第1回「対話と実行座談会」(介護福祉士を目指す若者たちの思いを聴く)

公開日 2014年02月05日

更新日 2014年03月16日

平成25年度 第1回「対話と実行座談会」

日時:平成25年9月25日(水曜日)18時00分から20時30分まで
場所:高知県庁本庁舎「正庁ホール」
出席者:高知県立大学社会福祉学部、高知福祉専門学校、平成福祉専門学校から先生(教授)3名、生徒9名
    

座談会要旨

1.知事のあいさつ
2.各校の取組説明
3.学生との意見交換
3−1「介護職場を志した理由」(テーマ1)
3−2「介護人材確保の有効な手段について」(テーマ2)
3−3「今後の高知県の介護について」(テーマ3)
4.各校の先生からの意見
5.知事まとめ


開会

(司会)
 ただいまから平成25年度第1回テーマ別対話と実行座談会を開催いたします。

1.知事のあいさつ

(知事)
 皆さん、県庁までおいでいただきましてありがとうございます。
 私、市町村、中山間地域も含めて、いろんな方とお話をさせていただく機会を持たせていただいています。そういう中で、例えば産業振興に向けてのいろいろな課題であるとか、さらには南海トラフ地震対策についての皆さんの不安な思い、また、それに対する取組のいろんなお知恵とか、そういうものをいただいたりするわけですが、やはり、もうひとつ非常に大きなテーマは、高知県において凄まじい勢いで高齢化が進んでいるということ。他方で過疎化、そして若者の流出、これがあいまって、高齢者の皆様方を支えていく力というのが全体的に落ちてしまってきているということ。
 これはやはり、高知県にとって、また恐らく日本全国にとってもそうだと思いますが、特に田舎の地方においては、長年の課題なんだろうと思います。
 今、産業振興計画などと並んで高知県で実行しているのが、日本一の健康長寿県構想ということになります。これは、保健・医療・福祉、それぞれの分野について、できるだけ県民の皆様の健康長寿を実現するための取組をしていこうというもので、福祉の分野については、特にこの日本一の健康長寿県構想にしたがって、高知型福祉という取組を進めているところです。何で高知型とあえて言うのかということですが、先ほど申し上げましたように、高齢化の進展、過疎化、この進展具合というのは、恐らく他の県に比べても高知県が全国で一番早く進んでいるし、一番厳しい状況にあります。だから、国が設けているような全国一律の制度にのっかっていくだけでは、なかなか対応できないというところが出てくる。高知県特有の対応をしなければならないという部分があるんじゃないかということで、この高知型福祉を設けています。
 具体的に言うと、例えば、あったかふれあいセンターです。政策の目指すところは何か。一言で言えば、意図的、政策的に地域の皆さん同士で支え合っていく力、さらには世代間を超えて支え合っていく力、こういうものをつくっていこうとする。これを目指すのが、この高知型福祉の取組の非常に大きな目的ということになります。
 意図的に支え合いのネットワークをつくりだしていく。地域の関係者の皆さん、社会福祉協議会の皆さん、包括ケアセンターの皆さん、市町村の皆さん、それから民生委員の皆さん、そして、医療関係、福祉関係の皆さんが、支え合いのネットワークをしっかりつくっていこう。そういう取組をすることで最終的に人と人とが支え合う、そういう福祉のネットワークを県全域につくっていく。これが高知県が目指すべきところとなります。過疎化に負けない、地縁血縁ではないけれど、そういうネットワークでお互い支え合っていこう、そういうものをつくっていこうとしているところです。
 また、プラスαでさらに大きな課題があります。それは何か。もう1回言いますが、高齢化の進展というのは、今後まだまだ凄まじい勢いで進んでいく。単に高齢化の比率が高くなるだけでなく、絶対数としても高齢者の人口そのものが増えていく時期がまだまだ高知は続きます。さらにその後も高齢化比率自体はずっと40%を超えるぐらいまで伸び続けるということが予想されています。
 介護・福祉の人材がどうしても必要。これから高齢者の皆さんの絶対数が増えていく。他方で若者が減っていくという中で、介護・福祉の分野を支えていただく人材が高知県には絶対的に必要だということです。ネットワークをつくっていく、そしてネットワークを担っていただく若い力をいかに育てていけるか。これが、高知県としての大きなテーマだと思っているところです。
 今日は介護福祉士を目指す若い皆さん方においでいただきまして、いろいろお話を伺おうと思っています。
 先生方も今日おいでいただいて、高知県の介護福祉の現状、さらに今後の見通し等、いろいろご教示いただきたいと思います。また、その道を志された若い皆さん方の思いがどういうものであるか、是非率直にいろいろお話を伺わせていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

2.各校の取組説明

(司会)
 まず、高知県立大学社会福祉学部のA先生から、よろしくお願いします。

(A先生)
 私から本学部の介護福祉士養成について説明をさせていただきます。
 本社会福祉学部は平成10年に開設をしました。高知県立大学の中では一番新しい学部になります。平成10年の時点で定員は30名。対応する資格としては、社会福祉士の国家資格と精神保健福祉士の国家資格に対応したカリキュラムを入れておりまして、地域の福祉課題に対応できる専門職養成をということでやってきました。平成22年に定員を70名に増やし、この時に介護福祉士の養成課程を入れました。その翌年、平成23年に男女共学になり、現在の1年生、2年生、3年生の中には男子学生も含まれています。
 介護福祉コースについては定員30人ということで、各学年30人の定員、満杯にはなっておりませんで、20人前後の介護福祉士を目指す学生が在籍しています。
 今日は高知県の福祉課題に対応したいろんなディスカッションをするということで、介護福祉士のコースの実情を少し具体的にお話ししておいたほうがいいかなと思っています。
 実は、結論から先に言いますと、この学部全体では、高知県内の出身者は45%ですが、介護コースだけに限定して言えば、高知県内の出身者はさらに少なくて、現在3分の1ぐらいです。
 もうひとつ。介護コースは、実は男子学生の割合が学部全体よりも少し高く、20%ぐらいが介護福祉士を目指す男子学生が在籍しています。ただし、高知県内の出身者は少ないということが反映しているかもしれませんが、今まで、介護コースに男子学生が12人いるのですが、高知県内出身者はゼロです。これはやはり、何らかの対応が必要かと思っています。
 それから、社会福祉士の国家資格に対応したカリキュラムを一応、学部の基本科目としておいてありますので、ほぼ全ての学生がこの社会福祉士カリキュラムという部分の単位を取得します。そのうえで、介護福祉士あるいは精神保健福祉士のどちらかの資格を1つ選んで取るということになります。したがって、今日来ている介護コースの学生は、社会福祉士としての勉強と介護福祉士としての勉強を両方やっているということになります。

(知事)
 どうもありがとうございました。県内の出身者が少ないのは、ちょっと残念ですね。どうしてだと思われますか。

(A先生)
 ちょっとその原因がよくわからないんです。
 入学試験では、一人一人必ず面接をしていまして、入学の動機だとか資格取得についての意向とか、そういうことを一人ずつ確認し、もちろん、他の点数も加味して合否を決めております。
 その時点では、わりと「介護福祉士を希望します」と言う学生さんは多いですが、入学後、「どうしますか」と最終決定する時に、なぜか少なくなるということがあります。入試の時の意向と実際に自分が大学に入って勉強しようというところが、そのままではないというのを感じています。
 もちろん、入試の時は考えていなかったけども、入学後、やはり資格が必要だから取りたいという学生もいますが、高等学校の時に福祉や介護についての情報、その仕事をすることで将来どういうふうに働くのかとか、そういう情報が非常に少ないのかと思います。そして、「介護は大変だからやめておきなさい」というふうに周りの保護者、進路担当の先生などからのお声に影響されるという点がひょっとしてあるのではないかなと思っていますが、ちょっとそのへんは、話を学生一人一人に聞いているわけではないですのでわかりません。

(知事)
 カリキュラムは、介護福祉士のカリキュラムが先で、社会福祉士が後というのでよろしいでしょうか。

(A先生)
 最初は、高齢者、あるいは障害をお持ちの方を理解し、そのうえで、その人と社会のつながりという部分に広げていくというふうに構想してカリキュラムをおきました。ただ、4年経ち、実際にやってみて、やはりベースが社会福祉学部というところですので、そこと介護福祉学との統合化ということが必要かなということで、社会福祉の科目を少し前倒しして、介護の科目を少し長めにといいますか、3回生とか4回生あたりへ持っていくように検討中です。

