設等を適切に保全管理していく体制づくりに緊急に取り組んでいく必要があります。
これに加えて、平成16年の集中豪雨等をきっかけとして再び地すべり現象の兆候が確認されている指定地での二期対策や、防災点検により漏水等が報告されている危険ため池の改修などにより、安心して暮らせる農村づくりに取り組んでいく必要があります。
一方、継続事業のうち広域農道など長工期化地区については、社会経済条件の変化等を踏まえ、関係市町村等と協議しながら計画変更を行うなど一定の見直しが必要となっています。
【参考】
農業・農村の多面的機能
農業・農村の多面的機能には、「自然環境の保全」「国土の保全」「水源のかん養」「気候緩和」、さらには「良好な景観の形成」「情操教育」「保健休養」などが挙げられます。
これらを貨幣評価すると、総額約9兆円との試算が出されています。
項目 | 内容 | 評価額(年間) |
---|---|---|
洪水防止機能 | 洪水を防ぐ | 3兆4,988億円 |
河川流況安定機能 | 川の水の量を安定させる | 1兆4,633億円 |
地下水涵養機能 | 雨水を地下水として蓄える | 537億円 |
土壌浸食(流出)防止機能 | 土が流れ出すのを防ぐ | 3,318億円 |
土砂崩壊防止機能 | 土砂崩れを防ぐ | 4,782億円 |
有機性廃棄物処理機能 | 水をきれいにする | 123億円 |
気候緩和機能 | 暑さをやわらげる | 87億円 |
保健休養・やすらぎ機能 | 旅行など心の安らぎをもたらす | 2兆3,758億円 |
総額 | 8兆9,261億円 |
(2001年日本学術会議答申を基に作成)
担い手不足による農業生産のぜい弱化
過疎化や少子化の進行に伴う農業者の高齢化、それに伴う担い手の減少により、生産構造のぜい弱化が進んでいます。高知県の平成17年の総農家戸数は32,517戸で10年前(38,358戸)の85%に減少していますが、その内訳をみると、自給的農家が横ばいなのに対し、販売農家は21,069戸と10年前(28,348戸)の74%にまで減少しています。その販売農家の51%が(農業への依存度が低く高齢農家が多い)副業的農家であることから、農業生産における高齢者への依存度が一段と高くなっているといえます。
これに合わせ、高知県の平成17年の農業産出額は991億円で、平成7年(1,311億円)の76%にとどまっています。
農産物価格の低迷もあって農家所得も減少傾向にあり、平成15年の農家農業所得(165万円)は平成7年(212万円)の78%となっています。
生産基盤となる農地の状況は、平成17年の経営耕地面積が20,481haで平成7年(25.279ha)の81%に減少する一方、耕作放棄地は2,154haで平成7年(1,536ha)の140%に増加してきています。さらに園芸農業においても、ピーク時の平成7年に2,046haであった園芸用ハウス面積が平成17年で1,621ha(79%)まで減少してきています。
農産物価格の低迷
輸入農産物の増加に伴う国内外の産地間競争の激化、消費・流通構造の変化などによって、農産物価格が低迷しています。
平成5年のガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づき農産物輸入の自由化が進み、国内外の産地間競争が激化しました。また、大規模小売店の需要が市場の取引額の半分を超えて、強大なバイイングパワー(価格決定に影響を及ぼす力)を持つようになったことも、価格低迷の原因となっています。
景気は、全体として穏やかに拡大しているものの、農産物価格の動向は今後とも楽観できない状況にあります。
行財政のスリム化(「高知県行政改革プラン」の策定)
高知県では、平成7年、平成10年の二度にわたって行政改革大綱を策定し、行財政の健全化に向けた取り組みを着実に進めてきました。しかしながら、国のいわゆる「三位一体改革」によって地方交付税が大幅に削減された結果、本県の財政はかつてない危機的な状況に陥っており、県民に責任ある行財政運営を行っていくためには、さらに踏み込んだ行政改革を行い、県政の質的な転換を図っていくことが必要になります。
こうしたことから、平成17年12月には、平成21年度までの5年間で集中的に行政改革に取り組む方針と目標等をまとめた「高知県行政改革プラン」を策定しました。
この中の事務事業見直しで、「県民生活の根幹を支える」事業や「県の発展のために不可欠」な事業以外は断念又は凍結する、との基本方針に立って、全ての事業をゼロベースから見直すとの方針が示されており、農業農村整備事業においても、いっそうの選択と集中が求められています。
1.基本方針の策定にあたって 2.これまでの農業農村整備事業の実績と評価
3.農業農村整備における新たな課題(現在のページ) 4.今後の施策展開にあたっての基本方針
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