公開日 2024年01月31日
生態や特徴
ニホンザルはふつう「群れ」と呼ばれるまとまった集団で生活をしています。群れはおもにメスとその子供を中心に構成され、大人のオスは群れの中に一割程度の数しかいないといわれます。オスは大人になる前(4から6歳ごろ)に群れを離れて単独で行動したり、オスだけのグループを形成したり、他の群れに加わるなどして生涯を過ごします。特に、群れを離れ単独で行動するものをハナレザルなどと呼びます。
群れの規模は10数頭から100頭超までさまざまですが、その規模は分派行動(群れの分裂)や生息域の環境などにも左右され、おもに40から50頭前後の群れが多いといわれています。
ニホンザルの交尾期は10月から翌1月ごろで、おもに170から180日の妊娠期間を経て、4月から7月ごろ(出産期と呼びます)に1頭を出産します。双子が生まれることはまれです。メスの初産は7から9歳で、20歳頃までほぼ隔年で出産します。しかし、栄養状態の良いサルでは初産時期が早く、毎年出産するものも少なくないそうです。
ニホンザルの活動はおもに日中で、その活動の多くは食べることに費やされ、夜は眠ります。
カキやナシなど果実が大好物ですが、植物質を中心に、コケやキノコ、昆虫やカニやカエル、小鳥の卵なども食べる「雑食性」です。エサを求めて行動圏を巡回しており、そんな群れがいったん農作物の味を覚えてしまうと、何度でも畑や人里に出てくるようになります。
民家の屋根に現れた野生のニホンザル(*高知市)
被害状況
昼行性なので被害は日中に発生します。サルによる被害は多種多様ですが、おもに以下のような被害が考えられます。
- 中山間地での農林業被害など
- 住宅地への出没による住民への心理的被害や、屋根や車の破損などによる物損被害など
- 観光地周辺での咬みつきなどによる人身被害など
その他、上記の被害が複合的に現れたり、被害のレベルが上がると民家に侵入して仏壇の供え物や生ゴミまで食害するようになり、最悪の場合は人を襲うケースにまで発展してしまうこともあります。
なかでも農林業への被害は複雑で、いったん農作物の味を覚えてしまうと、被害が繰り返されたり、人馴れをする原因となったりする場合もあります。
サル被害の特定については、日中の目撃によるものが主ですが、特徴のある足跡や、抜け落ちた体毛などのフィールドサインのほか、カブやタマネギなどのように引き抜いてかじった食痕(食害のあと)や、クリやカキなどをかじった歯形などからもサル被害を特定することができます。
サルの被害が他の獣類の場合と大きく異なる点に、優れた四肢を持つ点が挙げられます。人と同様に物をつかむことのできる両手に加えて、足でも物をつかむことができることは、被害対策を複雑にしている大きな要因ともいえます。
被害対策
サルは賢くて器用なため、被害対策について、現在のところ決定的な対策は確立されていません。でも、あきらめない姿勢が大切です。他の鳥獣同様に、考えられることはいろいろと試してみましょう。
1.サルを集落に近づけないようにしましょう・・・。
子連れのサルなどが可愛いからと、サルにエサを与えることは絶対にやめましょう。
B級品や野菜クズなどを、サルのエサとなるような場所に廃棄しないようにしましょう。できればコンポストなどに入れます。
サルを容易に農作物へ近づけないよう、農地は頻繁に見回り、人の存在を意識づけましょう。
大切な作物の周りに、サルが好まないといわれるトウガラシやコンニャク、オクラなどを植えてみましょう。ミョウガやショウガ、サトイモやウド、ソバ、ゴボウやサンショなども効果があるといわれています。
サルが現れたら、とにかく大きな声を出したり石を投げたり、あらゆる手段で追い払いましょう。ロケット花火や爆竹、エアーガンや飼い犬なども効果が期待できます。他県ではサルが現れたことを知らせる接近警戒システムの研究開発や試験導入も行われています。また、「犬猿の仲」を利用して、訓練された飼い犬(モンキードッグと呼びます)によるサルの追い払いも全国で普及が拡大しており、県内でも数頭が活躍中です。
高知県中土佐町で活躍中のモンキードッグ「キナコ」
2.サルの侵入を防ぐネットや柵を設置してみましょう・・・。
被害状況のところでも触れたように、サルには優れた四肢があります。単にイノシシやシカ用の防護柵では防ぎきれないため、作物全体をネットでしっかり囲ったり、特殊な張り方のネットや通電式の防護柵(電牧ネットなど)が有効とされています。
有名なネット式の防護柵に「猿落君(えんらくくん)」や「おうみ猿落・猪ドメ君(サーカステント)」などがあります。どちらもサルがよじ登り難いように工夫されていて、設置費用も比較的安価なことから、ともに商品化されています。
電気柵ではネット全体をアースし、上部にプラスの電線を一本張るだけで必ず電気ショックを与えることが研究により確認されています。このようなネットを用いれば、雑草管理などの省力化をはかることもできます。現在防護柵を設置されている方は、被害の態様により、あの手この手と工夫をしてみてください。
電線を編み込んだネットに電気を通して侵入を防ぐ電牧ネットの設置例(*愛媛県)
3.市街地に現れたサルには・・・。
群れから離れた「ハナレザル」は、時として山から10Kmも離れた市街地に突如として現れることがあります。そこにエサとなる物がなければしぜんと山に帰って行きますが、エサを与えてくれる優しい人間や容易に手に入れられる食べ物があれば居着いてしまいます。たった一匹ならと、気を許していると、そのうちに群れを引き連れて大勢やって来るかも知れません。そうなる前に、早めに追い払ってしまいましょう。
もしも、あなたの街にそんなサルが現れたら、まずお近くの市町村に連絡して、地域の人(特に子供やお年寄りなど)に、チラシや放送などで「サル出没注意」を促してもらいましょう。
被害が心配されるようでしたら地域ぐるみで追い払いを試してみましょう。ただし、万一に備えての警戒を怠らないようにします。
追い払いの効果も無く、被害が発生するようでしたら個体を捕獲することも検討してみましょう。ただし、オリなどによる捕獲の場合、野犬用の捕獲オリなど大型のものは不用意に子供が近づかないように設置するなど、細心の注意を払います。なお、捕獲したサルを放す場合にはトウガラシスプレーを振りかけるなどして、「人間は恐ろしい」ことを学習させてから山に帰すなどの処置をしましょう。
4.サルの捕獲も検討してみましょう・・・。
防除だけでは思った効果が得られないときには、被害を与えている個体を捕獲することも考えてみましょう。県内には有害鳥獣の捕獲許可を得て設置した「捕獲おり」で優れた効果をあげている事例もあります。有害鳥獣の捕獲については最寄りの市町村にご相談ください。
パイプハウスの骨組みを利用した大型捕獲オリの設置例
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