(司会)
 続きまして、高知福祉専門学校のB先生、よろしくお願いします。

(B先生)
 高知福祉専門学校に関してですが、昭和62年開校になります。
 実は社会福祉士及び介護福祉士法で、介護福祉士という資格がこの日本に誕生しましたのが昭和62年ということになりますので、福祉の学校としては全国でも非常に先駆け的なかたちで誕生しました。
 介護福祉学科に関しては平成元年に設置をしていまして、四国では最も古い養成校ということになります。当初、県外になかなかカリキュラム、福祉の学校が無かったものですから、北は北海道から南は沖縄まで、いろんなところから入学していただいた実績があります。
 本校の取組として、介護福祉士の教育に関しては、特に介護福祉学科では450時間くらい現場での実習が義務付けをされていますが、大体どこの学校も3つぐらいの段階に分けて実習をされているところが多い中、本校は2年間、前期後期制で4期に分けてやっています。
 まず、入学をして前期終了してから最初の実習になります。入門介護実習という名称をつけており、2週間ぐらい福祉の現場に行って、福祉の現場がどういうところかというのを体験してくるということになっています。
 実は、この2週間を経ると、介護をやろうと思って入学をして来ているんですが、例年、2、3名ぐらい、「やめたい」と言う学生が出てきたりします。「とてもやれないので退学したい」と言う学生もいます。それを何とか「もうちょっと頑張ってみなさい」というところで、歯を食いしばって後期も授業に来て頑張った学生に関しては、1年生の終わりに4週間の基礎介護実習という名称になるんですが、施設での実習に出ます。そこでは、事業者さんに、(学生それぞれに)担当を持たしていただきますので、その4週間の実習を終えて学校をやめたいという学生は出てこない。1年生の終わりの基礎介護実習に行きますと、しっかり利用者の方と人間関係もできますし、施設の方もほとんど顔もわかっているという状況になりますので、そうすると、「今日で実習最後よ」なんていう話をすると、手に手をとって泣かれたりとか、そういう関係も含めて非常にやり甲斐があるものとなってきます。
 その基礎介護実習の目的というのは、介護課程をいわゆるケアプランのように、ご利用者様にどういう介護をすればいいのかという計画までを立てるというものになっていまして、それを4週間、いろんな利用者様の状況を見ながら、この人にはこういう介護をしたらいいんじゃないか、ということがひとつの目標になっております。
 それを終えまして2年生になります。2年生の前期には、2日間程度の居宅介護のホームヘルパーの実習にまいります。それは施設と違い、実際に居宅、ご利用者様の生活の場になります。これはなかなか介護できるわけではございませんので、基本的には見学実習というかたちで実習させていただきます。
 それから、それが終わり、9月。今度も4週間という期間をあてて実践介護実習という最後の仕上げの実習になります。これは、受け持ちの利用者様をもたせていただいて、基本的に介護計画案の立案から実践まで行う。実際に自分が立てた介護計画をやる。その研修まで、4週間でどこまでできるかというところはあるんですが、そこまでを実習の目標として取り組んでいるというかたちになります。
 その実習が終わりまして2年生の後期には、卒業研究というかたちで、その実習を振り返るというような研究を取り入れているというのが主な流れになっております。
 本校は開校以来、40名で始まった介護福祉学科が50名、80名と増やしていたのですが、なかなか学生募集も厳しく、実は80名から40名に入学定員を減らして、ここ数年はその40名が集まらないという現状で来ておりました。昨年はなぜか、一番最初の入学試験でほぼ入学定員が来まして2回目の試験が打ち切りになった。(平成27年度から)介護福祉士の国家試験が導入されるんですが、2年間で卒業と同時に資格を与えられる最後の年だったということもあったのかもしれませんが、非常に学生が集まってくれました。ただ、今年はまた学生募集に苦労しているというところがあります。
 昨年集まった理由に関しては、いろいろ本校の校長とも話をしたんですが、なかなかこれという理由はなく、県として取り組んでいただきましたパンフレットだとか、テレビ媒体だとか、そういったことも大きく影響しているんじゃないかと考えております。
 それから、今、高知県が取り組んでいただいております介護福祉士等修学資金、これに関しても非常に手厚い資金を用意していただいておりまして、県外でも実施をしておられる県はあるんですが、それこそ生活資金までご用意をいただいておりまして、まだ若干名ですけれども、県外からも入学して来ていただいたりしています。そういったことも魅力になって、そういった制度があるなら学生に勧めようかというお話もいただいておりますので、是非こういった制度は続けていただけたらと思っております。

(知事)
 どうもありがとうございました。今のお話を伺っていて思いましたが、最初の2週間の研修の後はやめる人が出てくる。1年経ってからの4週間の研修ではもういないということで。素晴らしいですね。その1年間の教育成果たるや、素晴らしいものがあるんでしょう。最初の2週間のやめる動機というのは、介護の仕事が大変というのもあるんでしょうけど、まだ社会慣れしていないというか、そういうところなんでしょうか。

(B先生)
 今の学生達って、施設の見学実習などは、小学校、中学校時代に経験はある子が多いんですけれど、それと現実の仕事の大変さというのは、かなりギャップがあるみたいで、そこを目の当たりにすると、自分はやっていけるのだろうかと。それから、本当に人の命をあずかる現場ですので、その凄さにも圧倒されるといいますか。そこで自分はやっていけないという学生が出てきます。
 例えば、排泄介護の現場なんかに行くと、やはり臭いであるとかそういったものに関して抵抗感があったりということで、「無理です」という生徒もいます。そういった、それぞれの事情で「やめたい」ということになります。

(知事)
 逆に言うと、1年経ったらやめなくなるというのは、随分頼もしくなるっていうことですよね。1年生が、どう頼もしくなっていっているのか後で聞かせていただきたい。今年、入学希望者が増えているのが良い原因に基づくものだったらいいですね。そういうかたちで志していただく若い人達が増えてくれればと本当に思っているんです。

(司会)
 次に、平成福祉専門学校のC先生、よろしくお願いします。

(C先生)
 平成福祉専門学校は、社会福祉法人「長い坂の会」の中に位置付けをされております。平成6年に開校しまして、今年度やっと20年の歴史を迎えたという学校になります。「長い坂の会」については、特別養護老人ホームやすらぎの家。また、春野町にあります、うららか春陽荘。それから在宅部門における在宅介護センターわかくさ。そして、児童養護施設であります、うららか保育園というかたちで、小さい子どもから、人生経験豊かな高齢者にいたってのそれぞれの支援をしている法人になっております。
 そこで、本校は、介護福祉学科の単科のみで平成6年に開校をいたしました。その当時は、本校は、施設に併設をした学校ということで、そういった魅力から県外からの入学生が、大体、定員の1割から2割ぐらい入学をされた時代もありました。ところが、段々と県外から来る学生というのも、県外にも施設併設型の養成校が増えたということもあり、今現在は、高知県からの入学生が多く、まず、ほとんどが県内から入学しているような現状にあります。
 本校の取組について、入学当初には、まずは現場を知るということで、同じ法人内の施設を、見学を通して自分達がこれから仕事をしようとする施設がどういうところなのかということを目で見て、そしてまた肌で感じながら、職員さんと利用者さんの様子を見て学ぶような授業の進め方をしております。
 また、先ほど、話がありましたように、経済的な理由で通いたくても通えないという学生さんというのが、中にはおりますので、そういう場合では、今、お話がありましたように、奨学資金制度というのは非常に学校としてもありがたいですし、いろんな経済的な理由で通うことを断念してきた学生さんにとっては、非常にありがたい制度だということで、私達も末永く支援をしていただけたらと考えております。
 また、本校では、同じ法人の中に施設があるということで、法人の施設、また学校の近隣の施設にも協力をいただきまして、学校が大体4時半くらいには終了するのですが、そのあと夕食の介助などを通して施設現場で、学びながらアルバイトをして学費を稼いだり、お小遣いを稼いだりというようなかたちで、アルバイトのほうを斡旋しております。
 また、授業の一環として、隣の施設のご利用者の方を招待するかたちで、日本の伝統行事である四季折々の七夕行事であったりとか、また敬老の行事には、学生が花束を高齢者の方に贈呈をしたりということで施設のほうにお邪魔をするとともに、施設のご利用者の方にも学校にも来ていただいて交流をはかるようなことを授業の一環として取組をしております。
 今現在は、2年生が60名、1年生が80名定員でスタートをしておりまして、2年生が若干少ない中ではありますが、本校のほうでは、各学年、大体3分の1ぐらいの学生が職業訓練生として迎え入れをしております。その中では、高校を卒業した学生もいれば、社会経験をした学生など、非常に年齢幅の広い中で学生がそれぞれの立場で意見をしたり、お互いにそれぞれを補い合ったりというようなかたちで授業のほうを展開して学校生活を送っているようなところがあります。
 それとあわせて、地域とのつながりということで、うちの学校は朝倉地区になりますので、その中で行われています朝倉まちづくりの会や、朝倉子どもを守り育てる会、針木の西地区の町内会といろんなかたち(例えば夏祭りであったりとか、交通安全運動)での関わりを通して、地域の課題を実感したり、また幅広い年齢の方々と交流することによって時代の変化を学ぶとともに、生活の知恵をそれぞれ学ばせていただいているような状況でもあります。
 入学生の状況ですが、それぞれの年度によって非常に入学生の定員にばらつきがあります。80名定員を満たすこともあれば、本当に厳しい年度の時もありますが、学校としても、やはり入学生を育てるということも非常に大事なところですが、入学をするまでの過程の中で、やはり、小中学校時代に福祉にも目を向けてもらいたいということで福祉教育に取り組んでおります。
 例えば小学校や中学校、それから高等学校のほうに出向いて、その中で講話型の体験であったり、高齢者疑似体験や南海トラフ大地震に備えて災害時の救護ということで、福祉型の救護方法なんかを中学校や小学校の高学年、今は低学年のほうでも受け入れやすいような内容で福祉教育ということを進めていくような取組をしています。
 そこで、小さい頃から福祉に関心を持っていただいて、できれば入学をして体系的に学んで、現場で活躍をするような体制が整えられたらというような思いで、微力ではありますが、少しでも高知型の福祉ということに協力ができたらという思いで取り組んでいます。
 その中で、うちは、社会福祉法人ということで、福祉施設に特化した取組をしているところではあるんですが、施設には介護福祉士さんだけではなく、介護の職員さんでは、ヘルパー2級であったり、中には無資格で仕事に従事している方々もいらっしゃいます。
 本校では、実務経験、今現在では3年で国家資格を受ける、受験できる資格制度の中で、国のひとつの資格で、介護技術講習会というのを行っています。
 その時に、私達が思うことですが、現場の職員さんは、自分の身体を酷使しながら現場での実務にあたられているという現実があります。どうしても力任せであったり、それから行き当たりばったりというような現状の中で、本校の技術講習会を受けられて、たった4日間の技術講習会ではありますが、体系的に学ぶことの重要性ということに気付いて、基本を学ぶことができて良かったという声を聞かせてもらっています。
 これから先は、資格取得制度が変わろうとしている背景がありますが、養成校として体系的に学ぶということがどれだけ重要かということを現場の方々の声を聞いて感じているところですので、福祉に目を向けてきていただいている時代の中で、是非、養成校で学ぶという体制が整っていただけたらなという思いでおります。

(知事)
 お話を伺っていて、施設併設型の強みというのを活かしておられるんですね。さっきアルバイトをね、それなんかはある意味、アルバイトとしてもいいでしょうが、学ぶという点でもいいですね。一石二鳥で素晴らしいですね。

(C先生)
 自分が学校で、机上で学んだことや学生同士で体験したことを実際のご利用者を通して自分自身を振り返る機会にもなったりとか、また施設の職員さんからいろんな学びを得る機会になると思います。

(知事)
 技術講習会の話、確かに、ある意味じゃ学び直しみたいなものですかね。一回、職に就かれた後でもそういった講習を改めて受けたほうがいいというか、そういうニーズって高いんでしょうかね。

(C先生)
 技術講習会では、本当に全く学んだことがない方が中にはいらっしゃるんです。そういう中では、やはり基本ということを学べて良かったという声を聞かせてもらったりとか、また、国家試験を合格するためのステップとして受けるものではなくて、スキルアップとしてこういう講習を受けたいという声は聞かせていただいております。

(知事)
 最後に、小中学校に行って授業をされるわけですか。小中学生の反応はどうですか。

(C先生)
 小学校の低学年では、ある小学校では1年生から順番に6年生まで各学年にわたって、それぞれの年代に応じて福祉教育をしているんですが、1年生、2年生は、なかなかその理由や目的がわからずに、ただ楽しかったで終わっているようなところがあります。ただ高学年になるにつれて、近くの福祉施設に行って一緒にレクレーションを高齢者の方と楽しむような企画をしたりとか、また実際に友達同士で車椅子を押したりとか操作の仕方を学んだりとか、疑似体験を通して高齢者の気持ちということを理解してもらったりということで、そういった振り返りの声を小学校の子どもさんがくれるんですけれど、そういう学びができて良かったという声は聞かせてもらっています。

(知事)
 確かに、これから学生さん達の話を伺いますけど、子どもの頃からそういうことをしっかり体験してもらったり、教育してもらったり、そういう環境は重要でしょうね。

3.学生との意見交換

(知事)
 それでは、これから、学生の方からお話をお伺いしたいと思います。
 まず「介護の勉強を始めたきっかけは何でしょうか」という話。そして、「介護人材確保のためにこうすればいいんじゃないかということについてアイディアをもらいたい」。また、「今後の介護職場にどういうことが必要だろうか」ということについての、皆さんの意見を聞かせていただきたいということ。どうすれば若い人達がもっともっと介護の現場で働いてくれるようになるか、志してくれるようになるだろうかということが、一番、私達の知りたいことですし、勉強をしたいと思っていることなんです。志された若い皆さんの「何故に志したんだ」という若い思いを、是非、教えていただきたいと思います。その中で私達に何が足りなくて、我々はもっと何をすべきなのかということを学ばせていただければと思っているところです。

3−1.「介護職場を志した理由」(テーマ1)

(学生D)
 高知福祉専門学校介護福祉学科1年のDといいます。
 僕が、介護の勉強で、この学校に入りたいと思ったのは、高校2年生の時の学外実習で、春野にある特別養護老人ホームに行かせていただいた時です。実際、今まで介護職について詳しく知るというのはなかなか無かったので、そこで初めて介護の職について詳しく知り、またその時に、利用者さんの方に話をさせていただいた時、全然どうしていいかわからなかった時の悔しさとか、自分の無力さにちょっと落ち込んだりしました。その時に介護の道を考えだしました。本当はスポーツトレーナーのほうとどっちか悩んでいたんですけど、くさか先生の描いているヘルプマンを見させていただいて、たまたま学生編のところだったので、介護ってすごく奥が深いなと思って、その主人公の桃太郎の感受性豊かなところにひかれて、介護を目指してみようかと思い、この高知福祉専門学校に入学させていただきました。

(知事)
 ありがとうございました。2週間の実習をしてどうでしたか。

(学生D)
 僕は行く前に、本当にすごくしんどいだろうなといった覚悟をもって挑んでいたので、そんなショックみたいなことはなかったんですけど、やっぱり見学実習だったので、利用者さんが、「トイレに連れて行って」だとか僕に言われるんです。見学実習なので、自分はそういう技術も無いので、その時にできなかったのが本当に悔しくて、その悔しさの気持ちが強かったです。

(知事)
 しんどいだろうなと思っていて、でも、この仕事をやりたいなと思ったのはどうしてですか。

(学生D)
 自分は、おばあちゃんっ子で、そのおばあちゃんも早くに亡くなったんですけど、その時、おばあちゃんに料理とか遊びとか、いろいろよくしてもらって、本当におばあちゃんとかが好きなので。この先、高齢化社会になっていくので、人材が少なくなって今後すごく介護が必要になってくると思います。ここはしんどい思いもしますが、おばあちゃんとも関われるので、介護を目指してみようかと思いました。

(知事)
 2週間の実習に行った時、先輩のやっておられるのを見て、どう思いました?

(学生D)
 本当にすごいと思いました。

(知事)
 お恥ずかしい話ですが、この間、介護の仕事に携わっておられる人ってすごいなって思ったことがあるんです。
 このあいだの敬老の日。僕は敬老の日に県内の最高齢の方々のところに毎年お祝いに行くんです。この間も行ったんですが、施設の方に、この方はこう言われるとお喜びになるから、こう言ってくださいって言われて、私がそれを言ったんです。大きい声で言うんですけど、全然わかっていただけない。僕が言うとわからないんです。けど、代わりに施設の人がしゃべると、まず表情がパッと明るくなって反応されるんです。けど、僕が喋ると、ほとんど反応が出てこない。僕は、まだコミュニケーションさえもとれないんです。あれを見た時、やっぱり本当にプロっていうのはすごいもんだなって本当に思いました。
 次はEさん。どうして介護職を志そうと思ったんですか。

(学生E)
 私が介護を目指そうと思った理由は、1番は、人の役に立つ仕事がしたいと思ったからです。小さい頃に、ひいじいちゃんがいる老人施設に行った時に、日に日に体が弱くなって寝たきりになっている姿を見ているだけで、私は何もできずに何かしたいなという悔しさとかが生まれてきて、人の役に立って、少しでもおじいちゃんやおばあちゃんが幸せな生活が送れるような支援がしたいと思ったので、この学校に入学しました。

(知事)
 2週間の研修をやってみてどうでしたか。

(学生E)
 はじめは、排泄とか初めて見る光景ばかりで、この先2週間やっていけるかなと思ったんです。見学実習というのもあって、見るだけでコミュニケーションをとることも全然できないし。けど、最終日が近づくにつれて利用者さんのほうからどんどん、「Eさん」って声をかけてくれて、最終日には、「ありがとう」って言ってくれて、そういう喜びが感じられたので、やっぱりこの仕事を目指そうと思って良かったなと思いました。

(知事)
 じゃあ、今はそれでやっていこうと思っていますか。

(学生E)
 はい。

(知事)
 良かったね。小さい頃に、ひいじいちゃんが寝たきりでいらっしゃったんですね。それ以外は特に介護のいろんな経験をしたとか、なかったですか。

(学生E)
 ないです。

(知事)
 コミュニケーションできる自信はありますか?

(学生E)
 私、結構、緊張で人見知りがあって。

(知事)
 今はそんな感じしないけど。

(学生E)
 最初、自分の自己紹介をしたら、利用者さんが、私と一緒の共通点を見つけてくれて、そこからコミュニケーションがふくらんでいったりしました。

(知事)
 考えてみれば、利用者さんは人生の大先輩ですもんね。利用者さんにしてみれば、研修生の方はかわいいんでしょうね。
 じゃあ次、Fさん、いいですか。

(学生F)
 私が、この高知県立大学で社会福祉を学ぼうと思ったきっかけは、私は高知県の高齢化が結構進んだ地域出身なんですけど、そこで小さい頃からお年寄りの方々と関わる機会が多くあって、地域の人達にすごくよくしてもらったので、次は私がそのような地域の人に対して役立ちたいと思いはじめたのが、この勉強をしたいと思ったきっかけです。
 私は、高知がすごく好きなので、高知の人のためになる仕事といったら、やはり今は高齢化が進んでいるという面から、介護の仕事をやれば、そういう人の役に立つのではないかと思ったので介護コースを選択して、今、頑張っています。

(知事)
 窪川の出身なんですね。窪川でいた時、地域の皆さんに良くしてもらったって今おっしゃいましたが、具体的にどんなことがありましたか?

(学生F)
 学校の行き帰りとかで挨拶とかもしてもらったし、本当に地域は家族みたいな感じで、悪い事をしたら怒られたり、あとは、地域とのつながりもあるので、おばちゃんが、「今日は何かとれたきもらいに来いや」、みたいな感じで物をもらったりとか、そういう面で、すごく良くしてもらったというのがあります。

(知事)
 家族みたいなところがあるということですね。
 次は、Gさん。どうぞ。

(学生G)
 はい。高知県立大学のGです。
 介護の勉強をはじめた理由ですけれども、私は埼玉の出身で、もともと社会福祉学部に入学する前に介護福祉コースがあることは知っていました。私、今、祖父母と同居しているんですけど、高知に来て祖父が要介護状態で、認知症もあるので全然話せないのが、自分の中でショックだったというか、コミュニケーションがとれないことに悔しさや、私の中の無力感というものを感じて、介護福祉コースがあるんだから、自分もそういうふうに勉強していこうと思いました。祖父とか祖母に対する感謝も含めて何かしたいなと思って介護福祉コースに入りました。
 あと、もう一点あるんですが、社会のニーズが高まっていく中で介護という社会的なニーズを考えた時に、社会福祉だけじゃなくて、介護については、もっと専門性が高くなると思うんです。社会ニーズに対して自分が何かできることはないかと考えた時に、介護の勉強をしておいたほうがいいんじゃないかなと思いました。
 高校では全然、福祉とかの紹介などもありませんでした。私の学校の中では、福祉進学者は私だけだったですが、県立大の体験授業とかに参加してみてすごくいい学校だったので、入学して福祉コースにも入りました。以上です。

(知事)
 はい。ありがとうございました。Gさんは埼玉の出身。埼玉と高知じゃ、大分違うでしょう。

(学生G)
 そうですね。私が住んでいる地域は、高齢化率が(低い状態を)維持しているので、本当に地域の中で高齢者がいるという生活では全然ないですし、やはり若い人が中心で、高知とは違って、高齢者に対する政策はそんなにピックアップされたりはしてなかったと思います。

(知事)
 多分、今、高知県は高齢化率が30%。もうひとつは、都会なんかと違って日々の生活の中でも普通に生活しておられる方が結構多いというのもまた確かだと思うんです。
 だけど、年を追うにつれ、いわゆる要介護度というのが段々上がっていく。そういう中で、施設での対応というのも重要でしょうけど、地域での対応というのも重要になる。そういうのも多分、都会とまた違うと言うか、もっと言えば、もう一段高齢化が進行した本県みたいなところでは、そういうことが非常に課題なのかなと思ったりしているんです。
 都会と田舎と両方知っていて、どっちがいいと思いますか。どっちもいいんだろうけど。

(学生G)
 そうですね。都会ですと、公共機関が発達していたり、物とか人もそうなんですけど、東京に近いということもあって、中心地じゃないですか。だから、いろんな情報が集まってきますから、便利だと思います。地方とかに行くと、さっきFさんもおっしゃられたように、地域同士のつながりであったり、人間的なつながりということがあるので、どちらかに身を置くかは、その人自身が何を大切にしていくかというのを考えるべきだと思うので、どっちがいいかというのを限定できないんですけど、私は結構、高知も好きです。

(知事)
 そういう人間的なつながりというのをうまく福祉に活かしていければいいですね。それを是非やりたいと思っているのが、高知型の福祉なんです。そういうのに共感してくれる若い人が増えてくれればいいなと思うんですけど、もし、都会から、例えば、別に高知じゃなくてもいいけど、こういう福祉の世界に友達を呼んで来ようとしたら、何て言って呼んで来ますか。

(学生G)
 その地方の魅力を伝えて、その地方の実情がどうなっていて、私達はこうしたいと思っているという思いと同時に、その土地の魅力も両方伝えます。高知に呼んで来るなら、まず、食べ物が美味しい。

(知事)
 そうですか。食べ物が美味しい。

(学生G)
 あとは、都会に比べていろいろ無いかもしれないけど、その分、自然が豊富ですし、その中で生まれてくるつながりというのは都会では体験できないので、そこを福祉と絡めて伝えたいと思います。

(知事)
 はい。ありがとうございました。
 今度、Hさん。和歌山県出身なんだね。

(学生H)
 自分が、介護の専攻の大学に来た理由は、自分もおじいちゃん、おばあちゃん子で、ものすごくおじいちゃんから好かれるんです。それで、自分もこの人達の役に立ちたいと思って、最初、おじいちゃん、おばあちゃんの役に立てる対人の職に就きたいと思って、いろいろ考えていたんですけど、2、3年前に親が、親の友達とホームヘルパー2級の資格を取ったんです。その時に、自分も介護の分野に興味があったので親に話を聞いていたら、介護に興味がわいてきて、この大学に来ました。
 せっかく介護の分野に入るんだったら、専門的な知識を得てから現場に出たいと思ったので、この大学で頑張っています。

(知事)
 おじいちゃん子、おばあちゃん子だった。

(学生H)
 はい。

(知事)
 おじいちゃん、おばあちゃんの介護は体験されたことはあるんですか。

(学生H)
 小学校でちょっと。レクレーションをしに行くという感じです。それだけで、中学校、高校はそういう機会はなかったです。周りのおじいちゃん、おばあちゃんは、皆お元気だったので、介護の分野に全く縁がなかったんです。

(知事)
 そうそう。さっきも、おじいちゃん、おばあちゃん子だったという話があったけど、今度、介護でおじいちゃん、おばあちゃんをケアしないといけないということになった時、おじいちゃん、おばあちゃん子だったという気持ちだけではないんだろうと思うんです。だけど、自分はこういう仕事を志してみようと思ったのは、何でだと思いますか。
 おじいちゃん、おばあちゃんとかに好かれか、好かれる自信があるからですか。

(学生H)
 はい。好きだし、やはり、おじいちゃん、おばあちゃん、いろんな人もそうですけど、自分が話した時に相手に笑ってもらえることが好きなので、いろんな職があるんですけど、自分が好きなおじいちゃん、おばあちゃんと仕事を通じてそういうのができるからいいなと思いました。

(知事)
 和歌山での同級生は、こういう分野に進もうと思った人は多いのですか。

(学生H)
 同級生では、1人です。

(知事)
 わかった。ありがとうございました。
 じゃあ、鳥取の米子から来られたIさん、どうぞ。

(学生I)
 今、皆さんの意見を聞いて、私はちょっとドキドキしてしまったんですけど。私は、将来、介護福祉士として働こうというというのが第一志望ではなく、入学当初は児童に関心があったので、児童分野でソーシャルワーカーとして働きたいなと思っていました。
 その時に、児童っていうのをひとつとっても、障害のある児童であったり、虐待されている児童というのがあって、その中で、障害のある児童や親から相談を受けた時に自分が介護の勉強をしていたら、その家族に対して、悩みだったりが理解できたり、辛さを共有できるかなと思って、この介護コースを志望したんです。実習だったり、ボランティアや、障害者施設でも、今、アルバイトをさせていただいているんですけど、そういう機会を通して、人と直接触れ合うことの楽しさだったり、難しさ等を知って、ソーシャルワーカーとして働くことだけではなく、介護福祉士としても働くことも視野に入れながら、今は勉強しています。

(知事)
 実際、いろいろコミュニケーションして楽しいと思いましたか。

(学生I)
 はい、思います。でも、すごく難しいです。

(知事)
 辛さを訴えられることだってあったでしょう。

(学生I)
 はい。辛さというよりも、今、バイトをしている障害者施設で、自閉症の方達が一人一人全く違って、自閉症だけど喋れる方もおられて、その中でも一人一人違う対話の仕方というのに難しさを感じますし、パニックを起こした時の対応の仕方だったりとかにとても難しさを感じます。

(知事)
 なるほど。難しい分、やり甲斐を感じるということなんでしょうね。

(学生I)
 はい。

(知事)
 ありがとうございました。
 それでは平成福祉専門学校、Jさん、お願いします。

(学生J)
 平成福祉専門学校2年のJと申します。よろしくお願いします。
 他の学生さんを見て、私も福祉の道で頑張りたいという希望を持って来たと言いたいところなんですが、多分、唯一だと思うんですが、私は、ハローワーク経由の職業訓練生ということで、社会人を経験した後で、平成福祉専門学校に入学したんです。
 最初のうちは、周りの友達からも、多分、あんたは向いてないからと、絶対にお年寄りの面倒なんて、あんたがみれるタイプじゃないというふうに言われていたんです。私自身も、まあ、向いてないだろうなと。嫌だったら、やめちゃえばいいかというぐらいの軽い気持ちで学校に入ってみたんです。
 学んでみると、すごく奥が深くて面白い。もう2年なので全ての実習を終えています。あと、隣のやすらぎの家の施設で、ほぼ毎週ぐらい、歌を歌いに行ったりお話をしたり、たまに介助をさせていただいたりということを重ねるうちに楽しい世界だなって、奥が深いなというふうに思ってきました。
 あと半年で卒業なんですが、その1年半の中でも楽しい時期と、もうやめたいという時期と、そういうのを繰り返していました。今年の3月くらい、2年生に上がる頃に先生に「もう私はこの介護の業界には向いてないから行かない。」と宣言するぐらい、嫌になっていたんですが、また6月、7月に実習があって、そこで利用者の方とお話して触れ合って、職員の方と利用者の方の会話とか、ご家族との付き合いとかを見ていると、すごくいい世界だなって。やはりこういう世界で頑張っていくのもいいなと思い直して、今はこの業界に就職しようと思っている次第です。

(知事)
 他の仕事も体験されていて、今この介護の福祉の世界においでになって、やはり奥が深いというふうに思われるというのは、特にどういうところですか。人とのコミュニケーションの深さとか、そういうところなんでしょうか。

(学生J)
 そうですね。対人援助ということも難しさと楽しさがあって、学校で学んだとおりにはいかないんです。認知症の方がこうやって言ったら、「こうやって応えてあげたらいいよ」みたいなことも学校で学ぶんですけど、実際にそれを現場でやってみると、全然変化球な回答が来たりして、職員の方に、こういうふうに言われたんですけど、こういう時はどうしたらいいですか、というようなことを話しながら、じゃあ、次の実習の時には、この方ともうちょっと腹を割って話してみようとか、そういうふうなことを重ねていくうちにすごく面白いなというふうに思いました。

(知事)
 なるほど。ありがとうございます。
 では、Kさん。お願いします。

(学生K)
 平成福祉専門学校2年生のKです。よろしくお願いします。
 皆さん、結構、お年寄りが好きということで、私もこの介護福祉士になろうと思ったきっかけは、人の役に立つ仕事もしたかったし、お年寄りに寄り添って、お年寄りの笑顔を見たいという思いがありました。やはり、お年寄りが好きだから、この世界に入ろうと思いました。
 学校で実習等をしていくうちに、お年寄りと話すことが楽しいなと。介助とかは、皆嫌がっている子もいるんですけど、私はそんなに思いませんでした。もう慣れてしまえばこっちのものなので、頑張ってやるようにしています。本当に単純に好きだから、この介護の道に進みました。

(知事)
 そうか。素晴らしい。お年寄りがどうして好きになったのですか。

(学生K)
 それもわからないです。自然に。

(知事)
 そうか。ありがとうございました。
 次はLさん。

(学生L)
 平成福祉専門学校の1年、Lです。よろしくお願いします。
 私が、介護の仕事を目指したきっかけは、高校1年の時に祖父が病気になって、本当に元気な祖父だったんですけど、いきなり元気がなくなって。でも、私がたまに会いに行くと、パッと笑顔になってくれて。それを見た時に、少しでも多くの人を幸せにしていきたいし、生きていく喜びとか楽しさをもっともっと感じられるように私が力になっていきたいと思ったのがきっかけです。

(知事)
 おじいちゃんが病気になられて、Lさんが行くと喜んでくれた?

(学生L)
 はい。すごく笑顔になりました。

(知事)
 今も実習とかやっていて、おじいちゃんの時のように、笑顔になってくれる人はいますか。

(学生L)
 はい。やはり大変なことも多いんですけど、笑顔になってくれるのを見ると、もっと現場で活躍できるようになりたいなと思います。

(知事)
 なるほど。わかりました。ありがとうございました。
 ある意味、非常に元気付けられる思いというか、皆さん、大変で、苦労して困ってますみたいな話じゃないですね。むしろ、おじいちゃん、おばあちゃんが好きとか、それから、非常にポジティブな発想を持っている。やはりそうなんでしょうね。やはり奥が深いんでしょうね。そうだと思います。
 僕もさっき、最初冒頭に申し上げたように、自分が全然対応できなかったことからも、その奥の深さがわかります。本当にコミュニケーションできませんでしたから。やはり、そういうふうにできるようになるというのは、大変なことなんだろうなって、その時に思ったものですけど。逆に言うと、その奥深さが、やり甲斐であったりするってことなんでしょうね。
 あと、おじいちゃん、おばあちゃんが、好きっていう人が多いですね。昔、優しくしてくれたからというのもあるし、喜んでくれていた時の瞬間を覚えているからというのもあるでしょうしね、いろいろあられる。

3−2「介護人材確保の有効な手段について」(テーマ2)

(知事)
 もし、仲間や後輩に、この介護の仕事を、君もやらないかということで誘おうとする。その時にどういうふうに言って誘ってあげようと思うかということについて、教えてもらいたいんです。
 次のテーマは、介護人材確保の有効な手段、特に若年層向けにというのが次のテーマなんです。そう言うと硬いので、どうすれば、もっと、例えば後輩とか、皆の友達とか、この介護の分野に入ってくれるようになると思うかということについて、ご意見を伺わせていただければなと思うんです。
 順番でなくてもいいので、よかったら手を挙げて。さっき、Gさんに聞いた時、埼玉からだったら、まず高知が好きになってもらうことが大事って、そういうことでしたよね。
 はい、Hさん。

(学生H)
 今、介護って聞いたら、やっぱりいろんなネガティブな発想が出てくると思います。僕も実際に「介護に行く」って言ったら、おじいちゃんとかに、「何でお前が介護に行くんだ」と、ものすごくきつく言われたんです。やはり、きついというのはあるんですけど、やり甲斐があるとかそういう場面が隠れているんです。やはり実際に入って欲しいんだったら、実際に介護の現場を見てもらって、それを見た子がどう感じるかだと思います。
 やはり、介護職って施設内の業務がメインになってくるので、実際にどういうことをやっているとか、一般的に見られない。なので、テレビの広報とか実際の人の感覚が大事だと思います。やはり、人が口に出すのは悪い噂なので、ネガティブなほうに偏って、良い面が隠れて毛嫌いされる人がいるんじゃないかなと僕は思います。

(知事)
 なるほど。「とびだせ!高知のヘルプマン!」とか、ああいう番組は見たことありますか。

(学生H)
 はい。

(知事)
 県の広報番組なんです。是非見ていただいて。くさか里樹先生のヘルプマンを使わせていただいているんです。くさか先生には、今、まんが王国・土佐の振興のためにいろいろお知恵もいただいているんです。またあの先生は、この介護の分野も本当に献身的にいろいろご尽力たまわって、お話いただいているんです。やはり、くさか先生も、魅力の部分ですよね、やり甲斐というか、そこの部分というのをできるだけ若い世代にお伝えできるようにするにはということで、いろいろお知恵もたまわっているんです。おっしゃることは一緒だなと思って。
 「ネガティブなイメージが世の中にはいきわたっているけど、実際には、かなりポジティブな面があるんだよ」と、そういう実感をもちますか。

(学生H)
 はい。

(知事)
 なるほど。1年生としてはどう思いますか、Dさん。

(学生D)
 Hさんとほとんど同じ意見なんですけど、僕もオープンキャンパスとかで在校生で行かせていただいているんです。高校生で行った時の介護のイメージって、ネガティブ、しんどい、すぐ身体をこわす。
 僕も高校の時に親や知り合いから、「すぐ身体こわすで」とか言われたりしました。けど実際にこの学校に入学してみると、辛いこともあるんですけど、実際には本当に楽しいこともあると。大体、皆、ネガティブなほうに目が行ったりするんですけど、やはり体験してみないと絶対わからない部分がいっぱいあると思います。
 僕も2年の時の学外実習に行き、介護を知ってから、介護の道に進もうと思ったので、僕以外にもそういう人が絶対いると思うんです。だから、高校生とか、また一般の人に向けて、施設側からボランティアを募集して、参加して見てもらうとか、そういった体験をしてもらうことを優先したほうがいいと思います。「介護というのはこんなものなのだよ」というのを一番知ってもらいやすいと思うので、僕はやはり体験してもらうというのが一番大事だなと思います。

(知事)
 なるほど。ちなみに、高校2年生の時に、体験の実習に行ったという時に、皆の反応はどうだった?ポジティブ、ネガティブ、どっちが多かったですか。

(学生D)
 そうですね。僕は結構・・・

(知事)
 ポジティブだったのね。

(学生D)
 はい。友達とかは、コミュニケーションがとれんとか、話しづらいとかと言う人が多かったです。けど、ポジティブなほう(いろいろ楽しかったという人)も数多くいました。

(知事)
 反応としては、世の中で言うような、すごく大変ばっかりみたいなのとは違ったんだ。

(学生D)
 はい。

(知事)
 やっぱり体験をしてもらう。わかりました。
 他に、Jさん、いかがですか。

(学生J)
 確かに、実際に体験するとすごく楽しいという部分はあるんですけど、ぶっちゃけた話をさせていただくと、ボーナス出るよというお金の面ですよね。
 多分、ちょっと年がいくと、介護の世界というのは給料が安いというのがあるんです。以前に10年くらい働いていたところからみると、給料というのは安いなと思うんです。ただ、19、20歳の子からしたら、福利厚生が整っていて、今、就職の時期なので求人とかいっぱいあるんですけれども、ボーナスが4ヶ月分くらい出るって確実に書いてあって、ちゃんと残業代が出て、夜勤手当が出てなど、そういう金銭面では魅力的だよということをもっと押し出していってもいいのかなと思います。もしくは給料を上げていくこと、というのも大事なのかなというふうに思います。

(知事)
 ちなみに、ちょっと本題から外れますけど、Jさんがハローワークと接触されているなかで、ハローワークの制度というのはわかりやすかったですか。発見しやすかったですか。ちょっとこれは本題と違うけど、興味がある。

(学生J)
 そうですね。私は、仕事をやめていた時に、資格を取りたいと思って行ったので、「今だったら資格が取れるよ」ということで紹介されました。

(知事)
 職業訓練みたいなものですか。

(学生J)
 そうですね。その中で、2年間行けて雇用保険がおりる。

(知事)
 あれ、いいと思いましたか。

(学生J)
 すごくいいと思いました。

(知事)
 Lさん。どうぞ。

(学生L)
 人材が要るということで、皆さん、きっかけは、おじいちゃん、おばあちゃんが好きとかそういうことなので、もっと小さい時からお年寄りと関わる機会というのが必要だと思います。今の人達は本当に少ないと思うので。私は昔から、母も介護の仕事をしているので、おじいちゃん、おばあちゃんに電話したりとか、このあいだの敬老の日も、何かあげなさいとかいろいろ言われていたので、関わる機会がすごく多かった。
 やはり、今の小学生とか中学生とかも、まずは周りの家族、おじいちゃん、おばあちゃんと関わったり、地域のお年寄りの方と、もっと関わっていく意識を持ったらいいと思います。将来、お年寄りの方に自分が力になりたいという思いがもっと出てくると思う。さっき、知事も言ってくださったように、小さい時からの環境づくりはすごく大事だと思います。

(知事)
 ちなみに、高知県ではあったかふれあいセンターというのをやっています。
 これは、高知県独自でやっている仕組みなんですけど、どういうふうに独自かと言うと、施設が縦割りになっていないんです。子どもの施設、障害者の施設、高齢者の方のための施設って、普通は縦割りになって別々の施設になっているんですけど、あったかふれあいセンターでは、1ヶ所で皆さん集まっていただいてやっていただく形になっている。
 何でかと言うと、人口の少ないところだと、バラバラにしちゃうと、一個一個の施設では、人が集まらなくて成り立たないということになっちゃうので、1ヶ所でやっているんです。
 そこで、あったかふれあいセンターに行きますと、圧倒的に女性のほうが多くて、利用者の方は男性が少ない。男性がやっぱり出て来ない。ところが、男性が比較的多いところがある。どういうところかというと、子どもが来るところらしいんです。子どもが一緒に参加者として来る、利用者として来るところ。例えば学校が終わったりとか、もしくはお母さんが仕事に行くので預けていかれたりとか、面白いパターンだと、その施設の職員さんがお母さんで、その自分の息子さんを預けておられるところとか、そういうのがあったりすると、出不精だった男性の人が出て来るようになったとかいう話があったりするんです。
 多分、高齢者の皆さんも子どもと接すると喜ばれると思うし、子どももいろんなことを学んでいるんでしょう。そういう世代を越えた触れ合いの機会というのをつくるというのは、大事でしょう。
 Iさんどうぞ。

(学生I)
 さっきのあったかふれあいセンターを聞いて、ああ、そういう施設なんだと思ったんですけど。
 鳥取県もエルフィスという施設があるんです。そこは、高齢者施設と保育園と児童館というんですか、それらがひとつの施設になって、壁1枚で仕切られているという施設なんですけど、私にとって、おじいちゃん、おばあちゃんという存在はあまり近い存在ではなかったので、あまり身近には感じませんでしたし、今、こういう、鳥取県でもエルフィスという施設ができて小さい頃から関わっていることで、おじいちゃん、おばあちゃんっていいなという思いとかも出てくると思うんです。なので、こういう施設はこれからは大事だなと思っています。
 あとは、私は鳥取県で高校に行っていたんですけど、ボランティアについての募集みたいなのは全然なくて、「自分で調べなさい」みたいな感じだったんですけど、やはり、それだと、ちょっと自分で行きたいなと思っていても自分で調べないと始まらない。そういうところから始まると、じゃあ、まあいいか、みたいなふうに終わってしまう。そうではなくて、もっと、高校だったり中学だったりが、全面的にボランティアを押し出してみたりとか、高齢化も進んでいくので、授業の一環として取り入れてみたりするのもいいのかなと思います。

(知事)
 なるほど。ありがとうございます。
 施設なんかとタイアップして、ボランティアの人をどんどん募集できるといいのかもしれませんね。
 さっきエルフィスって言われたでしょう。私、鳥取県の平井知事さんとも同じ話をしたことがあるんです。結局、人口が少なくて高齢化、過疎化が進んでいる、ある意味〃課題を持つ仲間でもあるんです。そうなってくると、施設の区分の枠を越えていかないと、やっていけなくなってくるんです。高知県なんかも、そういう意味でやっていけなくなった。そうじゃないとやっていけないということで、あったかふれあいセンターというのをやり始めたというのもあるんです。
 ただ、もっと言うと、ものすごくネガティブなことに対応するというのみならず、ポジティブな意義もあるというか、世代間を越えて、高齢者の方も喜んでいただけるし子ども達にも良い影響が及ぶ。躾だとか知恵とかいろんなものがついていくと思うので、そういう意味でもあるのかなと。そう言って平井知事さんと話したんです。
 どうでしょう。Fさん。

(学生F)
 いろんな人が言っていたんですけど、私達の地域では、小さい時からお年寄りの方と学校ぐるみで交流というのがあって、例えば、七夕会の時に老人会の人を呼んで交流をするとか、あとは、運動会とかも地域と一緒になって行っていたり、卒業式とかにも普通に来ていただくという感じだったので、小さい時から触れ合うことで、高齢者の方と話すことが、コミュニケーションをとる勉強になっていた。
 今は、高齢者の方が増えているので、介護職というのは必要になってきていると思うんですけど、そういうコミュニケーションがとれないという面でちょっと厳しいなと。コミュニケーションがとれないという理由で、就職を諦める人とかもいると思うので、そういう小さい頃からの関わりというのは大切になってくると思います。

(知事)
 ありがとうございます。
 今、言った、卒業式にも来られるというのは、その御親戚だからということではなくて、卒業式に近所の高齢者の皆さんをお招きするといったことなんですか。

(学生F)
 そうですね。学校から、「いついつに卒業式がありますので是非来てください」という感じで呼びかけがあったりします。

(知事)
 運動会というのはたまに聞いたことがあるけど、卒業式も。それで、その時に交流があったりするんだ。卒業式だけじゃなく、いろんな会で会うから、あの時のおじいちゃん、あの時のおばあちゃんみたいな感じになるんだ。そうすると、段々コミュニケーションできるようになってくるって、そんな感じなんだね。

(学生F)
 高齢者と思うよりは、地域のおばちゃんとかおんちゃんとか、というイメージが強いので、そういう面で気軽に話せるというか。

(知事)
 なるほど、わかりました。ありがとう。
 Kさん、どうぞ。

(学生K)
 関わりを大切にしていかないといけないと言っているので、具体的には、施設側も月に1回、地域ぐるみで何か行事を開催してみるとか、地域で何かをしてみたりというアプローチを施設からすることが大切なんじゃないか思います。

(知事)
 逆に言うと、施設はできるでしょうかね。例えば、ボランティアとか、それから、地域のお子さんとかに施設をオープンにするとか。それはそれでなかなか大変ということはありませんか。そういうのも、できるものでしょうか。

(C先生)
 施設もいろんなイベントを試みて、高齢者の方も施設で閉じこもりにならないように、地域の方々と交流する機会を計画しています。そこに、アピールの仕方として、特定の団体であったり、特定の地域だけに限ってしまって、結果的に刺激という部分が若干少なくなっているのかなというふうにも思います。
 また、その施設の中だけではなく、外に出て行くような仕組みづくりであったりとかを考えると、高知県でも障害を持ったりした方や高齢者の方々がいろんなイベントに参加ができるような環境整備をしていくことも、ひとつの大事なことではないのかなと思いました。

(知事)
 そこらあたりはどう仕組むかですね。考えてみます。ありがとうございました。
 じゃあ、Eさん。

(学生E)
 やはり介護についての皆のイメージがネガティブで、今日、妹にも聞いたんですけど、「大変そう」とか、「しんどい」という意見ばかりだったので、実際に介護の現場を見てみないと、自分の思った感情(嬉しいとかの感情)は、わからないことだと思いました。施設側からもボランティアや、敬老の日だったら敬老会、お餅つきだったりとか、夏にはよさこいを一緒に踊ったりとか、そういうことをして、小さい時から交流を深めていったほうが将来を考える時にいろいろ道も増えてくるんじゃないかと思います。

(知事)
 あったかふれあいセンターは、さっき、高齢者の方と子どもがいて、両方ともすごくいいという話をしたけれど、例えば、施設と外との交流を意図的につくり出すということですよね。あったかふれあいセンターに限らず、そういうことができればいいということですよね。ありがとうございました。ちなみに、今、妹さんはおいくつですか。

(学生E)
 高校2年生です。

(知事)
 高校2年生。やはり、そうだろうね。一般にはそういう言い方をされている。けど、今日聞いたら随分イメージが違う。志しておられる皆さん、ある意味内側からいる皆さんから見ると違うなということがあって、すごくためになりました。
 じゃあ、Gさん、どうぞ。

(学生G)
 大体、皆さんと同じ意見なんですけど、高齢者の方が身近にいる機会を増やすというのと、あとひとつ。少し考えていたのが、仕事としての介護だと、きついイメージがあると思うんですけど、自分がいずれ年をとって、身近で言ったら親ですよね。
 親がどんどん高齢になっていった時にどうすればいいんだろうということを高校生や大学生になっていく時に、一度考える。そういったきっかけづくりというのを取り入れたらいいんじゃないかと思います。いずれ自分も年をとる、親も年をとる。でも、そうなった時の介護って、私もそうだったんですが、高校生の時は全く考えてないんです。親が元気なので。でも、高齢になっていく、年をとるということに対して、介護は突然やってくる。親が倒れたりだとか。突然やってくることに対して、その時に対応している。
 そうではなくて、もっと前から介護とはどういうことなのかを考える。介護っていうテーマを大きくしていくと、人生最後どうするかというテーマになってしまうと思うんですけど、そういうのを普段から考えるようなアプローチをしたりすることも必要なんじゃないかなと思います。
 自分自身のテーマとして意識を植えるということが必要なのではないかと思います。
 高齢者の方と触れ合うことから、そういうことが生まれたりもしますし、硬いことから始まることもあると思うんですけど、身近なテーマとしての介護を考えていく必要があるんじゃないかなと思います。他人事のように思っているところもあると思うので。
 今、皆さんおっしゃられたように、世間はやはり介護に対してネガティブだったり、閉鎖的なイメージをもっているので、自分のこととして、自分の問題として意識付けが必要なんじゃないかと思っています。

(知事)
 なるほど、わかりました。皆さん、ありがとうございました。
 今、2つのテーマについて、それぞれ皆さん、お一人お一人からお話聞いて大変参考になりました。ありがとうございました。
 もう少し介護の現場を知ってもらうような機会というのを小さい頃から増やしたいと思いますし、そのために教育の現場もそうだろうし、施設側と一緒にタイアップしてやらせていただいたりとかをしたいと思います。例えばボランティアを幅広く募るとか、日頃の行事での交流を深めるとか。それから、意外にその介護現場の処遇のことなんかもしっかり伝えれば、実は客観的に見たらどうだなんてこともあるかもしれませんね。
 今日いただいたご意見をふまえて、いろいろ若い人達が志していただけるような仕組みというのを考えてみたいと思います。今日は勉強になりました。ありがとうございました。

3−3.今後の高知県の介護について(テーマ3)

(知事)
 最後に、今後の高知県及び日本の介護については、こうあるべきだとか、ここが足りないとか、そんな、言いたいことはありますか?

(学生G)
 私は、この前、先輩に言われたことがあって、高知、どうなの?という話をしていた時に、先輩が、「高知は日本で1番じゃないかもしれないけど、結構、高齢化率が高い。そういう現状の中で福祉の現場に就くということは、日本の最先端にいるということなんだ」って言われました。福祉の仕事について、そういうふうに誇りを持つということ。介護はマイナスイメージが多いですけど、高知の福祉は、日本の中でも高齢化率が高いから先進的にいろいろなことに取り組んでいる。だから、皆も仕事に就こうっていう意識、仕事に対する誇りをもっと持てるような高知型福祉をどんどん推進していってほしいと思います。

(知事)
 なるほど。課題先進県って言っているんです。最近、日本のことを課題先進国って言っているけど、随分前から我々は課題先進県だって言っていて、高齢化、人口減少。人口減少も若い人が出て行くというだけじゃなくて、人口の自然減という状況になったのが平成2年からなんです。日本全国は17年からだった。15年先行している。自然減状態に陥っている。だから課題解決先進県になるんだということでいろいろ取組を進めているんです。
 さっき申し上げた高知型福祉というのは、まさにその課題の解決の先進県になろうとする取組で、逆に言うと答えがないんです。どこにもお手本がないので、自分達で考えるしかない。なので、皆さんから、こういったお話を伺っていて、そういう中で答えを見つけていこうと考えているんです。逆に、皆さん自身でいろんな道を切り開いていっていただければと思います。

(学生J)
 介護の現場って、結構女性が活躍できる場だと思うんです。皆さん、実習とかで経験されたと思うんですけど、介護で高齢者の方を抱えるとかというのは力が必要ではなくて、コツさえあればすごく小柄な女性の方でも、いとも簡単に介助ができるんです。実習の指導者の方にも女性が多いし、もちろん、介護の主任とか上司になる方も女性が多い。ものすごく女性が活躍できる場だと思うので、高知型福祉の中に、是非、女性が活躍できる介護現場というものを入れていただきたいなと思います。
 介護をされる女性が、子育てとか妊娠をされて1回職場を離れ、また現場に復帰される方が少ないというふうに聞いたので、復帰できるような、例えば託児所であるとか、産休・育休の制度とかをしていくと、少子化対策も兼ねた高知型福祉というのができるかなと思います。

(知事)
 ありがとうございます。社会福祉協議会の中に、福祉人材センター、福祉研修センターというのをつくっているんですが、この福祉人材センターというのは、もともと法律に基づいて全国的にあるものなんですけど、いわゆる施設とマッチングをはかる、就職の斡旋をさせていただいたりする施設なんです。もうひとつ福祉研修センターというのがあって、これは学生さん達が行かれるというより、もともと昔、経験されていて、何十年かやめていて、その方が新たに就こうとされたりする際の復職支援とかに役立つようにということで研修を設けたりしているんです。
 おっしゃるとおり、もう一段やりたいと思っている人と、人が欲しいと思っているところを結びつける。しかも、その途中で研修が必要だったら、その研修もしっかりする仕組みというのは、もっと強化できればいいですよね。
 最後、誰か1人。

(学生L)
 職場に必要なことで一つ。祖父が施設に入所するかもしれないというふうになって、そういう時に施設に入所させる家族側の意見としては、やはり家でいたほうが元気にいられるんじゃないかとか、施設に入所したら危ないんじゃないかとか思ってしまって。高卒とかで無資格で働いている人とかもいたりする。やはり、しっかり学校とかで知識・技術を身につけた人のほうが、入所させる家族側の思いとしては、安心させて家族側も入所させることができると思うので、質の向上というのは大事だと思います。

(知事)
 なるほど。わかりました。

4.各校の先生からの意見

(知事)
 それじゃ、皆さん、長いこと、ありがとうございました。
 最後に、お聞きになって、先生方、是非一言ずつお話しいただければ。B先生。

(B先生)
 本当に今、いろんな課題を抱えているとは思うんですけれども、各施設が人材難ということですから、高校にも求人に行ったりするんです。やはり、2年間のしっかりした介護福祉教育を受けた人というのは定着率が高い。高校も施設側もどうしても人材難なので、高校に求人に行くのはしょうがないことだと思うんです。資格を持っていない臨時職員のままで資格を取るまで働いているケースだと結局、途中でリタイヤしていくケースもやはり多いらしいです。
 ですから、何とか、一人一人の質の向上ということに関しては養成校に来ていただくような仕組みを是非つくっていただきたいなと思います。

(知事)
 はい。ありがとうございます。A先生。

(A先生)
 介護コースの学生達は、介護福祉士と社会福祉士、両方ありますので、どういう職場に就くかというので、わりといろんな職場を当初は考えているのですが、実際に決まりつつあるのは、やはり介護の職場が多い。それは、やはり学生が自分で選ぶというんでしょうか、まずは介護の現場で働きたいという学生が非常に多いんです。
 送り出す側として、今ちょっと懸念をしているのは、是非その介護の現場で働き続けられる現場であってほしいなと。1年目すぐにリーダーとか責任ある仕事も任せられると思いますけど、その中で仕事に見合った待遇とか、その次の資格とか、そういうのもきちんと取っていけるような、そんな職場であって欲しい。そういう仕組みを是非、県のほうとしてもサポートしていただきたいなと思っております。

(知事)
 キャリアパスの形成みたいなやつですね。確かに。一部やり始めてはいるんですけど。まだまだね。ありがとうございます。C先生。

(C先生)
 高校生が自分から介護の職業を選びたいというところで、ひとつネックになるのが、保護者の理解というのがひっかかってくるところがあります。
 どうしても、福祉というのは、まだまだネガティブなイメージというのが拭いきれないところがありますので、是非、福祉の魅力というのを伝えていく必要があると感じております。ただ、それぞれ学生の皆さんが話をしてくれた中では、一言ではこの仕事の魅力であったりとか、やり甲斐というのは、言葉で伝え難い部分がある。実際の経験がないとわからないところがあると思いますので、そういう経験をする機会というのをつくっていただけたらと思います。また、どの年代の方も、福祉ということの必要性に対して、自覚をもって前向きに目指していけるような環境を整えていただけたらと思っています。

5.知事まとめ

(知事)
 わかりました。ありがとうございます。
 今日は皆さん、本当にありがとうございました。「対話と実行座談会」ということで皆さんからいろいろお話を伺えて、一言で言うと、私は今日、大変勇気付けられました。
 大変なんだけど、何とか乗り越えようとしているイメージ。むしろ、非常にポジティブに意義を感じて、皆さん取り組んでおられるというお姿をもっと多くの皆さんに伝えられるような、そういう取組が必要だなということも思いました。
 是非、介護の施設の皆さん、教育機関の皆さん、そしてまた我々行政、学生の皆さんのお声も聞きながら、いいシステムを全体としてつくっていくことで、この高齢化社会において、若い人も、そして高齢者の皆さんも共に幸せに暮らせるような、そういう世の中につなげていければなと思います。
 また、学生の皆さん、是非頑張ってください。それぞれの志を遂げられますよう、本当に応援を申し上げております。

(司会)
 以上をもちまして第1回対話と実行座談会を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

閉会

                      



 

テーマに関して事前に寄せられたご意見と対応方針

 

第1回「対話と実行座談会」を開催するに当たり、事前にテーマに関する質問を募集しました。
いただいた質問に対するご意見・県の対応方針について以下のとおり取りまとめました。

ご意見・県の対応方針 [EXCELファイル/21KB] PDF版 [PDFファイル/158KB]

 

この記事に関するお問い合わせ

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